日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
71 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 柳浦 才三, 田頭 栄治郎
    1975 年 71 巻 7 号 p. 663-673
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Morphine(M)とcocaine(Coc)を同一飼料中に混入して3週間連続自由摂取させた後のMおよびCocの自発的摂取行動の強化効果を検索し,次にM依存ラットにCocあるいはcodeine(Cod)を,また逆にCoc依存ラットにMをそれぞれ自発的摂取させた交差自発的摂取能を検討した.その結果,次の成績を得た.1)MとCocを併用して適用すると,適用期間中にはM+Cocそのものの自発的摂取率は増加しなかったが,その後M vs.普通飼料(NF)およびCoc vs.NFに置換えてMおよびCocの自発的摂取率を測定すると,それぞれ単独適用後の摂i取率に比較して著明な増加がみられた.2)M依存ラットのCoc自発的摂取率は初期にはCoc依存ラットにみられた摂取率と同程度でありCocとMとの交差自発的摂取はみられたが,Mの禁断症状を経験するにしたがいCoc摂取率は漸次減少していき,Coc摂取がpunishmentとしての効果をもった.3)Coc依存ラットのM摂取率はM依存ラットと同様の摂取パターンを示し,漸次増加の傾向を示した.しかし全体的にCoc依存ラットの方が低い摂取率を維持していた.4)M依存ラットにはcodeine(Cod)vs.quinine(Q)vs.NF条件下でのCod自発的摂取の強化効果はみられなかった.5)Cocの代わりにQをMと併用した場合,MおよびQの自発的摂取率はそれぞれを単独適用した場合と変らず併用効果はみられなかった,6)Coc経口適用によるラットのLD50値は281mg/kgであり,皮下適用時の250mg/kgに比較し,わずかに効果は弱かったが作用発現時間および症状がほぼ同じであった.以上の結果よりMとCocの併用はMおよびCoc自発的摂取行動を強化し,Coc混入飼料の味覚がsecondary reinforcementとして作用するのではなく,薬物摂取行動の決定はラットと薬物がもつ薬理作用との相互反応にもとつく現象と考える.
  • 竹内 久米司, 山田 健二, 相澤 義雄
    1975 年 71 巻 7 号 p. 675-682
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット平滑筋を用いたprostaglandinの生物学的検定法について研究を行なった.1)子宮標本は胃底部筋標本にくらべ感度は劣るが,安定性および再現性において優れ,PGの測定には適していることが分かった。2)PGによる子宮の収縮におよぼす影響に関し,卵胞ホルモンの投与,反応液の温度,負荷,histamine,atropine,dibenamine,propranolol等の影響などに関し検討を行ない,次のような方法を確立した.すなわち体重約250gの卵巣摘出ラットに10μgのestroneを皮下投与し,48時間後に断頭し子宮を摘出し,25°Cにおいて2mlの浴槽内にてマグヌス装置にて100~200mgの負荷をかけ,等尺性収縮を測定した.この方法にてPGFとして4ng/ml以上のPGを測定できることを確かめた.
  • 桜田 忍, 東海林 徹, 木皿 憲佐
    1975 年 71 巻 7 号 p. 683-690
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Reserpineおよびreserpineとisocarboxazide処理マウスに2,3のβ-phenylethylamine類を脳内投与したときの自発運動量および体温におよぼす影響について検討を加え,次のような実験結果を得た.1)Reserpine1mg/kg1日1回をi. p.投与5日間処理したマゥスにtyramine,dopamine40μgを脳内投与した場合,光束法で観察した自発運動量は増加した.しかし,β-phenylethylamine,noradrenaline,isoproterenolでは対照群との間の差は認められなかった.2)Reserpine1mg/kg1日1回5日間i.p.処理後isocarboxazide10mg/kg i.p.投与2時間後にtyramine,dopamineおよびβ-phenylethylamine40μg脳内投与した場合,光束法および回転篭法で観察した自発運動量は増加した.しかしnoradrenaline,isoproterenol投与群では対照群との間の差は認められなかった.3)Reserpine処理後tyramine,dopamine,noradrenalineおよびp-octopamineを脳内投与した場合,体温は上昇する傾向が認められ,reserpineとisocarboxazide投与後にこれらamineを投与すると対照群と比較して著明な上昇が認められた.しかし,isoproterenol投与の場合には対照群との差を認めることは出来なかった.このように,noradrenalineをはじめとするβ-phenylethylamine誘導体はいちがいに体温の下降のみに作用するのではなく,生理的状態が変化すれば体温の上昇方向にも作用するものと思われる.
