日本薬理学雑誌
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70 巻, 3 号
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  • 西尾 晃, 川崎 浩之進, 加納 晴三郎
    1974 年 70 巻 3 号 p. 315-323
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1)E.coliより抽出したLPSは,皮内投与するとき家兎の皮膚組―織に充血性反応をひき起した.この反応は色素を併用すると著明になり,LPSによる末梢血管からの色素漏出反応は0.1μgから認められ,permeability activityと投与量(0.1~10μg)との間に作用-用量関係が成立した.2)LPS皮内投与後の皮膚組織では細静脈血管内壁への好中球の附着と血管外への遊走が認められ,この経過は色素漏出反応の時間的経過とほぼ一致した.3)流血白血球数をnitromineで無処置時の半数以下に減少させた家兎では,LPSによる色素漏出反応は抑制された.4)Reserpine前処置家兎でのLPSによる色素漏出反応は,前処置5分および30分後では増強され,前処置2時間,4時間および24時間後では反応発現時間が遅延した.5)抗-histamineおよび抗-serotonin作用を有するcyproheptidine前処置家兎では,LPSによる色素漏出反応は初期において軽度に抑制された.6)LPSを0.1N-HCl溶液中で100°Cで60分間処理すると,色素漏出反応は1/10以下に減弱した.7)少量のCaイオンをLPSに添加すると(0.001および0.01μmoleCa+2/μgLPS),LPSによる色素漏出反応は抑制された,8)少量のEDTAをLPSに添加すると(0.01μmole EDTA/μg LPS),LPSによる色素漏出反応は増強された.
  • 松田 弘幸, 河場 享子, 山本 幸生, 小川 俊太郎
    1974 年 70 巻 3 号 p. 325-339
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    家兎に惹起させた実験的高cholestero1血症,fatty liverおよびatherosclerosisにおよぼすecdysteroneの影響を検討した.白色雄性家兎を4群に分け,おのおのに0,0.5,5,および20mg ecdysteroneを含む1%cholesterol飼料100g/羽/日を与え,12週間飼育した,0,2,4,6,8,10,および12週目の各時点の血清total lipid,cholesterol(total,free),triglyceride,phospholipidおよびfree fatty acid levelを測定した.また屠殺時の肝臓についてはtotal lipid,cholesterol(total,free),triglyceride,phospholipid,free fatty acid level,および肝重量を測定し,あわせてfatty liver,およびatherosclerosisの程度を観察し,次のごとき結果を得た.1)高cholesterol食投与による血清totalおよびfree cholesterol levelの増加はecdysterone 5,20mg/羽/日,10,12週間の経口投与によって有意に抑制された.しかしtotal lipid,triglyceride,phospholipidおよびfree fatty acid levelの増加の抑制は認められなかった.2)高cholesterol食投与による肝total lipid,total cholesterolおよびtriglyceride levelの増加はecdysterone20mg/羽/日の12週間経口投与で有意に抑制された.3)病理学的所見では動脈硬化症や肝肥大は改善されなかったが,肝の脂肪沈着は5,20mg/羽/日ecdysteroneの12週間経口投与で部分的な改善がみられた例もあった.
  • 福田 英臣, 工藤 佳久, 小野 秀樹, 小久保 実
    1974 年 70 巻 3 号 p. 341-358
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1,2-propanediol-3-(p-chlorophenoxy)-1-carbamate(chlorphenesin carbamate,以下CCと略記)の運動系に対する作用を数種の動物を用いて調べた.CCはマウスの握力を低下させ,角膜および耳介反射を消失させた.picrotoxinおよびpentylenetetrazol誘発痙攣および電撃痙攣に対するCCの抑制作用の持続は,mephenesinに比して長かった.CCはstrychnine誘発痙攣に対して抑制作用を示さなかったが,mephenesinは著明な抑制作用を示した.CCはmephenesinと同様にoxotremorineよる振戦を抑制した,CCはラット,ヒヨコおよびカエルの脊髄機能を抑制した.そしてその作用持続時間はmephenesinより長かった.ラットにおける脊髄反射電位に対し,CCは単シナプスおよび多シナプス反射をともに抑制した.上丘-下丘間切断による除脳固縮ラットおよび貧血性除脳固縮ラットにおいてCCは著明な抑制作用を示した.この作用はmephenesinでも見られた.神経筋接合部に対して,CCは高用量を適用しなければ筋の単収縮にも不応期にも作用しなかった.さらにCCはラットとカエルの筋紡錘発射の頻度を減少させた.CCのもつこの作用はその筋弛緩作用に何らかの影響を与えているものと考えられる.以上の結果より,CCはmephenesinより持続時間が長く,質的にもmephenesinとは幾分異った性質を有している中枢性筋弛緩薬であると結論する.
