日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
78 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 篠山 重威
    1981 年 78 巻 3 号 p. 127-137
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    The concept of clinical application of the vasodilator therapy for the treatment of cardiac failure is based on the experimental findings that defined the inverse relationship between force and velocity or extent of muscle shortening at constant muscle lengths. In the intact heart, a new construct has recently been proposed in hopes of better understanding the behavior of the normal or depressed human ventricle in which the shortening during ejection is considered to reflect the appropriateness of the matching between the existing afterload and the level of inotropic state, as modulated by the preload (or Frank-Starling) reserve. In the normal left ventricle, if the preload is not allowed to compensate for an acute increase in afterload, or if the limit of preload reserve is reached, shortening of the ventricular wall will diminish; that is, afterload mismatch will ensue. The view that an afterload mismatch can exist in the basal state provides an explanation for the fact that cardiac output and ventricular function can be improved when afterload is reduced in patients with severe left ventricular failure complicated with acute myocardial infarction or with mitral or aortic regurgitation. However, in the ischemic myocardium, the effect of interventions which alter the afterload on the left ventricular ejection is also determined by the pre-existing ischemic status. Thus, depending on the magnitude of coronary flow reduction, a potentially beneficial drug can be detrimental to an ischemic myocardium.
  • 大西 治夫, 伊藤 千尋, 鈴木 和男, 仁保 健, 下良 実, 山口 和夫
    1981 年 78 巻 3 号 p. 139-144
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    tofisopam の嗅球摘出ラットにおける拘束ストレス潰瘍,水浸拘束ストレス下における腸管輸送能およびウサギ視床下部電気刺激による自律神経反応に及ぼす影響について検討した.嗅球摘出ラットに拘束ストレスを負荷することにより,胃潰瘍の発現率および潰瘍指数の上昇が認められた.tofisopam は嗅球摘出ラットにおける拘束ストレス潰瘍を著明に抑制した.ラットに水浸拘束ストレスを負荷したところ,明らかに腸管輸送能の亢進が認められたが,tofisopam はこの腸管輸送能の亢進を抑制した.ウサギの視床下部(内側視索前野)を電気刺激したところ,耳介細動脈および細静脈の収縮,耳朶温の低下,瞳孔径の増大などの変化が認められた.tofisopam 1mg/kg 静注により,視床下部の電気刺激による耳介細動脈および細静脈の収縮ならびに瞳孔径の増大に対する抑制が認められた.また,tofisopam 0.1mg/kg の脳脊髄内投与によっても,視床下部の電気刺激による耳介細動脈の収縮,耳朶温の低下および瞳孔径の増大に対する抑制が認められた.これらの結果は,tofisopam が各種ストレス負荷時にみられる自律神経系の異常を改善し,さらに,自律神経系の高位中枢である視床下部に対しても作用を有することを示すものと思われた。
  • 小友 進, 樋口 昭平, 中池 司郎, 樽木 保男, 木村 正明, 笹島 道忠, 大関 正弘
    1981 年 78 巻 3 号 p. 145-162
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    D-penicillamine(D-PA)のrat adjvant 関節炎(AA)にたいする作用を検討した.D-PA(80mg/kg,p.o.)を adjuvant 投与の4週間前から2~6週間にわたって投与すると投与期間に比例して AA の抑制傾向が認められた.また D-PA(80ないし 100mg/kg,p.o.)を adjuvant と同時に投与開始した場合,4週間投与したものに AA の促進作用が認められた。しかし関節炎発症後に投与を開始した場合は何ら作用は認められなかった.D-PA の同時投与による促進作用は 50mg/kg でもみられるが,200mg/kg では初期に促進作用がみられるものの中期以降には逆に抑制作用が現われた.D-PA の作用は塩酸 pyridoxine の併用によって何ら影響を受けなかった.また同時投与実験において,sodium aurothiomalate(ATM,12.5mg/kg,s.c.)では初期に促進,中期以降に抑制が,chloroquine diphosphate(12mg/kg,p.o.)とdexamethasone(DX,1mg/kg,p.o.)では抑制のみが認められた.一方発症後7日間投与の“後投与実験”ではATM(25mg/kg,s.c.)とDX(5mg/kg,p.o.)に抑制作用が認められた.このように D-PA の AA にたいする作用は投与量,投与時期によって異なり,またその作用態度は CQ や DX と異なるものであったが ATM とは少しく類似していた.D-PA の血清Cu,Zn レベル,鼠蹊リンパ節の組織学的変化,purified protein derivative(PPD)による皮膚反応にたいする作用と,AA にたいする作用との間に関連怪は認められなかった.以上の結果から D-PA の AA にたいする作用機作を考察した.
