日本薬理学雑誌
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118 巻 , 1 号
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ミニ総説号 「末梢ヒスタミン研究の新たなる展開」
  • 遠藤 康男
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンは動脈·静脈の収縮, 細動脈の拡張, 細静脈の拡張または収縮をもたらす. また, 血管内皮細胞に作用して毛細血管の透過性を亢進し, 免疫担当細胞の毛細血管でのローリング·接着·浸潤を促進し, ケモカインやサイトカインの産生を修飾し, Th1/Th2バランスにも影響する. 抗体や補体の産生のみならず癌の転移·増殖にも影響を与える. ヒスタミンの供給機構としてこれまでは, 肥満細胞と好塩基球からの遊離だけが考えられてきた. 一方, SchayerとKahlsonはヒスタミン合成酵素のhistidine decarboxylase (HDC)は誘導酵素であることを明らかにし, HDC誘導で産生されるヒスタミンは, 産生と同時に遊離され, 微少循環系の調節と細胞増殖に関与することを示唆した. Schayerはグラム陰性細菌のエンドトキシンまたはlipopolysaccharide (LPS)が強力なHDCの誘導物質であることも発見した. 筆者らはマクロファージがHDCを誘導する因子を産生し, これがIL-1であること, また, TNF, G-CSF, GM-CSF, IL-3, IL-12, IL-18もHDCを誘導することを明らかにした. IL-1, TNF, IL-12, IL-18は多くの組織(とくに毛細血管の豊富な組織)にHDCを誘導し, G-CSFとGM-CSFは造血組織(骨髄と脾臓)のにみHDCを誘導する. グラム陽性菌のペプチドグリカンもHDCを誘導する. HDCの誘導は肥満細胞欠損マウスでも起こる. このように, ヒスタミンの供給には肥満細胞·好塩基球が関与しない機構も存在する. この新しいヒスタミン供給機構は, サイトカインネットワークと連動したHDC誘導を介する機構である. この機構で産生されるヒスタミンを筆者らは“ネオヒスタミン”と呼ぶ. ネオヒスタミンは生理的反応, 炎症·免疫反応および種々の病態に関与する.
  • 中野 紀和男, 高松 真二
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    従来. ヒスタミンは肥満細胞や好塩基球に蓄えられていたものが, アレルゲン-IgE複合体の刺激により放出され, 喘息などのアレルギーの原因物質となるなど, 生体にとってマイナス因子として作用すると言われてきた, しかし, 我々は最近, ヒスタミンにはマクローファージ(Mφ)やTリンパ球によりヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の誘導を経てデノボに生成される経路もあり, さまざまな生命現象を調節し, 生体の恒常性を維持するためのプラス因子として働くことを明らかにした. まず, 生体内にある各種Mφ様細胞はエンドトキシンなどの刺激でヒスタミンを生成した. エンドトキシンで刺激された骨髄由来Mφによるヒスタミン生成はとくにGM-CSFおよびIL-3によって促進された. さらに脾臓Mφにより作られたヒスタミンはIL-1生成の促進による免疫反応の調節を, 骨髄Mφにより作られたヒスタミンはIL-6, M-CSF, G-CSFなどのサイトカイン類生成の調節による血球分化の制御を, さらに肝臓Mφであるクッパー細胞により作られたヒスタミンは肝細胞増殖因子の生成促進による傷害肝の再生と, 種々の生命現象の細胞間刺激伝達因子として働くことが明らかになった. 一方, ConAなどの免疫刺激を受けたCD4+およびCD8+Tリンパ球もHDC誘導性のヒスタミンを生成した. ConA刺激によるヒスタミン生成もやはりGM-CSFおよびIL-3によって特徴的に増強された. これらTリンパ球によって作られたヒスタミンはそれら細胞自身の増殖, 幼若化反応などの免疫反応を調節した. グラム陰性菌感染時にはMφとTリンパ球の協調により作られたヒスタミンは免疫反応を調節する一方, アレルギーなど過剰な免疫反応が起った場合は, 末梢器官と脳との間の臓器間刺激伝達因子として働き, 視床下部-脳下垂体-副腎皮質系を刺激してグルココルチコイドを分泌した. グルココルチコイドはMφおよびTリンパ球によるヒスタミン生成そのものを阻害するのを初め, 種々の免疫反応を抑制し, 生体をアレルギーによる傷害から保護するものと考えられた.
