日本薬理学雑誌
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89 巻, 3 号
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  • 亀山 勉, 鍋島 俊隆, 野田 幸裕
    1987 年 89 巻 3 号 p. 103-110
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    calcium-4-(3,5-dihydroxy-3-methylpenthylamido)butyrate(mevalonic-GABA,MV-GABA)の行動薬理作用を中心に,Ca-hopantenate(HOPA)と比較検討した.MV-GABAはマウスの一般行動状態および攻撃行動に対して顕著な影響を与えなかったが,MV-GABA(1000mg/kg,i.p.)は,マウスの自発運動量を著明に減少させ,運動協調性を抑制した.また,MV-GABA(500mg/kg,i.p.)は抗acetylcholine(ACh)薬(scopolamineおよびatropine)やdopamine(DA)agonist(methamphetamine)による運動促進作用に対して拮抗作用を示した.さらに,MV-GABA(1000mg/kg,i.p.)はpentobarbital-Naによる睡眠時間を延長し,strychnineによる痙攣に拮抗した.以上の結果より,MV-GABAは中枢AChおよびDA神経系へ作用することが示唆され,DA神経系への作用を除いてHOPAと同様な薬理作用を示した.
  • 関口 治男, 浜田 佳津宏, 岡田 裕美子, 多賀 福太郎
    1987 年 89 巻 3 号 p. 111-119
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    実験的急性胃炎モデルとして使用されているラットのaspirin,水浸ストレス,0.6N HClおよびethanol胃粘膜病変に対するtroxipideの抑制効果を検討した.対照薬物としてcetraxateを使用した.1)troxipideは200,300mg/kg経口投与でaspirinおよび0.6N HCl胃粘膜病変を用量に依存して有意に抑制した.2)troxipideは100,200,300mg/kg経口投与で水浸ストレス胃粘膜病変を用量に依存して有意に抑制した.3)troxipideは100,200,300mg/kg経口投与でethanol胃粘膜病変を用量に依存して有意に抑制した.また,troxipideはethanol胃粘膜病変に対し100mg/kg経口投与10,30および60分後でそれぞれ同程度の顕著な予防効果を示し,この効果は240分後まで持続した.300mg/kg経口投与においても同様の傾向が認められた.4)cetraxateは100,300,1,000mg/kg経口投与でethanol胃粘膜病変を用量に依存して有意に抑制した.しかし,水浸ストレス胃粘膜病変に対しては600mg/kg以上の経口投与で,aspirinおよび0.6N HCl胃粘膜病変に対しては1,000mg/kg経口投与でのみそれぞれ有意な抑制が認められた.以上,troxipideはethanol胃粘膜病変に対してcetraxateとほぼ同程度の抑制効果を示したが,aspirin,0.6N HClおよび水浸ストレス胃粘膜病変に対してはcetraxateに比ぺより強い効果が認められた.従って,troxipideはヒトの急性胃炎に対する治療薬として有用性が期待できると考えられる.
  • 石黒 茂, 西尾 晃, 宮尾 陟, 森川 嘉夫, 竹野 一, 柳谷 岩雄
    1987 年 89 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    飼料中のマグネシウム(Mg)含量を低下させたときにみられるラット皮膚の炎症症状発現時の皮膚肥満細胞の組織学的検討と腹腔肥満細胞からのヒスタミン遊離におよぼす外液Mg濃度について検討した,離乳後のWistarラット(平均体重50g)をMg欠乏飼料(0.001%Mg)で8日間飼育した・飼育開始3,4日目より耳介に発赤症状があらわれ,8日目まで次第にその程度が強くなった.この発赤症状には浮腫が伴っていた.皮膚の組織学的観察によると,光学顕微鏡観察では対照群の皮膚肥満細胞には細胞質内に顆粒が充満していたが,Mg欠乏群では顆粒の著明な減少を認め,Mg欠乏によるヒスタミン遊離が示唆された.電子顕微鏡観察では,Mg欠乏群の皮膚肥満細胞には,微絨毛は観察されず,細胞質には拡張した粗面小胞体,発達したゴルジ装置,多数のミトコンドリアとリボゾームが観察され,さらに毛細血管壁は拡張のため薄くなっていた.腹腔肥満細胞を用いて,ヒスタミン遊離におよぼす外液Mg濃度の影響について検討を行った.外液Ca濃度は1.0mMとし,外液Mg濃度を0.2mMと1.0mMとした溶液中でのヒスタミン遊離率を求めると,外液Mg濃度を低下させるとヒスタミン遊離率の有意な上昇が認められた.以上の結果より,Mg欠乏ラットでは皮膚組織中のMg濃度低下により肥満細胞からのヒスタミン遊離が促進される可能性が示唆された.