  • 木本 定利, 春名 正雄, 中尾 智子, 上田 元彦
    1981 年 78 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    イヌの左冠動脈内に1個のガラス製ビーズ(直径1.5mm)を注入して心筋梗塞性不整脈を発生せしめ,これが不整脈モデルとして利用出来るか否かをquinidine(Qd),lidocaine(Lid),aprindine(Apr),dl-propranolol(dl-Prop)を用いて検討した.pentobarbital-Na麻酔下にイヌの血圧と心電図を記録しながら左頸動脈より冠動脈カニューレを左冠動脈内に挿入し,カニューレを介してビーズを注入し,冠動脈閉塞を行なった.冠血管閉塞による心筋梗塞性不整脈は閉塞24時間後が最も顕著で,心拍数180拍/分の約90%を占め,この状態は約30時間持続した.48時間および72時間後の心拍数はそれぞれ140拍/分,110拍/分であったが,その際の心室性不整脈は心拍数の80%,45%まで減少した.注入したビーズは左冠動脈前下行枝および左回施枝にそれぞれ12/14例,2/14例局在した.ビーズで梗塞された心筋では24時間後に壊死橡,10日後には線維化が認められた.無麻酔,無拘束のイヌより無線方式で四肢第II誘導心電図を polygraph 上に記録し,梗塞24時間後の不整脈モデルに対してQd,Lid,Apr,dl-Prop を静脈内に累積投与し,それぞれの抗不整脈作用を検討した.四薬物は共に用量依存的な抗不整脈作用を示し,Apr と dl-Prop の作用は QD,Lid に比べて約3倍強力であった.Lid,dl-Prop,Apr の作用持続は比較的短く(20~30分),Qd のそれはやや持続的(約60分)であった.ビーズ法による心筋梗塞は梗塞部位がやや一定し難い点はあるが,外科的侵襲の少ない簡単な手術で,安定した心室性不整脈が得られ,抗不整脈剤の作用が無麻酔,無拘束下のイヌで明瞭に判定出来るので.今後不整脈剤の検討に充分活用されるものと考えられる.
  • 松原 一誠
    1981 年 78 巻 3 号 p. 173-184
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Hornstra の “filter loop” 法をイヌに適用し,ADP 凝集に対する種々薬物の作用につき検討した.ADP による血小板凝集は filter 前方圧の一過性で可逆性の上昇として観察された.この反応には再現性が認められ,かつ用量依存性であった.この実験系において PGI2 および PGE1 は ADP による圧上昇を抑制し,かつ自然に上昇した圧を下降せしめた.すなわち,PGI2 および PGE1 は ADP 凝集を抑制するばかりでなく,既に凝集した血小板を解離させる作用をもつことが再確認された.抗炎症薬である indomethacin により ADP 凝集反応は増大し,時には不可逆反応へと進展した.これは凝集抑制性の PG が常時循環血中に存在する事を示唆するものと考えられ,興味深い.炎症の mediator のひとつである bradykinin は,近接動注では ADP 凝集を抑制しなかったが,静脈内投与ではこれを抑制した.この抑制作用は indomethacin 処置で消失するので bradykinin により ADP 凝集抑制性の PG(PGI2?)の遊離(おそらく肺から)が考えられた.また,冠拡張薬として代表的な dipyridamole および nifedipine を選び ADP 凝集に対する作用を検討したが,今回使用した用量ではすでに報告されているような抑制作用は認められなかった.痛風の治療薬であり,最近,心筋硬塞の発作予防に有効であると報告されている sulfinpyrazone の作用についても検討したが凝集抑制作用は認められなかった.本実験モデルの利点は Hornstra の “filter loop” 法同様,循環血の状態で血小板の凝集および解離反応を連続的に定量測定できることにあり,そのため薬物を全身投与して血圧,心拍数などの循環動態の変化との関連において血小板凝集に対する作用につき検討できるので薬物作用の検索には有力な武器となるものと考えられる.
