日本薬理学雑誌
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130 巻 , 4 号
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特集:ヘム代謝―新規創薬に向けて―
  • 佐々 茂
    2007 年 130 巻 4 号 p. 248-251
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    ヘムタンパク質から遊離するフリー・ヘムはヘム・オキシゲナーゼによって,鉄イオン,ビリベルジンIXα,COに分解される.この反応はこれまで代謝・分解反応として考えられて来たが,一方この酵素反応の結果(1)酸化的ストレスであるフリー・ヘム濃度が減少する事,(2)鉄イオンはフェリチンの誘導を介して酸化的ストレスを軽減する事,(3)ビリベルジンIXαおよびその還元体であるビリルビンIXαはいずれも重要な抗酸化作用を示す事,(4)COはストレスによる細胞死を抑制する事,などの事実も明らかになった.従ってヘムの代謝産物はいずれも酸化的組織障害に防御的貢献をしている.すなわちヘム・オキシゲナーゼ活性,およびフリー・ヘムによるヘム・オキシゲナーゼ遺伝子の活性化はいずれも生体防御反応において重要な役割を果たしている.フリー・ヘムはさらにいろいろな遺伝子の活性化機構にも関与している事も明らかになり,この章ではフリー・ヘムの遺伝子活性化に及ぼす影響を概説した.ヘムによる遺伝子活性化機構の解明は組織防御を始めとする各種の重要な生体反応の理解に極めて重要であると考えられる.
  • 高橋 徹, 清水 裕子, 井上 一由, 森松 博史, 楳田 佳奈, 大森 恵美子, 赤木 玲子, 森田 潔
    2007 年 130 巻 4 号 p. 252-256
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    昨今の生命科学の進歩は薬理学の研究をより病態に応じた新薬の開発へと向かわせている.しかし,肝不全,腎不全,多臓器不全など,急性臓器不全は高い死亡率を示すにもかかわらず,その治療において決め手となる薬物は未だ開発されていない.これら急性臓器不全の組織障害の病態生理は完全に明らかでないが,好中球の活性化や虚血・再潅流にともなう酸化ストレスによる細胞傷害が大きな役割を果たしている.酸化ストレスはヘムタンパク質からヘムを遊離させる.遊離ヘムは脂溶性の鉄であることから,活性酸素生成を促進して細胞傷害を悪化させる.この侵襲に対抗するために,ヘム分解の律速酵素:Heme Oxygenase-1(HO-1)が細胞内に誘導される.HO-1によるヘム分解反応産物である一酸化炭素,胆汁色素には,抗炎症・抗酸化作用がある.したがって,遊離ヘム介在性酸化ストレスよって誘導されたHO-1は酸化促進剤である遊離ヘムを除去するのみならず,これらの代謝産物の作用を介して細胞保護的に機能する.一方,HO-1の発現抑制やHO活性の阻害は酸化ストレスによる組織障害を悪化させる.この,HO-1の細胞保護作用に着目して,HO-1誘導を酸化ストレスによる組織障害の治療に応用する試みがなされている.本稿では,急性臓器不全モデルにおいて障害臓器に誘導されたHO-1が,遊離ヘム介在性酸化ストレスから組織を保護するのに必須の役割を果たしていることを述べる.また,抗炎症性サイトカイン:インターロイキン11,塩化スズ,グルタミンがそれぞれ,肝臓,腎臓,下部腸管特異的にHO-1を誘導し,これら組織特異的に誘導されたHO-1が標的臓器の保護・回復に重要な役割を果たしていることを示す.HO-1誘導剤の開発は急性臓器不全の新しい治療薬となる可能性を秘めている.
