日本薬理学雑誌
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92 巻, 6 号
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  • 木村 英雄
    1988 年 92 巻 6 号 p. 337-347
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    It is well-known that anatomically, the cerebellum has a very uniform and stereotyped structure with geometrical precision. The Purkinje cell, which provides the unique output from the cerebellum, receives two excitatory inputs : one is from parallel fibers, axons of the granule cells, and the other is from climbing fibers which originate at the inferior live. In order to characterize the neurotransmitter of the climbing fibers, the electrophysiological properties of Purkinje cells were first studied by intradendritic as well as intrasomatic recordings from Purkinje cells of guinea pig cerebellar slices. Comparison of the reversal properties, ionic dependency and the sensitivity to various antagonists of the climbing fiber responses with those of responses to L-glutamate and L-aspartate supports the previous suggestion based on the bio- and histochemical observations that L-aspartate is more likely than L-glutamate to be the neurotransmitter of the climbing fiber synapses. The Purkinje cell is also reported to contain a relatively high activity of NADP-linked prostaglandin (PG) D2 dehydrogenase and abundant PGD2 binding sites. PGs potentiate the actions of both excitatory and inhibitory neurotransmitter candidates in our experimental system. In this article, the role of prostaglandins in the neuronal transmission in the cerebellum is also described.
  • 西尾 英明, 野田 有宏, 森尾 保徳, 矢ヶ崎 修
    1988 年 92 巻 6 号 p. 349-358
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    コリン作動性神経毒である ethylcholine mustard aziridinium ion(AF64A)を,腹腔内注射にてラットに投与し,脳コリン作動性神経に対する効果について検討した.up and down 法にて求めたAF64Aの LD50 は 291 μmol/kgであった.高用量の AF64A 投与はラットに一過性の運動性低下,うずくまり,呼吸困難を起こした.また,投与日に見られた飲水と摂食の顕著な減退,体重減少は日を追って軽減した.AF64A 129 μmol/kgの単回投与24時間後,大脳皮質,海馬,線条体の acetylcholine(ACh)含量は有意に減少し,さらに投与後10日目でもなお大脳皮質の ACh 含量は低下したままであった・初日129 μmol/kg,以降12.9 μmol/kg/dayで1日1回10日間 AF64A を連続投与すると,大脳皮質と海馬のACh 含量は投与後少なくとも20日間減少したままであった.初日 86 μmol/kg,以降 12.9 μmol/kg/dayで10日間 AF64A を連続投与し,最終投与後1日目あるいは14~20日目に作製した大脳皮質切片からの電気刺激によるACh放出は非常に減少し,23.4mM KCl 脱分極刺激による ACh 放出もかなりの程度減少した.これらの放出減少は細胞外液への外因性 choline(1×10-5M)添加によっても軽減しなかった・T字迷路における自発性進入岐路交替行動(“spontaneous alternation behavior”)は,生理食塩水投与群では100%のラットに見られたが,AF64A 10日間連続投与群では60%のラットにしか見られなかった.投与後14~20日経過しても交替率は依然として低下したままであった.このラットの自発性進入岐路交替行動は中枢コリン作動性神経が関与する行動であると提唱されており,AF64A 投与群の低い交替率は AF64A による中枢コリン作動性神経伝達抑制を反映していると考えられる.以上の実験結果から,AF64A の腹腔内投与は脳内 ACh 含量をあまり大きく減少させないが,ACh 放出を阻害して,持続性の中枢コリン作動性神経伝達障害を起こし得ると指摘できる.
