日本薬理学雑誌
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90 巻, 6 号
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  • 石川 敏三, 佐野 隆信, 黒田 泰弘, 副島 由行, 前川 剛志, 坂部 武史, 武下 浩
    1987 年 90 巻 6 号 p. 303-312
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    高血圧自然発症ラットの両側総頸動脈結紮による脳虚血モデルを用い,Buflomedilの脳保護作用を検討した.実験は永久結紮後の生存率と墨汁灌流及び3時間結紮による局所脳血流量([14C]-Iodoantipyrine法)とブドウ糖代謝率([14C]-Deoxyglucose法)に及ぼす影響に分けて検討した.永久結紮後,24時間生存率は対照群(生理食塩水経口投与7日間)6%に対し,Buflomedil群(経口投与7日間)では,30mg/kgで38%,90mg/kgで44%と有意に高かった.また,墨汁灌流を行い得たラットで,早期死亡(3時間以内,対照群及びBuflomedil群)では,脳幹及び小脳のみの墨汁流入であったが,Buflomedil群の生存例では,内頸動脈系にも墨汁流入が認められた.3時間結紮の実験では,虚血時(結紮3時間後)の局所脳血流量は,Buflomedil群(30mg/kg,経口投与7日間)の方が対照群に比し,大脳皮質で71~128%,扁桃核,尾状核・被殻,側座核,淡蒼球で61~150%,内包で82%それぞれ有意に高値であった.3時間虚血後再灌流2時間の局所脳血流量は,両群間に差はなかった.局所脳ブドウ糖代謝率は,3時間虚血後再灌流2時間で,大脳皮質,蝸牛核,前庭神経核において,Buflomedil群が対照群に比べ26~48%有意に高かった.以上から,Buflomedil投与は永久結紮後24時間の生存率を上昇させることが判った.これにはBuflomedilが虚血時の血流低下を軽減する作用があることが関与していると考えられた.
  • 越山 良子, 小堀 明美, 荻原 まどか, 横本 泰樹, 大谷 京子, 島村 和位, 岩城 正廣
    1987 年 90 巻 6 号 p. 313-320
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    FUT-175(nafamostat mesilate)の血液凝固およびDICモデルに対する作用を検討した.FUT-175はラット血液に添加した場合,活性化部分thromboplastin時間(APTT)において,1×10-6Mで対照の約2倍に凝固時間を延長した.この作用はheparinの0.3U/mlあるいはgabexate mesilateの1×10-3Mに相当した.また,prothrombin時間(PT),thrombin時間(TT)においても,FUT-175は明らかな抗凝固作用を示した.endotoxin誘発DICモデルに対しては,endotoxin投与開始直前にFUT-175を腹腔内投与した場合と,endotoxinと同時に静脈内に持続投与した場合の作用を検討した.いずれの場合もFUT-175投与により,血液凝固時間の延長,fibrinogen量,血小板数および補体価の減少,FDPの増加は抑制または抑制傾向を示した.さらに,FUT-175持続投与群において,腎糸球体のfibrin沈着を検討したところ,改善が認められた.以上のように,FUT-175は強い抗凝固作用を有し,実験的DICモデルに有効であることが判明した.
  • 安松 浩, 山本 吉延, 高椋 寛美, 阿南 惟毅, 竹原 修造, 瀬戸口 通英, 丸山 裕
    1987 年 90 巻 6 号 p. 321-330
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    Pulsinelli and Brierleyの方法に従って作製したラットの一過性脳虚血誘発実験的学習・記憶障害モデルに対するY-8894の作用を,一試行性受動回避反応およびポールクライミング条件回避反応を指標に検討し,以下の結果を得た.1)一試行性受動回避反応における600秒間脳虚血負荷による反応潜時の短縮に対して,Y-8894(2.5,5および10mg/kg,i.p.)は有意な拮抗作用を示し,その作用は5mg/kgで最も著明であった.対照薬のcalcium hopantenate(100,250および500mg/kg,i.p.)およびdihydroergotoxine(5および10mg/kg,i.p.)は反応潜時を延長する傾向を示したが,有意差を得るには至らなかった.一方,cholinesterase阻害薬であるphysostigmine(0.025,0.05および0.1mg/kg,i.p.)は有意に反応潜時を延長し,その作用は0.05mg/kg,i.pで最も著明であった.2)ポールクライミング条件回避反応における回避率も600秒間脳虚血により偽手術群に対し,有意に低下したが,Y-8894(5mg/kg,i.p.)はこの低下に拮抗する傾向を示した.3)Y-8894(5mg/kg,i.p.)は600秒間脳虚血負荷によるエネルギー代謝系の変化に対する回復促進作用および細胞膜障害の原因となるcholine含量の増加に対する抑制作用を示した.以上の結果より,Y-8894はラットの一過性脳虚血誘発実験的学習・記憶障害に対して改善作用を有することが示唆された.
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