  • 持田 研秀, 小川 義之, 加納 晴三郎
    1974 年 70 巻 3 号 p. 359-363
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    家兎の大槽内にpyrogenを直接注入する方法によって,pyrogenの分子サイズと発熱活性の相関性を検討し,つぎのような結果を得た.1)Membrane filterで分画した一定の分子サイズのpyrogen(M.W.50,000~100,000)が最も強い発熱活性を示した.2)この分子サイズのpyrogenと脳脊髄液中に出現する発熱性因子の発熱活性はよく対応した.3)静注のときと同様,DOCはpyrogenは対して,0.25%以上で不活化作用を示した.4)DOCにより不活化されたpyrogenは水による希釈あるいは透析により発熱活性が回復した.これらの事実は,発熱家兎のCSFの発熱性因子の一つが,末梢血流中に投与されたpyrogenであろうと示唆される.
  • 櫛来 和司, 川越 哲美, 古川 達雄
    1974 年 70 巻 3 号 p. 365-375
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Ephedrine反復投与後のイヌ(全投与量,4~45mg/kg)およびウサギ(全投与量,50~100mg/kg)では,C6(0.5~3mg/kg),TEA(5mg,/kg)静脈内投与による血圧下降作用は減弱ないし消失し,C6(0.5mg/kg)のイヌ下肢血管緊張下降作用も消失した.またtyramine反復投与(全投与量,5~75mg/kg)後のイヌにおいても,C6(0.5mg/kg)の降圧作用は減弱ないし消失した.Nicotine(0.1~1mg/kg),DMPP(0.01~0.1mg/kg),TMA(0.1~1mg/kg)投与による循環器作用は,ephedrine反復投与後のイヌ(全投与量,35mg/kg)およびウサギ(全投与量,80mg/kg)において,初期の一過性の拍数減少・血圧下降は減弱し,続く著明な昇圧は減弱するが持続は延長し,その後の持続性血圧下降は消失した.イヌにおける頚動脈洞反射および大内臓神経刺激による昇圧作用は,ephedrine反復投与(全投与量,35mg/kg)により減弱され,syrosingopine(1mg/kg)投与後は頚動脈洞反射効果は抑制され,大内臓神経刺激効果は有意ではないが抑制された.星状神経節前および節後神経刺激効果は,ephedrine反復投与(35mg/kg)またはsyrosingopine(0.05mg/kg)により・それぞれ抑制され,その抑制度はいずれの薬物でも節前神経刺激効果が節後神経よりも著明であった.下腸管膜神経の刺激効果はephedrine反復投与(35mg/kg)またはsyrosingopine(0.1mg/kg)により,節前,節後神経刺激効果ともに抑制され,しかも節前神経のものは有意とはならなかった.これらの結果から,CA代謝に作用するephedrine反復投与あるいはsyrosinogpine投与により,節機能変化が起こるものと考えられる.
  • 古川 達雄, 黒田 正宏
    1974 年 70 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    イヌを用い,dopamineの血圧作用におよぼすephedrine,tyramineおよびnorepinephrineの影響を検討した.1)Ephedrine1mg/kgあるいはtyramine0.5mg/kgを1回投与後,作用が消失しない間にdopamineの5,30°Cg/kgを投与すると,血圧下降作用は消失し,上昇作用は増強した.またephedrineあるいはtyramine10°Cg/kg/minを連続注入しながらdopamineを投与しても,その血圧下降作用は減弱し,上昇作用は増強した.2)Dopamine100°Cg/kgまたは200°Cg/kgを1回投与後,作用が消失しない間に,ephedrineあるいはtyramineの40°Cg/kgを投与すると,血圧上昇作用は著明に増強された.またdopamine10°Cg/kg/minを連続注入しながらephedrineあるいはtyramineを投与しても,血圧上昇作用は増強された.3)Norepinephrine3°Cg/kg/minを約30分間連続注入後さらに注入を持続しながら,dopamineを投与すると,dopamineの血圧下降作用は消失し,上昇作用は著しく増強された.以上のようにdopamine,ephedrine,tyramineの血圧上昇作用はお互に協力し,その主な機構は内因性catecholamineの同じ貯蔵プールに作用し,その放出促進を起すためと考えられる.
