日本薬理学雑誌
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76 巻, 6 号
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  • 野村 靖幸
    1980 年 76 巻 6 号 p. 413-427
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    The ontogenesis of the synaptic function was investigated in the central noradrenaline (NA), dopamine (DA), serotonin (5-HT), acetylcholine (ACh) and GABA nervous systems of developing rats. Monoamines histochemically first appeared on days 12 to 14 in the fetal brain and may exert a trophic action on target neurons as a “differentiation signal”. The presynaptic functions such as the high affinity uptake and depolarization-induced, Ca2+-dependent release of L-[3H]NA, [3H]DA, and [3H]5-HT were observed in synaptosomes and slices from the fetus (18 days of gestation) and brain of newborn rats. Monoamine-stimulated activity of adenylate cyclase and specific binding of ligands in NA(α1, α2, β1, β2), DA, 5-HT, ACh (muscarinic and nicotinic) and GABA receptors indicated dynamic changes through postnatal development. Behavioral findings suggest when neurotransmitter receptors become sensitive and reach functional maturity (NA and DA, already at birth ; 5-HT and muscarinic ACh, 15 ?? 20 days ; GABA, 12 ?? 13 days (mouse)). In addition, differences in behavioral responsiveness to drugs were observed in rats at various developing stages, probably due to the interaction between plural neuronal systems. Finally, the brain undergoing rapid differentiation seems to be most sensitive to hormones and centrally acting drugs. Thus, permanent alteration in central functions may occur when some classes of drugs, dose-dependently, are administrated to animals at the perinatal stage.
  • 坂井 泰, 向後 博司, 相澤 義雄
    1980 年 76 巻 6 号 p. 429-434
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    卵巣摘出後におけるラット子宮内脂質の脂肪酸構成におよぼすestrogenの影響について実験を行なった.estrogen投与後子宮内脂質の脂肪酸は増加した.estrogenはphosphatidylethanolamineにおける脂肪酸レベルに著明に影響を与え,投与後6時間では,パルミチル酸,パルミトレイン酸,オレイン酸,リノール酸が一過性に2倍以上に増加した.投与後48時間では,ステアリン酸およびアラキドン酸が約2倍に増加した.総脂質,phosphatidylcholineにおいて,estrogen投与後48時間で各脂肪酸とも1.7~2.4倍に増加した.これらの事よりestrogenはリン脂質の生成を増加し,phosphatidylethanolamineにおける脂肪酸含量のパターンに著明に影響を与え,子宮細胞の膜コンホメーションの変化をひき起こすのではないかと推察される.
  • ―化学物質誘起異常血色素症におよぼす各種治療剤の影響―
    野村 彰
    1980 年 76 巻 6 号 p. 435-446
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    methemoglobin(MHb)およびsulfhemoglobin(SHb)誘起物質として4-chloroaniline (4-Cl-A)を選び,主としてマウスにおけるMHbおよびSHb血症におよぼすmethylene blue (MB),thionine,ascorbic acid (ASA),sodium thiosulfate (STS),N-(2-mercaptopropionyl)-glycine(MPG)および還元型glutathione(GSH)の影響について検討した.1)MHb血症に対する予防ないし治療効果ならびにSHb血症に対する予防効果:MB i.p.投与は前処置,同時,後処置によりいずれの場合も4-Cl-AのMHb形成を抑制し,予防および治療効果を発現するが,SHb形成を増強した.thionineにも同様の作用が認められた.両剤にはそれ自身にもMHbおよびSHb形成作用が認められた.STSおよびMPGは4-Cl-Aと同時i.p.投与によりMHb形成を抑制するが,遅発性SHb形成には無影響であった.しかしMHb形成の最大が過ぎる120分後投与では,i.p.およびi.v.によりMHbのみならず後発するSHb形成を抑制する予防効果を発現した,GSHは120分後i.v.によってのみMHb形成を抑制し,SHb形成を予防した.ASAはi.p.,i.v.を問わず,MHb形成抑制作用を示さないが,120分後投与により後発するSHb形成に対する防禦効果を示した.MBとASAの臨床用量に対応する用量を120分後併用i.v.投与するとMHbレベルの低下作用とSHb形成予防効果が認められたが,MBの増量はASAのSHb形成予防効果を阻害した.2)SHb血症に対する治療効果:MB,STS,MPG,GSHおよびASAいずれも既成のSHb血症に対する治療効果を認めることができなかった.上記成績から臨床において化学物質により誘起されるMHbおよびSHb血症の治療に使用される薬物の適否について考察を加えた.