  • 小友 進, 樋口 昭平, 田中 誠, 後藤 佳也, 長田 祐子, 大関 正弘
    1981 年 78 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    arachidonic acid 40μg/site をモルモット側腹部に皮内注射すると3~5分後より注射部位に徐々に発赤が生じ,同様に prostaglandin E2 を注射した場合には直ちに発赤が生じた.arachidonic acid による発赤は,prostaglandins 生合成阻害作用をもつ酸性非ステロイド系抗炎症薬によって抑制されたが,prostaglandins 生合成阻害作用がないか,あるいは弱い塩基性非ステロイド系抗炎症薬,ステロイド系抗炎症薬および抗酸化剤には抑制作用は認められなかった.cyproheptadine 30mg/kg,p.o. ならびに morphine 20mg/kg,s.c. には,ほとんど抑制作用は認められず,この発赤には histamine,serotonin ならびに中枢神経系の関与はないものと思われる.prostaglandin E2 による発赤に対する酸性非ステロイド系抗炎症薬の抑制作用は認められなかった。arachidonic acid 類似の不飽和脂肪酸である linoleic acid,linoleni acid および γ-linolenic acid の皮内注射では発赤は認められなかった.bishomo-γ-lhlolenic acid の皮内注射で発赤が生じ,これは bishomo-γ-linolenic acid が type I の prostaglandins に変換されて生じるものと考えられ,diclofenac sodium によって抑制された.以上のことは,皮膚に注射した arachidonic acid が prostaglandins に変換することによって発赤を生じるという考え方を支持しており,モルモット arachidonic acid 皮膚発赤法は,抗炎症薬などの prostaglandins 生合成阻害剤の作用を in vivo で調べるための手段となり得るものと思われる.
  • 中山 貞男, 根岸 和代, 坂本 浩二
    1981 年 78 巻 3 号 p. 191-202
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    ラットを用いて 0.5% cholesterol 添加飼料(HCD)にて惹起した実験的高脂血症に対するsoysterol,pantethine,dl-α-tocopheryl nicotinate(α-TN)の影響を検索した.被検薬物は olive oil に溶解し,200mg/kg を HCD 飼育下に1日1回12日間連続経口投与し,投与6,12日後に血清および肝の脂質を測定した.soysterol は6日間の投与で血清の total cholesterol(TC),triglyceride(TG) の増加を有意に抑制し,total lipid(TL),free cholesterol(FC),phospholipid(PL)の増加も抑制した.high density lipoprotein(HDL)中の cholesterol(HDL-C)は HCD によって減少するが,soysterol はこの減少を抑制し,TC 増加をも抑制することによって TC-HDL-C/HDL-C(atherogenic index-C)は有意に低下した.soysterol の12日間投与では HCD による脂質増加に対する抑制はさらに著明となり,血清の TL,TC,TG の増加を有意に抑制し,FC,PL の増加も抑制した.HDL-C,HDL 中の phospholipid(HDL-PL)の減少は明らかに抑制し,atherogenic index-C,PL-HDL-PL/HDL-PL(atherogenic index-PL)の低下も有意であった.soysterol によって肝脂質は12日間投与の TL において有意な低下を示したが,他の脂質分画では抑制を認めなかった.pantethine は6日間投与で血清の TG,TG,PL の増加を有意に抑制し,TL,FC の増加に対しても抑制を示した.pantethine の12日間投与では TC の増加を明らかに抑制した.HCD による HDL-C,HDL-PL の減少は pantethine 投与12日間で著明に抑制され,対照を上まわる増加を認め,atherogenic index の改善も明らかだった.pantethine は肝脂質には何ら影響を示さなかった.α-TN は HCD 飼育による血清ならびに肝脂質の増加に影響を示さなかった。肝の組織学的所見では soysterol 投与で脂肪変性の抑制を認めた.
