日本薬理学雑誌
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120 巻, 6 号
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総説
  • 中谷 良人, 工藤 一郎
    原稿種別: 総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 373-378
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    中枢から末梢にわたる多彩な生理活性を有し,生体内に最も豊富に存在するプロスタノイドであるプロスタグランジンE2(PGE2)の生合成経路の最終段階をつかさどるPGE2合成酵素は,最近までその本体が同定されていなかった.筆者らは細胞質型PGES(cPGES)をラット脳可溶性画分より精製し構造決定した.分子量23 kDaの本酵素はグルタチオン依存性であり,生体内の広範な臓器に恒常的に分布し,アラキドン酸カスケードの上流に位置するシクロオキシゲナーゼ(COX)のうち常在型酵素であるCOX-1と機能的に連関することが示されている.cPGESは熱ショックタンパク質90(hsp90)と結合するp23と呼ばれるタンパク質と同一であり,分子シャペロンとアラキドン酸代謝を結びつけるキーエンザイムである可能性がある.膜結合型PGESとして最初に同定された分子量15 kDaのmPGES-1は膜結合型グルタチオンS-トランスフェラーゼの一員であり,さまざまな刺激に伴い種々の細胞および臓器で発現誘導される.本酵素は誘導型酵素であるCOX-2と機能的に連関することが明らかになっているので,炎症性疾患や癌等の様々な疾患に関与することが指摘されている.さらに,ごく最近,2つ目の膜結合型酵素であるmPGES-2が同定された.以上3種類のPGESは各種疾患の治療薬の新規標的分子となる可能性がある.
  • 小井田 雅夫
    原稿種別: 総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 379-389
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症とその結果おこる骨折は,加齢と二本足歩行が続く限り自然発症する重篤な病状である.骨生物学の最近の進歩によって,古くからの治療薬の抗骨粗鬆症作用の機構が明らかになると共に,新薬登場の場が生まれつつある.加えて,過去10年に初めて行われた大規模臨床試験はこれら薬物の臨床使用の根拠を与えると共に,治療薬開発のための新しい概念を生み出した.このような基礎·臨床両面にわたる進歩について概説する.
新薬紹介総説
  • 荻野 桂子, 斎藤 和重, 大杉 武, 佐藤 壽
    原稿種別: 新薬紹介総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 391-397
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    メロキシカム(モービック)はシクロオキシゲナーゼ(COX)-2を選択的に阻害するオキシカム系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である.ヒトの慢性関節リウマチに類似しているラットのアジュバント関節炎に対して強力な抗炎症作用および骨·軟骨破壊抑制作用を示し,ラットのイースト誘発痛覚過敏に対しても持続の長い鎮痛効果を示す.一方,NSAIDの主たる副作用である胃粘膜障害は,従来のNSAIDに比べ,発現が少なく,治療係数が大きい.また,臨床用量では,血小板凝集抑制作用を示さず,出血時間の延長も認められない.臨床試験においては,総括すると従来のNSAIDと有効性は同等で安全性は高いとの成績を示し,「慢性関節リウマチ,変形性関節症,腰痛症,肩関節周囲炎,頸肩腕症候群」に対する効能·効果が認められた.通常,成人にはメロキシカムとして10 mgを1日1回食後に経口投与する.
  • 小川 真実, 森貞 亜紀子
    原稿種別: 新薬紹介総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 398-408
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    リバビリン(レベトール®)はC型慢性肝炎の治療にインターフェロンα-2b(IFNα-2b)と併用して使用される抗ウイルス薬である.本薬は主にRNAウイルスに対して幅広い抗ウイルス作用を示すことが報告されており,C型肝炎ウイルス(HCV)の代替ウイルスとしてウシウイルス性下痢症ウイルスを用いた感染細胞系において,IFNα-2bと併用することにより増強作用が認められた.本薬の作用機序として,宿主のイノシン一リン酸脱水素酵素の阻害作用,RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の阻害作用等が報告されていた.最近,リバビリンがHCVと同じRNAウイルスであるポリオウイルスのRdRpによりRNAに取り込まれ,新生RNAの鋳型となり,突然変異を誘導することが明らかにされた.更に,リバビリンにより誘導される突然変異のわずかな増加により,ウイルスの感染能が激減することが証明された.このRNAウイルスに対する変異原としての作用は本薬の新規機序であり,本薬は新しいクラスの抗ウイルス薬として分類されるものと考えられる.