  • 寺澤 道夫, 荒谷 秀和, 岩久 義範, 今吉 朋憲, 丸山 裕
    1987 年 89 巻 3 号 p. 129-137
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    非ステロイド性抗炎症薬,pranoprofen(PPF)の尿酸塩誘発炎症に対する作用について,実験動物を用い,痛風発作時に使用される標準薬と比較検討した.PPFはラヅトおよびマウスの尿酸塩による足浮腫を,それぞれ1~10mg/kg,p.o.および5~25mg/kg,p.o.で用量に依存して抑制した.ラット尿酸塩足浮腫に対して,PPFはindomethacin(IM)およびcolchicineと同程度の活性を示した,また,PPF(2.5~10mg/kg,p.o.)はラット尿酸塩胸膜炎に対して,用量に依存して滲出液の貯留を抑制し,滲出液中の白血球数およびprostaglandin E2(PGE2)様物質量を減少させた.このPPFの活性はIMと同程度以上であった.特異的な抗痛風薬であるcolchicine(5mg/kg,p.o.)はPGE2様物質量に影響を与えないで,滲出液の貯留を抑制し,滲出液中の白血球数を減少させた.さらに,マウス尿酸塩腹膜炎に対しても,PPFは用量に依存して尿酸塩による血管透過性亢進を抑制した.実験的急性痛風性関節炎に対して,PPFはラット(0.25およびlmg/kg,p.o.)およびイヌ(3mg/kg,p.o.)の関節炎にともなう疼痛反応(歩行異常)を軽減させた.このPPFの鎮痛活性はそれぞれIMおよびphenylbutazoneより優れていた.このように,PPFは尿酸塩による炎症反応に対して,他の抗痛風発作薬より優れた作用を示すことから,抗痛風発作薬として臨床での有用性が期待される.
  • 荒谷 秀和, 岩久 義範, 今吉 朋憲, 長岡 ゆかり, 寺澤 道夫, 丸山 裕
    1987 年 89 巻 3 号 p. 139-144
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    pranoprofenの尿酸塩誘発炎症に対する抑制作用機序を明らかにする目的で,白血球を用い尿酸塩結晶で惹起した種々の炎症パラメーターに対する本剤の作用をin vitroで検討した.pranoprofenは尿酸塩によるモルモット好中球からの白血球遊走因子の産生を10-5Mで抑制傾向を示し,10-4Mでは有意に抑制した.モルモット好中球の遊走に対しては,10-4および10-3Mで増強作用を示した,一方,本剤はモルモット好中球からのO2-の産生を10-4M以上で抑制し,そのIC50値は5.0×10-4Mで,indomethacinと同程度であった.また,10-3Mでβ-glucuronidaseの遊離を抑制した.さらに,ラット腹腔内白血球を用い,尿酸塩によるPGE2様物質産生に対する作用を検討したところ,pranoprofenは10-6M以上で用量に依存した抑制を示し,そのIC50値は7.5×10-6Mとその効力はindomethacinの約1/3であった.以上の成績から,pranoprofenの臨床投与量(75mg)での未変化体の最高血中濃度(1.4×10-5M)を考慮すると,主に尿酸塩によるPGE2の生合成を阻害することにより,尿酸塩誘発炎症に対する抑制作用を示すものと推定される.
  • 阿南 惟毅, 山本 吉延, 瀬戸口 通英, 丸山 裕
    1987 年 89 巻 3 号 p. 145-153
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    Y-8894の学習および記憶に及ぼす影響を実験的記憶障害動物ならびに正常動物を用い,ポールクライミング条件回避反応の回避率又は回避反応数を指標に検討し,以下の成績を得た.1)電撃痙攣ショック(ECS)負荷による回避反応の低下に対して,Y-8894(2.5mg/kg)は単回投与により拮抗作用を示した.高用量(10mg/kg,i.p.)では拮抗作用は減弱した.2)CO2負荷による回避反応の消去の促進に対して,Y-8894(5mg/kg,i.p.)反復投与により拮抗作用を示した.3)正常動物の回避反応の学習に対して,Y-8894(2.5mg/kg,i.p.)は反復投与により促進作用を示した.高用量では促進作用は減弱した.4)正常動物の消去に対して,Y-8894(5mg/kg,i.P.および25mg/kg,p.o.)は単独投与により消去を遅延させた.以上,Y-8894は記憶障害動物および正常動物の学習および記憶に対して改善あるいは促進的な効果をもつことが示唆された.
  • 仁保 健, 野津 起人, 石川 浩, 舩戸 秀幸, 山崎 眞利, 高橋 宏昌, 田中 勲, 栢本 美沙江, 駄場崎 達朗, 山崎 文明, 新 ...
    1987 年 89 巻 3 号 p. 155-167
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    sodium 5-hydroxydecanoate(5-HD)のイヌまたはラットの虚血性不整脈に対する作用およびその作用機序について検討した.200mg/kg(p.o.)単回投与あるいは3~100mg/kg(p.o.)の1週間連投の5-HDにより,ラットの冠結紮誘発心室細動は抑制された.3ないし10mg/kg(i.v.)の5-HDは,冠結紮犬の低下した心室細動閾値を上昇させた.10-5~10-3Mの5-HDは摘出ラット灌流心の虚血によるK+流出を抑制し,モルモット単一心筋細胞のATP感受性K+チャネルの開口確率を減少させた・また,10-3Mまでの5-HDは,摘出ラット灌流心の虚血による心筋高エネルギーリン酸化合物含量の低下を改善しなかった.以上のことより,5-HDの虚血性不整脈への作用の少なくとも一部は,虚血心筋からのK+流出抑制作用によると考えられ,このK+流出抑制作用には,5-HDのATP感受性K+チャネルへの直接的な抑制作用が,寄与している可能性があると考えられた.
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