  • 今井 清, 松浦 稔, 古川 仁, 林 裕造
    1975 年 71 巻 7 号 p. 691-707
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Aminopyrine200mg/kgおよび60mg/kg,phenacetin200mg/kg,acetylphenyl-hydrazine5mg/kgの連日経口投与により,雌雄ビーグル犬あるいは雑犬にHeinz小体の出現を伴った貧血が誘発された.貧血の程度に平行して,生化学的に血中のhaptoglobinの減少,赤血球中の還元glutathionの減少があり,血液学的に赤血球容積の増加と滲透圧に対する抵抗性の減弱がみられ,投与8週目あるいは16週目に行なった病理学的検査によって,全身のRES系細胞に著明なerythrophagiaとhemosiderosisがみとめられた.これらの所見をいわゆるoxidant-drugによって赤血球の酵索系,特にG-6-PDHに欠損のあるヒトにおこる溶血性貧血と比較し,イヌがoxidant-drugに対して高い感受性を示す機序について考察した.なお,被検薬物の1つとして使用した新しい鎮痛消炎剤31252-S(3-(1-hydroxy-2-piperidinoethyl)-5-phenylisoxazolecitrate)も,aminopyrine,phenacetinにくらぺれば極めて微弱ではあるが,oxidant・drugとしての性格を有することが推察された.
  • 萩原 彌四郎
    1975 年 71 巻 7 号 p. 709-725
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    熱電効果による組織血流持続測定法により,クラーレ化,人工呼吸下のネコの,皮膚,筋,肝,心筋,腎,大脳皮質,海馬,扁桃核,視床下部,小脳皮質の局所血流を測定し,これに対するifenprodilの作用ならびに作用機について検討した.1)IfenprodiIは皮膚血流を減少させたが,腎血流は滅少させず,むしろ増加させた.2)Ifenprodilは肝血流に二相性変化を起こさせたが,減少の程度より増加の程度の方が大であった.3)Ifenprodilは筋,心筋の血流および椎骨動脈流域にある扁桃核,視床下部,小脳皮質の血流を著明に増加させた.4)外頸動脈流域にある大脳皮質および海馬の血流はifenprodilの作用をほとんど受けなかうた。5)IfenprodiIは血圧を下降させた.血圧の下降度および持続は投与量が増すにつれて大となった.6)Ifenprodilの末梢循環作用の機序として,アドレナリン効果性α遮断作用,軽度のβ作用および血管平滑筋弛緩作用などが考えられる,しかしコリン効果性作用も全くは否定できないものと考えられる.7)IfenProdilは特定の部位の血流および血圧に対して,用量によりアドレナリン効果性α作用とα遮断作用とのdualactionを示した.8)Ifenprodilの血管平滑筋弛緩作用には,直接作用のほか代謝系を介する二次的作用のある可能性が考えられる.9)Ifenprodilに推定される代謝系に対する作用,および中枢に対する作用などについては,さらに検討の加えられることが望ましい.10)以上のごとく,ifenprodilは多彩な作用機構を持つ血管拡張薬であり,ことに脳循環に対しては主として椎骨動脈流域にある部位の血流を選択的に増加させる特色のある薬物と考えられる.
