日本薬理学雑誌
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72 巻, 7 号
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  • 矢島 孝, 瓜谷 克子, 青木 理恵, 鈴木 勉, 中村 圭二
    1976 年 72 巻 7 号 p. 763-794
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    clonazepamの抗けいれん作用を中心に中枢作用を検討し,以下の成績を得た.1)マウス,ラットで鎮静,馴化,筋弛緩作用が認められ,雌雄成犬で後肢弛緩,鎮静がみられた.2)各種の抗てんかん薬と比べ,マウス,ラットで抗Metrazolけいれん,マウスで抗電撃ショック,抗strychnine,抗picrotoxin作用においてはるかに強力であり,特に抗Metrazo1けいれん作用が著しく認められた.3)マウスで抗Metrazolけいれん,抗電撃ショック作用に連投の影響は認められず,ラットで抗Metrazolけいれん作用に雌雄ともに連投の影響は認められなかった.さらに慢性電極植込みラットに本剤を連投すれば,海馬後発射の刺激閾値の上昇がみられた.なおマウス,ラット共に本剤による筋弛緩作用は連投により消失した.4)抗Metrazolけいれん,抗電撃ショック作用においてマウスで週令差を認めず,抗Metrazo1けいれん作用においてラットの雌雄間に差を認めなかった.5)抗てんかん薬との併用効果に関し,マウスにおいてphenobarbital,ethosuximideの抗Metrazolけいれん,およびdipheny1・hydantoin,phenobarbital,trimethadione,ethosuximideの抗電撃ショック作用を本剤は増強した,6)無拘束ラットで海馬,扁桃核刺激による脳波後発射およびMetrazolによる間代性けいれん,脳波発作波を著明に抑制したが,皮質刺激による脳波後発射を抑制しなかった.またgallamine不動化ネコで海馬,扁桃核,正中中心核刺激による脳波後発射を抑制した.しかし中脳網様体刺激による覚醒反応は持続が著しく短縮されたが,閾値上昇は来たさなかった.さらに扁桃核-海馬間誘発反応は著明に抑制された.なお中枢性抗コリン作働薬による増大反応を抑制した.両側海馬間誘発反応には影響は認められなかった.7)脊髄ネコ標本で後根反射の著明な増大およびsynaptic recoveryの減少がみられたが強縮後増強への作用は認められなかった.
  • 伊藤 敬三, 塗本 精一, 新冨 敬一, 山村 道夫, 石田 柳一, 甲和 良夫
    1976 年 72 巻 7 号 p. 795-813
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Penfluridol(TLP-607)の中枢薬理作用をhaloperidolおよびchlorpromazineのそれと比較検討して以下の成績を得た.TLP-607のイヌapomorphine嘔吐抑制作用はhaloperidolおよびchlorpromazineのそれより強く,ED50値の2.5倍量の投与により約1週間持続した。TLP-607の抗methamphetamine作用,catalepsy誘発作用および条件回避反応抑制作用はhaloperidolの作用より弱く,chlorpromazineのそれより強かったが作用持続はいずれも両者より長く,それぞれのED50値の2倍量投与により,24~48時間後まで作用が持続した.また,TLP-607の正常体温降下作用,馴化作用および鎮痛作用は,haloperidolおよびchlorpromazineのそれより弱かったが,作用持続はいずれも両者より長かった,麻酔増強作用,協調運動抑制作用,抗痙攣作用および抗reserpine作用はTLP-607に認められなかった.以上の結果,TLP-607はhaloperidolやchlorpromazineなどのmajor tranquilizerと同様にdopaminc受容器遮断作用を有していることが示唆され,しかもその作用が極めて長時間持続する抗精神病薬であると考えられた.
