日本薬理学雑誌
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83 巻, 3 号
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  • 谷口 和弥
    1984 年 83 巻 3 号 p. 193-206
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    The author reviews the molecular properties of Na+, K+-ATPase not only to elucidate the reaction sequence of the enzyme, but also to obtain a better understanding of the mechanism of energy transduction. It is shown that the reaction sequence which had been proposed mainly from phosphorylation kinetics has now been proven by the direct measurment of dynamic fluorescence changes during the hydrolysis of ATP. The formation of MgNaE1 ATP and the transition of NaE1P to E2P accompany the largest fluorescence changes in both the intrinsic and the extrinsic probes, respectively. These findings seem to be a useful step for understanding the mechanism of energy transduction in Na+, K+-ATPase.
  • 二見 高弘
    1984 年 83 巻 3 号 p. 207-218
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    誘導刺激薬の筋収縮機構に対する作用を摘出器宮を用いて調べ,硬膏剤として皮膚に貼付した際の神経の興奮伝導に及ぼす影響について検討した.蛙坐骨神経―縫工筋標本ではmenthol,methyl sali-cylate(MS)で非競合的に可逆性の抑制を受け,蛙腹直筋のacetylcholine(ACh)および電気刺激による収縮も抑制され,camphorでも認められたが,nonylic vanillyl amide(NVA)では大量で非可逆的になった.menthol,MSは高濃度で収縮を生じ,caffeine収縮も増強させ,camphorでも認められた.蛙坐骨神経の興奮伝導はmenthol,calnphor,MSで用量と時間依存性に活動電位高が抑制され,単一神経軸索内記録でもmentholで認められ,細径線維の方が抑制を受け易かった.誘導刺激薬を含む硬膏剤を,ネコ後肢脱毛皮膚に貼付すると,menthol,camphorは貼付30分以後,筋一次求心性神経や運動神経の興奮伝導が弱いながら抑制され,menthol含有硬膏剤では,グループIa,Ib抑制は影響されず,グループII,III抑制だけが著明に抑制された。一般的に使用される量の薬物を含む硬膏剤を貼付した際,経皮吸収されたmenthol,camphor,MSの筋肉内濃度は,それぞれ10~30,約5,5~10μg/g tissueであった.以上の結果よりmenthol,camphor,MSは主にNa活性化機構の抑制により局麻効果を発揮し,神経の興奮伝導抑制,神経―筋伝達抑制,ACh受容体膜安定化,筋の興奮―収縮連関抑制等が生じ,これらの作用は大量のmenthol,camphorを含む硬膏剤を皮膚上に貼付しても,薬物が経皮吸収され,弱いながら効果を発揮すると考えられる.いずれの誘導刺激薬も高濃度では,単独で筋収縮を生じ,caffeine収縮を増強する作用がある.
  • 二見 高弘
    1984 年 83 巻 3 号 p. 219-226
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    誘導刺激薬の未梢循環に対する直接作用並びに,皮膚刺激により反射性に筋循環に与える作用について検討した.menthol,thymol,methyl salicylate(MS)は呼吸,心拍数,大腿動脈および腓腹筋血流量に変化のない量で血圧下降が見られた.menthol,camphor,MSはウサギ摘出耳介血管内への直接投与で血管拡張を生じるが,硬膏剤として皮膚上に貼付した場合,いずれの誘導刺激薬でも殆んど無効であった。一方menthol,camphor,nonylic vanillyl amide(NVA)を含む硬膏剤を,ウサギ後肢皮膚上に貼付すると,腓腹筋血流量は約40%増加し,MSと薬物無添加の硬膏剤でも弱いながら筋血流の増加が見られたが,第13胸髄から第2仙髄までの後根切断により消失した.ウサギ腓腹神経電気刺激で生じる腓腹筋血流の増加は,atropine(1mg/kg,i.v.)の前処置では影響されなかったが,propranolol(40μg/kg,i.v.)ではほゞ完全に抑制された.ネコ浅擁骨神経電気刺激で生じる深橈骨筋血流の増加は,第3頸髄切断後も見られ,この時浅椀骨神経ではAβおよびAδ線維の興奮が認められた.以上の結果より,誘導刺激薬を含む硬膏剤を皮膚上に貼付した場合,経皮吸収された薬物による未梢血管拡張や筋血流増加等,未梢循環系への直接的な影響はないものと考えられるが,皮膚神経を刺激する結果,脊髄に反射中枢を有する体性一自律神経反射を生じ,交感神経性血管収縮神経の緊張性の抑制等,アドレナリンβ受容体を介した筋血流の増加が生じるものと考えられる.