  • 西井(安井) ゆみこ, 赤木 正明
    2007 年 130 巻 4 号 p. 257-261
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    近年花粉症や気管支喘息に代表されるI型アレルギー性炎症の頻度は極めて高い.このI型アレルギー性炎症では,肥満細胞がエフェクター細胞として重要な役割を果たしている.肥満細胞は,IgE受容体を介した抗原抗体反応が引き金となり脱顆粒し,即時相反応を引き起こすだけでなく,脱顆粒と同時に炎症性サイトカインを産生分泌し,他の免疫細胞を局所に浸潤させることにより遅発相反応も引き起こす.また肥満細胞から産生されるサイトカインが,T細胞に作用して,Th1/Th2バランスに影響を与えたり,B細胞に作用して抗体産生を持続させることで,アレルギー反応を遷延化するともいわれている.一方,ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は,種々のストレスによって誘導され,ヘムを分解して一酸化炭素,ビリベルジンおよび鉄を産生することにより,細胞保護作用を示すストレスタンパク質である.我々は,他の免疫細胞と同様に肥満細胞においても,抗原抗体反応によって生じる活性酸素や,LPS刺激によってHO-1が誘導されることを見出した.肥満細胞のモデル細胞であるRBL-2H3細胞にHO-1を遺伝子導入し,HO-1を高発現させ,肥満細胞におけるHO-1の役割について検討したところ,HO-1は,肥満細胞の抗原抗体反応により産生される炎症性メディエーターのうち,アレルギー性炎症を遷延化させる働きのあるTNF-αやIL-3,MIP-1βの発現を抑制することを発見した.この抑制作用はHO-1が転写因子AP-1を特異的に抑制することにより引き起こされることを明らかにした.これらの結果は,HO-1が肥満細胞に発現することによって,アレルギー性炎症の増悪化を防止できる可能性を示唆している.アレルギー性炎症の新規治療薬が望まれている今日において,HO-1が肥満細胞のメディエーター産生抑制作用を持つという結果は,非常に有益な情報であると思われる.
  • 水島 徹
    2007 年 130 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の副作用である胃潰瘍誘発作用が臨床現場で大きな問題となっている.最近我々は,NSAIDsが胃粘膜細胞死を引き起こすことがNSAIDs潰瘍の原因の一つであることを見出し報告した.我々はNSAIDsによりヘムオキシゲナーゼ(HO)-1が誘導されること,およびこの誘導によりNSAIDs依存の細胞死が抑制され,NSAIDs潰瘍の発症が抑制される可能性を考え研究を開始した.我々はモルモット胃粘膜初代培養細胞を用いて,毒性を示さない低濃度の種々のNSAIDsによって,HO-1が誘導されることを見出した.このHO-1誘導はCOX非依存であり,NSAIDsによるp38 MAPKの活性化,およびそれによるNrf2(HO-1の転写因子)の核内移行に依存していた.一方我々は,HO-1阻害剤(SnMP)により,NSAIDsによる胃粘膜細胞死(アポトーシス)が促進されることを見出した.一方in vivoにおいて我々は,インドメタシンにより形成された潰瘍周辺部位でHO-1が誘導されていること,およびアポトーシスが起こっていることを見出した.さらにラットにSnMPを前投与する事により,インドメタシンによるアポトーシス誘導,および胃潰瘍の形成が促進されることを明らかにした.以上の結果は,NSAIDsによって誘導されたHO-1が,アポトーシスを抑制することにより胃潰瘍の抑制に関与していることを示している.  非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)の胃潰瘍副作用が臨床現場で大きな問題になっている.近年胃潰瘍副作用の少ないNSAIDsとして,COX-2選択的NSAIDsが開発されたが,最近これにはそのCOX-2選択性を原因とする新たな副作用(血栓を起こしやすくし心筋梗塞を誘発する)があることが分かり,多くのCOX-2選択的NSAIDsが販売(開発)中止となった.  これまでNSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し,胃粘膜保護因子であるプロスタグランジン(PG)を低下させることにより胃潰瘍を導くと考えられてきた.しかし最近では,NSAIDs潰瘍の発症がPG低下作用のみでは説明できないことが分かってきた.例えばインドメタシンをラットに経口投与する場合,胃潰瘍を発症させるために必要なインドメタシンの濃度は,胃粘膜のPG合成を完全に抑制するのに必要な濃度に比べ,10倍以上も高いことが知られている.このようにNSAIDs潰瘍の発症には,COX阻害以外の別の作用も関与していることが明らかになってきたが,この別の作用が何であるかは不明であった.我々は,NSAIDsが胃粘膜細胞を直接傷害する(胃粘膜細胞死を導く)ことが,この別の作用の実体ではないかと考え,研究を開始した.
