日本薬理学雑誌
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138 巻 , 6 号
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特集:創薬標的としてのイオンチャネル・トランスポーターの新たな研究法・探索法
  • 藤井 将人, 大矢 進, 山村 寿男, 今泉 祐治
    2011 年 138 巻 6 号 p. 229-233
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/10
    ジャーナル フリー
    イオンチャネルは,様々な生理現象を直接的に制御し,多くの病態にも関係しているため,主要な創薬標的の1つである.しかし,受容体や酵素などを標的とした既存の医薬品に比べ,イオンチャネル作用薬の割合は明らかに少ない.この原因の1つとして,高効率スクリーニング(HTS: high throughput screening)系の開発が遅れていたことが挙げられている.近年,イオンチャネル機能測定で最も有効な,しかし非効率なパッチクランプの自動化が達成され,また他のスクリーニングも開発・改良されてきたことから様々なHTS化が進んできている.本稿ではこれらの長短所の整理を試みた.精密性と汎用性において優れているオートパッチクランプは,その応用であるポピュレーションパッチクランプの出現により普及しつつあるが,コストパフォーマンスの面では必ずしも有利ではない.イオン感受性あるいは電位感受性蛍光色素やイオンフラックスを用いたより単純なHTS系も,測定系として適合していれば,コストパフォーマンスを含めた効率の面から多検体1次スクリーニングに充分有効となっている.我々は不活性化の遅い変異型電位依存性Na(Nav1.5)チャネルをKir2.1チャネルとともにHEK293細胞へ定常発現させ,「1発の活動電位発生により確実に細胞死が引き起こされる細胞」の作成に成功した.この細胞へさらに創薬標的イオンチャネルを機能発現させ,チャネル活性に対する試験化合物の作用が,活動電位発生と波形調節を介して細胞生死の割合を制御することを見出し,細胞死測定で作用化合物の効力を定量的に解析する極めて簡便なスクリーニング方法開発へ繋がる可能性を示した.多様な目的に応じて選択の可能な多数のスクリーニング方法が実用化されHTS化が進むこと,同時に標的イオンチャネルを定常発現した質の高い細胞の作成・供給が,この領域での新薬開発研究推進を助ける重要な2つの要素と考えられる.
  • 筒井 秀和, 東島 眞一, 宮脇 敦史, 岡村 康司
    2011 年 138 巻 6 号 p. 234-238
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/10
    ジャーナル フリー
    ゼブラフィッシュは,遺伝子操作技術が確立されていること,幼魚では細胞や組織の観察が生きたまま可能なこと,発生が速く進むこと,飼育コストが比較的安いこと,等々のモデル脊椎動物としての利点を持ち,それらは心臓研究においても発揮されてきた.また,近年は,組織損傷後に再生がおきることや,個体を用いた大規模スクリーニングへの適合性などのユニークな点にも注目されてきている.今回,蛍光イメージング技術を用いて,ゼブラフィッシュ心臓の電気活動を非侵襲的に「見る」ことを試みた.この方法を用いると,たとえば,抗ヒスタミン系の薬物がゼブラフィッシュにおいて心機能障害を誘発することが知られているが,そのような状態での電気的興奮の伝播の様式が正常時とは明らかに異なるモードになっていることが明らかとなった.このような新規in vivo光学的手法の開発が,心臓の生理,発生,薬理学的研究の新たな展開につながることが期待される.
  • 金子 周司
    2011 年 138 巻 6 号 p. 239-243
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/10
    ジャーナル フリー
    ある種のsolute-carrier(溶質輸送体,SLC)トランスポーターや能動輸送ポンプATPaseによる基質輸送(あるいは駆動力)としてのイオン膜透過は,電位固定法におけるイオン電流として記録することができる.しかしながら,トランスポーターが発生する電流は,一般的にイオンチャネルのそれと比べると振幅が小さく測定が容易ではない.近年,solid-supported membrane(固定化膜標本,SSM)を用いて簡便にトランスポーター電流を測定する新しい電気生理学的手法がドイツにおいて発明,開発された.我々はすでに商品化されたこのSSMベースの測定システムについて,従来の手法との比較検討を行った.本システムによって,強制発現したペプチド輸送体PepT1,興奮性アミノ酸輸送体EAAT3,シナプス小胞のプロトンポンプv-ATPase活動について,微小なイオン電流を前定常状態における容量性応答も含めて安定的に記録できた.この新しい手法は,細胞膜だけに限らず,細胞内小器官まで含めた生体膜に発現するトランスポーター・イオンチャネルの輸送機構の解明やリガンド探索に有用な手法となると考えられる.
創薬シリーズ(6)臨床開発と育薬(3)(4)(5)
  • 黒川 達夫
    2011 年 138 巻 6 号 p. 244-247
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/10
    ジャーナル フリー
    医学の進歩や新薬開発は基礎研究の上に成り立つが,最終段階ではどうしても人を対象とする試験研究により,臨床的な価値や安全性が明らかにされる必要がある.また人を対象とする試験研究段階では,科学的な質はいうまでもなく,被験者の基本的人権の保護にはじまる倫理的な側面への配慮が欠かせない.先進諸外国では人を対象とした試験研究は統合された制度のもと,単一の倫理と高い科学水準の下に行われているが,わが国では薬事法に基づく承認申請のための臨床試験(治験)と,施設内で行われ医学・薬学等の進歩を目的に掲げる臨床試験(臨床研究)の2つが並立し,異なる規制環境に置かれている.とくに後者はリソースが少なく済む反面,信頼性や科学性に問題のあるものもあり,ようやく制度的な改善に向け各方面の議論と努力が顕在化しつつある.わが国の臨床での研究成果がさらに役立ち世界に貢献し得るよう関係者の努力と取り組みの促進が望まれる.
  • 一木 龍彦
    2011 年 138 巻 6 号 p. 248-251
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/10
    ジャーナル フリー
    がんに対する告知もなかった時代から,ICH-GCP,J-GCPの時代になり日本では治験の空洞化が見られるようになりました.そんな中で日本全体が1つの力となり,多くの試みがなされました.PMDAの発展,Bridging-studyの考え方の指針,そして国際共同試験(Global study),Asian試験への道筋を造ってきたと思われます.アジアには3つの世界があり,日本語の日本,中国語の中国,その他英語の世界があります.日本では困難な問題が山積して逃げたいような国際共同試験であっても,実り多い試験結果がドラッグ・ラグを縮めています.スピードもコストも改善されつつあります.中国では中国市場を目的とした中国承認申請用の試験に興味が注がれます.目的に合わせた試験を模索し続けることが重要だと言えると思われます.現在では日本も世界の一員として国際共同試験に参加しつつあります.
  • 小野 俊介
    2011 年 138 巻 6 号 p. 252-255
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/10
    ジャーナル フリー
    より良い新薬開発・承認審査を考えることは,社会で暮らす人間に薬がどのような影響を与えるかを考えることである.そこで求められる科学は,人間と社会を興味の対象にした社会科学,たとえば経済学,意思決定論,そして倫理(公共哲学)である.現在の承認審査システムはこうした社会科学的な正当性の根拠を欠いており,基本となる考え方が不在のまま,単なるheuristics(経験則あるいは「門前の小僧習わぬ経を読む」)としての手続きがあるだけにも見える.今我々がすべきことは,既存のシステムや当事者の利害を正当化するための似非科学の体系を作ることではなく,人間・社会を幸せにするという目的に照らしての合理性を持った新しい意思決定科学の体系を,豊饒な社会科学の体系を取り入れながら,医薬品評価の世界に築いていくことである.
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