  • 長谷川 和雄, 酒井 豊
    1976 年 72 巻 7 号 p. 815-826
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    雄性の今道ウイスターラットの外側視床下部後部に双極性慢性電極を植え込み,self-stimulation(SS)行動におけるカテコールアミン作働系の関与と向精神薬の作用を調べた.1)外側視床下部およびdorsal noradrenaline bundleに同時に電極を植え込んだラットにおいて,いずれもSS行動が観察された.2)閾値陽性強化のSS行動をmethamphetamine(0,25,0.5,1mg/kg,i.p.)は用量依存的に促進した.このmethamphetamineのSS行動促進作用に対して,imipramine(5,10,20mg/kg,i.p.)の前処置はmethamphetamineの作用を増強したが,chlorpromazine(1.5mg/kg,i. p. )は抑制した.中等度陽性強化においては,methamphetamineはSS行動を促進したが,imipramine(0.3~20mg/kg,s.c.)は有意な作用を有しなかった.一方,chlorpromazine(2,4mg/kg,S.C.)はSS行動を著明に抑制した.3)Dopamine β-hydroxylase阻害薬のFLA63(25mg/kg,i.p.)およびU-14,624(200mg/kg,i.p.)はSS行動を抑制した.脳内norepinephrine量はいずれも有意に減少したが,dopamine量はFLA63では有意に増加し,U-14,624では増加の傾向を示した.4)Apomorphine(0.1,0.3,1mg/kg, i.p.)は閾値陽性強化のSS行動を促進せず抑制した.5)l-Norepinephrincの側脳室内投与において,0.5μgでは作用は認められなかったが,5μg以上では促進が認められた。しかしdopamine(0.5,5,20μg)は全く作用しなかった.7)以上のことから,外側視床下部後部の陽性強化にはノルエピネフリソ作働系が主に関与し,ドパミン作働系の関与は少ないものと結論した.
  • 長谷川 和雄
    1976 年 72 巻 7 号 p. 827-835
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    雄性の今道:ウィスターラットの黒質に双極性慢性電極を植え込み,self-stimulation(SS)行動におけるノルエピネフリン作働系およびドパミン作働系の関与を調べた.1)黒質のSS行動時に,レバーを押す毎に電極と反対側の前肢を上にあげ,より外側におろす運動,ならびに頭を上にあげ反対側におろす特有の運動がみられた.2)閾値陽性強化のSS行動をmethamphetamine(0.25,0.5,1mg/kg,i.p.)は用量依存的に促進した.Imipramine(5,10mg/kg,i.p.)単独では明らかな作用はみられなかったが,前処置するとmethamphetamineの作用を増強した.3)Dopamine β-hydroxylase阻害薬のFLA63(25mg/kg,i.P. )およびU-14,624(200mg/kg,i.p.)は中等度陽性強化のSS行動を著明に抑制した.4)Apomorphine(0.1,0.3,1mg/kg,i.p.)は閾値陽性強化のSS行動を全く増強せず,用量依存的に抑制した.5)l-Norepinephrineの側脳室内投与において,1μgでは作用が認められず,5および20μgで明らかにSS行動を促進した.しかしdopamineは5~50μgのいずれも顕著な作用をきたさなかった。6)以上のことから,黒質の陽性強化にはドパミン作働系よりもノルエピネフリン作働系がより重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 清水 武, 浜川 博司, 戸塚 鉄男, 大野 宏士
    1976 年 72 巻 7 号 p. 837-850
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Guanazodineの降圧作用とその発現機序について,種々の条件下の生体位動物および摘出臓器を用いてguanethidineおよびbethanidineと比較検討した.1)Guanazodineは自然発症高血圧ラット(SHR),腎性高血圧犬およびネコの血圧を持続性に下降し,SHRに連続投与(10日間)しても降圧作用の減弱はほとんど認められなかった.また,心拍数は減少傾向を示した.Guanazodineによる初期の血圧上昇はα-blockerで抑制された.2)Guanazodineは麻酔ネコを起立位にした時におこる血圧上昇を下降に転じさせたがguanethidineおよびbethanidine処置後に比べて血圧下降の程度は弱い傾向を示した.3)Guanaz。dineはネコ血圧に対するnoradrenaline(NA)およびtyramine作用を増強するが,大量(10mg/kg,i.v.)投与ではtyramine作用は抑制された.4)Guanazodineはネコ瞬膜を弛緩し,イヌの心臓交感神経節前節後刺激による心拍数増加を抑制し,ウサギ洞房結節経壁刺激による律動数増加を抑制した.また,ウサギ大動脈経壁刺激による収縮力増大を抑制したが,この作用はmethamphetamine前処置により抑制された.5)Guanazodineはラット心臓内NA含量を持続性に減少させた.しかし,脳内アミン(NA,dopamineおよび5-hydroxytryptamine)および副腎内アミン(NA,adrenalineおよびdopamine)含量を有意に変化しなかった.6)ラット静注LD50値は136±11mg/kgであり,その値はguanethidineの4倍,bethanidineの7倍であった.7)以上の結果から,guanazodineはアドレナリン作動神経遮断ならびに同神経含有NA量を減少することにより交感神経の緊張性支配を減弱せしめ血圧を下降することが示唆される.効果の強さと持続性はguanethidineに匹敵しbethanidineより明らかに優れ,その毒性および副作用はguanethidineやbethanidineより弱い傾向を認めた.