  • 赤木 玲子, 井上 里加子
    2007 年 130 巻 4 号 p. 266-269
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    ヘム合成系の代謝異常によりヘム合成中間体の異常蓄積が原因となって発症するポルフィリン症には,遺伝的あるいは後天的原因により起こるものが知られている.ポルフィリン症は,薬物代謝酵素チトクロムP450の誘導により著しく増悪化することが知られており,薬物治療の際は細心の注意を要する.ヘム合成はミトコンドリアと細胞質にまたがる8種類の酵素反応を経て行われ,第二酵素以降の欠損酵素によって合計8種類のポルフィリン症に分類される.ポルフィリン症は通常1酵素欠損型であるが,中には2種類の酵素欠損型のものもあり,原因の多様性が分子レベルで解明されるようになった.ヘム合成系第二酵素δ-aminolevulinate dehydratase(ALAD)の先天性欠損症であるALADポルフィリン症(ADP)は劣性遺伝性の稀な遺伝病であるが,異常遺伝子の保因者は人口の2%に及ぶと推定されており,重金属等の各種環境毒に対する遺伝的ハイリスク群を形成していると考えられ,テーラーメード医療における薬物治療の際,考慮すべき因子である.一方,優性遺伝するタイプのポルフィリン症においては,原因酵素の分子異常が必ずしも発症に結びつかないことが知られており,付加要因の関与が示唆される.本稿では,筆者らが遺伝子解析したADPをはじめとするポルフィリン症の分子異常について総説し,薬物投与をはじめとする発症の引き金となる因子の多様性を紹介し,治療薬物を選択する上での留意点について解説する.
  • 田村 藍, 安 然, 大西 裕子, 石川 智久
    2007 年 130 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    「ポルフィリン」という名称は,古代紫(ポルフィラ)に由来する.古代紫という色は,紫草という多年草の根から染料として創り出された色で,日本の伝統色の中でも特別な意味を持っていた.特に平安時代には賛美され,高い位の象徴であると同時に,気品や風格,艶めかしさといった様々な美を体現していた.21世紀の今,ポルフィリン研究において,温故知新の新しい潮流が起きようとしている.ポルフィリンはヘモグロビン,ミオグロビンのほか,我々の体内細胞におけるチトクロムの補欠分子族ヘムの基本骨格であり,生命維持に不可欠な生体物質である.一方,ABC(ATP-Binding Cassette)遺伝子は,細菌から酵母,植物,哺乳類に至る広い生物種に分布して,多様な生理的役割を担っている.ヒトでは現在までに48種のABCトランスポーターが同定されており,それらはタンパク質の1次構造の特徴に基づいて7つのサブファミリー(AからG)に分類される.これまでの臨床的研究結果から,ヒトABCトランスポーター遺伝子の異常によって様々な疾患が引き起こされることが判明した.例えば,ABCC2(cMOAT/MRP2)の遺伝子変異はビリルビン抱合体の輸送障害を起こしDubin-Johnson症候群を引き起こす.さらに最近の研究によって,ヒトABCトランスポーターのうちABCB6,ABCG2,ABCC1,ABCC2がポルフィリン生合成やヘム代謝に密接に関与していることが明らかになった.ヒトABCトランスポーターの遺伝子多型や変異とポルフィリン症などの疾患との関連が示唆される.この総説では,当該分野での最新の知見を紹介しつつ,ポルフィリン生合成やヘム代謝におけるヒトABCトランスポーターの役割を議論する.
総説
  • 唐木 英明
    2007 年 130 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    知識人の趣味であった科学が,19世紀以後,社会の問題解決という目的を持つようになり,研究者の数が増えて科学者集団が生まれ,集団内の成功が社会における成功につながった.これは必然的に科学の不正につながり,その社会的影響が無視できなくなった.これに加えて,国立大学の法人化と産学連携の推進により,これまでは主に企業研究者の問題であった利益相反も多くの研究者の問題になりつつある.不正の発見はピアレビューと追試による検証で行われるが,ピアレビューは性善説に準拠するために,意図的な不正を見抜く力はない.また検証はその結果が出るまでには長い時間がかかり,その間に他の研究者や社会が損失を被ることがある.内部告発も有効ではあるが,慎重な取り扱いが必要である.科学の不正は,一般社会における不正と同じく,いつでも起こりうる.不正を防止するためには科学者集団が科学の品質を保証するシステムを構築するとともに,研究者が功利主義ではなく義務論に基づいて行動し,一般社会に通用する透明性と説明責任を果たすことが何より重要であり,そのために一般道徳に加えて科学者倫理の教育を強化することが必要である.