  • 洲加本 孝幸, 相川 邦彦, 伊藤 敬三, 能勢 尚志
    1980 年 76 巻 6 号 p. 447-468
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    7-chloro-1-cyclopropylmethyl-1,3-dihydro-5-(2-fluorophenyl)-2H-1,4-benzodiazepin-2-one(KB-509)の中枢薬理作用および一般薬理作用を検討した.KB-509は自発運動を低用量で増加,高用量で減少させ,nitrazepamと類似した作用を有した.抗痙攣作用(抗Pentylenetetrazol,bemegride,strychinine作用)はdiazepamの3~4倍,馴化作用(fighting mice)は約6倍の強さを示した.chlorprothixene催眠増強作用はnitrazepamの1.5倍,diazepamの約3倍であった.一方,抗最大電撃痙攣作用,筋弛緩作用および屈曲反射抑制作用はdiazepamの1~2倍であり,正向反射消失作用はdiazepamの約0.1倍と著しく弱かった.KB-509の脳波作用は質的にdiazepamに類似し,自発脳波の徐波化,音および中脳網様体刺激による覚醒反応の軽度抑制,扁桃核後発射の抑制を示した.この扁桃核後発射抑制作用はdiazepamよりも強く,持続的であった.その他,KB-509は正常体温,呼吸循環器系,胃腸管運動を抑制し,尿排泄量を増加させたが,これらはいずれも高用量で認められるに過ぎなかった.adrenalineによる瞬膜収縮に対して,KB-509は増強作用を示したが,節前刺激による収縮には影響をおよぼさなかった.また,acetylchoHneおよびhistamineの血圧作用には影響を与えず,摘出腸管での諸種収縮薬に対する拮抗作用および摘出子宮自動運動亢進作用も高濃度で非特異的にみられるに過ぎなかった.以上のように,KB-509は強い抗不安作用が期待できるとともに,その作用は持続的であり,安全性の面でも優れた薬物であることが示唆される.
  • 大西 治夫, 伊藤 千尋, 鈴木 和男, 仁保 健, 今泉 義則, 山崎 好雄, 森下 信一, 下良 実, 伊藤 隆太
    1980 年 76 巻 6 号 p. 469-477
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患治療薬5-methyl-7-diethylamino-s-triazolo-(1,5-a)pyrimidine(trapidil,Rocornal®)の各種実験的高脂血症に対する作用を検討した.trapidil投与により,血清高比重リポタンパクコレステロール(HDL-C)の上昇,血清総コレステロール(TC),低比重リポタンパクおよび超低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)およびLDL-Cに対するHDL-Gの比(LDL-C/HDL-c)の減少が多くの病態モデルにおいて認められた.特に,高脂肪食誘発マウス高脂血症および高コレステロール食誘発ウズラ高脂血症におけるHDL-CおよびLDL-C/HDL-Cの変化は統計学的に有意であった.また,ラットにおいて高脂肪乳濁液および6-n-propyl-2-thiouracilによって誘発されたHDL-Cの減少も有意に改善された.さらに,trapidilはハムスター高脂血症においてTC,LDL-CおよびLDL-C/HDL-Gを有意に減少させた.これらのtrapidilの高脂血症改善作用の作用機序として,ウズラにおける実験より,血中lipoprotein lipaseおよびlecithin-cholesterol acyltransferaseの活性上昇が示唆された.以上の結果から,trapidilが虚血性心疾患の病因論的治療薬として有益な作用の一つを有することが示唆される.
