日本薬理学雑誌
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116 巻 , 4 号
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  • 田島 清孝, 南里 真人
    2000 年 116 巻 4 号 p. 209-214
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    ミオクローヌスは一連の筋肉群に発生する突然,急速,短時間の不規則な不随意運動であり,進行性ミオクローヌスてんかん,低酸素脳症,アルツハイマー病などの疾患に伴って出現する,希ではあるが機能障害を示す極めて難治性な疾患である.ピラセタム (2-oxo-1-pyrrolidin-eacetamide,ミオカーム®)は30年以上も前に開発された環状γ-アミノ酪酸 (cyclic GABA) の誘導体であり,認知記憶障害の治療薬としてヨーロッパ各国で臨床使用されている.更に,ピラセタムは皮質性ミオクローヌスに対する抑制作用が報告されているが,ミオクローヌスの原因が不明であり,ピラセタムのミオクローヌスに関する基礎試験はほとんどなされていない.今回,ラットに尿素を過剰量投与した際誘発されるミオクローヌスに対するピラセタムの抑制作用を筋電図により検討し,抗てんかん剤クロナゼパムの抑制効果と比較した.尿素 4.5g/kg (i.p.) で誘発されるミオクローヌスにおいて,ピラセタム300mg/kg (i.p.) およびクロナゼパム 0.3mg/kg (p.o.) は,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.また,それぞれ単独では効果を示さない用量のピラセタム 100mg/kg とクロナゼパム 0.03-0.1mg/kg を併用すると,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.体内動態試験では,本剤は経口投与後,体内でほとんど代謝されず,ほぼ全量が尿中に未変化体として排泄され,ヒト血清タンパク質との結合率は低かった.7日間反復投与 P-I 試験においても,本剤は蓄積性を示さなかった.臨床試験は,イギリスでプラセボを対照薬とした二重盲検交叉法試験を実施し,皮質性ミオクローヌスに対する改善作用が示された.国内のP-II試験では,ミオクローヌスの有意な抑制作用と患者の quality of life (QO:L) の改善作用が示された.以上の結果から,ピラセタムは抗てんかん剤と併用することで難治性ミオクローヌス患者のミオクローヌスを抑制し,QOLを改善するという臨床上の有用性を示すことが明らかとなった.
  • 金澤 純二, 森本 眞, 大森 健守
    2000 年 116 巻 4 号 p. 215-223
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    酒石酸ビノレルビン (VNR) は Potier らによって半合成された新規のビンカアルカロイド誘導体である. VNRは他のビンカアルカロイドと比べ同等以上の抗腫瘍効果を示し,神経毒性が弱いという特徴を持つ.ヌードマウス移植ヒト腫瘍モデルにおいて, VNR はヒト腫瘍11株(非小細胞肺癌:4株,乳癌:3株,結腸癌:2株,胃癌:2株)のうち,非小細胞肺癌4株,乳癌2株および胃癌2株,計8株に対して有意な増殖抑制効果を示した.特にVNRは非小細胞肺癌の LC-6 および乳癌 MX-1 に対して腫瘍の退縮を伴う抗腫瘍効果を示した. VNRの非小細胞肺癌に対する抗腫瘍効果は,非小細胞肺癌の適応を持つビンカアルカロイド系抗癌薬のビンデシン (VDS) と比べ優れていた.また, VNR とシスプラチン (CDDP) との併用療法は,従来の標準療法である VDS と CDDP との併用に比べ優れていた. VNR の低神経毒性は, VNR の有糸分裂期の紡錘糸微小管に対する作用よりも神経軸索の微小管に対する作用が弱いことに起因すると考えられた.神経軸索の微小管が紡錘糸微小管より低感受性であることについては,微小管構成タンパクの一つである TAU タンパク異性体の関与が推察された.臨床において, VNR は非小細胞肺癌に対して従来の VDS に比べ有意に高い奏効率を示し, CDDP と併用すると VDS より奏効率および生存期間において有意に優れていた.乳癌に対しては,1st line だけでなく2nd lineとしても優れた奏効率が報告され,更にアントラサイクリン,5-FU,Taxol 等との併用で,優れた腫瘍効果が報告されている.本邦においては,現在,乳癌を対象とした治験が進行中である.
