日本薬理学雑誌
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71 巻, 6 号
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  • 工藤 照夫, 林 毅, 武沢 純, 猪木 令三, 山本 巌
    1975 年 71 巻 6 号 p. 527-538
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    イヌ顎下腺を用いて,Chorda tympani電気刺激下における唾液kallikrein分泌の量的面ならびに質的面におよぼす交感神経電気刺激および交感神経作働薬の影響を検討した.唾液kallikreinの量的分泌については,交感神経刺激およびnorepinephrine,epinephrine,isoProterenolなどの交感神経作働薬はいずれも唾液kallikreinの分泌を増大させた.これらの効果のうち,交感神経刺激,norepinephrineおよびepinephrineの効果は,phenoxybenzamineあるいはpropranolol前処置によって態度の差はあるが完全には消失せず,isoproterenolの効果はpropranolol前処置によって消失し,phenoxybenzamine前処置によってはほとんど影響を受けなかった.これらの事実から,Chordatympani刺激下の唾液kallikreinの量的分泌は,交感神経α-,およびβ-作用が関与しているものと考えられた.一方,これらの刺激あるいは薬物によって分泌されるkallikreinの質的面をSBTIを用いて解析すると,Chorda tympani刺激あるいはisoproterenolによって分泌される唾液kallikreinは,SBTIによって抑制されないのに対して,交感神経刺激,norepinephrineあるいはepinephrineによって分泌される唾液kallikreinは,SBTIによって著明に抑制された.これらの事実から唾液kallikreinの質的分泌については,glandular kallikreinはChorda tympani刺激あるいは交感神経β-作用によって分泌され,plasma kallikreinは交感神経α-作用によって分泌されると考えられた.
  • 若松 佳子, 篠原 正弘, 佐藤 孝, 後藤 康仁, 北山 善之進, 鶴田 貴敬, 角田 正之, 山田 元
    1975 年 71 巻 6 号 p. 539-543
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    教室では,reserpine長期投与によってexhaustion stressにおちいったratの,脳のMAO活性値が上昇し,肝glycogen量が低下すること,またこれにMAOIを併用すると前者は抑制され後者は充進することを観察している.このことは,reserpineによる中枢由来のexhaustion stressが脳monoamineの増量によって拮抗されることを示唆しているものと考えられる.そこで今回は,末梢由来のexhaustion stressに対するMAOIの改善効果の有無を検討する目的で,末梢においてcatecholaminergic systemに拮抗するinsulinを長期投与してexhaustion stressを惹起させ,これに対するMAOIの併用効果を,前回と同様のindicatorで観察した.実験に使用した動物はWistar系の雄性ratで,生後20日前後のものを市販の固型飼料と水道水とをad lib,に与え約90日間教室で飼育した.薬剤の投与量および実験群の構成はinsulin群(41U/kg),MAOI群(nialamide30mg/kg),insulin+MAOI群および対照群(生理食塩液2ml/kg)で,それぞれの薬剤を隔日に腹腔内注射し,最終注射の16時間後に断頭し,MAO活性値はDNP法で,また肝臓glycogen量はAsatol-King法で測定した.結果:1)体重の増加傾向は対照と比較して各群ともに抑制された.2)MAO活性値はinsulin投与群で高い傾向を示した.またMAOI群よりMAOI+insulin群のほうが高い値を示した.すなわち,insulinのMAO活性の充進をnialamideが抑制した.3)肝臓glycogen量はinsulin投与群で高い傾向を示し,MAOIを併用した群では抑制された.
