Na
+/H
+交換系は細胞膜に存在するNa
+とH
+の交換を行う輸送タンパク質で, 電気的には等価でNa
+とH
+を逆方向に交換し, 通常はH
+の細胞外への排出をNa
+勾配を利用して行い, 嫌気的な代謝や酸化的代謝で発生するH
+を排出している. アイソザイム1が心筋に存在し, 生理的および病態生理的に重要な役割を果している. またプロテインキナーゼCを介するリン酸化で活性化される事から交感神経α刺激, プリン受容体刺激, エンドセリン, アンジオテンシン受容体刺激, さらにトロンビンもNa
+/H
+交換を促進させる. H
+の増加が急激に起こる心臓の虚血·再灌流時にはNa
+/H
+交換系の果す役割は特に重要になると考えられ, 虚血が起こりH
+の増加が起これば, Na
+/Ca
2+交換系を介してNa
+を細胞外に排泄することになり(reverse mode), それと共に細胞内にCa
2+が増加し, いわゆるCa
2+オーバーロードを起こすことが考えられる. このNa
+/H
+交換系を抑制する選択的薬物としてカリポリド(cariporide, HOE642)が古くから利尿薬として使われているアミロライドから開発された. Na
+/H
+交換系のアイソザイム1を選択的に抑制する薬物で, その他の薬物と共に, 動物実験レベルでは, 虚血による各種心筋障害を抑えることが示されている. 心筋障害という言葉は広い意味を含むが, 多くの場合は動物心筋梗塞モデルにおける虚血領域に占める壊死に陥った割合, すなわち梗塞サイズの縮小をもって評価する事が多く, Na
+/H
+交換薬についても縮小することが示されている. またβ遮断薬, Ca
2+チャネル抑制薬, Na
+チャネル抑制薬などの薬物と異なり, Na
+/H
+交換薬では虚血を開始した後の投与でも有効であることが, 今後の臨床応用において注目されている. 本総説では特に抗細動作用を中心にNa
+/H
+交換薬の現状をまとめてみた.
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