日本薬理学雑誌
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82 巻 , 5 号
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  • 後藤 裕美, 殿岡 まゆみ, 中山 貞男, 坂本 浩二
    1983 年 82 巻 5 号 p. 303-319
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    コレステロール飼料飼育による実験的高脂血症ならびに動脈硬化症に対するtrapidil[5-methyl-7-diethylalnino-s-triazolo-(1,5-a)pyrimidine]の作用を検討した.動物は日本白色種雄性ウサギ(SPF,JW/KBL)を用い,1%コレステロール飼料飼育と同時にtrapidil 10,30,50mg/kgを1日1回カプセルにより経口投与し,投与後1週間毎に耳静脈より採血して血漿脂質を測定した.8週後には大動脈弓部を摘出,その脂質分画を測定し,さらに形態変化を光学顕微鏡,透過型電子顕微鏡(TEM),走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した.コレステロール飼料飼育により血漿脂質の著明な上昇を認めた.trapidil投与により総脂質,総コレステロール(TC),遊離コレステロール,リン脂質(PL)は有意に低下し,10,30mg/kg投与群は投与後半に抑制を認め,50mg/kg投与群は初期より上昇抑制が明らかに認められた.高密度リボ蛋白(HDL)中のコレステロール(HDL-C)およびリン脂質(HDL-PL)はコレステロール飼料飼育およびtrapidil投与においても著変は認められなかった.atherogenic index(TC-HDL-C/HDL-C,PL-HDL-PL/HDL-PL)はtrapidil投与でみられたTC,P正の低下により有意に改善され,50mg/kg投与群では投与開始直後より著変であった.コレステロール飼料飼育によって増加を示した大動脈の脂質はtrapidilによって有意に低下し,胸部大動脈のSudanIII染色による肉眼的観察においても動脈壁への脂質沈着は著明に抑制された.さらにTEMによる観察ではコレステロール飼料飼育によって著明な泡沫細胞出現を認めたが,trapidil投与では投与量に応じた抑制がみられ,50mg/kg投与群では泡沫細胞の出現は認められなかった。SEMではコレステロール飼料飼育により内腔表面に不規則突出物を認めたが,trapidil投与では抑制された.50mg/kg投与群では無処置対照と類似の表面橡を示した.頭部血管造影でコレステロール飼料飼育により認められた血管狭窄ならびに硬化像はtrapidil投与により改善された.以上trapidilは血漿脂質低下作用を有し,動脈への脂質沈着も抑制することが認められた.
  • 西 広吉, 堀 信顯, 勝田 信夫
    1983 年 82 巻 5 号 p. 321-333
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    人工灌流液中に保生した脳切片標本の誘発電位を指標として,suloctidilおよびdihydro-ergotoxinの低糖負荷時の脳機能保護作用につき検討した.1)モルモットの前梨状葉薄切切片標本を用い,外側嗅索の二連刺激に応答する誘発電位を皮質表面から記録しながら,正常時の約1/3(3mM)のグルコースを含むKrebs-Ringer液で10分間灌流すると,第1刺激に対する誘発電位振幅は5~7分後から著明にかつ可逆的に減少し,安定な実験再現性が得られた.2)本実験系で得られる第2刺激に対する電位振幅は常に第1刺激に対するそれより大きく,明らかなpostactivation potentiationを示したが,その程度は低糖負荷により著明に促進された.3)脳切片を10-7~10-6g/mlのsuloctidilを含む低糖Krcbs-Ringer液で灌流すると,低糖負荷による誘発電位の減少は明らかに濃度依存性に抑制され,特に10-6g/mKによる抑制率は負荷開始10分後で統計的にも有意であり,10-7g/mlの抑制効果は特に負荷終了後の電位回復期に顕著であった.4)試用した各濃度のsuloctidi1はすべて低糖負荷によるpostactivation potentiationの促進を著明に軽減または殆んど消失させた.5)正常Krebs-Ringer液に溶解したsuloctidilは10-5g/ml以下の濃度では誘発電位に何ら影響を与えなかった.6)dihydroergotoxinは3×10-7g/ml濃度では低糖負荷による電位振幅を軽減しなかったが,3×10-6g/mlの濃度では低糖負荷による電位振幅の減少を明らかに軽減し,その効果はsuloctidil 10-6g/mlのそれにおおむね匹敵した.本薬物もsuloctidilと同様に低糖負荷によるpostactivation potentiationの促進を軽減した.7)このようなsuloctidilの低糖負荷時の誘発電位の減少に及ぼす防止効果の機序について脳エネルギー代謝と高エネルギーリン酸化合物生成との関連につき考察を加えた.