  • 小澤 光, 野津 隆司, 相原 弘和
    1976 年 72 巻 7 号 p. 851-860
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Lithium(Li)塩:の躁うつ病治療における中枢作用部位を検索するため,Li塩をラットに投与して脳各部位へのLiの分布を調べるとともに,血液と尿中の電解質ならびにLi塩の単独投与およびmethamphetamine併用下での脳各部位の電解質とnorepinephrine(NE)代謝に対する影響を調べた.Li塩の1回投与で脳各部位のLi濃度は,視床下部を除き,いずれも投与12時間後を最高値とする緩やかな増減がみられ,24時間後までは血中濃度以下であった.視床下部へは初期に他部位に比較して高い分布があり,ある程度のLi親和性が認められた.これに対しLi塩の反復投与では脳の特定部位への蓄積性は認められなかった.一方,Li塩を反復投与すると尿量が増大し,尿中のナトリウム(Na),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)は増加または増加傾向にあったが,血中のNa,カリウム(K),Mg,Ca濃度には有意な変化はみられなかった.またLi塩の単独投与では,脳のいずれの部位にもNa,K濃度およびNE代謝に影響を認めなかったが,Li塩を4.5日間1日2回腹腔内投与後,metham-phetamineを投与した場合には,Liにより脳各部位のNa.K濃度は変化しなかったが,NE代謝において視床下部と海馬でmonoamine oxidase代謝物の増加を認めた.従ってLi塩投与により視床下部において,ある程度のLi親和性を認め,NE代謝に影響がみられたことから,Liの中枢作用部位の一つとして視床下部の可能性が示唆された.
  • 土屋 俊郎, 福島 英明, 北川 純男
    1976 年 72 巻 7 号 p. 861-877
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Gallamine不動化ネコを用い,penicillin G1,000,3,000および6,000単位を大脳皮質感覚運動野麺下3mm,麟核および視床髄板内核に注入し,出現する原発性けいれん波,伝播性けいれん波および反応性けいれん波に対するbenzodiazepine系化合物(clonazepam,nitrazepamおよびdiazepam)の作用を検討した.Penicillin注入量によって原発性けいれん波の周波数,持続時間,発作頻度の増減および他部への伝播の程度が変化した.Penicillin6,000単位を注入した際,いずれの注入部位についてもbenzodiazepine系化合物5mg/kg i.v.はけいれん発作の持続時間を短縮し,その後に出現する間漱期を延長した.低用量のpenicillin(1,000あるいは3,000単位)を注入した際には,原発性,伝播性および反応性けいれん波を抑制した.大脳皮質感覚運動野からのpenicillin誘発牲けいれん波は対側同野に著しく波及し,大脳辺縁系,中脳および視床下部にも波及した.皮質下への伝播はbenzodiazepine系化合物の低用量で抑制されたが,対側同野の伝播は原発性けいれん波を抑制するのに要したと同じ高用量によってのみ抑制された.扁桃核からのpenicillin誘発性けいれん波は海馬および視床下部に著しく波及し,対側扁桃核には原発性けいれん波の終熔後反応性けいれん波が出現した.Benzodiazepine系化合物は反応性けいれん波および海馬の伝播性けいれん波を低用量で抑制したが,視床下部への伝播に対しては原発性けいれん波を抑制したと同じ高用量によってのみ抑制した.視床髄板内核からのpenicillin誘発性けいれん波は大脳辺縁系に著しく波及し,ついで皮質に波及した.このけいれん発作の場合,benzodiazepine系化合物の伝播性けいれん波を抑制する用量と原発性けいれん波を抑制する用量に著しい差は認められなかった.各種benzodiazepine系化合物の原発性けいれん波抑制の最小有効量はpenicillinの注入部位の如何にかかわらずclonazepamが最も小さかった.