  • 堤 璋二, 野崎 茂, 前橋 浩
    1975 年 71 巻 6 号 p. 545-551
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    三酸化ヒ素(As2O3)の腸管からの吸収を調べる目的で,ウサギ回腸の一部にループを作り,その中にAs2O3 20mg/10mlを注入し,この回腸部分のみを環流する血液を経時的に採取し,吸収されたAs2O3量を測定し,さらにこのループを形成する腸平滑筋,腸間膜のAs2O3量およびループ内に残留したAs2O3量を測定した結果は次の通りである,無処置ウサギでは,注入されたAs2O3は60分間に約30%が血液中に吸収され,吸収のピークは約30分後であった.dimercaprol(BAL)またはthioctic acid(TA)を筋肉注射した後2時間目に,回腸ループ内にAs2O3を注入したところ,血液中As2O3吸収量は明らかに減少し,回腸ループ内As2O3残留量は増加した.しかし腸平滑筋,腸問膜のAs2O3量には変化がなかった.一方リンゲル溶液潅流法を用いて,回腸ループ内に,直接BALまたはATを注入したところ,As2O3の血液中吸収量は,対照群に比して明らかに減少した.以上の結果からBALおよびTAは循環器をへて,主に胆管から腸管内に排泄されて,亜ヒ酸イナンと結合するため,As2O3の腸管からの吸収を抑制するものと思われる.
  • 向出 惇, 亀山 勉
    1975 年 71 巻 6 号 p. 553-558
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    KetoprofenはUS-PF活性画分により惹起された遅発持続型血管透過性充進抑制効果はindomethacinとほぼ同程度の効果をあらわした.多核白血球遊走阻止効果はindomethacinより弱く,oxyphenbutazoneと同程度,mepirizoleよりは効果は顕著であった.
  • 小澤 光, 弘中 豊
    1975 年 71 巻 6 号 p. 559-571
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    dl-Mandelamidine(MA)の初期一過性血圧下降について検討を加えた.1)無麻酔ラット血圧に対して,MA(1~30mg/kg i.v.)を与えても血圧下降はほとんど認められないが,麻酔すると著明にみられた.papaverine(1~10mg/kg i.v.)もMAと同様な結果を示した.2)麻酔ラット血圧に対して,MA(10mg/kg i.v.)を短時間に連続的に投えても血圧下降には影響が認められず,さらにC6(5mg/kg i.v.),propranolol(1mg/kg i.v.),diphenhydramine(10mg/kg i.v.),atropine(2mg/kg i.v.)の前処理によっても抑制されなかった.またE(3μg/kg i.v.)の昇圧反応は,MA前処理後3分以内では抑制されるが,しかし5分以上経過すると逆に増強された.3)イヌ後肢血管潅流実験,椎骨動脈潅流実験において,MA(10μg/kg i.a.~1mg/kg i.a.)は後肢血管,脳血管の一過性拡張作用を示し,後肢血管におけるこの作用はatropine(2mg/kgi.v.),Propranolol(1mg/kg i.v.)により抑制されなかった.またNE(0.2μg/kg i.a.)の後肢血管収縮作用に対しても,MAは顕著な抑制を示さなかった.4)イヌ心肺標本,摘出モルモット心臓において,MAは大動脈圧,心拍数,分時拍出量,心収縮力などの抑制を示した.5)ネコ上頸部交感神経節後線維の電気刺激による瞬膜の収縮に対して,瞬膜側へ動注したMA(1μg/kg i.a.~1mg/kg i.a.)はphentolamine(10μg/kg i.a.)のような顕著な抑制を示さなかった.6)摘出ウサギ下行大動脈において,MA(3×10-6~3×10-4g/ml)によりNEの用量-反応曲線の著明な右方への平行移動はみられず,高用量では非競合的な抑制が認められた.以上の結果からMAの初期一過性血圧下降は,心臓血管系の直接的で非特異的な抑制作用によるものと思われ,MAのadrenergic α-遮断作用は非徴に微弱であることが推測される.MAの心臓におけるcatecholamine遊離作用についても,イヌ心肺標本,モルモット心臓,モルモット右心房活動電位の結果などから,非常に弱いことが確認された.
