三酸化ヒ素(As
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3)の腸管からの吸収を調べる目的で,ウサギ回腸の一部にループを作り,その中にAs
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3 20mg/10mlを注入し,この回腸部分のみを環流する血液を経時的に採取し,吸収されたAs
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3量を測定し,さらにこのループを形成する腸平滑筋,腸間膜のAs
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3量およびループ内に残留したAs
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3量を測定した結果は次の通りである,無処置ウサギでは,注入されたAs
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3は60分間に約30%が血液中に吸収され,吸収のピークは約30分後であった.dimercaprol(BAL)またはthioctic acid(TA)を筋肉注射した後2時間目に,回腸ループ内にAs
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3を注入したところ,血液中As
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3吸収量は明らかに減少し,回腸ループ内As
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3残留量は増加した.しかし腸平滑筋,腸問膜のAs
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3量には変化がなかった.一方リンゲル溶液潅流法を用いて,回腸ループ内に,直接BALまたはATを注入したところ,As
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3の血液中吸収量は,対照群に比して明らかに減少した.以上の結果からBALおよびTAは循環器をへて,主に胆管から腸管内に排泄されて,亜ヒ酸イナンと結合するため,As
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3の腸管からの吸収を抑制するものと思われる.
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