  • 太田 知裕, 小松 将三, 徳武 昇
    原稿種別: 新薬紹介総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 409-419
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    アレンドロネート(アレンドロン酸ナトリウム水和物;ボナロン®錠5 mg)は,骨表面に結合し破骨細胞による骨吸収を抑制する窒素含有のビスホスホネートである.第3世代のビスホスホネート化合物であるアレンドロネートは,骨吸収面に特異的に分布し,破骨細胞と骨面で形成される閉鎖環境下で,破骨細胞より分泌される酸によるpH低下(酸性)により骨面から遊離され,破骨細胞内に取り込まれる.取り込まれたアレンドロネートは,コレステロール合成系であるメバロン酸合成経路を抑制し,低分子量GTPタンパク質のプレニル化を阻害し,細胞骨格への影響などを介して破骨細胞の機能を抑制する.アレンドロネートの破骨細胞に対する骨吸収抑制作用は可逆的で,作用発現の100倍以上の濃度においても細胞障害性を示さない.長期投与でも骨石灰化抑制を起こさず,骨折治癒に影響を与えない.このことから,骨質に対して安全性が確立した骨粗鬆症治療薬である.骨粗鬆症において最も危惧される病態は,骨折を生じることである.アレンドロネートは,国内において骨密度の増加に加え,骨折の抑制効果が確認されている.  現在,閉経後や老人性の骨粗鬆症に加え,ステロイド投与など薬剤による二次性の骨粗鬆症が注目されている.この点,アレンドロネートは海外において治療効果の高い骨粗鬆症治療薬として位置付けられており,約100カ国で認可され,約450万人以上の患者に使用されている.アレンドロネートは,骨粗鬆症においてEBM(Evidence Based Medicine)の考え方をいち早く取り入れた薬剤である.本稿ではアレンドロネートの薬理作用及び臨床効果について概説する.
  • 安田 修平, 宮田 桂司
    原稿種別: 新薬紹介総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 421-426
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    インターフェロンアルファコン-1(コンセンサスインターフェロン,アドバフェロン®)は,米国アムジェン社によって新規に開発された遺伝子組換えインターフェロン(IFN)である.本剤が開発された1982年当時に知られていたインターフェロンαのサブタイプのそれぞれのアミノ酸配列において,各位置で出現頻度の高いアミノ酸を選択することにより本剤のアミノ酸配列が設計され,I型IFNレセプターに対する親和性が高くなっている.インターフェロンアルファコン-1の抗ウイルス作用はin vitroにおいて既存のIFN-αに比較して強く,in vivoにおいてもその抗ウイルス作用が確認されている.また,NK活性および単球(マクロファージ)の活性化作用など強い免疫増強作用を有し,各種腫瘍細胞に対する強い細胞増殖抑制作用も示す.C型慢性肝炎患者を対象にした米国および本邦における臨床試験において本剤の有効性が確認された.本邦では,高ウイルス血症患者において本剤1800万単位での有効性が認められ,難治性のC型慢性肝炎と考えられる「genotype1b高ウイルス血症(100 Kcopies/ml以上)」の患者,その中でも特に100~700 Kcopies/mlの患者においてリンパ芽球細胞由来天然型IFN-α[IFN-α(NAMALWA)]よりも高い有効性が認められたことから,難治性C型慢性肝炎に対する本剤の有用性が示された.また,低ウイルス血症例においても本剤1200万単位の高い有用性が明らかに示された.さらに,既存のIFN製剤では完全にウイルスを駆除できなかった再燃症例に対しても,本剤1800万単位再投与の臨床的有用性が示された.以上,本剤は新規のC型慢性肝炎治療薬として,既存のIFNに比べ高い治療効果が期待される.
  • 大塚 昇, 浦山 浩二
    原稿種別: 新薬紹介総説
    2002 年 120 巻 6 号 p. 427-436
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/01/28
    ジャーナル フリー
    ファレカルシトリオールはカルシトリオールの26,27位の水素を全てフッ素で置換した構造を有し,強力で持続的な作用を示す活性型ビタミンD3製剤である.カルシトリオールは25(OH)VD3-24R-hydroxylase(Cyp24)により24位が水酸化されて不活性の代謝体となる.本薬はCyp24により23位水酸化体,引き続き23位oxo体に代謝され,これらの活性を保持した代謝体が副甲状腺,骨,皮膚といった標的細胞内に長く留まるため,カルシトリオールより強力で持続的な作用を示すと考えられている.慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症(2°HPT)と骨病変に対して病態モデル動物では血清副甲状腺ホルモン(PTH)の抑制に加え骨病変の改善も認めた.臨床では2°HPTに対しては用量依存的な血清PTH濃度抑制を示し,プラセボに対しても有意な改善効果を認め,経口の活性型ビタミンD製剤として初めて明確な有効性を示した.既存の活性型ビタミンD製剤であるアルファカルシドールで治療しても十分な効果を認めない症例に対し,血清Ca濃度を正常範囲内に維持する投与量で24週間投与すると,本薬投与群では血清PTH濃度や骨代謝マーカーの改善に優れ,血清リン濃度は本薬で有意に低かった.血液透析を受けている腎不全患者に反復投与しても健常人の薬物体内動態と差異は認められなかった.本薬を血清Ca濃度が概ね正常範囲を維持するように48週間投与すると血清PTH抑制や骨代謝マーカーの改善を認めている.クル病·骨軟化症に対しては既存薬から本薬に切り換えた場合に既存の活性型ビタミンD3製剤よりも低用量で効果が維持され,治療効果が不十分な家族性低リン血症性クル病症例や新規に治療を開始した骨軟化症で骨所見の改善を認めている.副甲状腺機能低下症に対してはモデル動物や各病形の患者に対し既存の活性型ビタミンD3製剤より低用量で血清Ca濃度を正常域近くに維持できることが示されている.
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