蛍光性のSH試薬であるBIPM (N-[P-(2-benzimidazolyl) phenyl] maleimide) で修飾したNa
+, K
+-ATPaseの蛍光強度 (F) 変化をもとに,強心配糖体ouabainとNa
+, K
+-ATPaseとの結合状態を調べた. 0.43mM Mg
2+, 16mM Na
+, 27μM ADPと27μM Pi存在下の酵素にouabainを添加すると, FとPiから形成されたリン酸化酵素 (EP) 量は,同じ時問経過でゆっくりと増加した. Fの増加の程度はouabain濃度に依存し, Hillプロットの結果, Hill係数nは0.27,見かけの親和性K
1/2は0.84μMであった. 93μMとなるouabainを添加すると, FはK
+感受性リン酸化酵素 (E
2P) のFに類似した最も高いレベルへと増加し, EP量はMg
2+, Na
+とATP存在下で形成されるE
2P量の50%程度まで増加した. ADPはouabain結合量には影響を与えることなくPiからのリン酸化を阻害した. 0.43mM Mg
2+, 6mM Na
+と27μM ADP存在下の酵素へのouabain添加によって生じるFの増加の程度は, 27μM Piの有無にかかわらず同程度であった. 2.6mMとなるとPiと27μMとなるADPは, Fの増加の程度には影響を与えることなく, Fの増加の速度をPiは促進しADPは遅らせた. Na
+結合酵素にouabainを添加すると, Fは経時的にE
2PのFに近いレベルまで増加した.これらの結果は, ouabainはNa
+, K
+-ATPaseの非リン酸化状態にも結合しうることと, ouabain結合Na
+, K
+-ATPaseはリン酸化の有無にかかわらずE
2Pとほぼ同程度の高いFを示すコンフォーメーションにあることを示唆する.
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