  • 酒井 豊, 松井 嘉樹
    1980 年 76 巻 6 号 p. 479-493
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新抗うつ薬,mianserin hydrochloride (Organon)ならびにその比較としてimipramine (IMP),desipramine (DPM),chlorimipramine (CIP)およびamitriptyline (ATP),nortriptyline (NTP)をそれぞれ1群25匹のマウスに3週間連続投与した場合の脳内モノアミン代謝の変動を神経化学的に検討した.1.対照群と有意差の比較において,mianserin 20mg,DPM20mgではnoradrenaline (NE),dopamine (DA)および,serotonin (5HT)量に変動はみられず,IMP50mgとCIP40mgはNA,DA量の変動は示さず,5HT量を減少,ATP30mgはNEのみを増加させたが,DA,5HT量の変動はなかった.NTP20mgはDA,5HT量を増加し,NEは変動がなかった.2.α-metyl-tyrosine 200mg/kg(i.p.)前投与によるカテコールアミンの減少に対して,mianserin,IMP,DMPはNE,DA減少をきらに増強した.NTP,CIPは著しい作用はなかった.ATPはDAの減少を抑制した.3.probenecid 250mg/kg(p.o.)投与1時間後の5-hydroxyindole 酢酸(5-HIAA)の蓄積に対し,mianserin 20mg,NTP20mg,およびIMP25mgは増加,CIP40mg,DPM20mgならびにATP30mgはいずれも有意な変動がみられなかった.以上の成績は,mianserinはNE系,5HT系をともに活性化,IMPはNE系の活性化,低用量で5HT系活性化,高用量で5HTの合成抑制,CIPはNE系に影響なく5HT合成を抑制した.NTPはNE系に影響なく,高用量で5HT系を活性化の傾向を有することを示唆する.4.ウサギの慢性脳波において,physostigmine 0.05mg/kg静脈内注射で誘発される海馬脳波の覚醒反応に対して,IMP,ATP,CIPは抑制作用を示したが,DPM,NTPは影響を及ぼさず,mianserinはむしろ覚醒反応を持続,延長させた.5.ラットの慢性自発性脳波の長時間記録における覚醒~睡眠相の観察で,逆説睡眠時間は,mianserinは30mg/kg以上で,IMPは5mg/kg以上で,用量依存的に減少した.ATPは15mg/kgで減少の傾向を示した.6.覚醒時ならびに徐波時における大脳皮質と海馬の脳波をsignal processorで解析した.power spectrumはmianserinとIMPの間で有意な差は認められなかった.
  • 大西 治夫, 小雀 浩司, 山口 和夫, 佐藤 正巳, 梅原 貞臣, 舩戸 秀幸, 鈴木 泰雄, 伊藤 千尋, 鈴木 和男, 北村 裕, 伊 ...
    1980 年 76 巻 6 号 p. 495-503
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    trapidilを含む各種冠拡張剤のイヌ生体位心臓における逆行性血流量増加作用,摘出したブタの太い冠血管拡張作用,血小板凝集抑制作用,大動脈のプロスタサイクリン産生におよぼす影響ならびにウズラの脂質代謝におよぼす影響について比較検討した.trapidilは逆行性血流量増加作用を有したが,dipyridamole,nifedipine,diltiazemおよびdilazepは作用を有さなかった.trapidilおよびnitroglycerinは,太い冠血管拡張作用が細い冠血管拡張作用に比して強かったが,dipyridamole,diltiazem,dilazepおよびadenosineは細い冠血管拡張作用が強かった.trapidil,dipyridamole,diltiazemおよびaspirinはnifedipineおよびdilazepに比し,モルモット血小板のADPによる二次凝集を強力に抑制した.また,trapidilおよびaspirinはウサギ血小板のアラキドン酸凝集を抑制したが,dipyridamole,diltiazem,nifedipineおよびdilazepには作用がなかった.さらに,trapidilはラット血小板のスロンボキサンA2-プロスタグランディンG2凝集をも抑制したのに対し,dipyridamole,diltiazem,nifedipine,dilazepおよびaspirinには作用がなかった.trapidilおよびdipyridamoleはプロスタサイクリンによる血小板凝集抑制作用を増強したが,diltiazem,nifedipineおよびdilazepは作用を増強しなかった.また,大動脈のプロスタサイクリン産生はtrapidilによりもっとも強力に促進された.trapidilは高脂血症ウズラの血清中HDLコレステロール量を有意に増加させ,血清中トリグリセリドおよびLDLコレステロール/HDLコレステロール比を有意に低下きせたのに対し,dipyridamole,diltiazem,nifedipineおよびdilazepはほとんど影響を与えなかった.