  • 岳中 典男, 石原 高文, 丸山 洋一, 舛本 省三, 井上 久男, 奥村 誠, 本間 久
    1974 年 70 巻 3 号 p. 385-397
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しいアドレナリン性βレセプター遮断薬2-acetyl-7-(2-hydroxy-3-isopropylamino)propoxybenzofuran hydrochloride(BFE-60)の心血管系に対する作用をモルモット,イヌおよびラットを用いて検討した.摘出心房と気管標本におけるBFE-60のisoproterenolに対する拮抗作用はpropranololに比較して,それぞれ2倍および6.5倍の効力を呈し,麻酔犬の血圧および心拍数では,それぞれ5倍および21倍の効力を示した.isoproterenolと交感神経刺激による反応をいずれも抑制した.reserpine前処理ラットでBFE-60の1~1,000μg/kgは心拍数増加をおこさなかった.BFE-60を冠状動脈と大腿動脈内に投与した場合の血流量と血管抵抗には,大量を用いた場合を除けば著変は認められなかった.麻酔犬において,BFE-60は10μg/kgで心拍数の減少をきたし,駆出時間は30μg/kgで延長し,張力時間係数は100μg/kgで減少させた.左心内圧とそのdp/dtは,それぞれ3μg/kgおよび1mg/kgで低下をきたし,Vmaxは100μg/kgで減少した.以上のような変化はいずれも有意であった.心筋酸素消費量はBFE-60の投与により抑制されたが,酸化還元電位(ΔEh)は著変を示さず,isoproterenol(0,3μg/kg)による心筋酸素消費量,心拍数の増加およびΔEhの低下はBFE-60の50ug/kg投与により完全に抑制された.以上の成績から,BFE-60はpropranololよりも強力なβ-レセプター遮断作用を有し,固有活性を示さず,臓器選択性のない薬物であると結論される.
  • 小澤 光, 相原 弘和, 笹島 道忠, 田中 一郎
    1974 年 70 巻 3 号 p. 399-408
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    摘出ラット左心房標本におけるdopamineの効果をreserpine,cocaine,6-hydroxy-dopamine,LiClの処理下で,norepinephrine,tyramineの効果と比較検討した.1)Reserpine処理下ではnorepinephrineの効果は変化せず,tyramine,dopamineの効果は抑制された.2)Reserpine+cocaine処理下ではnorepinephrine,dopanlineに対する心房の閾値はさがり有意に増強された.3)6-hydroxydopamine処理ではnorepinephrineの効果は有意に増強され,tyramineの効果は抑制されたが,dopamineの効果は変化しなかった.4)LiClの処理下ではnorepinephrine,tyramine,dopamineの効果は同様に抑制された.以上の結果より,dopamineのラット左心房に対する作用はいわゆる“mixedtype”によるものと考えられ,これに対するLiClの効果はnorepinephrine,tyramineに対する結果と差はないことから後膜側の抑制が主であると考えられる.
