日本薬理学雑誌
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97 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ―平滑筋弛緩機序理解の為に―
    今井 昭一
    1991 年 97 巻 6 号 p. 307-318
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    First, we will briefly describe how our study on the mechanisms of relaxant effects of nitroglycerin and related compounds (NG) on the vascular smooth muscle developed to a study on the sarcolemmal (SL) Ca2+-ATPase. These compounds were found to have no effects on the voltage-dependent Ca2+ channel and Ca2+-induced Ca2+ release from the sarcoplasmic reticulum (SR) and Na+-Ca2+ exchange mechanism has been shown not to play an important role in the vascular smooth muscle. Furthermore, when we initiated our study, the idea of receptor-operated Ca2+ channels and Ca2+ release from the SR by inositol triphosphates were not known. A major part of this review is devoted to a description of the characteristic features of SL Ca2+-ATPase and its regulation by various protein kinases. References to SR enzyme are made when necessary. Brief mention is made of the putative molecular structure and its possible variations as envisaged by genetic engineering techniques. However, particular attention is directed to the regulation by cyclic GMP-dependent protein kinase as this seems to be most important as regards the mechanisms of vascular smooth muscle relaxation by NG.
  • 竹村 晴夫, 大鹿 英世
    1991 年 97 巻 6 号 p. 319-327
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    Inositol phosphates have an important role in Ca2+ mobilization and especially inositol 1, 4, 5-trisphosphate (IP3) is now believed to release Ca2+ from the endoplasmic reticulum (ER) . On the other hand, the mechanism of activation of Ca2+ entry is unknown. Non-excitable cells have only receptoroperated Ca2+ channels, lacking voltage-operated Ca2+ channels, and are a useful system for studying signal transduction. In this review, some mechanisms for the regulation of Ca2+ entry in non-excitable cells are discussed and a new hypothesis originally proposed by Putney (1986), the capacitative Ca2+ entry model, is focussed. In this model, Ca2+ influx across the plasma membrane is increased when the IP3-sensitive Ca2+ pools is emptied. Capacitative Ca2+ entry is now confirmed in rat parotid acinar cells by studies on the refilling process for intracellular Ca2+ pools and by using the microsomal Ca2+ATPase inhibitor thapsigargin, which does not increase cellular IP3. Finally, capacitative Ca2+ entry is expected to exist in a variety of cell types including excitable cells.
  • 山口 優, 林 真知子, 山添 寛, 国友 勝
    1991 年 97 巻 6 号 p. 329-337
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    マウスを動脈硬化形成食(コレステロール1.5%,コール酸0.5%およびリノール酸5%含有)にて14週間飼育したときの血清,肝臓および大動脈の脂質変化に及ぼす緑茶抽出物(50,100,200mg/kg/day)の影響について検討した.動脈硬化形成食で飼育した動物には,血清コレステロール(遊離型およびエステル型),リン脂質,過酸化脂質の各値の著しい増加,血清トリグリセリドおよびHDL・コレステロール値の減少,LCAT活性の低下,肝臓および大動脈のコレステロール(遊離型およびエステル型)値の著しい増加が認められた.緑茶抽出物を投与した動物では,動脈硬化形成食負荷による血清コレステロール値の増加が,実験開始6週以後軽度に抑制されはじめ,10週目に100および200mg/kg/dayの用量で有意な低下が認められた.また,実験期間を通じて血清過酸化脂質値の増加が用量依存的に著明に抑制された.血清リン脂質値の増加およびLCAT活性の低下に対しては軽度な抑制がみられたが,血清トリグリセリドおよびHDL-コレステロール値の減少にはなんら影響がみられなかった.緑茶抽出物の投与により,肝臓コレステロール濃度,とくに遊離型コレステロールの濃度が50および100mg/kg/dayの用量で有意に抑制された.しかし,最高用量の200mg/kg/dayでは有意な変化はみられなかった.大動脈へのコレステロールの蓄積に対して,緑茶抽出物の投与は用量依存的で有意な抑制を示した.以上の結果は,緑茶の飲用により動脈硬化の進展が予防され得ることを期待させるものである.
  • 江頭 亨, 永井 敬之, 金馬 義平, 村山 文枝, 後藤 信一郎, 工藤 欣邦, 須藤 慎治, 河野 俊郎, 山中 康光
    1991 年 97 巻 6 号 p. 339-350
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラット肝の虚血・再循環による実験的肝障害の病態モデルを作製した.虚血時間に伴い脂質過酸化物は増加し,再循環60分後では更に増加した.GOT,GPTおよびLDH値は15分虚血・再循環で正常値の10倍以上に,60分虚血-再循環では100倍以上の高値を示した.肝マイクロソームの蛋白量は60分虚血-再循環後には対照に比べ約50%減少し,cyt.p-450含量も虚血60分頃から減少した.一方,b5含量は虚血時間に伴い反対に増加した.haem oxygenase活性にはほとんど活性変化は見られなかったが,NADPH cyt.c reductase活性は虚血後再循環で著明に低下した。また,このモデルによる生存率も虚血時間に反比例し,60分虚血後再循環では2日後に約40%のみ生存した.この肝の虚血-再循環モデルはCCl4投与肝障害モデルとは相違し,活性酸素による肝障害の病態モデルとして最適であり,種々の肝庇護剤の開発および虚血による細胞障害機構とその保護のための基礎的なデーターの検討に有効なモデルと思われる.