  • 高瀬 健一郎, 舛本 省三, 奥村 誠
    1975 年 71 巻 6 号 p. 573-583
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    2-(2-fluoro-4-biphenylyl)propionic acid(flurbiprofen,FP-70)は新らしい非ステロイド抗炎症剤でその作用を既存の薬剤と比較検討した.酢酸による毛細血管透過充進に対してFP-70はibuprofen(IP)の7.8倍,acetylsalicylic acid(AS)の61倍,indomethacin(IM)の5.7倍,phenylbutazone(PB)の25倍の抑制効果を示し,またcarrageenin浮腫に対してFP-70はIPの52倍,ASの250倍,IMの14倍,PBの110倍で,急性炎症に対して強力な抑制作用を有していることが認められた.皮膚紫外線紅斑においてもFP-70はIPの26倍,ASの790倍,IMの25倍,PBの68倍の抑制効果を示した.肉芽増殖抑制作用においてFP-70は比較した非ステロイド抗炎症剤と同様に効果を認めなかった.しかしCMC嚢法の白血球の遊出抑制はpredonisoloneと同程度の効果を認めた.ウシ血清albumin Fr.Vの熱変性に対してFP-70はIPと同程度の抑制作用を認め,IMおよびPBよりやや強く,ASの約10倍強い抑制作用を示した.Adjuvant関節炎による実験的慢性炎症についてFP-70の3mg/kg/day連続経口投与は同量投与のIMと同等かやや強い予防効果が認められた.従ってFP-70の抗炎症作用は副腎を介しない非ステロイド抗炎症剤であり,実験炎症に対する抗炎症作用は既存の抗炎症剤よりも強力であるので臨床での炎症や関節リウマチに対する効果が期待される.
  • 前田 幸英, 古川 達雄
    1975 年 71 巻 6 号 p. 585-595
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Ifenprodil(IP)の薬理作用をイヌ,ウサギ,モルモットならびにマウスを用いて検討した.1)イヌで,IP(0.1~1mg/kg)の静脈内投与によって,用量に応じた持続的な血圧下降,心拍数増加ならびに心収縮力増大作用を示した.このIPの血圧下降ならびに心拍数増加作用は脊椎イヌにおいても認められ,またIPの血圧下降作用はウサギではイヌに比べればやや強い傾向が認められた.イヌにおけるIPの循環器作用はatropine(1m/kg),diphenhydramine(5mg/kg)前投与ではほとんど影響されなかったが,propranolol(0,1mg/kg)前投与により心拍数増加ならびに心収縮力増大は完全に除去され,血圧下降はある程度抑制された.逆にadrenalineの血圧上昇作用はIP投与後は下降作用に逆転した。2)イヌの心肺標本では軽度の心拍出量増加,心収縮力増大,心拍数増加ならびに大動脈圧上昇作用を示した.3)ウサギにおける生体腸運動に対しては,一過性軽度の興奮作用を示し,摘出腸運動では中等濃度:(10-6)で軽度興奮,高濃度で興奮後抑制作用を示した.この興奮作用はatropineでは影響されず,その抑制作用はphenoxybenzamineおよびpropranololの併用投与によって軽度抑制された.またモルモット摘出腸管ではIP(5×10-5)は一過性軽度の興奮作用を示し,さらにhistamine興奮作用を著明に抑制した.4)モルモット生体気管支筋に対してはほとんど作用しないが,histamineの気管支収縮作用を著明に抑制した.5)マウスにおいて,IP(5~40mg/kg)の皮下投与で用量に応じて自発運動を抑制し,またthiopentalの睡眠時間を延長したが,筋弛緩作用は認められなかった.6)マウスの急性低酸素症に対する生存時間はIPの0.5,1mg/kgではほとんど影響を与えないが,5mg/kgでは短縮した.したがってIPはα遮断作用,軽度のβ作用ならびに中等度の抗ヒスタミン作用を有し,血圧下降,軽度の心臓興奮作用などの循環器作用,中等度の中枢抑制作用を示す薬物である。
  • 水沢 英甫, 榊原 栄一
    1975 年 71 巻 6 号 p. 597-608