  • 二見 高弘
    1984 年 83 巻 3 号 p. 227-235
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    誘導刺激薬の皮膚感覚受容器に対する作用を調べ,さらにこの皮膚感覚刺激が運動系に与える影響を脊髄反射を用いて検討した.menthol,nonylic vanillyl amide(NVA)のethanol溶液を皮膚受容野に適用すると,ネコ伏在神経の神経放電が増加し,硬膏剤に含ませて貼付すると,腓腹神経の触・圧・痛に応じる線維では,薬物無添加硬膏剤で見られたような,貼付直後の著明な活動増加が認められたが,それ以後は薬物無添加硬膏剤より有意に高い活動性を示し,触・圧・痛・冷に応じる線維では,その活動性は貼付直後から高く,作用は持続した.圧・痛に応じる線維は貼付後時間の経過につれて活動性は増加したが,温覚に応じる線維に対しては無効であった,又脊髄後角細胞の活動性に対する作用は,皮膚一次求心性神経線維の活動性の経時変化および放電頻度とほぼ同じであった.内側腓腹筋神経刺激で生じる単シナプス反射は,いずれの誘導刺激薬を含む硬膏剤でも,弱いながら有意に抑制され,運動神経細胞では,皮膚の触刺激により抑制性シナプス後電位が認められた例があった.以上の結果より誘導刺激薬はAδ,C多感覚種型侵害受容器,Aδ,C冷侵害受容器,遅順応性皮膚機械受容器等を活性化し,硬膏剤として貼付した場合は皮膚機械受容器の活性化も加わり,興奮する受容器の種類は多くなる.このような誘導刺激薬の皮膚感覚刺激は,運動神経細胞の興奮性を抑制し,脊髄レベルで単シナプス反射を抑制するものと考えられた.
  • 矢島 孝, 大野 知親, 中村 和雄, 中村 圭二
    1984 年 83 巻 3 号 p. 237-248
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    無麻酔,gallamine不動化ネコを使用して,扁桃体中心核(NAmC),扁桃体基底外側核(NAmBL)および視床下部外側核(NHL)電気刺激による胃ならびに十二指腸粘膜血流量減少,胃運動振幅の低下,血圧変化に対するbromazepamの作用を検討した.NAmCあるいはNAmBL刺激により,胃および十二指腸粘膜血流量減少,胃運動振幅の低下が刺激強度依存性にそれぞれ認められた.なおNAmC刺激により昇圧反応が,NAmBL刺激では降圧反応がそれぞれ認められた.NAmC刺激による反応はいつれもより大であった.norepinephrine静注により粘膜血流量減少および胃運動振幅の低下が昇圧とともに見い出され,さらにNAmC刺激により腎交感神経発射頻度の充進が昇圧とともに見られることから,NAmC刺激によるこれらの諸反応は中枢交感神経系の興奮の結果と推定される.扁桃体両核刺激によるこれら消化管系の反応,ならびにNAmC刺激時の昇圧反応は,bromazepamにより用量に依存して抑制され,本薬物による中枢交感神経系の抑制が示唆される.なお,NAmBL刺激による降圧は抑制されなかった.また,NHL刺激の諸反応に対するbromazepamの抑制は著しいものではなかった.さらに,ラットにおいて拘束水浸ストレスにより消化管潰瘍が惹起され,また同様のストレスによりNAmCでのグルコース利用率(GUR)が他の扁桃体核群に比較して,顕著に上昇した.これらの反応はbro-mazepamにより抑制された.以上,NAmC刺激に対する消化器系反応,循環器系反応は中枢性交感神経系の興奮に由来する.なお拘束ストレス負荷時の潰瘍発症,扁桃体核の中でもNAmCのGURのより著しい上昇はいつれもbromazepamにより著しく,かつ選択的に抑制された.