  • 平澤 典保, 大内 和雄
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    ヒスタミン産生酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)は, マスト細胞や好塩基球だけでなく, 炎症刺激を受けたマクロファージなどの非マスト細胞においても誘導される. 本稿ではマウスマクロファージ様細胞株RAW264. 7細胞を用いてマクロファージにおけるヒスタミン産生機構について概説する. RAW264. 7細胞をCa2+-ATPase阻害薬であるthapsigarginで刺激すると, HDC mRNAおよび74-kDa HDCタンパク質のレベルが増加し, 培養液中のヒスタミン量も増加した. これらはいずれもp44/p42 MAPキナーゼ活性化阻害薬により濃度依存的に強く抑制されたが, p38 MAPキナーゼ阻害薬では部分的にしか抑制されなかった. 同様の結果は, プロテインキナーゼC活性化薬12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetateやlipopolysaccharideで刺激した場合においても認められた. したがって, マクロファージを刺激した場合のヒスタミン産生は, 74-kDa HDCタンパク質の発現増大によるものであり, この発現にはp44/p42 MAPキナーゼが大きく関与し, p38 MAPキナーゼの関与は部分的であることが示唆された. ステロイド性抗炎症薬dexamethasoneは, p44/p42 MAPキナーゼの活性化を抑制することにより74-kDaHDCタンパク質の発現を抑制し, ヒスタミン産生を抑制することも示唆された. 最後に, HDCの発現に関与する転写因子について考察した.
  • 西堀 正洋, 高橋 英夫, 森 秀治
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンは血管内皮細胞や一次知覚神経終末に存在する受容体サブタイプであるH1受容体刺激を介して, 炎症反応のメディエーターの機能を果たす. 一方, これまでH2受容体を介する免疫応答調節に関する研究報告は数多いが, 相互に矛盾する結果も多い. 本稿では, 最近我々の研究で明らかになったヒト末梢血単核球標本におけるヒスタミンのH2受容体を介するサイトカイン産生調節の結果を中心に, 免疫応答調節におけるヒスタミンの役割について概説する.
  • 小田 環, 松本 俊一郎
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    1910年に生理機能が初めて報告されたヒスタミンは, その後の薬理学的, 分子生物学的解析により, H1, H2, H3の3種の受容体を介して細胞内情報伝達が行われ, 種々の生理機能を発揮していると考えられていた. 私たちは, ヒトドラフトゲノムデータベースを網羅的に検索する事により, H3受容体に対して37.4%の相同性を有する新規ヒスタミンH4受容体(GPRv53)を同定した. H4受容体は, [3H]-ヒスタミンに, 17.2nMの解離定数で結合する高親和性受容体であり, 活性化に伴い, 細胞内cAMP量を減少させる. ヒスタミン以外では, R-(α)-methyl-histamine(H3受容体アゴニスト), clobenpropit(H3受容体アンタゴニスト)さらにはclozapine(抗精神病薬)がH4受容体と結合して, アゴニスト活性を発揮し, thioperamide(H3受容体アンタゴニスト)がアンタゴニスト活性を有する. H4受容体は, 末梢白血球, 脾臓, 胸腺, 結腸等で発現しており, 免疫機能への関与が示唆されている. H4受容体の発見により, ヒスタミンの新しい生理的·病理的機能の側面が解明される手がかりとなるだろう.