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Ifenprodilの生体位心臓および血管系への影響を麻酔犬および無麻酔兎を用いて検討し,以下の結果を得た.1)Ifenprodil 12.5~5,000μg/kgの静脈内投与は犬血圧を下降し,下降の程度と持続は用量の増加に応じて増大した.Ifenprodilの降圧作用はphenoxybenzamine(5mg/kg)によって抑制されたが,atropine(2mg/kg),diphenhydramine(2mg/kg)およびpropranolol(0.5mg/kg)によっては有意の変化を受けなかった.脊髄切断およびreserpine処置動物でifenprodilの降圧作用は減弱した.2)Ifenprodil50~5,000μg/kgはadrenalineおよび両側総頸動脈閉塞による昇圧作用を著明に抑制したが,noradrenaline,昇圧作用は軽度に抑制したに過ぎなかった.Ifenprodil 1mg/kgはacetylcholine,迷走神経末梢端電気刺激およびhistamineによる降圧作用を軽度に抑制したに過ぎなかった.3)Ifenprodilの静脈内投与は血圧下降と同時に犬の総血管抵抗を減少し,各動脈城の血管抵抗を減少した.この時,椎骨動脈および大腿動脈血流量を著明に増大した.Ifenprodil0.01~5μg/kgの動脈内投与は各動脈血流量を用量に応じて増大し,特に,椎骨動脈および大腿動脈血流量を著明に増大した.Ifenprodilの動脈内投与による大腿動脈血流量増大作用はatropineによって変化を受けず,propranololおよびPhenoxybenzamineによって軽度抑制されたに過ぎなかった.Ifenprodilの静脈内投与による椎骨動脈血流量増大作用はphenoxybenzamineによって軽度抑制されたに過ぎなかった.4)IfenProdilの静脈内投与は血圧下降に伴って犬の心拍数を増加し,心収縮力を増大した.このような変化はpropranololおよびphenoxybenzamineによって遮断された.また,兎においても同様の変化が認められ,reserpine処置兎では逆に心拍数減少作用が認められた.5)以上の成績からifenprodilは主として椎骨動脈および大腿動脈血管に直接作用し,末梢抵抗を減少することによって血圧を下降することが示唆される.α-アドレナリン受容体遮断作用も一部関与するようである.
  • 野崎 正勝
    1975 年 71 巻 6 号 p. 609-629
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Pyrazolone骨格の4位を置換した各種の下熱鎮痛薬に対して非ステロイド系抗炎症薬bucolomeを配合併用し,薬理作用および急性毒性における併用効果を検討した.1)マウスにおいて酢酸writhing抑制作用を経口投与で険した場合,4位にalkylamino基を有する4A,MA,AMおよびIPAはbucolomeの併用によって相加的あるいは配合比によっては相乗的増強効果を示した。しかし4位が無置換のAN,alkyl基置換のIP,またaminoacylamino基置換のAPではすべての配合比において相加性を示したのみであった.マウスにおけるHaffner変法あるいはラットにおけるRandall-Selitto法による鎮痛効=果およびラットにおける正常体温下降作用においてもほぼ同様な傾向が認められた.なお,この増強作用はbucolome量がpyrazolone化合物量よりも多い場合に著明で,特にpyrazolone化合物1M:bucolome2Mの場合に最も明らかであった.2)急性毒性をLD50値でみた場合その薬理作用と同様ほとんどのpyrazolone化合物では相加的毒性を示した.しかし薬理作用において相乗的効果の顕著であった4AおよびAMではbucolomeの併用によって毒性は減弱し拮抗作用が認められた.3)相乗的効果を示したAMはbucolomeの併用によって血漿中濃度が有意に上昇し,消失速度も遅延した.しかし相加的であったIPではbucolomeの併用によっても血漿中濃度ならびにその持続に差異はなかった.以上の結果からpyrazolone化合物の4位にaIkylamino基が入った4A,MA,AM,IPAではモル比で2倍のbucolomeを併用することによって鎮痛作用は相乗的に増強され,他方毒性は拮抗減弱し理想的な配合効果が認められた.この併用による増強効果はpyrazolone化合物とbucolomeの分子間相互作用に基づく組織でのpyrazolone化合物濃度の有意な上昇および維持によるものと思われる.