実験技術
  • 笠井 淳司, 新谷 紀人
    2007 年 130 巻 4 号 p. 281-285
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    ヒトゲノム解読の完了や科学技術の進歩により,生体内において様々な機能未知分子が同定されるようになってきた.これら分子の生理・病態的役割の解明において,分子に対する特異的作用薬(作動薬・拮抗薬)がない場合,当該分子あるいはその機能発現に関わる分子群の遺伝子改変動物,特に遺伝子改変マウスの表現型解析からのアプローチが有用とされている.本研究手法は,マウスの表現型異常の原因を遺伝子の改変に帰することができることから,異常が認められた表現型と遺伝子との直接的因果関連を実証できるだけでなく,予想外の表現型の同定によって,当該遺伝子の新規機能を導き出せる可能性を秘めている.しかし,従来の表現型解析では,主に目的とする表現型のみに注目した研究がなされ,他の表現型が無視される傾向にあったことや,表現型解析を行う場合には多くの実験装置や熟練した技術が必要であることなど,いくつかの問題点があった.これらを考慮し,簡易かつ迅速に遺伝子改変マウスの表現型を抽出し,網羅的に解析する方法として考案されたのがSHIRPA法である.本法は,三段階のスクリーニング系からなり,特に一次スクリーニングは遺伝子改変マウスの行動学的表現型を迅速に評価できる方法として有用である.本稿では,神経ペプチドPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)の遺伝子欠損マウス(PACAP-KO)における解析結果を例に,SHIRPA一次スクリーニング法の利用の実際を紹介する.
治療薬シリーズ(19)抗細菌薬
  • 満山 順一
    2007 年 130 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    キノロン系抗菌薬(以下,キノロン)は各科領域における感染症治療薬として不可欠な薬剤である.ノルフロキサシン(NFLX)以降に登場したいわゆるニューキノロンは,それまでのナリジクス酸やピペミド酸などのオールドキノロンに比べ,抗菌スペクトル,体内動態や代謝安定性が大幅に改善し,適応菌種および適応症が飛躍的に拡大した.当初,経口剤だけであった剤型は,その後,注射薬,点眼・点耳薬,さらには皮膚外用薬へと拡大している.NFLX以外の薬剤も小児科領域への適応拡大が勘案されており,現在も多くの化合物が前臨床ならびに臨床試験のステージにある.世界的なキノロンの使用頻度の増加と共にキノロン耐性菌も増加し,臨床的に大きな問題となっているが,最近はPharmacokinetics/Pharmacodynamics(PK/PD)による解析が進み,有効性だけでなく耐性菌の抑制も議論されるようになってきている.
  • 明石 敏
    2007 年 130 巻 4 号 p. 294-298
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    マクロライド系抗菌薬は,グラム陽性菌および非定型病原体に対する抗菌力が強く,呼吸器疾患の治療薬として汎用されてきた.我が国では,14員環,15員環および16員環マクロライド系およびケトライド系抗菌薬が上市している.エリスロマイシンの欠点を克服するための創薬研究から,ニューマクロライドと呼ばれるマクロライド系抗菌薬のロキシスロマイシン,クラリスロマイシンおよびアジスロマイシンが半合成された.その後,耐性肺炎球菌に対する抗菌活性が増強された,ケトライド系抗菌薬のテリスロマイシンが半合成された.本稿では主として,14,15員環マクロライド系およびケトライド系を中心とした抗菌薬の創薬・開発研究の歴史ならびに抗菌作用の特徴を概説した.