  • 大野 行弘
    2000 年 116 巻 4 号 p. 225-231
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    近年,中枢セロトニン-2 (5-HT2) 受容体の遮断が精神分裂病の陰性症状ならびに抗精神病薬による錐体外路系副作用を改善することが示されている.塩酸ペロスピロン (ペロスピロン) は1987年に住友製薬で見出された新規の serotonin-dopamine antagonist (SDA) 型抗精神病薬であり,脳内の5-HT2受容体およびD2受容体に対し高い結合親和性を有する.ペロスピロンはドーパミン神経の過剰興奮に基づく種々の異常行動を有意に抑制するとともに,従来の薬剤が奏効しない陰性症状モデルや情緒障害モデルにおいても改善作用を示した.また,ハロペリドールなど従来の抗精神病薬に比べ,その錐体外路系運動障害(カタレプシー,ブラジキネジアなど)誘発作用が弱いことが示されており,本薬は非定型抗精神病薬としての特性を有すると考えられる.さらに,最近実施された精神分裂病患者を対象とした二重盲検試験において,ペロスピロンがハロペリドールと同程度に陽性症状を改善し,その陰性症状に対する効果がハロペリドールに比べ有意に優れることが明らかにされた.また,ペロスピロン処置群における錐体外路スコアの変化もハロペリドール処置群に比べ低いことが示された.これらの成績は,精神分裂病治療におけるペロスピロンの臨床効果がハロペリドールに比べ幅広く,その錐体外路系副作用が緩徐であることを示唆しており,SDA型抗精神病薬としての薬理学的特性を反映しているものと考えられる.
  • 高橋 浩一郎
    2000 年 116 巻 4 号 p. 232-240
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    BMPは骨基質中に存在し,異所性骨形成を誘導するタンパク性因子として1965年 Urist により提唱された.現在までに約20種に及ぶヒト BMP ファミリーに属するタンパク質が同定されており, TGF-β スーパーファミリー中のサブファミリーを構成する.活性型 rhBMP-2 はアミノ酸数114,分子量16kDaのサブユニット2個が S-S 結合した二量体であり,分子量約3万の糖タンパクである. BMP はその名前の由来通り,担体とともに筋膜下・皮下に埋植すると本来骨が存在しない部位に骨組織が誘導されるが,本作用は未分化問葉系細胞の骨芽細胞・軟骨芽細胞への分化促進と他の系統の細胞への分化抑制によりもたらされていると考えられている.しかし, BMP の生体内における薬効を効果的に発現させるためには本物質を局所に保持し,適度な速度で放出させるような担体が必須である.適切な担体の条件として,(1)毒性・発癌性を有しないこと,(2)抗原性・起炎性がないこと,(3)生体内分解性であること,(4)加工・成形が容易であること,(5)量産・大量入手が容易であることなどがあげられるが,我々はこれら諸条件を満たす担体として poly D,L-lactic-co-glycolic acid (PLGA)/ゼラチン複合体 (PGS) の開発に成功した.この PGS に rhBMP-2を含浸させた rhBMP-2/PGS はウサギ,イヌおよびサルなどで良好な骨形成活性を示し,長管骨・顎骨・歯槽骨などにおける骨欠損で治癒促進効果が認められた.これら前臨床での有効性および安全性の検討に引き続き,現在臨床試験が行われ,その有効性がヒトにおいても検証されつつある.
  • 田中 利男
    2000 年 116 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    ゲノムプロジェクトの成果を基盤としたゲノムサイエンスは,医学生物学全般に大きなインパクトを与えただけではなく,薬理学の研究戦略においても,極めて短期間にパラダイムシフトを起こした.すなわち薬理ゲノミクス (pharmacogenomics, 薬理ゲノム科学) の誕生である.薬理ゲノミクスとは,ゲノムシークエンス後の遺伝子多型 (ゲノム),遺伝子発現プロファイル (トランスクリプトーム), プロテオームにおける包括的解析を基礎に,ヒトゲノム上の新しい創薬標的を効率良く探索し,ターゲットバリデーション (target validation) を可能にするだけではなく,患者個人の遺伝子多型情報に基づいた至適薬物療法を実現するものである.さらに,薬物応答性や副作用をゲノムレベルで解明し,予測を可能にすることも目的とする.本稿では,主に薬理ゲノミクスにおけるトランスクリプトーム解析の役割と実際について,我々の技術と新規創薬ターゲット探索における成果を中心に解説を試みる.特に,蛍光ディファレンシャルディスブレイとマイクロアレイ (DNAチップ) について,それぞれの特徴について比較を試み,目的に応じて使い分ける必要性を示す.
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