K
+,prostaglandin(PG)F
2αおよびserotoninによる血管の収縮反応に対する新しいCa
2+流入阻害薬KB-2796 (1-[bis-(4-fluorophenyl)methyl]-4-(2,3,4-trimethoxybenzyl)piperazine dihydro-chloride)の作用を,摘出イヌ脳,冠,腸間膜および腎動脈条片を用いて比較検討した.KB-2796はK
+,PGF
2αおよびserotoninによって惹起される収縮反応を濃度依存性かつ非競合的に抑制したが,この作用はK
+収縮に対してもっとも強かった.また腎動脈のserotonin収縮を除いて,いずれの収縮物質に対しても脳動脈における抑制作用は末梢動脈よりも有意に強かった.腎動脈においてserotoninは収縮を惹起するのに他の動脈よりも200~1200倍高濃度を必要とし,この収縮はK
+収縮を抑制するのと同じ濃度のKB-2796によって抑制された.また栄養液中のNaClをKClで置換することにより強く収縮させた腎動脈にPGF
2αを作用させるとさらに収縮反応が認められたが,同じ条件でserotoninを作用させても収縮反応は認められなかった.これらの事実より,KB-2796が脳動脈において選択的に各種血管収縮物質による収縮反応を強く抑制すること,ならびに腎動脈におけるserotonin収縮は,脳動脈におけるのと同様に電位依存性のCa
2+流入を介した反応であることが示唆される.
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