  • 梶本 礼義, 谷口 隆之, 村松 郁延, 大城 進, 戸田 昇, 藤原 元始
    1974 年 70 巻 3 号 p. 409-423
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    各種動物より摘出した腹部大静脈,大腿静脈,直腸静脈,門脈および大腿動脈のラセン状条片標本を用いて,静脈疾患治療薬glucofuranoside(以下GF)の作用,および同薬物と血管作動薬ないしイオンとの相互作用を検討した.GF(2×10-7~2×10-4M)処置は,ウサギ,イヌおよびミニブタ静脈条片の緊張度を変化しないか,これを低下した.サル静脈では4例中1例にGF投与後収縮を認めたが,残り3例では緊張度の変化を認めなかった.GF2×10-5M以上の用量前処置は,用量に応じてserotonin,noradrenaline,histamine,angiotensin,bradykinin,K+およびBa++の用量-収縮作用曲線を右下方に移動した.中でも,K+およびBa++収縮を著明に抑制した.イヌではGFのこれら収縮薬に対する抑制作用は,動脈より静脈に強く認められたが,ウサギではnoradrenalineおよびserotonin収縮抑制においてのみ同様の動静脈間の差異を認めた.摘出ウサギ門脈条片の経壁刺激による収縮は,GF2×10-5M以上の用量投与によって抑制された.K+で脱分極された門脈条片のCa++収縮もまたGFによって抑制された.phenylbutazoneの同抑制作用はGFに比べ明らかに軽度であった.GFは主として血管収縮薬による細胞内へのCa++流入を阻止することによってこれら薬物の作用に拮抗するようである.しかしこの性質は,抗炎症作用とは無関係と思われた.
  • 荘司 行伸, 河島 勝良, 清水 当尚
    1974 年 70 巻 3 号 p. 425-437
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    実験的胃および十二指腸潰蕩の発生または治癒過程におよぼすdehydrocorydaline chloride(DHC)の影響を検討し,次の結果を得た.1)ラットの幽門結紮潰瘍およびストレス潰瘍の発生はDHCの皮下あるいは経口投与により抑制された.またラットの胃液分泌に対して,DHCの皮下,十二指腸内あるいは経口投与は分泌量および酸排出量を減少した.2)モルモットのhistamine投与による十二指腸潰瘍の発生はDHCの経口投与により抑制されたが,皮下投与では抑制されなかった.3)ラットのreserpine投与による胃潰瘍の発生はDHCの経口投与により抑制されたが,皮下投与では抑制されなかった.4)ラットにおける酢酸投与による胃潰瘍の治癒過程は,DHCの経口投与により促進されたが,皮下投与では影響されなかった.以上の結果より,DHCの実験的消化器潰瘍に対する作用の特性およびその機作,ならびに抗潰瘍剤としての有用性につき考察を加えた.
  • 村居 真琴, 荒原 唯守, 島本 正宏, 金 慶培, 庄 貞行
    1974 年 70 巻 3 号 p. 439-446
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    家兎肝中に存在するcholinesterase(ChE)を猫のそれを対照として基質特異性の面から検討した結果,家兎肝中には猫の場合と相違してacetyl-β-methylcholine(MeCh)を著明に分解するChEが存在することを認めた,その酵素化学的性格を脳中のそれと比較検討し,以下の結果を得た,すなわち,家兎肝中にはMeChを著明に分解するChEが存在する.このChEは細胞内分画においてはAChを分解するChEと同一の分画に分布している.すなわち,核およびmitochondria分画にその大部分が存在し,可溶性分画にはほとんど存在しない.しかし,benzoylcholine(BzCh)を分解するChEはその過半が可溶性分画に存在している.家兎肝および脳mitochondria中のChEに対するacetylcholine(ACh)またはMeChを基質とした際のpS曲線に相違は認められない.また,これらのChEに対し,MeChを基質とした際のpropyleneglycol,sumithion,eserine等の阻害作用に相違は認められない.またMeChを基質とした際のKm値は両者とも4.5×10-3Mである.これらのChEにおよぼすNaCl,MgCl2等の塩による影響を検討した結果,AChを基質とした場合はNaClおよびMgCl2により,これらのChE活性はともに賦活される.MeChを基質とした場合は,NaClでは肝の場合ほとんど活性に変化は受けないが,脳の場合は阻害を受ける.MgCl2は両者をともに阻害する.以上の結果から家兎肝中にはpseudo-ChEの他に,他の動物の場合と相違してMeChを分解するChEが存在するが,これは脳中に存在するtrue-ChEとは性格の異なる酵素である.
