日本薬理学雑誌
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149 巻 , 3 号
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特集 加速する iPS 細胞の実用化研究
  • 小金澤 紀子, 花村 健次, 白尾 智明
    2017 年 149 巻 3 号 p. 104-109
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    医薬品評価系におけるヒトiPS細胞由来神経細胞を用いたin vitro試験系は,早期の副作用検出等のために期待されている技術である.しかしながら,ヒトiPS細胞由来神経細胞の安定した供給や培養技術の開発はあまり進んでいない.また高次脳機能をin vitro系で評価する方法の確立も待たれている.ここでは,ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた医薬品評価系実現を目指した開発の現状と,げっ歯類海馬由来培養神経細胞を用いた高次脳機能評価および医薬品評価系開発の現状について紹介する.これまでに我々はヒトiPS細胞由来神経細胞はその成熟速度が遅いことを示しており,成熟した神経細胞を対象とした医薬品評価系にはヒトiPS細胞由来神経細胞をすぐに用いることが難しいと考えられる.一方試験法の確立においては,アクチン結合タンパク質の一種であるドレブリンに着目した解析法を開発し,一定の成果を上げてきた.げっ歯類海馬由来培養神経細胞を用いてドレブリンクラスター密度を指標とすることで高次脳機能を評価することが可能であり,アルツハイマー病モデル神経細胞での例では医薬品評価への適応の可能性も示されている.さらに大量の化合物をスクリーニングすることを考え,この方法のハイスループット化も実現しつつある.96ウェルプレートでのげっ歯類海馬由来凍結神経細胞の培養法を確立させ,ドレブリンクラスター密度解析の自動化に成功している.加えて,ドレブリンクラスター密度による評価法の有用性も示された.新薬開発においては未だ非臨床試験と臨床試験の間にギャップがあるが,ドレブリンクラスター密度を指標としたin vitro試験法にヒトiPS細胞由来神経細胞を適用していくことで,そのギャップを埋められると期待される.

  • 諫田 泰成, 山崎 大樹, 関野 祐子
    2017 年 149 巻 3 号 p. 110-114
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    ヒトiPS細胞の技術開発は,今まで入手が困難だったヒト細胞が創薬プロセスの探索段階から非臨床試験に至るまで活用できることとなり,急速にヒトiPS細胞の利用が加速している.医薬品の安全性評価に関しては,ヒトiPS細胞由来心筋細胞を使った催不整脈性リスク予測が最も進んでおり,「健康・医療戦略」にiPS細胞技術を応用した医薬品心毒性評価法の国際標準化への提言が盛り込まれた.我々は日本安全性薬理研究会,製薬協関連コンソーシアムの協力のもとJapan iPS Cardiac Safety Assessment(JiCSA)を結成し,ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた薬理試験のプロトコルを確立した.さらに,研究施設間での実験結果の再現性を世界に先駆けて明らかにし,安全性薬理試験の国際標準化を推進している.本稿では,ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた安全性薬理試験の開発や国際バリデーション試験の状況について述べるとともに,動きベクトル解析など次世代の薬理試験についても概説する.

  • Marco Lindner, Georg Bauer
    2017 年 149 巻 3 号 p. 115-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    ヒトiPS細胞が樹立されて以来,再生医療や創薬への応用を目指した研究が世界中で行われている.これらの実現には,ヒトiPS細胞を大量に培養し,分化させ,目的の細胞のみを選別する必要がある.培養から選別までには複雑な操作があり,コストもかかるためまだ実用化には至っていない.これらを簡便に行う手段の一つとしてマイクロ流路デバイスが注目されている.マイクロ流路デバイスは,時間やコストの低減,高い再現性,自動化の利点があり,細胞の培養や分離,濃度勾配の作製に使用されている.また,人工的に臓器を模倣することも可能であり,動物試験の代替法として薬剤のスクリーニングや安全性試験への応用も期待されている.本総説では,マイクロ流路デバイスにより可能となった最新のアプリケーションや,マイクロ流路デバイスに適した材料について解説する.

総説
  • 門田 宰, 吉岡 祐亮, 藤田 雄 , 落谷 孝広
    2017 年 149 巻 3 号 p. 119-122
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    エクソソームは,ほぼ全ての細胞から分泌される脂質二重膜で囲まれた100 nm前後の小胞であり,タンパク質,核酸,脂質,代謝産物などにより構成される.エクソソームの産生機構については,エンドサイトーシス経路を介して形成され,多胞体が原形質膜と融合して細胞外に放出されると考えられている.近年,エクソソームは細胞間で移送され機能することから,細胞間情報伝達に関与することが判明した.現在,様々な疾患の病態形成へのエクソソームの関与が解明され始めており,エクソソームの各種特徴に着目した診断や治療,そして核酸医薬の新規ドラッグデリバリーシステムとしても研究されている.まだ未解明の点が多くさらなる研究の発展が必要であるものの,今後の臨床応用が期待される.