  • 樫葉 均, 仙波 恵美子
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    一次知覚ニューロンにおけるヒスタミンH1受容体の存在が, 薬理学的手法により示唆されてきた. 最近, 我々はモルモットの知覚神経節細胞において, H1受容体遺伝子の発現をin situハイブリダイゼーション法により検索し, 更に, H1受容体遺伝子が発現しているニューロンの特徴について検討を加えた. H1受容体mRNAは三叉神経節や後根神経節(DRG)の15-20%のニューロンに発現していたが, 迷走神経·下神経節のニューロン(内臓求心性神経)には発現していなかった. H1受容体を発現するDRGニューロンは, 小型(small size)で無髄線維を有するが, 痛覚の伝達に関与すると考えられているサブスタンスP(SP)やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含有しなかった. 更に, これらのニューロンはカプサイシン(その受容体は侵害性の熱刺激を受容する)に対する感受性も示さなかった. よって, H1受容体を発現するニューロンは無髄線維を有する小型のDRGニューロンの中で特異なサブグループを形成していると思われる. 一方, モルモットの坐骨神経を障害すると, 多くのDRGニューロン(55%)にH1受容体mRNAが発現し, これらもまた小型ニューロンであった. SP/CGRP陽性ニューロンの大部分もまたH1受容体遺伝子を発現するようになった. 一方, 正常時にH1受容体mRNAを強く発現していたニューロンでは, その遺伝子発現が低下した. つまり, 末梢神経が障害されると, ヒスタミンに感受性を示していたニューロンがその感受性を失い, 障害されたニューロンのあるグループはヒスタミン感受性を獲得すると考えられる. この新たなH1受容体の遺伝子発現は, ニューロパシックペインの発症や維持に関与しているのかもしれない.
新薬紹介総説
  • 大森 健守, 池村 俊秀, 小林 弘幸, 向山 明道
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    オロパタジンは分子内にカルボン酸とアミン構造を有するジベンゾオキセピン誘導体で協和発酵工業(株)において創製された新規抗アレルギー薬である. 本薬は選択的なヒスタミンH1受容体拮抗作用とともに, ヒト多形核白血球や好酸球の脂質メディエーター産生·遊離に対する抑制作用, モルモット主気管支筋標本収縮反応に対するタキキニン遊離抑制を介しての抑制作用, 好酸球浸潤抑制作用などの幅広い薬理作用を示した. 経口投与時, 実験的アレルギー性鼻炎や受身皮膚アナフィラキシーなどの疾患モデルにおいて抑制作用を示した. 第I相試験において, 健常成人にオロパタジンを経口投与した場合, その経口吸収は速やかで良好であり, 投与後約1時間に最高濃度に達した後, 二相性に消失した, 尿中に未変化体として58%以上排泄され, 消失に占める代謝の寄与は少なかった. 臨床治験において慢性蕁麻疹, 通年性アレルギー性鼻炎および湿疹·皮膚炎, 痒疹, 皮膚そう痒症, 尋常性乾癬, 多形滲出性紅斑などの皮膚疾患に伴うそう痒にオロパタジンは効能効果を示し, これら疾患を対象として2000年12月に厚生労働省から製造承認を受けた. 商品名はアレロック錠である. 臨床上の特徴は慢性蕁麻疹に高い有効性を示した点と, これまでの抗アレルギー薬では効果が弱いとされている通年性アレルギー性鼻炎の鼻閉症状に高い効果を示した点にあった.
  • 板東 勝敬, 山田 宜和
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病は, 膵β細胞からのインスリン分泌不全およびインスリンの標的組織(肝臓, 筋肉, 脂肪組織)におけるインスリン感受性低下が原因で高血糖を呈することが知られている. 現在2型糖尿病の薬物治療の主流をなしている薬剤は, インスリン分泌を促進することで強い血糖降下作用を示すスルホニルウレア系経口血糖降下薬(SU薬)であるが, 強力なインスリン分泌促進作用のため, 体重増加·低血糖·膵β細胞の疲弊による二次無効等の問題点が指摘されている. 新しいタイ護のSU薬であるグリメピリドは, 既存のSU薬と同等の血糖降下作用を有するにもかかわらず, 膵β細胞に対するインスリン分泌促進作用はマイルドであるという特徴をもつ. 膵β細胞SU受容体への本剤の作用は, グルベンクラミドよりも親和性が弱く, 結合速度および解離速度が速いことが示されている. また, その血糖降下作用の一部はインスリン感受性改善作用, つまり肝臓での糖の取り込み促進, 糖放出抑制および筋肉·脂肪組織等の末梢組真での糖取り込み促進によることが動物実験で報告されている. グリメピリドは, 既に世界60ヵ国以上で広く臨床使用され, グリベンクラミドよりも低血糖が少なく, また体重を増加させないとの報告もあり, 既存のSU薬で問題視されていた体重増加·低血糖·膵β細胞の疲弊による二次無効等を軽減する新しい薬剤として, 日本においても2型糖尿病の有効な治療手段として期待される.
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