日本薬理学雑誌
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131 巻, 3 号
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総説
  • 鍵山 直子
    2008 年 131 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル フリー
    平成17年(2005年)の動物愛護管理法改正により,動物実験の国際原則である3R(Replacement,Reduction,Refinement)の理念がはじめて明文化された.3Rのもとに,実験動物の飼養保管と苦痛軽減に関する基準(環境省)および動物実験に関する基本指針(文科省,厚労省,農水省)とガイドライン(日本学術会議)が制定され,2006年に一斉施行された.欧州諸国は動物実験を法規制しているのに対して,わが国とアメリカでは機関長の責任の下で研究者が自主的に管理している.自主管理の事実上の推進役は機関内の動物実験委員会である.動物の苦痛と動物実験がもたらす恩恵(意義)の比較(cost-benefit analysis)のもとで,動物実験計画を審査する権限が与えられている.研究者は,実験の恩恵(意義)について説明責任を果たすと同時に,動物の苦痛を正しく理解し,可能な限り軽減しなければならない.そのため実中研の委員会は,動物実験審査要領を策定し実験処置コード表を添付した.ここでは,洗い出された129種類の実験処置のひとつひとつに苦痛度が明記されている.委員会は審査要領を3カ月ごとに見直すとともに,研修会や所内WEBを通じて所員に周知を図っている.苦痛度の周知は動物実験倫理に関する所員の教育にきわめて有効である.
  • ─酵素阻害薬の阻害定数の推定の事例─
    山崎 亜紀子, 久米 英介, 田中 澄子, 浜田 知久馬, 吉村 功
    2008 年 131 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル フリー
    酵素阻害定数Kiの推定には統計学的には非線形回帰法を用いることが推奨されている.しかし,アンケート調査を行った国内製薬企業の創薬研究ではLineweaver-Burkプロットなどの直線を当てはめる方法(従来法)が使用されていた.従来法は非線形回帰法に比べて推定精度が劣り,ときに極端に偏って推定された値の発生をもたらす.実際の実験データを用いて従来法と非線形回帰法で阻害定数Kiを推定したところ,両者の間には3倍から1/4倍の違いが生じた.また,従来法はMichaelis-Mentenモデルに整合しない結果をもたらしやすかった.さらにモンテカルロ法で定量的な性能比較を行ったところ,従来法は非線形回帰法に比べて推定精度が悪く,真値から大きく外れた推定値が生じることがあることが分かった.従来法の欠点は論理的な考察からも明らかなので,阻害定数Kiの推定には非線形回帰法の活用を推奨する.
治療薬シリーズ(24) 片頭痛治療薬
  • 石井 健敏, 谷口 弘之, 斉藤 亜紀良
    2008 年 131 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル フリー
    片頭痛は頭痛発作を繰り返す疾患であり,本邦では人口の8.4%に存在する.男性に比べて女性での発症率のほうが高く,症状は悪心および嘔吐を伴うことが多い.痛みは激烈で,日常生活および社会生活に大きく影響することから,その病態の解明や治療法の確立は重要且つ急務であると考えられる.片頭痛の治療は,本邦においても2000年にトリプタン製剤が承認されて以降,スマトリプタンを含み合計4種類が臨床で使用されるようになり,新時代を迎えた.セロトニン1B/1D受容体作動薬であるトリプタン系の薬剤は片頭痛に対して治療有効性が高く,多くの患者に有益な効果と日常生活の質の向上をもたらした.しかし,トリプタン製剤もその治療効果は必ずしも十分であるとは言い切れない.また,血管収縮作用を有することから,その使用にあたり制限があることや,熱感,倦怠感,めまいなどの副作用が誘発されるなど,いまだ問題を抱えている.したがって,片頭痛の治療において新規な作用メカニズムを有する薬剤を創製することは今後も必要であろう.片頭痛の発症機序および病態生理についてはいまだ十分には解明されていないものの,血管説,神経説および三叉神経血管説の3つの仮説が有力である.これら3つの仮説のいずれかに当てはまる現象を指標として創薬研究が行われている.
  • ─薬物治療の問題点と今後望まれる薬剤
    清水 利彦, 鈴木 則宏
    2008 年 131 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル フリー
    セロトニン5-HT1B/1D受容体アゴニストであるトリプタン系薬剤は片頭痛急性期発作に用いられ,多くの患者で著効する.本邦ではスマトリプタン,ゾルミトリプタン,エレトリプタンおよびリザトリプタンの4種類が使用可能なトリプタン系薬剤である.あるトリプタン系薬剤が無効な場合,別のトリプタン系薬剤が有効なこともあり,そのような症例では他のトリプタン系薬剤への変更を試みる価値がある.しかし片頭痛発作に対しすべてのトリプタン系薬剤が無効な症例も知られている.このため片頭痛の病態生理にもとづき新しい片頭痛治療薬として5-HT1F受容体作動薬,5-HT1D受容体作動薬,CGRP受容体作動薬,アデノシンA1受容体作動薬,TRPV1受容体作動薬およびGABA受容体作動薬などが候補としてあげられ開発や臨床試験が現在行なわれている.
創薬シリーズ(3) その3 化合物を医薬品にするために必要な安全性試験
  • 中村 和市
    2008 年 131 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/14
    ジャーナル フリー
    全ての新医薬品について免疫毒性の評価が求められている.免疫毒性の評価は,まず標準的毒性試験によって行われるが,標準的毒性試験で免疫毒性の疑われる所見が認められた場合や免疫系に対する意図的でない薬理作用が懸念される場合などには免疫機能検査を中心とした追加の免疫毒性試験を実施する必要がある.免疫機能検査としては,T細胞依存性抗体産生能の測定,NK細胞活性の測定,細胞性免疫機能検査,マクロファージや好中球の機能検査および宿主抵抗性試験などがある.これらの中から免疫毒性の標的細胞を考慮して免疫機能検査を選択することになるが,標的細胞が特定されていない場合は通常T細胞依存性抗体産生能の測定が選択される.臨床におけるリスクの評価が不十分であれば,試験をさらに追加して実施する.このように,医薬品の免疫毒性評価は段階的に行われる.
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