  • 秦 多恵子, 喜多 富太郎, 米田 良三
    1976 年 72 巻 7 号 p. 879-890
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    家兎のワクシニアウイルス増殖皮膚組織よりの抽出物であるNeurotropin(以下NSP)の一般薬理作用ならびに抗潰瘍作用を調べ,また他の薬物のそれと比較し次の成績を得た.1)摘出筋に対するNSPの作用をMagnus氏法で調べたところ,ザリガニならびにマウスの摘出腸管における自動運動およびacetylcholine収縮に対してはほとんど無作用で,またマウス摘出腸管におけるadrenaline弛緩においても無影響であった.モルモットの摘出小腸ならびに気管平滑筋におけるhistamine収縮に対しては非生理的な高濃度においてのみわずかに拮抗的に作用した.蛙腹直筋においてもNSPの直接作用ならびに抗acetylcholine作用は認められなかった.2)El-マウス痙攣には無影響であった。3)マウスの自発運動ならびに探索行動を抑制した.4)Hexobarbital-Naによるマウスの睡眠時間を延長した.5)マウスのtremorine振せんを抑制したが,ラットのpcrphenazineカタトニーには無影響であった.6)ラットの血圧に対する作用をみると,Wistar系ラットの正常血圧には無影響であったが,高血圧自然発症ラット(SHR)の高血圧を降下させた.またこの降圧の程度はreserpineやα-methyl-DOPAの場合とは異なり正常血圧レベル近くまでであった.7)実験的消化器潰瘍のうち,ラットの幽門結紮潰瘍については無効であったが,拘束水浸ストレス潰瘍を抑制した.またモルモットのヒスタミン潰瘍に対しても抑制的に作用した.
  • 藤原 寛, 稲垣 千代子, 池田 康雄, 田中 千賀子
    1976 年 72 巻 7 号 p. 891-898
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    脳および腎臓L-芳香族アミノ酸脱炭酸酵素粗酵素標品を用いて,3,4-dihydroxyphenyl-serine(DOPS)の脱炭酸反応を検討した.1)DOPS脱炭酸の反応条件を検討した.反応開始後20分間は直線的に反応が進行した.pH7.8~8.2および反応温度37°Cで最大反応速度が得られた.(腎酵素によるracemicerythro-DOPS脱炭酸反応は例外で,45°Cまで直線的に増大した).2)この条件下での脳および腎酵素でのNE生成量はracemicerythro-DOPSが最も大きく,次でL-threo-DOPS,racemic threo-DOPSの順で,D-erythro-DOPSおよびD-threo-DOPSからのNE生成はほとんどみとめられなかった.脳酵素ではL-threo-DOPSに対するKm1.43×10-3M,Vmax2.22nmoles NE/mg/15min,racemic erythro-DOPSに対するKm10-3M Vmax,4.3nmoles NE/mg/15min,であり,腎酵素ではL-threo-DOPSに対するKm1.37×10-3M,vmax 21nmoles NE/mg/15min,racemic erythro-DOPSに対するKm8.7×10-4M,vmax 16,7nmoles NE/mg/15minであった.3)L-threo-DOPSの脱炭酸酵素による反応はD-thrco-DOPSにより阻害され,その阻害様式は非競合的であった.4)L-threo-DOPSおよびracemic-erythro-DOPSから生成したNEのウサギ大動脈条片収縮作用は,純品l-NE10-8g/mlに比べ,L-threo-DOPSからのNE10-8g/mlは約95%の反応を示したが,racemic-erythro-DOPSからのNE10-8g/mlはほとんど反応を示さなかった.以上の結果より,ラット脳および腎L-芳香族アミノ酸脱炭酸酵素によって,D-erythro-DOPS,D-threo-DOPSからほとんどNEは生成されないが,L-threo-DOPSからは1-NE,L-erythro-DOPSからはd-NEが生成されることが明らかにされた.D-threo-DOPSはL-threo-DOPSからのl-NEの生成を阻害するため,racemic-threo-DOPSよりは,L-threo-DOPSが有効なl-NE前駆物質であると考える.