  • 亀井 英夫, 小尾 由美子, 河野 公雄, 平野 実, 村田 慎二, 今西 英世
    1983 年 82 巻 5 号 p. 335-342
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    新気管拡張薬BB-1502(9-cydohexyl-2-n-propoxy-9H-adenine)の抗喘息作用およびその作用機序に関してaminophyllineと比較検討した.BB-1502はIgE様抗体によるラットのpassive cutaneous anaphylaxis反応に対し,経口投与によっては有意な抑制効果を示さなかったが,同一抗体によって惹起した喘息発作に対しては十二指腸内投与により用量依存的に抑制し,その作用の強さはaminophyllineの約13倍であった.モルモットのIgG様抗体による喘息発作に対しても経口投与により強い抑制作用を示した.また,この化合物はIgE様抗体およびIgG様抗体で感作したラットあるいはモルモット肺切片からの抗原によるヒスタミン遊離を非特異的に抑制し,その作用はaminophyllineの2~3倍であった.本化合物はモルモット摘出回腸におけるヒスタミン,アセチルコリンおよびBaCl2による収縮に対しても非特異的拮抗効果を示し,抗ヒスタミンあるいは抗コリン作用は有さないものと思われる.BB-1502はモルモット各種臓器由来のcyclic AMP phosphodiesterase(PDE)およびcyclic GMP PDEを阻害し,特に,脳,肺のcyclic AMP PDEに対し選択的に強い阻害作用を示し,その作用はaminophyllineの約15倍であった.aminophyllineの阻害作用に組織選択性は見られなかった.以上の成績より,BB-1502の気管拡張作用および抗喘息作用はaminophyllineと同様に,cyclic nucleotide系を介して発揮されるが組織選択性においてaminophyllineとは異なることが示唆された.
  • 大原 秀人, 竹田 三喜夫, 五十嵐 俊二
    1983 年 82 巻 5 号 p. 343-350
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    実験的急性うっ血性心不全犬の心血行動態におよぼすisosorbide dinitrate(ISDN)静脈内投与の作用を検討した.halothane吸入麻酔下,propranolol含有のdextran負荷および左冠動脈前下枝結紮により,心収縮機能低下および高度の肺うっ血を伴う急性心不全病態を作成した.正常犬では,ISDN(100,500μg/kg/min)静脈内投与により,大動脈圧は低下したが,左心室拡張終期圧の低下は軽度に止まり,心係数の変化はみられなかった.一方,急性うっ血性心不全犬では,ISDN投与により全末梢血管低抗の低下,明確な左心室拡張終期圧の低下ならびに心係数の上昇が認められた.以上の成績から,容積負荷,β-遮断および冠動脈遮断により,惹起した急性うっ血性心不全において,ISDNは前および後負荷の軽減と心拍出量の増加をもたらすことが明らかで,うっ血性心不全の血管拡張療法薬として有用であることが示唆された.
  • 江川 三生, 井口 富夫, 飯田 成宇, 戸部 昭広
    1983 年 82 巻 5 号 p. 351-360
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    MCI-2016〔4-(o-benzylphenoxy)-N-metkylbutylamine hydrochloride〕のラットにおける脳synaptosomeへのモノアミン取り込み阻害作用,モノアミンおよびその代謝産物の脳内含量に与える影響と,代謝回転速度に対する作用について検討した.MCI-2016は,noradrenaline(NA)の取り込みを強く阻害し,特に視床下部ではIC50値は4×10-8Mとなりimipramineのそれに匹敵した.dopamine(DA)およびserotoain(5-HT)の取り込み阻害はNAに比し弱かった.MCI-2016 30mg/kg,i.p.は,NAおよびその代謝産物MHPG-SO4の脳内含量を有意に上昇させ,最大作用時間は2~4時間だった.また,5-HT含量も大脳皮質で増加したが,5-HIAA含量に変化はなかった,DAおよびDOPACの含量には変化がなかった.MCI-2016 15mg/kg,i.p.によりNA代謝回転速度は61.1%増大した.imipramine 15mg/kg,i.p.では,5-HTの代謝回転の減少が観察された.また,MIC-2016によるNA代謝回転の亢進作用は,atropine 30mg/kg,i.p.併用により,部分的に拮抗された.physostigmine 1mg/kg,i.p.投与でもNA代謝回転は増大され,atropineでやはり部分的に拮抗された.以上のことから,MCI-2016のNA神経系に対する作用は,取り込み阻害作用を有するが,三環性抗うつ薬とは異なり,代謝回転充進作用を併せ持ち,かつこの作用にコリン作働性神経が関与することが推測された.