  • 柳浦 才三, 細川 友和, 西村 友男
    1974 年 70 巻 3 号 p. 447-456
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    気道分泌物の分泌状態の測定は,今日なお満足すべき方法がなく,この分野の研究遅延の主因をなしていると考zる.しかし,気道分泌物についての検索は咳噺や喘息との関連からも,気道の薬理学的研究において重要である、今回,著老らは,われわれの考案した鎮咳効果測定用刺入電極に改良を加え,実験動物の気管内に設置し,これにより電気抵抗値(ER)の変動から気道分泌物の分泌状態を推測する方法を考案し,2~3自律神経薬を用いて,この方法の検討を試みた.本法によれば,ERの減少は分泌の促進,ERの増加は分泌の抑制を意味する.pentobarbital-Na30~35mg/kg(i.v.)麻酔下のイヌを用いて測定すると,pilocarpine0.05,0.5mg/kg(i.v.),acetylcholine50μg/kg(i.v.)適用でERが減少し,atropine1mg/kg(i.v.)適用でERは増加した.pilocarpine0.5mg/kgによるERの減少は,atropine1mg/kgの前処置により抑制された.以上のことから本法により気道分泌物の測定が可能であると考える.さらに,adrenaline5μg/kg(i.v.)適用では,ERがわずかに増加し,noradrenaline5μg/kg(i.v.)適用では影響がなかった.isoprenaiine5μg/kg(i.v.)適用ではERが増加し,15分後に最大となり以後,徐々に減少した.isoprenalineによるERの増加は,tolazoline5mg/kg(i.v.)前処置では影響されず,propranolol1mg/kg(i.v.)前処置で抑制された.一方,唾液分泌と気道分泌との関連性を検索したところ,pilocarpine0.05,0.5mg/kg(i.v.)適用による唾液分泌量の変化とERの変化は,異ったパターンを示した.以上のことから,本法は気道分泌物の細かな分泌変化を短時間で測定できる.実験動物に損傷を与えることなく同一動物を繰返し使用できる.adrenaline,isoprenalineは分泌を抑制するが,noradrenalineは影響を与えない。さらに,唾液分泌量の変化からERの変化の推測は困難であることが結論づけられた.
  • 只野 武
    1974 年 70 巻 3 号 p. 457-464
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Isolationによる攻撃性マウスを集団化した場合の自発運動量,情動行動,脳内monoamineおよびpolyamineの変動について検討を加えた結果,次のような実験成績が得られた.1)Isolationによる攻撃性マウスを集団に戻したマウス(grouped mice)の自発運動量を光束法で検討した結果,正常群との差を認めることは出来なかった.しかし,grouped miceのopenfield test法でとらえた自発運動量は集団化14日目に正常群と比較して有意に増加していることが認められた.2)3~6週間のisolationによりattackingおよびbitingが1回以上認められるaggressive miceを集団化すると,grouped miceのattacking出現率は集団化3日目で70%,7日目で40%,14日目で20%と集団化日数の経過と共にattackingの消失が認められた.3)grouped miceのうちで集団化によってattackingが消失したマウスのspermidine(SPD)量は集団化3日目以後減少する傾向が認められ,7日目および14日目にはaggressive miceと比較して有意に減少することが認められた.しかし,monoamineおよびspermine(SPM)の変動は認められなかった.4)正常マウスおよびisolationによって攻撃性が出現しなかったマウスのSPM/SPDの比はそれぞれ1.16±0.07,1.20±0.04であるのに対し,isolationによって攻撃性行動の出現するマウスの比は0.84±0.04と有意に減少することが認められ,LiCl(12.5~50mg/kg)10日間連続処理およびaggressive miceを集団化し攻撃性行動が消失したマウスの比はそれぞれ1.18±0.03,1.15±0.04と正常マウスおよびnon-aggressive miceのそれまで回復することが認められた.
