私は山本
1) とともに乾燥ジギタリス・プルプレア葉より各種有機溶媒で強心物質を抽出したもののうち, メタノールエキスに最も多く強心物質が含まれていることを知つた.故に以下, 特別の場合を除きジギタリス葉の實驗にはすべてメタノール抽出を行つたのである.
溶媒の濃度と有効成分の抽出能率との關係については, Rosenkranz
2) が水よりもエチルアルコールによる抽出がよく, 50~70%アルコール抽出エキスが最も強力に作用するといつている.
從來, ジギタリスに對する蛙の感受性に季節的變動があり, 特に夏季は感受性が高いといわれ, また蛙體重の大小にも感受性の差があるといわれているが, これらの問題にもふれて實驗を進めた.
強心配糖體の安定劑として, さきに山本はp-オキシ安息香酸ブチルおよび1%ブドウ糖の添加をあげたが, 酸性亞硫酸ナトリウムを加える者もあり, また溶媒としてプロピレングリコールがジギタリスの溶媒に用いられていることもあるので, それらの適否を檢べた.
また私は, プルプレア葉メタノールエキスを酢酸エチルエステルで處理すると, その可溶分が速効性に偏し原葉既存の遲効成分が欠けていることを知つたので, 酢酸エチルエステル使用のことについても詳しく實驗した.すなわち, 大體原葉既存遲速有効成分の割合, サポニン物質除去方法, 水素イオン濃度と配糖體失効との關係および有効成分保存方法について比較檢討した.
ジギタリス・ラナタ (邦産) よりのDigitalisおよびジギトキシン (U. S. P.) を實驗した結果や, ジギタリスの人における効力の發現時間に疑義があるので, 抽出成分を健康人に經口投與して張心および利尿作用を心電圖, 脈搏, 尿量などについて觀察した.
要するに.ジギタリスに關する藥理學的, 藥學的研究はその歴史の古さから複雜多岐にわたるので, 私はプルプレア配糖體の研究を最後の日的として, 種々派生的な問題にふれて實驗した.
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