  • 鈴木 勉, 吉井 利郎, 河合 貞子, 柳浦 才三
    1984 年 83 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    我々は薬物混入飼料(DAF)法によりmorphineを慢性適用したマウスでは,morphineの自発運動促進作用に対する逆耐性がみられず,また,morphine混入飼料の用量によっては,morphineの中枢興奮作用にも耐性が生じることを報告した.そこで,このmorphine慢性適用マウスにmetham-phetamineの反復投与を行い,mcthamphetamineの自発運動促進作用に対するmorphine混入飼料適用の影響について検討した.実験にはICR系マウスを用い,自発運動の測定はtilting法によって行った.普通飼料を与えたマウスでは,methamphctaminelmg/kgを3~4日に1度の割合で反復皮下投与すると,自発運動促進作用の増強すなわち逆耐性現象が観察された.これに対し,morphine混入飼料1mg/g fbodを適用する条件では,同様にmethamphetamineを反復投与しても,この逆耐性現象は観察されなかった.つまり,DAF法のように常に動物がmorphineに暴露されている条件では,morphineと同様にmethamphetamineの自発運動に対する逆耐性も生じないものと考えられる.また,morphine混入飼料を1から3mg/g foodまで漸増適用した場合にも,自発運動促進作用の増強は観察されなかったが,morphineの反復投与時にみられたような自発運動促進作用に対する耐性はみられなかった.一方,methamphetamine 1mg/kgとmorphine 10mg/kgを単回併用投与すると,それぞれを単独で投与した場合より自発運動促進作用の増加が観察され,methamphetaniineとmorphineは自発運動に対し協力的に作用した.以上,DAF法によるmorphine慢性適用下では,中枢興奮薬であるmethamphetamineの自発運動に対する逆耐性が発現せず,methamphetamineとmorphineの逆耐性発現に対する類似性が示唆された.
  • 加地 喜代子, 瀬山 義幸, 山下 三郎
    1984 年 83 巻 3 号 p. 255-261
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    抗高脂血症作用を有するヨード卵卵黄の有効画分およびその機構を検索する目的で,食餌性高脂血症,特に高コレステロール血症を起こさせたラットを用いた抗高脂血症作用のスクリーニング法を確立した.またヨード卵卵黄をFolch法(chloroform-methanol)により水溶性画分,脂質画分,蛋白質画分に分画し,各分画物の抗高脂血症作用を比較検討した.実験の結果より,抗高脂血症作用のスクリーニング法としては高コレステロール飼料を5日間負荷し高脂血症を起こさせた後,これで飼育すると同時にヨード卵を10日間経口投与する方法が適切であった、次にこの方法でヨード卵の各画分を投与し比較したところ,卵黄脂質画分投与群が高コレステロール飼料飼育群(ch群)に比して血清コレステロール値が57%に低下したが,他の画分投与群では,この様な低下作用を示さず,ヨード卵の抗高脂血症作用の発現には主に脂質画分が寄与することが認められた.またこの際,脂質画分の血清甲状腺ホルモン(T3,T4)量はch群に比して変化しないことから,この脂質低下作用は血中T3,T4の影響を直接受けているものではないことが示唆された.
  • 川尻 慎一, 小島 浩, 明石 章
    1984 年 83 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    baclofenの筋弛緩効力をdantrolene,diazepam,chlordiazepoxideおよびtolperisoneと比較し,以下の成績を得た.すなわち,貧血性除脳固縮ラットの前肢に生じる持続性筋緊張は,baclofenおよびdantroleneにより抑制され,ED50値は,それぞれ2.9および22mg/kg(十二指腸内投与)であったがdiazepamは,これに影響を与えなかった.また,このラットの後肢に機械的刺激を加えることにより前肢に誘発される相動性筋緊張は,これら3薬物により減弱させられ,ED50値は,それぞれ6.2,140および1.4mg/kg(十二指腸内投与)であった.chlordiazepoxideおよびtolperisoneの固縮弛緩作用は極めて軽微であった.一方,ラットの懸垂試験で,baclofen,dantrolene,diazepamおよびchlordiazepoxideは筋弛緩作用を示し,そのED50値は,それぞれ12,35,6.5および64mg/kg(経口投与)であった.マウスのrotarod試験でもこれら4薬物は作用を示し,それぞれ5.6,15,2.1および44mg/kg(経口投与)のED50値であった.マウスの握力試験の結果も同様で,それぞれ9.5,17,4.3および33mg/kg(経口投与)のED25値を示した.一方,tolperisoneは無傷動物を用いたこれら3種の試験でも作用を示さなかった.以上の成績から,dantroleneは無傷動物で筋弛緩作用を起こす用量で,貧血性除脳固縮ラットの持続性筋緊張を比較的選択的に抑制すること,またdiazepamは無傷動物での有効量より少量で,固縮ラットの相動性筋緊張のみを選択的に抑制することが認められた.これに対し,baclofenは無傷動物に筋弛緩作用を起こす用量より少量で,持続性および相動性筋緊張の両方を抑制することが示唆された.
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