創薬シリーズ(3)その1:化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
  • 山本 恵司
    2007 年 130 巻 4 号 p. 299-303
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    医薬品の有害作用は非臨床においては主として動物を用いる毒性試験によって評価されるが,特に急性の薬理作用に基づく生体の機能変化は,通常の毒性試験では明らかとはならない場合がある.安全性薬理試験の目的は,ヒトの安全性に関連のあると思われる被験物質の望ましくない薬力学的特性を特定し,その用量(濃度)反応関係を特徴づけること,ならびに毒性試験や臨床試験で認められた被験物質の有害な薬力学的作用の機序等を検討することである.中でも,ヒトに初めて投与される前に,心血管系,呼吸器系および中枢神経系に対する薬物の有害な作用を非臨床で評価し,臨床試験を開始するにあたって必要な急性の薬理作用に関する情報を提供することは極めて重要である.
新薬紹介総説
  • 内田 真嗣, 東 由明, 谷口 忠明, 有薗 宏教, 清水 隆史, 岡庭 雅彦, 中村 圭介, 太田 知裕
    2007 年 130 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    アレンドロン酸ナトリウム水和物(以下,アレンドロネート)は,窒素含有ビスホスホネート系化合物であり,強力な骨吸収抑制作用を持つ骨粗鬆症治療薬である.アレンドロネートは,海外において1993年にイタリアで承認されたのをはじめ,2006年1月までに95ヵ国以上で許認可を受けている.本邦においても骨粗鬆症に対するアレンドロネート5 mg1日1回投与製剤の有効性および安全性が確認され,2001年8月よりフォサマック錠5(万有製薬),ボナロン錠5 mg(帝人,現帝人ファーマ)の販売名で販売されている.また,アレンドロネートの週1回投与製剤は,海外においてその有効性・安全性が証明され80ヵ国以上で承認されている.本邦においても,腰椎骨密度を評価項目として第III相二重盲検比較試験を実施し,アレンドロネート35 mg週1回投与製剤は,アレンドロネート5 mg1日1回投与製剤と同等の有効性および同様の安全性を有することが示され,2006年7月に承認された.体内に吸収されたアレンドロネートは,骨吸収部位に特異的に分布し,数週間にわたり持続的に薬理作用を発揮し,その後効果の減弱とともに代謝されず徐々に排泄されるというユニークな体内動態を示す.このような特性から,1日1回投与量の7倍量に相当するアレンドロネートを週1回投与しても同等の骨量増加効果が得られると考えられた.また,内服のビスホスホネート系薬剤に共通する食道粘膜刺激に基づく障害は,投与間隔を空けることにより軽減する可能性が示唆される成績も報告され,週1回の投与法は安全性において有利であるとも考えられた.アレンドロネート等のビスホスホネート系薬剤は,食事による吸収阻害,ならびに食道への逆流による粘膜刺激を避けるため,朝起床時,空腹時に約180 mLの水とともに服用し,その後少なくとも30分は飲食および他の薬剤の服用を避け,また上体を起こした状態を維持しなければならない.そのため,このような服用方法に不便さを感じ,更に治療継続が困難になる患者も少なくない.骨粗鬆症のような慢性疾患の薬物療法において,服薬の利便性は,服薬コンプライアンスを高める上で重要である.したがって,アレンドロネート週1回の用法の登場は,患者にとって服薬の利便性に繋がると同時に患者のライフスタイルに合わせた服薬方法の選択肢が増えることになり,服薬コンプライアンスの向上に寄与するものと期待される.
  • 新井 裕幸, 南 順子
    2007 年 130 巻 4 号 p. 313-319
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    ロピニロール塩酸塩(以下,ロピニロール)は非麦角系ドパミン受容体アゴニストであり,D2受容体ファミリー(D2,D3,D4)に高い選択性を示す.ロピニロールはマーモセットの1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)誘発運動障害に対して改善作用を示し,その作用は反復投与により減弱しなかった.また,中脳腹側被蓋野を破壊したサルの振戦を速やかに抑制し,抗パーキンソン病作用を有することが示された.ロピニロールはin vitroおよびin vivoの両実験系で神経保護作用を有することが示唆され,種々の動物試験において抗不安作用および抗うつ作用を有することも報告されている.UPDRS(Unified Parkinson's Disease Rating Scale)PartII(日常生活動作;ADL)およびPartIII(運動能力検査)を用いて評価された臨床試験において,早期および進行期のパーキンソン病患者に対する有用性が示され,早期パーキンソン病患者において,ロピニロールで治療を開始することにより,レボドパで治療を開始した場合に比べ,ジスキネジアの発現を遅延および減少させ,さらにロピニロール群はレボドパ群と同等のADL改善効果を5年間維持することが示されている.さらに進行期パーキンソン病患者においては,国内外の臨床試験でoff時間の短縮効果が認められている.以上より,ロピニロールは有用な新規抗パーキンソン病薬となり得るものと考えられる.