  • 井田 修二, 上野 栄子, 永田 真理, 栗山 欣弥, 家森 幸男, 木原 正博
    1981 年 78 巻 3 号 p. 203-212
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Bromovincamine(BV)の脳内 noradrenaline(NA),5-hydroxytryptamine(5-HT)および glucose 代謝に及ぼす影響を検討するため,stroke-prone spontaneously hypertensive rat(SHR-SP)および stroke-resistant spontancously hypertensive rat(SHR)を用い,対照となる normotensive Wistar Kyoto rat(WKR)および Wistar rat(Wistar)の場合と比較した.薬物投与群には,BV 30mg/kg を1回,または同量を1日1回7日間,あるいは BV 20mg/kg を1日3回7日間それぞれ連続腹腔内投与して,脳内 NA および 5-HT 含量,ならびに脳切片における高濃度カリウム添加に伴う刺激反応性 glucose 代謝および血圧に及ぼす影響を調べ,以下の成績を得た.1)脳内 NA 含量については,1日1回7日間連続投与のSHR-SP,SHR で視床下部においてそれぞれ有意な上昇および増加傾向を示した.2)脳内 5-HT 含量は1回投与により,小脳,線条体,視床下部,中脳および海馬で有意な上昇を,延髄や大脳皮質では上昇傾向を示した.一方,一週間連続投与の場合には,Wistar,WKR および SHR で小脳および大脳皮質の5-HT 含量が有意に上昇した.3)in vitro において BV(10-5~10-3M)を添加した場合,大脳皮質切片の glucose 消費は,正常栄養液の場合には SHR,WKR および Wistar において抑制傾向を示したに過ぎないのに対し,高 K+ による刺激条件下では,著しいglucose 消費の抑制を示した.一方,in vivo で BV を7日間連続投与した SHR の場合には,正常栄養液中では大脳皮質切片の glucose 消費が21%の上昇を示したが,高 K+ 刺激条件下では WKR の場合と同様に著しく抑制された.4) BV 投与1週間後の SHR-SP および WKR の血圧は,共に上昇を示した.以上の結果より,BV は高血圧病態モデルである SHR および SHR-SP において,脳内 NA および 5-HT 代謝の改善,ならびに脳内糖代謝に対しては代謝促進効果を持っ一方,過度の興奮に伴う糖代謝の促進状態に対しては抑制効果を示すという,有意義な薬理作用を持つものと推察される.
  • 川口 いずみ
    1981 年 78 巻 3 号 p. 213-222
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    三酸化ヒ素(As2O3)をラットに経口投与して血糖量と肝グリコーゲンの変動を調べ,その作用機序を確かめる目的で実験を行い次の結果を得た.1)As2O3 の 15mg/kg を経口投与すると4時間目に peak を示す過血糖を生じた.2)両側内臓神経の切断,両側副腎摘出および副腎髄質の剔出により As2O3 の過血糖作用は抑制された.3)迷走神経を切断すると,As2O3 の過血糖作用は増強した.4)中枢神経系に作用する barbital sodium を As2O3 と併用投与するとやや抑制の傾向が見られた.5)副腎 catecholamine の遊離を促進させる薬物のうち,nicotine tartrate は As2O3 を投与してから3時間後に投与した場合および As2O3 と同時に投与した場合には As2O3 の過血糖作用を抑制した.ephedrine hydrochloride は As2O3 の過血糖作用に対して影響をおよぽさなかった。6)副腎 catecholamine の遊離を阻害する薬物である hexamethonium bromide,tolazoline hydrochloride,propranolol hydrochloride,atropine sulfate はいずれも As2O3 の過血糖作用を抑制した。7)As2O3 を投与すると肝グリコーゲンは2時間目から減少し,24時間後でほぼ回復した.以上の結果から As2O3 は中枢に作用し,そこで acetylcholine の分泌を促進し,その結果 catecholamine が肝臓の酵素活性を高めグリコーゲンを分解することにより血糖の増加が起こると思われる.
  • 府川 和永, 本多 秀雄, 久保田 英雄, 畑中 佳一, 澤辺 隆司
    1981 年 78 巻 3 号 p. 223-230
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    dihydroergotamine mesylatc(DEM)の血管平滑筋に対する部位別作用特性を明らかにする目的で,イヌ伏在動・静脈条片,大腿動・静脈条片および外頸動・静脈条片を用いて DEM の収縮作用,大腿動脈条片および外頸動脈条片を用いて DEM の抗セロトニン作用を検討した.DEM の各動・静脈片に対する収縮作用において pD2 値はほぼ近似した値を示したが,固有活量は各血管で異なり norepinephrine を 1 としたとき伏在静脈/伏在動脈比=25,大腿静脈/大腿動脈比=6,外頸静脈/外頸動脈比=1となり後肢の静脈系を選択的に収縮させることが認められた.一方 serotonin の血管収縮作用に対し DEM は非競合的な拮抗を示し pD'2 値は大腿動脈条片 6.05,外頸動脈条片6.96であり,DEM の抗セロトニン作用は大腿動脈条片よりも外頸動脈条片で強い活性が示された.代表的な抗セロトニン薬 methysergide は低濃度で競合的拮抗作用を示し,高濃度で非競合的拮抗作用を示したが,pA2 値および pD'2 値はそれぞれ大腿動脈条片9.14,4.63,外頸動脈条片 9.59,4.73であり血管による差は認められなかった.以上のように DEM は agonist としてまた antagonist としても部位別特性差が認められた.前者においては臨床用量投与における血中濃度とほぼ同濃度で作用が認められたことより DEM の起立性低血症に対する薬効機序と考察し,後者においては DEM の片頭痛に対する薬効機序と考察した.
feedback
Top