  • 泉 尭, 西村 泰一, 酒井 兼司, 安孫子 保, 服部 裕一, 中谷 晴昭, 菅野 盛夫
    1980 年 76 巻 6 号 p. 505-513
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    β-遮断薬atenololのin vivoにおける心・血管作用の特徴を調べた.その結果,1)atenolol 10μg~3.0mg/kgはreserpine前処置をしたラットの心拍数を増加しなかった.2)pentobarbital麻酔をした開胸犬(以下イヌ)におけるisoproterenolの心拍数(HR)および心収縮力(CF)増加作用に対するatenololの遮断効力はpropranololの遮断効力にほぼ等しかったが,isoproterenol下肢血管定流量灌流圧減少作用に対するatenololの遮断効力はpropranololのそれの約1/12であった.3)atenolol 0.5mg/kgはイヌのHR,CF,大動脈血流量(AF),左心室内最大収縮期圧(LVSP)とその導函数(dp/dt LV max)におよぼすisoproterenolの作用を完全に遮断したが,CaCl2およびouabainの作用を遮断しなかった.4)atenololをイヌに累積的に静注して与えるとHR,CF,LVSP,dp/dt LV maxはatenololの用量に依存して減少した.それらの有意な減少効果を生じた用量のatenolol(1.0mg/kg)を一回イヌに与えると,冠動静脈血酸素濃度較差は有意に変化することなく,冠血流量が37%(有意)減少し,心筋酸素消費量も30%(有意)減少した.さらに,心筋酸化還元電位(ΔEh)の有意の増加が認められた.以上の成績から,atenololは固有の交感神経作用活性のない,心選択性の高い,また非特異的遮断作用のないβ-遮断薬であると考えられた.またatenololの心臓作用として,まずatenololのβ1-遮断効果による心筋の機能抑制と心筋酸素消費量の減少があり,その結果として冠血流量の減少がおきると考えられ,atenololの冠血管収縮作用が心機能の抑制をもたらすのではないと推論された.
  • 井口 弘三
    1980 年 76 巻 6 号 p. 515-523
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    抗高血圧薬として使用されているβ-遮断薬の降圧作用の中枢性機序について検討するため,自然発症高血圧ラットSHRを用い,各種β-遮断薬,propranolol(5mg/kg/day s.c.),pindolol(0.3mg/kg/day s.c.),alprenolol(5mg/kg/day s.c.),bupranolol(5mg/kg/day s.c.)を4群のSHRにそれぞれ7日間連続皮下投与して,脳組織内noradrenaline(NA),dopamine(DA)およびserotonin(5-HT),ならびに心筋組織内NAおよび副腎組織内catecholamine(CA)量を,それぞれ測定した.対照として無処置SHRについても同様に実験を行ない,以下の成績を得た.1)脳組織内NA濃度においてはβ-遮断薬による軽度の増加傾向が窺われた.2)脳組織内DA濃度に対しては,内因性交感神経刺激作用を有するもの(pindolol &alprenolol)では増加傾向がみられ,この作用をもたぬもの(propranolol & bupranolol)では不変ないし減少傾向がみられた.3)脳組織内5-HTおよび心筋組織内NA濃度に及ぼす影響は明らかではなかった.4)β-遮断薬の投与により,副腎内CA濃度の減少傾向が認められた.以上の結果より,β-遮断薬の中枢抑制作用による二次的な末梢の交感神経活動の低下も,β-遮断薬の降圧作用機序に関連するものと推察される.