  • 福永 玲子, 下田 光洋, 小篠 昌代, 稲垣 千代子
    1988 年 92 巻 6 号 p. 359-364
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ラット脳の神経終末膜電位を rhodamine 6G螢光法により測定し,これに対するNH4+の効果を検討した.神経終末は,K+に対する拡散電位(K+電位)を示すが,NH4+に対しても拡散電位(NH4+電位)を示した.反応液中の Cl-をSCN-と置換することにより,K+ およびNH4+電位は,いずれも脱分極した,反応液中のCl-をgluconate-に置換すると,K+電位は過分極したが,NH4+電位は変化しなかった.K+(Cl-)およびNH4+(Cl-)電位は,Cl--ATPase阻害剤である ethacrynic acid(EA,0.3mM)添加により,いずれも脱分極し,反応液Cl-のSCN-置換によりさらに脱分極し,gluconate-置換では変化しなかった.Cl-チャネル阻害剤である picrotoxin(5mM)添加では,K+(Cl-)およびNH4+(Cl-)電位に有意な変化は生じなかった.また,この時,反応液Cl-のSCN-置換では,両電位とも脱分極し,gluconate-置換では,K+電位は変化せず,NH4+電位は脱分極した.picrotoxin およびEAの両試薬添加により,K+(Cl-)およびNH4+(Cl-)電位は,いずれも脱分極し,反応液Cl-のSCN-または gluconate-置換によりさらに脱分極した.これらの結果から,NH4+は脳神経終末において拡散電位を形成し,アニオンによる過分極性の膜電位変化を,アニオンチャネル以外の機構により,阻止することが示唆された.
  • 原 久仁子, 秋山 康博, 加藤 義則, 折笠 悦子, 高比良 英雄, 田島 鉄弥
    1988 年 92 巻 6 号 p. 365-373
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    indometacin famecil(IMF)の血液凝固系に対する影響を,正常ラットおよび warfarin 投与低プロトロンビン血症ラットを用いて,indomethacin(Ind)を対照として比較検討した.正常ラットの血液凝固系に対して,Ind では30mg/kg投与24時間後に外因系凝固時間の短縮,ヘマトクリットの低下およびGOT,GPT,ALPの著しい低下が認められた.しかしInd 3mg/kgおよびIMF 10,100mg/kgはこれらのパラメーターに対して全く影響を与えなかった.warfarin 投与ラットの血液凝固系に対しては Ind 2.5mg/kgでは48時間後に正常プロトロンビンの低下が,10mg/kgでは血液凝固時間の著しい延長,正常プロトロンピンの著明な低下と PIVKA-IIの上昇,ヘマトクリットの著しい減少が認められ,48時間後には6例中3例の腸管内出血による死亡が観察された.IMF では,50,100,200mg/kgのいずれの投与においても,48時間後まで,すべてのパラメーターに対して影響を認めなかった.
  • 好田 裕史, 橋本 恒一, 栗山 欣弥
    1988 年 92 巻 6 号 p. 375-379
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    buflomedil(4-(l-pyrrolidinyl)-1-(2,4,6-trimethoxypheny1)-1-butanone hydrochloride)の催吐作用及び catalepsy 誘発作用について,犬及びマウスを用いて検討した.buflomedil(10~30mg/kg)の経口投与は,犬において用量依存的に嘔吐を発現させた.また,buflomedil により誘発された嘔吐は,domperidone(1mg/kg,p.o.)の前処置により抑制された.大量のbuflomedil(120~360mg/kg)を経口投与すると,マウスにおいて catalepsy の発現が認められたが,少量の buflomedil(30~120mg/kg,p.o.)は,haloperidol により誘発される catalepsy を増強させなかった.なお,buflomedil により誘発された catalepsy は,L-DOPA(300mg/kg,i.p.)及び bromocryptine(5mg/kg,i.p.)の前処置により抑制された.以上の結果により,buflomedil は少量ではドーパミンアゴニストとして嘔吐を誘発するのに対し,大量ではドーパミンアンタゴニストとして catalepsy を誘発するという二相性の作用を有する薬物である可能性が考えられる.
  • 秋山 康博, 原 久仁子, 加藤 義則, 滝沢 貴美枝, 佐藤 勝, 田島 鉄弥
    1988 年 92 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    モノバクタム系抗生剤 aztreonam(AZT)の低プロトロンビン血症誘発の有無について他抗生剤と比較検討した.ラットをビタミンK欠乏飼料で飼育開始すると同時に,AZT,latamoxef(LMOX),cefoperazone(CPZ),cefotetan(CTT),ampicillin(ABPC)を7日間腹腔内に投与し,血液凝固系と腸内細菌数に及ぼす影響を観察した.1) LMOXは,HPT,APTT,正常プロトロンビン,異常プロトロンビンなどの凝固系パラメーターを100mg/kg,300mg/kgと投与量に応じて悪化させたが,AZTは 300mg/kgでも全く影響を与えなかった.LMOXより軽度ではあったが,CPZ,CTT,ABPC 各300mg/kg投与でも各凝固パラメーターの悪化が観察された.2) ABPC,LMOX の 300mg/kgはラット盲腸内好気性グラム(+),好気性グラム(-),嫌気性菌,イーストのいずれの項目も低下させたのに対し,AZT 300mg/kgでは好気性グラム(-)菌のみを低下させた.以上の成績から,臨床においてAZTが低プロトロンビン血症を起こす可能性は他抗生剤より低いと推察された.