  • 野村 俊治, 新井 勉, 竹内 聡士, 桝井 章憲, 若松 昭秀, 原田 寧
    2007 年 130 巻 4 号 p. 321-329
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    レミフェンタニルは,バランス麻酔用の全身麻酔薬に求められる迅速な鎮痛作用の発現ならびに消失を実現するため,非特異的エステラーゼによる代謝を受け易い構造を有するオピオイドとして英国Glaxo社(現英国GlaxoSmithKline社)により合成され,本邦では,その塩酸塩がアルチバィとして2006年12月に承認された.レミフェンタニルのμ-オピオイド受容体に対する親和性は,δ-またはκ-オピオイド受容体のそれぞれ約25または2300倍であった.摘出モルモット回腸の経壁電気刺激誘発収縮に対するレミフェンタニルの抑制作用は,ナロキソンにより競合的に拮抗されたが,κ-またはδ-オピオイド受容体選択的拮抗薬で影響を受けなかった.レミフェンタニルの3 μg/kg以上をラットに単回静脈内投与すると,投与直後から鎮痛作用(tail-flick法)が発現し,30 μg/kg以上で全例に最大潜時が認められた.レミフェンタニルによる最大潜時持続時間(全例が最大潜時を示している時間)および作用持続時間(潜時が延長してから投与前値に戻るまでの時間)は用量依存的に延長したが,最大潜時に達した後の作用持続時間はフェンタニルと比較して明らかに短く,作用消失が早かった.レミフェンタニルを持続静脈内投与中は最大潜時を維持し,投与終了後の鎮痛作用の持続時間は数分間であり,フェンタニルと比較して作用消失が極めて早かった.鎮痛作用には蓄積性が認められず,回復が迅速であることは反復投与後にも確認されている.ウサギの侵害刺激による循環動態変動に対する,レミフェンタニルと静脈麻酔薬プロポフォールまたは吸入麻酔薬セボフルランとの併用による抑制作用は少なくとも相加的であった.本邦で実施した臨床試験のうち,プロポフォールの併用(4.5 mg/kg/時)による全静脈麻酔法を用いる手術患者を対象に実施した無作為化平行用量反応試験では,低用量群(1.0 μg/kg単回静脈内投与+0.5 μg/kg/分,挿管5分後より0.25 μg/kg/分)および高用量群(1.0 μg/kg単回静脈内投与+1.0 μg/kg/分,挿管5分後より0.5 μg/kg/分)の何れにおいても約80%以上の症例で気管挿管時および皮膚切開時の外科的侵襲による反応がみられなかった.また,気管挿管後5分以内および皮膚切開時の収縮期血圧ならびに心拍数は安定しており,麻酔からの覚醒は速やかであった.安全性解析対象の67.9%に副作用が認められ,主なものは血圧低下34例(40.5%),悪心19例(22.6%),徐脈17例(20.2%),嘔吐10例(11.9%)であった.また,セボフルランを併用(呼気終末濃度約1.0%)した全身麻酔下での手術患者を対象に実施した一般臨床試験では,麻酔維持期には約99%の症例で皮膚切開時の刺激に対する反応がみられず,循環動態は安定しており,麻酔終了後には速やかな覚醒が得られ,遅発性の呼吸抑制も認められなかった.以上より,レミフェンタニルは,選択的なμ-オピオイド受容体作動薬であり,鎮痛モデルにおいて速やかに強力な鎮痛作用を発現するが,その作用発現時間が極めて短く蓄積性が低いことが示された.これらの特徴は,他の麻酔薬との併用臨床試験において,手術中の侵襲刺激に対する十分な抑制と迅速な回復などにより確認されており,バランス麻酔においてレミフェンタニルを併用することは有用であることが示された.
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