  • 石橋 昭, 花形 理香, 堀井 大治郎, 久山 哲廣, 高柳 一成
    1983 年 82 巻 5 号 p. 361-373
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット胸部大動脈条片を用いてsuloctidilの血管弛緩作用機序を検討した.suloctidil 10μMおよびverapamil 0.1μMはnorepinephrine(NE)収縮を非競合的に抑制し,pD'2値はそれぞれ4.61±0.41および6.16±0.22であった.一方,prazosin 1nMのNE収縮抑制作用は競合的で,pA2値は9.84±0.15であった.脱分極させた大動脈のCaCl2収縮はsuloctidil 0.1および1.0μMの前処置によって競合的に抑制され,そのpA2値は5.96±0.26であった.しかしsuloctidil10μMではCaCl2収縮を非競合的に抑制し,そのpD'2値は5.01±0.14であった。対照薬として用いたpapaverine,verapamilおよびcinnarizineのCaCl2収縮に対するpA2値はそれぞれ5.23±0.10,7.53±0.09および7.11±0.11であった.CaCl2除去液中でNE1μMを適用すると,血管条片の収縮は0.4分後に最高(23.8±2.2%)となり,5分後にはほぼ静止張力近く(4.1±0.8%)にまで減衰する一過性の反応が観察された.この収縮反応は細胞内貯蔵部位からのCa2+遊離を反映すると考えられるが,suloctidil10μMおよびverapamil0.1μMの前処置によっては影響がなく,prazosin 1nMの前処置によって有意に抑制された.続いてCaCl2除去液中でNE適用5分後にCaCl2 2.5または10mMを適用すると,NEで活性化されたCa2+流入を反映した収縮反応が観察され,CaCl2 2.5および10mM適用後1時間における収縮反応は,それぞれ103.1±4.2%および133.8±10.3%であった。CaCl2適用後の張力発生に対し,suloctidil 10μMは有意な抑制作用を示し,またverapamil 0.1μMおよびprazosin 1nMは抑制または抑制傾向を示した.脱分極大動脈への45CaCl2の取り込みは,suloctidil 1.0μMの存在下ではverapamil 0.1μMの場合と同様にCaCl2負荷5および10分後では抑制された.一方suloctidilは10μMにおいてもラット大動脈のphoshodiesterase活性には影響はなく,papaverine 1.0μと対照的であった.以上の結果から,suloctidilおよびverapamilはNEによって活性化される貯蔵部位からのCa2+遊離には関与せず,NEによって活性化される細胞外からのCa2+流入および脱分極によって活性化されるCa2+流入を抑制することによって血管平滑筋の弛緩作用を発現すると推察された.
  • 大野 宏士, 高柳 法康, 村瀬 潤一, 岩田 久
    1983 年 82 巻 5 号 p. 375-381
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ウサギのcarrageenin関節炎に対するウシ・Cu,Zn-superoxide dismutase(SOD)の作用を検討した.1% carrageenin 1mlを週1回計2回膝関節内に注入すると,関節液中の蛋白量,uronic acid量,acid phosphatase活性,過酸化脂質量および自血球数が増加し,病理所見においても,浮腫,限局性壊死を伴う増殖性滑膜炎像がみられ,明らかに関節炎の発症が認められた.さらに関節軟骨uronic acid量も減少しており,関節炎により軟骨基質まで障害されていることが示唆された.一方,両膝関節内にcarrageeninを注射した場合,左右関節の各パラメーターに差が認められなかった,すなわち,左右膝関節のcarrageeninに対する反応性が同等であった.従って同一個体の一方の膝関節に被験薬を投与し,他方を対照として実験を行なった.この病態モデルにおいて,SODは350unitの週1回計2回関節内投与で,病理組織学的および生化学的パラメーターで改善が認められた.一方,アルカリー熱処理した失活SODおよびS-S結合を切断した失活SODでは,SOD350unitに相当する蛋白量0.1mgを投与しても,関節炎抑制作用は認められず,SODの関節炎抑制には本酵素による活性酸素除去作用の関与が示唆された.