  • 白木 正裕, 山崎 勝也, 石山 広信, 神辺 敏実, 藪内 洋一, 浅田 修二, 平田 一郎, 大柴 三郎
    1988 年 92 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ラットにおける慢性胃潰瘍モデルである酢酸潰瘍を作製後180日間長期観察することにより再発あるいは再燃の状況を把握し,防禦因子を増強する薬物である proamipide が酢酸潰瘍の長期経過に与える影響について検討した.対照群において潰瘍係数の急速な減少と治癒指数,粘膜再生指数および膠原線維発育度指数の増加が潰瘍作製後5日から60日目まで観察されたが,その後120日から140日目にかけて悪化した.このことから120~140日目にかけて潰瘍の再発再燃が推察された.一方,proamipide 20mg/kg/day 経口投与群においては,潰瘍係数およびいずれの組織学的指標においても逆転現象は見られず,対照群に対し有意に改善されていた.このことから proamipide 群においては再発再燃が予防されたと考えられた.再発時期の完全治癒例を対象にした腺管係数の検討の結果から,対照群の瘢痕では再生粘膜辺縁部分が中央部に比較して有意に低く同一瘢痕内に粘膜再生のずれが認められたのに対し,proamipide 群の瘢痕では均一な再生粘膜により被覆されていた.このような瘢痕内の再生粘膜の状態が潰瘍の再発に関し重要な役割を担っているものと推察された.
  • 川原 公規, 佐藤 裕行, 乾 淳
    1988 年 92 巻 6 号 p. 397-410
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    nitrendipine の心・脈管系に対する作用を特に冠循環に着目して麻酔イヌ,イヌ血液灌流乳頭筋および摘出血管標本で検討した.麻酔イヌにおいて nitrendipine の静脈内(0.3~10μg/kg)および十二指腸内(0.1mg/kg)投与では血圧は下降したが,冠および椎骨動脈血流量は著明に増加した.nifedipineもほぼ同様の作用を示した.nitrendipine の少量(3μg/kg,i.v.)で左心室内圧最大上昇速度(maxdP/dt)および心筋酸素消費量(MVO2)は反射性に軽度増加し,大量投与(30~100μg/kg,i.v.)では減少した.また,nitrendipine は冠血流量増加と同時に冠動静脈血酸素濃度較差(a-vO2)を減少させ,心臓への酸素供給を増加した.nifedipine も同様に心臓への酸素供給を増加した.nitrendipine およびnifedipine の冠動脈内投与による麻酔イヌの冠血流量増加作用の ED50 値は,それぞれ,0.51 μg および 0.42 μgでほぼ同等であったが,血液灌流乳頭筋収縮力の抑制作用の ED50 値はそれぞれ,14.9 μgおよび 2.3 μg であり,nitrendipine の方が nifedipine よりも約5倍血管選択性が高かった.ウサギ摘出大動脈標本においてnitrendipine および nifedipine は KCl 収縮を抑制し,その IC50 値はそれぞれ,2.01×10-9Mおよび8.01×10-9Mであったが,phenylephrine による収縮は 10-7M でも約20%しか抑制されなかった.さらに,nitrendipine はブタ摘出冠動脈においてKCl,acetylcholine,hista.mine,5-hydroxytryptamine,norepinephrine および prostaglandin F による収縮を抑制し,冠スパスムモデルの一種とされる3,4-diaminopyridine で誘発したイヌ摘出冠動脈の周期的収縮を消失させた.以上,nitrendipine は Ca2+ 拮抗作用によると考えられる選択的な血管拡張作用によって,心臓の後負荷(血圧)軽減作用および冠血流量増加作用による心臓への酸素供給増加作用ならびに抗スパスム作用を示し,狭心症の治療に対して有用であることが示唆された.
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