  • 鈴木 良雄, 伊藤 幹雄, 濱口 恭子, 山上 一香
    1974 年 70 巻 3 号 p. 465-477
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Naproxenの抗炎症1乍用機序に関する生化学的研究の一端として,游紙埋没ラットの増殖性炎症モデルを使用して,この薬物の肉芽組織構成成分に対する作用について検討した.実験方法:ラットの背部皮下に滅菌泪紙(2.5×3.5cm)を埋没することにより炎症を惹起させ,背部に形成された肉芽嚢を周囲の組織から分離し,浸出液量および肉芽湿重量を測定し,次いで肉芽組織中のHexosamine(Hex),Uronic acid(UA),Sialic acid(SA),Tyrosine(Tyr)およびHydroxyproline(Hyp)を脱脂乾燥組織19当りの総含量と0.15MNaCl可溶性含量に分けて測定した.薬物の作用評価は薬物を源紙植込日より毎日1回11日後まで経口投与し12日後に測定する予防試験と,12日後から24日後まで同様に投与し25日後に測定する治療試験に分けて行なった。実験結果:1)予防試験でNaproxen(NAP)は1回10mg/kgの用量で浸出液量ならびに肉芽重量を顕著に抑制し,Indomethacin(IDM)2.5mg/kg,Prednisolone(PD)5mg/kgと同程度の作用を示した.しかしBenzydamine HCI(BEN)は50mg/kgで有意な作用を示さなかった.治療試験でNAPおよびIDMの肉芽重量,浸出液量に対する抑制作用は予防試験に比べてかなり弱かったが,PDは既成肉芽ならびに浸出液の減少作用を示した.2)予防試験においてNAP(10,25mg/kg),IDM(2.5mg/kg)およびBEN(50mg/kg)は肉芽組織中のHex,UA,SAおよびTyrの総含量を弱く,可溶性含量を顕著に減少した.PDはこれらの成分の総含量も可溶性含量も軽度に減少したに過ぎなかった.治療試験による作用は予防試験の場合に比し弱かったが同様な作用傾向を示した.3)NAP(25mg/kg),IDM(2.5mg/kg)およびPD(5mg/kg)は予防試験において肉芽組織中のHyp含量の増加作用,すなわち肉芽組織の線維化促進作用を示した。しかし,BEN(50mg/kg)にはこのような作用は認められなかった.4)以上の結果より,NAPはIDMと同様に肉芽の形成を著明に抑制し,同時に肉芽組織の構造的安定化を示すものと推察される.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 呉 晃一郎, 平松 保造, 田村 洋平
    1974 年 70 巻 3 号 p. 479-505
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    L-5418の抗炎症作用を主体とした薬効ならびに一般薬理作用を試験した.L-5418はcarrageeninあるいは骨折による急性ラット足浮腫を抑制し,nystatinおよびmustardによる持続性浮腫に対しても抑制効果を示し,その効力はaspirinより強く,phenylbutazoneよりは弱い両者の中間的活性であった.紫外線紅斑に対しては,phenylbutazoneの1/5程度の効力であったが,200mg/kgで100%の抑制作用を示した.綿球法ならびに肉芽嚢法で検した肉芽増殖に対してはphenylbutazoneと同等かわずかに弱い程度の比較的強い抑制効力を示した.adjuvant関節炎に対してはやや効力が弱かったが有意な抑制効果が認められた.ただ血管透過性充進に対しては作用が弱く,使用々量範囲では有意な効果を認めなかった.従ってL-5418は抗炎症作用を有することは明らかであるが,炎症反応の初期相に対しては作用が弱く急性炎症に対するよりも肉芽増殖を伴なった亜急性慢性炎症に適するかもしれない.しかも胃潰瘍発現作用はほとんどなく,既知抗炎症薬とは趣を異にしたユニークな薬物である.炎症性終痛には鎮痛効果が期待されるが,狭義な意味での鎮痛下熱作用は弱く,協調運動の障害作用も弱いものであった.その他呼吸循環系,消化管,腎および子宮に対しては作用なく,血液凝固および血糖値にも影響しなかった.ただ著明な作用として抗炎症作用々量以下の投与量で抗痙攣作用を有し,それ自身正向反射を消失させないが,barbitulateの睡眠作用を増強した.しかしこれらの一般薬理作用が間接的に抗炎症作用を呈するものではなく,また起炎性mediatorsに対して特異的拮抗作用もなく既知抗炎症薬と同様直接的抗炎症作用を有するものと考えられる.なお毒性は極めて弱く,安全域の広い薬物で,従来の抗炎症薬とはいささか性質を異にした新しいタイプの抗炎症薬と思われる.
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