Ether麻酔猫とPentobarbital麻酔猫を用いてOuabain, Digitoxin及びStrospesideの致死量を測定し,同時に心電図を記録して次の結果を得た.
1. StrospesideとDigitoxinの致死量は, Pentobarbital麻酔猫ではEther麻酔猫で測定した値よりも著しく多かった. Ouabainでもこの様な傾向がみられたが,推計学的には有意性に乏しかった.
2. Pentobarbital麻酔猫を除脳してからStrospesideの致死量を測定すると, Pentobarbital麻酔下の正常猫に比べて致死量は著しく減少した.
3. Ether麻酔猫と無麻酔除脳猫とではStrospesideの致死量はほぼ同じであった.
4. 心電図上の所見からは, Ether麻酔猫では強心配糖体の投与によってP-R及びR-R間隔が延長し不整脈も発生し易かったが, Pentobarbital麻酔猫ではP-R及びR-R間隔の延長の程度も少く,不整脈も発生し難かった.強心配糖体によるT波の平低化はPentobarbital麻酔猫では著明に現れた.それに反してEther麻酔猫では, Ether麻酔のみでTは平低化し,強心配糖体はこれに対して殆んど影響を及ぼさなかった.
5. Strospesideの致死量が, Pentobarbital麻酔猫では著明に増大するのは, Pentobarbitalが中枢神経系と心臓とに働いて何等かの機構でStrospesideの毒性を低下させるためではないかと想像される.
この論文の要旨は第33回日本薬理学会総会(岐阜)で発表した.
稿を終るに臨み,御懇篤なる御指導,御校閲を戴いた恩師田辺教授に厚く感謝致します.又, Strospesideを提供して下さった塩野義製薬株式会社に対して感謝の意を表します.
本研究は文部省科学研究費の支援を受けて行われた.茲に記して謝意を表する. (田辺恒義)
抄録全体を表示