創薬シリーズ(8) 創薬研究の新潮流(11)
  • 朝長 毅
    2017 年 149 巻 3 号 p. 123-127
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    現在,世界的に新薬開発が停滞していると言われており,特に日本発の新薬は欧米に比して少なく,日本の創薬研究の現状は満足のいくものとはなっていない.その原因として色々なことが考えられるが,要因の一つは,疾患の原因の理解が進んでいない,具体的には,創薬のターゲットとなる疾患バイオマーカーが見つかっていないことであると思われる.疾患バイオマーカーの発見には,オミックス解析が不可欠である.近年,次世代シークエンサーの登場で,疾患関連遺伝子変異は数多く見つかってきており,病因の理解が深まっているように見えるが,それらの研究が創薬ターゲットとなるタンパク質の発見につながっていないことが問題である.一方,近年タンパク質を網羅的に解析するプロテオミクス技術の進歩には目覚しいものがある.その大きなブレークスルーの一つは,定量プロテオミクスおよび翻訳後修飾プロテオミクス技術の開発である.定量プロテオミクス技術に関しては,安定同位体標識法を用いた検体間のタンパク質の比較定量のみならず,selected/multiple reaction monitoring(SRM/MRM)法による検体中のタンパク質の絶対定量が可能になった.翻訳後修飾プロテオミクス技術については,前処理法や解析ツールの開発により,特にリン酸化プロテオミクスが格段に進歩した.これらのプロテオミクス技術の進歩は,様々な疾患の病態の解明,新しいバイオマーカーや創薬ターゲットの発見,種々の薬剤の作用機序の解明とコンパニオン診断薬の創出など医療の幅広い分野への応用を可能とする.本稿では,質量分析計を用いたプロテオミクス技術がどのように創薬に貢献できるかについて,これまでの我々の成果を織り交ぜながら紹介する.

新薬紹介総説
  • 伊藤 友香, 森 眞彦, 松本 有毅, 岡本 太郎
    2017 年 149 巻 3 号 p. 128-137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    マリゼブ®錠は,オマリグリプチンを有効成分とする週1回経口投与が可能な新規ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬である.オマリグリプチンは,シタグリプチンとDPP-4との結合様式を基に理論的に分子設計を行い,DPP-4に対して強力で選択的な阻害活性を示し,ヒトでの長い半減期が期待できる良好な薬物動態プロファイルを有するよう,最適化の過程を経て創成された.In vitroでヒトDPP-4に対するIC50値は1.6 nMであり,シタグリプチン(18 nM)の約10倍であった.マウスの経口ブドウ糖負荷試験でオマリグリプチンの血糖降下作用及びDPP-4阻害作用が示された.健康被験者においてオマリグリプチンは経口投与後速やかに吸収され,長い終末相消失半減期(>100時間)が確認された.オマリグリプチンが全身循環血中に長く滞留するメカニズムには,①見かけの分布容積が大きく組織中に幅広く分布する,②ほとんど代謝を受けず,未変化体として主に腎臓から排泄され,③受動的透過により腎で再吸収されるためクリアランスが低いという特徴的な薬物動態プロファイルが寄与すると考えられる.オマリグリプチンは週1回投与の最終投与から7日後のトラフ時でも80%以上のDPP-4阻害率を示し,効果が1週間持続することが示唆された.2型糖尿病患者を対象とした国内第Ⅲ相単剤投与試験では,オマリグリプチンの24週間投与は優れたHbA1c低下効果を示し,本邦で広く使用されている連日投与のシタグリプチンに対して非劣性を示した.また,空腹時血糖及び食後2時間血糖も低下させた.国内第Ⅲ相併用投与試験では,他の経口血糖降下薬と併用時でも優れた有効性が確認された.連日投与のDPP-4阻害薬と同様,オマリグリプチンは概して忍容であり,症候性低血糖の発現は低く,長期投与時の安全性も特筆する問題は認められなかった.患者を中心とした医療が重要とされる中,簡便な週1回投与が可能なオマリグリプチンは2型糖尿病患者を支える新たな治療選択肢として期待される.

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