  • 竹内 久米司, 稲津 教久, 長谷川 昇, 吉田 陽子, 山田 健二, 向後 博司, 相澤 義雄
    1980 年 76 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    aspirin,indomethacin,4-(p-chlorophenyl)-2-phenyl-5-thiazoleacetic acid(CH-800),diclofenac-Na,flurbiprofenの非ステロイド系抗炎症薬を用いて,prostaglandin(PG)の生成と遊離に対する作用をin vivoin vitroで検討した.ウシ精のう由来のPG synthetaseによるPGE2生成阻害効果はflurbiprofen>CH-800>indomethacin>diclofenac-Na>aspirinの順に強かった.carrageenin投与後6時間の炎症滑膜からのPGE遊離に対する抗炎症薬の作用はin vivoin vitro共にCH-800が最も強く,次いでflurbiprofenとindomethacinであった.正常ラットの尿中PGE排泄に対しては抗炎症薬により,いずれも減少し,特にflurbiprofenとCH-800で顕著であった.さらに尿中PGEMUMの排泄は,いずれの薬物でも阻害がみられるが,特にflurbiprofen,CH-800で著明に減少した.一方,PGFMUMの排泄に対しては有意な阻害が観察されなかった.以上の結果から,非ステロイド系抗炎症薬のPG生成に関連した阻害効果は大局的にはPG synthetaseを用いた阻害効力とほぼ平行する結果であるが,しかし,炎症組織でのPGの遊離ならびに正常ラット尿中代謝産物の排泄などの点では若干異なることを認めた.
  • 上岡 利春, 酒井 豊
    1980 年 76 巻 6 号 p. 533-547
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    マウス・ラットを用いて,mianserin(1,2,3,4,10,14b-hexahydro-2-methyl di benzo[c,f]pyrazino[1,2-a]azepine monohydrochloride)の行動薬理学的特性をimipramine(IMP)およびamitriptyline(ATP)と比較検討した.mianserinは,1)reserpineによる体温下降に対する拮抗作用は,IMP,ATPに比べ著しく弱い.また,reserpine,tetrabenazineによる眼瞼下垂にも拮抗を示さない.2)amphetamineによる常同行動を有意に増強しない.IMP,ATPは有意な増強を示した.3)ラットのhaloperidol誘発catalepsyに対する拮抗作用はIMP,ATPと異なり認められない.4)bemegrideやstrychnineの痙攣(マウス)およびapomorphineの催吐作用(イヌ)に対する抑制作用は,IMP,ATP同様にみられない.抗電撃痙攣作用はmianserinのみが欠いた.5)thiopental麻酔の増強作用はIMPより強い.6)傾斜板テストおよび回転棒における筋弛緩作用,協調運動に関しては,ATPは,マウス,ラットともに強い抑制,mianserinは,ラットでは有意な抑制,マウスでは抑制なく,IMPと類似した.7)catalepsyの誘発や正位反射の抑制作用はない.8)脊髄動物の単シナプス反射(MSR)の振巾を減少させず,皮膚神経の条件刺激によるMSR抑制にも無影響,また,対側伏在神経の条件刺激によるMSRの増大にも影響しなかった.9)マウス,ラットの探索行動をmianserinは用量依存的に有意に抑制,IMPは大量で増強,ATPはむしろ抑制傾向を示した.10)長期間隔離したマウスの闘争行動の抑制はIMP,ATPに比べmianserinが強く,電気侵害刺激による闘争行動の抑制においては弱かった.11)嗅球摘出ラットのmuricideをIMPは抑制し,mianserinは有意な抑制がみられなかった.12)ラットのconflict行動およびshuttle-box型条件回避行動に対するmianserinの作用はIMP,ATPとの比較で有意差はなかった.以上の結果から,mianserinの作用は,IMP,ATPの作用パターンと必ずしも同一でなく,三環性抗うつ薬とは異なった作用機作をもつ新抗うつ薬であると考えられた.
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