  • 大西 治夫, 佃 茂, 山口 和夫, 小川 信久, 内山 利満, 伊藤 隆太
    1975 年 71 巻 7 号 p. 727-738
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Trapymin(TM)10-5~10-4Mは摘出したウサギ腎,肺,大腿部および腸間膜動脈およびブタ冠動脈を弛緩した.この冠動脈弛緩作用はpropranololによって抑制されなかった。TM静注および経口投与により冠血流量は増加した.静注時の用量反応直線の傾きはpapaverineおよびnitroglycerinに近似し,dipyridamolおよびadenosineよりも大であった.TM10-5~10-4Mは摘出ラット心房の収縮増大および心拍数増加をおこした.TM30mg/kg/dayを10日間連続経口投与により,TMの冠血流量増加作用は僅かに低下する傾向を示した.TMは冠動脈電気凝固によるウサギ心筋梗塞およびvasopressin誘発ラット狭心症にも有効であった.一方,ラットのCaCl2誘発不整脈には無効であったが,adrenaline静注による不整脈にTMは拮抗した.TMによって心臓,脳,副腎のnoradrenaline量は減少したが,肝および脳のmonoamine oxidaseおよび副腎のdopamine-β-hydroxylase活性には影響しなかった.TMはネコ交感神経節の節前節後を抑制した.TMによる血糖上昇,心および肝glycogen低下は,Propranololによって抑制されたが,血清遊離脂肪酸増加は影響されなかった.ウシ心筋Na+-K+ATPase活性,ラット心筋ミトコンドリアP/O比にはほとんど影響せず,大量でADPによる血小板凝集を抑制した.以上の結果は,TMの冠拡張がpapaverine様作用を主とし,これに節遮断抗catecholamine遊離などが加わり,さらに抗adrenaline作用と共にcatecholamine遊離およびβ受容体を介する強心作用を有することを示す.
  • 小野 信文, 櫛来 和司, 守下 秀治, 仲上 一成, 中原 多美雄, 古川 達雄
    1975 年 71 巻 7 号 p. 739-752
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Isoproterenol類似構造を有する新しい気管支拡張薬S-1540ならびにその生体内主代謝物と考えられるS-1541の気管支平滑筋,心臓血管系に対する作用をisoproterenol(isoprenaline),metaProterenol(orciprenaline)の作用と比較検討した.1)モルモット摘出気管平滑筋のhistamine,BaCl2,acetylcholine収縮に対する弛緩作用は,S-1541が最も強く,次いでisoproterenol,metaproterenolの順で,S-1540は最も弱い.acetylcholine収縮に対するS-15410弛緩作用はpropranolol前処置によって抑制され,S-1540のそれは完全に消失した.生体における気管平滑筋のhistamineによる緊張上昇に対する抑制作用はS-1541が最も強く,次いでisoproterenolで,S-1540は最も弱い.2)モルモットでこれら薬物はいれずれも血圧下降・拍数増加作用を示すが,その作用強度は,isoproterenolが最も強く,ついでS-1541はやや弱く,metaproterenolはそれに比べると著しく弱く,S-1540はそれよりさらに弱い傾向を示し,その拍数増加作用はS-1541の約1/1000,血圧下降作用は約1/500であった.開胸モルモットにおける心収縮力増強・拍数増加作用は,S-1541はisoproterenolと同程度か,やや強い傾向を示し,S-1540はきわめて弱く,S-1541の約1/1000であった.S-1540のこれらの作用はpropranolol前処置によって完全に除去される,モルモットの心電図の波形には,いずれの大量においても著明な変化は認められなかった,3)ウサギにおける血圧下降・拍数増加・心運動振巾増大作用は,isoproterenolが最も強く,S-1541はそれと類似かやや弱く,S-1540はきわめて弱い.イヌにおけるこれらの作用は,isoproterenolが最も強く,次いでS-1541,metaproterenolで,S-1540はきわめて弱い.4)生体におけるS-1541およびisoproterenolの作用発現は,きわめて速かで持続は短かく,metaproterenolの作用持続は中等度で,S-1540の作用発現は速かで持続はぎわめて長い.S-1540は,そのものが生体作用を有するとともに,体内で代謝されてS-1541などの活性物質に変化して作用し,経口投与可能で,作用持続も長く,また比較的特異性の高い気管支拡張作用を有する薬物と考えられる.
feedback
Top