  • 高柳 法康, 戸塚 鉄男, 戸田 昇
    1983 年 82 巻 5 号 p. 383-393
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    合成calcitonin誘導体,elcatoninの血圧に対する作用を検討した.elcatoninは正常血圧ラットの血圧を30~100u/kg,s.c.で僅かに低下させたにすぎなかったが,自然発症高血圧ラット(SHR)およびDOCA/saline高血圧ラットの血圧を用量依存性に,かつ持続的に低下させた.特にDOCA/saline高血圧ラットにおける作用は著明であり,0.3U/kg,s.c.にても有意な血圧下降が認められた.SHRおよびDOCA/saline高血圧ラットに10および30U/kgを3週間連日皮下投与して血圧を経日的に測定したところ,SHRでは投与開始14日目に,DOCA/saline高血圧ラットでは同4日目で最低値に達し,以後の投薬期間中そのレベルが維持された.投薬中止により血圧は回復傾向を示したが2週間後においてもなお対照群より有意に低値であった.正常血圧ラットに対しては同用量を6週間連日投与したが血圧に影響がみられず,投薬中止後3週間の血圧にも変化はみられなかった.また,高血圧発症前からSHRおよびDOCA/saline処置ラットに10および30U/kgを連日9週間皮下投与したところ,SHRでは対照群の血圧が177mmHgに達した6週間以後および149mmHgに達した3週間以後の血圧が,DOCA/saline処置ラットでは139mmHgに達した3週間以後および128mmHgに達した2週間以後の血圧が対照群より有意に低値となった.DOCA/saline高血圧ラットにおいてelcatoninはnoradrenalineの昇圧作用を抑制する傾向を示したが有意ではなかった.vasopressinおよびangiotensi IIの昇圧作用ならびにisoproterenol,acetylcholineおよびhistamineの降圧作用に対して何ら影響を及ぼさなかった.さらに,副甲状腺を摘除してもelcatoninの抗高血圧作用は抑制されず,ヒトPTH-(1-34)の降圧作用に対してelcatoninは増強効果を示さなかった.以上,elcatoninには高血圧の発症を予防し,高血圧を下降させる作用が認められるが,これらの作用にはPTHの関与はなく,また,α,β,angiotensinおよびvasopressin受容体に対する遮断効果も関係しないようである.
  • 植木 昭和, 渡辺 繁紀, 山本 経之, 柴田 重信, 柴田 和彦, 太田 尚, 池田 加津子, 清田 義弘, 佐藤 陽子
    1983 年 82 巻 5 号 p. 395-409
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    マウス,ラットを用いてethyl loflazepateおよびその代謝産物の行動薬理学的作用をdiazepam,nitrazepamおよび10razepamのそれと比較した.1)open-fieldにおけるラットの自発運動はethyl loflazepateの広範囲の用量で増加した.nitrazepamも比較的大量で類似の作用を示した.2)ラットにおける抗conflict作用はethyl loflazepateが最も強く,ついでdiazepam,lorazepamの順であった.3)嗅球摘出ラットおよびraphe破壊ラットのmuricideに対するethyl loflazepateの作用はdiazepamとほぼ同程度であったが,lorazepamやnitrazepamよりも弱かった.4)マウスにおけるpentetrazolけいれん抑制作用はethyl loflazepateが最も強力であったが,最大電撃けいれん抑制作用はlorazepamとほぼ同程度でdiazepamやnitrazepamより弱かった.いずれの薬物もpentetrazolけいれん抑制作用の方が最大電撃けいれん抑制作用よりもはるかに強力であった.5)マウスにおけるthiopental麻酔増強作用はethyl loflazepateが最も弱かった.6)rotarod法によるethyl loflazepateの協調運動障害作用はマウス,ラットのいずれにおいてもdiazepam,nitrazepam,lorazepamより弱いものであった.7)ethyl loflazepateの代謝産物であるCM6913およびCM7116の作用は全般的に母物質のethyl loflazepateとほぼ同程度の強さであったが,その作用持続は母物質よりはるかに短かった.以上,ethyl loflazepateは質的にはdiazepam,nitrazepamおよびlorazepamに類似した行動薬理学的作用を有し,その作用は全般的にdiazepamとほぼ同程度の強さであるが,作用持続の長い点が特徴である.
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