  • 山原 條二
    1976 年 72 巻 7 号 p. 899-908
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    重要漢薬の一つである黄連については,いろいろの薬理学的研究が報告されているが,漢方で鎮静的にも使用するといわれている中枢抑制作用についてはほとんど研究されていない.そこで黄連の中枢抑制作用についての検討を企図し,まず黄連ならびに黄連含有成分およびその方剤モデルとして三黄瀉心湯エキスを作成し試験した.なお漢方薬は内服薬として用いられているのですべての試験は経口投与で行ない,一部抗胃潰瘍作用についても試験した.検体である黄連ならびにその含有成分は外観上一般行動に影響を与えず,自発運動量を減少させず,協調運動も障害しなかった.また実験的に誘発した異常行動すなわち各種化学物質や電気刺激によるけいれん,morphineによる挙尾反応,apomorphineによるchewingmovement,電気刺激による闘争反応,さらに睡眠薬による正向反射の消失などに対してほとんど影響しなかった.従ってこれらの検体には中枢抑制作用はないものと思われたが,ただ一つ黄連の3級塩基分画に軽度ではあるが自発運動量の減少作用とhexobarbital-Naとの協力作用が認められ,3級アミン化合物についてさらYom.詳細に検討することが必要と思われた.なお黄連方剤である三黄瀉心湯エキスにも中枢抑制作用は認められなかった.抗潰瘍作用についてはラットのstress潰瘍ならびにShay潰瘍について試験したところ,この場合はberberineなどの4級塩基化合物に軽度な胃潰瘍抑制作用が認められた.
  • 山原 條二
    1976 年 72 巻 7 号 p. 909-927
    発行日: 1976年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Tetrahydroberberine(以下THBと略)およびその関連アルカロイドであるtetrahydrocoptisine(以下THCと略),tetrahydropalmatine(以下THPと略)およびtetrahydro-jateorrhizine(以下THJと略)について行動薬理学的にその作用様式をchlorpromazine(以下CPZと略)およびbenzodiazepinesと比較検討した.なおTHBに関しては脳波作用についても検討した.THBは一般にmajor tranquilizcrであるCPZに類似の薬理作用,すなわち抗mescaline作用,抗apomorphine作用,抗methamphetamine作用,条件回避反応の抑制作用などを示し,さらに脳波に対しては著明な影響を与え,特に大脳辺縁系後発射においてbenzodiazepinesとは異なり,CPZに類似の増強作用を認めた.またTHBはそれ自体ではcatalepsyの発現を来たさないが,CPZに協力的に作用した.一方,薬効量以上においても正常体温の下降,筋弛緩作用,および正向反射の消失はみとめられないという従来のmajor tranquilizerとも異なった効果を示した.急性毒性においてもCPZより著しく弱くchlordiazepoxide(以下CDOと略)よりもかなり弱いものであった。使用したTHB類似体は,d-THB,THJは著しく弱い作用であった以外はTHC,THPともほぼTHBと同等の作用を示し,l-THBはTHBの約1.5倍強力であった.これらのことからTHB,THC,THPはCPZに類似の作用を示すが,正向反射の消失,筋弛緩作用,体温下降作用などを来たさない点では新しい型のtranquilizerとしての有用性が期待される.
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