  • 野崎 正勝
    1975 年 71 巻 6 号 p. 631-639
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    非ステロイド系抗炎症薬bucolomeに対して4位をalkylamino基で置換したpyrazolone化合物を配合した時の薬理作用の増強作用をpyrazolone化合物としてAMおよびIPを選び分子薬理学的に考察した.水溶液中にてbucolomeはAMの共存によってAM濃度依存的に溶解度を増大したがIPの共存は無影響であり,bucolome-AMの分子間相互作用が考えられた.またbucolomeのタンパク結合はAMによってやや阻害を受けた.紫外部差スペクトルより水溶液中で電荷移動複合体の可能性が考えられた.赤外スペクトルおよびNMRスペクトルより非水系においても水素結合を主体とする複合体形成が認められた.フロンティア電子密度からもbucolomeとAMが鍍合体を形成すると推定でき,bucolomeのNH,カルポニル基およびAMのヵルポニル基,dimethylamino基などを介する分子間相互作用が考えられた.Pyrazolone化合物の最高被占軌道準位の共鳴積分値と鎮痛作用の増強係数は良い相関性を示した.従って電荷移動,水素結合による分子間相互作用が薬理作用の増強効果の大きな因子と考えられた.
  • 柳沢 光彦
    1975 年 71 巻 6 号 p. 641-662
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット脳内における5-HT neuronの分布を知るためFalck and Hillarpの蛍光組織化学法を応用した.5-HT蛍光物質の同定にはLeitz顕微鏡蛍光分光光度計を用い,光源にはxenon lampをえらび,model実験および組織標本についての実験によって5-HT蛍光物質が励起波長420mμ,蛍光波長520mμにそれぞれpeakを示すことを確かめ,この波長特性をもつ蛍光neuronを5-HT neuronとした.Reserpine-nialamide前処置ラット脳の前頭断面ならびに矢状断面について,蛍光顕微鏡下に観察を行なった.脳を延髄,橋,中脳・間脳および終脳の5部に分かち,各部の前頭断面についてしらべると,DahlstromのいわゆるB1ないしB9細胞群の5-HT neuronは概ね正中矢状面の両側約200μの範囲内いわゆる縫線核に局在するのに対し,B3細胞群の多くのものおよびB9細胞群は縫線の両側にあって対称的に位置するのがみられた.この結果に基づき,正中矢状面から約50μ外側の断面について,これを約30箇所に区分し,各区分の蛍光写真撮影を行ない,これらを組合わせることによって同断面における5-HT neuronの分布写真を完成した.次にthiopental sodium80mg/kgの腹腔内投与後,脳各部の前頭断面において5-HT neuronの蛍光における変化をしらべると,対照例における5-HT neuronの微弱な蛍光はthiopental sodium投与後いずれも増強し,また蛍光によって認めうるneuron数も増加し,B7細胞群においてはその影響が最も著明に認められた,矢状断面でみるとnuc.suprachiasmaticusにおいても投与例においてはneuron終末に蛍光の増強がみられ,varicosityが明らかに認められるようになった.以上のように,脳内における5-HT neuronの分布を基礎として,thiopental sodium投与の影響をみると,投与後5-HT neuronに蛍光の増強が明らかに認められ,同neuronに5-HTが増量したことを示し,thiopentalの薬理作用が5-HT neuronを介して発現する可能性を示唆するものと思われる.
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