  • 平賀 義裕
    1991 年 97 巻 6 号 p. 351-359
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ムスカリン性抗コリン薬であるscopolamine(SCP)によって誘発した行動異常は,動物の記憶障害モデルに通じると考えられ,脳機能改善薬を検索するための前臨床試験法の一つとして現在も幅広く利用されている.本研究では,SCP効果の性質を分析するために,Wistar-Imamichi系雄ラットで,8選択肢放射状迷路を用い,記憶に関連すると考えられる行動変化について検討した.課題は8本のアームの先端に置かれた餌をラットが全部採取することからなるが,ラットが初あの4選択を終えた時点でホームケージに戻し,ある遅延時間が経過した後に残りの餌取りを行なわせて,遅延前に選択したアームを再選択した時を誤選択として記憶現象を測定した.実験1では,最初の4選択と残りの選択との間に,1,2,4および6時間の遅延時間を挿入し,scP(0.5mg/kg,i.p.)を最初の4選択が終わった直後に投与した.SCPは遅延後の正選択数を減少させたが,遅延時間の長さによってその程度には変化は見出されなかった.実験2では,遅延時間を4時間に固定し,最初の4選択から薬物投与までの時間を0,1および2時間とした.実験1と同様,SCPは正選択数を減少させたが,薬物投与時間を変えたことによる影響はみられなかった.このように,SCPの効果には実験操作に対する時間依存性が少なく,記憶の固定や保持といった過程に対する逆向性の影響よりは,情報の獲得といった過程への順向性の障害を引き起している可能性が示唆された.
  • 西田 信之, 安原 吉高, 千葉 祐広
    1991 年 97 巻 6 号 p. 361-369
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    強力な鎮痛活性を有するenkephalin誘導体,Tyr-D-Met(O)-Gly-EtPhe-NHNHCOCH3・AcOH(EK-399)の弁別刺激効果に関与するオピオイド受容体のサブタイプを調べる目的で,ラットを用いた薬物弁別試験を行った.2レバー・オペラントボヅクスを用い,給水制限したラットに訓練薬または生理食塩液を皮下投与後,水を報酬として2つのレバーのうち正しいレバーを選択させる訓練を行った.訓練薬としてEK-399,morphine,ethylketocyclazocine(EKC)及びN-allylnormetazocine(NANM)を用いた.いずれの訓練薬においても,平均38-53セッション後にラットは安定した高い正選択率を示すようになった.90%以上の正選択率を示したラットを用い,naloxone拮抗試験を行ったところ,皮下投与したEK-399(1mg/kg),morphine(3mg/kg)及びEKC(0.3mg/kg)の弁別刺激効果は,それぞれnaloxoneの0.3,0.03及び0.3mg/kg(s.c.)によってほぼ完全に拮抗された.他方,NANM(3mg/kg)の弁別刺激効果はnaloxoneの10mg/kg(s.c.)をこよっても完全に拮抗されなかった.次に般化試験を行ったところ,EK-399の弁別刺激はμ-ナビオイド受容体のアゴニストであるmorphine(10mg/kg)及びbuprenor-phine(0.03mg/kg)に完全に般化し,κ-ナビオイド受容体のアゴニストであるEKC(0.1mg/kg)及びσ-受容体のアゴニストであるNANM(10mg/kg)には不完全にしか般化しなかった.一方,EK-399(0.1-3mg/kg)に対して,morphine及びEKCの弁別刺激は不完全にしか般化せず,NANMの弁別刺激は全く般化しなかった.以上の成績から,EK-399の弁別刺激効果の発現には,主にμ-オピオイド受容体を介した作用が関与していると考えられる.一方,morphineとEK-399との間に非対称的な般化がみられることから,一部δ-オピオイド受容体を介した作用が関与している可能性もある.
  • 川野 淳, 佐藤 信紘, 鎌田 武信, 山崎 勝也, 今泉 隆, 米虫 節夫
    1991 年 97 巻 6 号 p. 371-380
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットおよびヒトにおいて0.15N HCl-40%ethanol誘発性急性胃粘膜病変に対するrebamipideの効果を検討した.その結果,(1)ラットでは,1)rebamipideは,腹腔内投与でH:Cl-ethanol誘発胃粘膜病変を用量依存的(10~300mg/kg,i.p.)に抑制し,特に30~300mg/kgでは有意な抑制効果が得られた(P<0.05).2)水素ガスクリアランス法による胃粘膜血流量は,rebamipide(10mg/kg/hr)の静脈内持続注入によって増加した.3)臓器反射スペクトル法により,rebamipide(10mg/kg,i.v.)はラット脱血時における胃粘膜血液量の低下を有意に抑制した(P<0.05).また,粘膜ヘモグロビン酸素飽和度の低下に対しては抑制傾向を示した.(2)ヒトにおいては,健常成人男子を対象にプラセボとrebamipide(300mg/日,7日間)との二重盲検交叉比較試験を実施した結果,rebamipideはヒトHCl-ethanol誘発性胃粘膜病変も抑制し,さらに,表層粘液細胞における粘液穎粒の減少および細胞間隙の拡張を有意に抑制した(P<0.05).以上の成績から,本剤がHCl-ethanol誘発性胃粘膜病変の発生を抑制し,その作用機序の1つに胃粘膜微小循環改善作用が関与していると考えられた.
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