日本薬理学雑誌
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96 巻, 2 号
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  • 久野 高義
    1990 年 96 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    Protein phosphorylation has been recognized as a major mechanism by which cellular functions are controlled by neurotransmitters and hormones. In this review, applications of molecular biological techniques to the analyses of regulatory mechanisms of protein phosphorylation by four major second messengers, cAMP, cGMP, diacylglycerol, and Ca2+, are described. 1) Complementary DNA of the regulatory subunit of the cAMP-dependent protein kinase was cloned and expressed in E. coli. Point mutations were introduced in order to analyze functional domains of the subunit. 2) The soluble isoform of guanylate cyclase was purified, and a cDNA of its 70-KD subunit was cloned. Cyclic GMP binding to purified cGMP-dependent protein kinase was characterized using a rapid filtration assay. 3) Primary structure of the catalytic subunit of calmodulin-dependent protein phosphatase (calcineurin A) was determined and the presence of the second isoform of the enzyme was shown by the cDNA cloning technique. 4) The regulatory domain of the protein kinase C was expressed in E. coli. Analysis using site-directed mutagenesis revealed that a “zinc finger”-like structure is responsible for the binding of phorbol esters. In these studies, the molecular biological approach has proven to be useful for clarifying the molecular mechanisms of cellular signal transduction related to second messengers and protein phosphorylation.
  • 内田 真嗣, 伊東 正博, 藤本 明子, 山下 樹三裕, 丹羽 正美, 関根 一郎, 尾崎 正若
    1990 年 96 巻 2 号 p. 49-63
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    新しいβ-遮断薬であるbetaxololの脳卒中易発症ラット(SHRSP)に及ぼす効果を検討した.雄性SHRSP 8週齢より24週齢までbetaxolol 0.05%水溶液を飲用水として与えた.摂水量より算出された投与量は33.0±1.8mg/kg/日であった.血圧は10週齢より実験終了時までbetaxolol投与群では対照群に比し,:有意に低値を示した.心拍数はbetaxolol投与により,14,16,22,24週齢で有意に低値を示した.血中尿素窒素,クレアチニン,トリグリセリドおよびリン脂質は,実験終了時の24週齢で,有意に低値を示した.病理組織学的所見では,腎臓の増殖性,壊死性血管炎および糸球体病変が,対照群SHRSPに比較して著明に抑制されていた.また,心臓の線維化,腸間膜動脈の肥厚および壊死性血管炎もほとんど認められなかった.脳卒中発症に対するbetaxololの効果を検討するために,8週齢より18週齢まで,食塩添加飼料(SP食)で飼育されたSHRSPにbetaxolol 0.05%水溶液を飲用水として与えた.投与量は40.1±1.2mg/kg/日であった.血圧,心拍数に対するbetaxololの効果は軽度であったが,脳卒中発症は対照群6例中6例(2例死亡)であったのに対し,betaxolol投与群では5例中全く認められなかった.生存例における病理組織学的所見でも,SHRSPの高血圧性臓器病変を著しく改善していた.betaxololは,SHRSPに対して血圧下降作用と高血圧性臓器病変を著しく改善する作用を有することが明らかとなり,その抗高血圧薬としての有用性が示唆された.
  • 森本 敏彦, 森本 保人, 福田 武美, 瀬戸口 通英
    1990 年 96 巻 2 号 p. 65-71
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    ラットを用い,dopamine(DA)の側坐核内注入によって惹起される自発運動充進に及ぼすY-516の影響をclocapramine(GCP),haloperidol(HPD)およびchlorpromazine(GPZ)を対照薬として比較検討した.予め慢性的にガイドカニューレを植え込んだ雄性Wistarラットを使用した.nialamide100mg,/kgを腹腔内投与して2時間後にDA5~50μg/ratを両側側坐核内に注入することにより,用量依存的に自発運動は充進した.Y-516の0.5~1mg/kg腹腔内投与でDA10μgの注入による自発運動充進は用量依存的に抑制され,ED50値は0.85mg/kgであった.同様の抑制作用はCCP(5~25mg/kg),HPD(0.05~0.5mg/kg)およびCPZ(1~5mg/kg)でも認められ,ED50値はそれぞれ16-5mg/kg,0-098mg/kgおよび2.53mg/kgであった.本試験におけるY-516の効力は,CCPの約20倍,CPZの約3倍であり,HPDの約1/10倍であった.以上,DAにより活性化される側坐核のシナップス後DA受容体に対するY-516の強力な遮断作用は,本剤の抗精神病薬としての有用性を支持するものと考えられる.
  • 村岡 義博, 渡邊 弘, 松井 信志, 奈良 博, 笠井 久司
    1990 年 96 巻 2 号 p. 73-83
    発行日: 1990年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
    ifosfamide(IF)50mg/kg以上をラットへ1回静脈内投与すると,骨髄障害に先行して,3時間後から膀胱重量増加,粘膜出血及び水腫を特徴とする膀胱障害が発生し,1~3日後をピークとした.組織学的には,投与24時間後までは粘膜上皮の壊死,炎症性細胞浸潤を伴なった粘膜下水腫及び出血からなる急性膀胱炎の像を呈した.2日後から障害の修復が始まり,3日以後には上皮の増生が主病変となった.この膀胱障害は輸尿管結紮ラットでは発生せず,輸尿管を交叉した2匹1組のラットの1匹にIFを注入したとき,障害はIF注入ラットの尿を流入させたIF非注入ラットのみに発生した.IF10mgを膀胱内に直接注入しても膀胱障害は発生しなかったが,IF投与時の膀胱障害性代謝物とされているacroleinでは14μgで発生した.これらのことからIFによる膀胱障害は,IFの毒性代謝物と膀胱粘膜との接触が原因した局所障害であり,血行性の全身毒性から分離された.IFによる膀胱障害は,sodium 2-mercaptoethane sulfonate(mesna)との併用投与で抑制された.mesnaによる抑制は用量依存性で,IFの1/10の用量から効果が現われ始め,75%用量で完全に抑制された.mesnaは,IF投与前及び投与後1時間以内の投与で有効であり,前後3時間以上あけての投与は無効であった.また,mesnaの一括投与と分割投与との間には抑制効果に大差はなかったが,mesnaを小量投与したときは,分割投与の方が効果的であった.分割投与の効果はイヌでも確認された.IFとその2倍量のmesnaを併用投与しても,IFのYoshida肉腫に対する抗腫瘍作用に影響を与えなかった.
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