日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
107 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 佐藤 広康, 佐田 英明, 當瀬 規嗣, 重信 弘毅
    1996 年 107 巻 5 号 p. 213-223
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    Electrical properties of the cardiac muscles drastically change with development. The changes in the current density of ionic currents of cardiomyocytes are inconsistent among species. In cultured embryonic chick ventricular myocytes, the developmental changes in the fast Na+ channel properties (3 to 17-day-old) are reviewed. The sensitivity to TTX, with a KD as high as 2 nM, remains unchanged. The limiting conductance (GNa) increased by 8-10-fold. The activation kinetics such as the steady-state activation (m) and time constant of activation (τm) remain unchanged. The voltage-dependence of inactivation kinetics such as the steady state inactivation (h) and time constant (τh) shift in the hyperpolarizing direction. The window conductance tends to be reduced. On the other hand, the L-type Ca2+ channel is important during the development of rat heart, and also the fe-type current (dihydropyridine-resistant) is important in the fetal stage. In chick embryo cardiomyocytes, the L-type channel exhibits long-lasting opening behavior. The behavior is gradually abolished during development. cAMP-dependent protein kinase enhances the Ca2+ channel current on and after the late fetal/embryonic stage. cGMP-dependent protein kinase markedly inhibits the Ca2+ channel current in the fetal/embryonic stage, compared with adult heart. These changes would play an important role for cardiac functions during development.
  • 豊口 禎子, 仲川 義人
    1996 年 107 巻 5 号 p. 225-235
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症治療薬である塩酸バンコマイシン(VCM)は,グラム陽性菌に効果を有する抗生物質である.臨床においては,MRSAとともに緑膿菌等のグラム陰性菌に感染している混合感染発症患者も多い.また,MRSAに対する抗菌活性増強を目的に,他の抗生物質を併用することも行われている.一方,VCMは有害作用として,重篤な腎障害を有しており,他剤との併用により腎障害の増悪が懸念される.そこで,家兎を用い,臨床において併用する可能性のある抗生物質を併用したときの腎障害への影響とVCMの薬物動態学的相互作用を検討した.家兎にVCM300mg/kg静注時に血清クレアチニン,BUN,組織学的変化等の腎障害がみられたが,イミペネムーシラスタチンナトリウム(IPM-CS),フロモキセフナトリウム(FMOX),ホスホマイシンナトリウム(FOM)併用により,明らかに腎障害が軽減された.また,セフタジジム(CAZ),セブピミゾールナトリウム(CPIZ),セフォペラゾンナトリウム(CPZ)併用時には有意な腎障害抑制作用はみられなかった.VCM体内動態に関しても,VCM単独投与時に比べ,IPM-CS,FMOX,FOM併用時に明らかにVCMクリアランスの増加がみられ,CPIZ併用時には有意な減少がみられた.腎組織中VCM濃度においても,VCM単独投与時に比べ,IPM・CS,FMOX,FOM併用時に有意な減少がみられ,これら併用薬による腎細胞への取り込み抑制が示唆された.
  • 莚井 武, 芝原 利佳, 田村 優, 清水 孝子, 伊藤 善規, 鵜飼 洋司郎, 吉國 義明, 木村 喜代史
    1996 年 107 巻 5 号 p. 237-245
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    TRHの新規誘導体であるmontirelin hydrate(NS-3)の意識障害改善作用について,頭部衝撃による昏睡およびペントバルビタール麻酔に対する作用をマウスを用いてTRHと比較検討した.頭部衝撃によりマウスは正向反射を消失し,昏睡状態に陥ったが,NS-3は正向反射(0.03-0.lmg/kg,i.v.)および自発運動(0.1mg/kg,i.v.)の回復するまでの時間を短縮した.同様の作用はTRHにおいても認められたが,TRHではNS-3の3倍の用量を要した.NS-3(0.1・0.3mg/kg,i.v.)は用量依存的にペントバルビタール麻酔に対する拮抗作用を示した.TRHもペントバルビタール麻酔拮抗作用を示したが,NS-3と比べ30-100倍の用量を要した.NS-3によるペントバルビタール麻酔拮抗作用はドパミンD1受容体拮抗薬のSCH23390により,部分的ではあるが有意に拮抗されたが,スコポラミンあるいはプラゾシンでは拮抗されなかった.しかし,スコポラミンとプラゾシンの併用処置によりNS-3の作用は有意に拮抗された.NS-3は受容体結合実験において,ドパミン,アドレナリンおよびムスカリン受容体への親和性を示さなかった.以上のごとく,頭部衝撃ならびにペントバルビタールによる意識障害に対し,NS-3はTRHよりも強力な改善作用を有することが明らかとなった.NS-3は受容体に直接作用することなく,脳内ドパミン,ノルアドレナリンおよびアセチルコリン神経系を賦活することにより意識障害改善作用を発現するものと考えられた.
  • 二村 隆史, 大橋 良孝, 矢野 和宏, 高橋 有紀子, 芳賀 慶一郎, 福田 武美
    1996 年 107 巻 5 号 p. 247-253
    発行日: 1996年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    Iminodibenzy1系抗精神病薬である塩酸モサプラミンのドパミンD2,D3およびD4受容体に対する親和性を,ヒトの同受容体を発現させた細胞を用いて各種抗精神病薬と比較検討した.ヒト受容体発現細胞から調製したP2画分を用いた場合の[3H]スピペロンの結合は,いずれの受容体に対しても飽和性を示し,スキャッチャード解析から算出された各受容体に対する親和性(解離定数:Kd値)はD2,D3およびD4受容体で,それぞれ0.021nM,0.12nM,0.10nMであった.いずれの受容体に対しても,モサプラミンは,検討した抗精神病薬の中で最も高い親和性を示し,定型抗精神病薬であるハロペリドールに比べてD2Ki値/D3Ki値が高かった.対照薬であるクロザピンはD4受容体に,リスペリドンはD2受容体に,ラクロプライドはD3受容体にそれぞれ最も高い親和性を示した.しかし,クロザピンのD4受容体親和性はモサプラミンの約8分の1,リスペリドンのD2受容体親和性はモサプラミンの約50分の1,ラクロプライドのD3受容体親和性はモサプラミンの約40分の1と,いずれも低かった.以上のことから,モサプラミンは,既存の抗精神病薬に比べて,ヒトD2,D3およびD4受容体のいずれに対しても高い親和性を示し,D2受容体だけでなくD3受容体に対する作用がモサプラミンの抗精神病作用を特徴づけていると考えられる.
feedback
Top