日本薬理学雑誌
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74 巻, 7 号
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  • 田村 俊吉
    1978 年 74 巻 7 号 p. 783-795
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ヒ素がラットの自発運動,条件回避反応学習とその消去および遊泳運動にどのような影響を与えるかを観察した.また哺乳期の栄養状態にょってこれらの行動に相違が見られるとの報告があるので,離乳期において体重の大きい群(26~35g)と小さい群(25g以下)の2群のラットを選抜しこれらの行動をしらべたが,両群の間に差がなかつた.哺乳期にAS2O3 2mg/kgを与えた少量群と15mg/kgを与えた大量群にっいて比較した場合,少量群では自発運動,条件回避反応学習,消去および遊泳運動のいずれにも無投薬群と差異はなかった.しかし大量投与群では自発運動量は増加し,条件回避反応学習は無投与群に比し好成績を示した.
  • 森 裕志, 永井 博弍, 江田 昭英
    1978 年 74 巻 7 号 p. 797-804
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    α-Mercaptopropionylglycine(α-MPG)およびsodium dipropylacetate(DPA)の免疫促進作用機序について検討した.1)マウス腹腔macrophageの墨粒貧食能はin vitroでα-MPGの高濃度によって促進されたが,DPAでは影響がみられなかった.2)ヒツジ赤血球でマウスを免疫し,3日後に脾細胞を分離して24時間培養した.両薬物は残存細胞率および生細胞率に影響を及ぼさなかったが,α-MPGはhemolytic plaque forming cell数を増加し,DPAは増加の傾向を示した.3)両薬物はphytohemagglutinin-Pおよびlipopolysaccharideによるマウス脾細胞の幼若化に影響をおよぼさず,また,マウス脾細胞に対してmitogenic activityを示さなかった.4)マウスの抗polyvinylpyrrolidonc抗体産生における初期の抗体価に対して両薬物はほとんど影響をおよぼきなかった.
  • 池沢 一郎, 竹永 秀幸, 佐藤 匡徳, 中島 宏通, 清本 昭夫, 入江 邦彦
    1978 年 74 巻 7 号 p. 805-818
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    (-)-1-(3,4,5-trimethoxybenzyl)-7-hydroxy-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline HCl(l-MTI)の気管支および心拍数に対する作用をネコ,イヌ,モルモットおよびサルを用い,静脈内投与で,isoproterenol(Iso)と比較検討した.Pcntobarbital(PB)麻酔のネコおよびイヌでl-MTIはIsoの約1/20の,また,モルモットおよびサルでは1/100以下の気管支拡張作用を示した.なお,いずれの動物においても,Isoと較べてl-MTIの心拍数増加作用は,気管支拡張作用よりも遙かに弱かった.一方,l-MTIはPB麻酔時と異なり,urethane麻酔のモルモットにおいて,気管支拡張作用を示さなかった.また,迷走神経切断,両側副腎摘出あるいはreserpine処理後大量のnorepinephrineを投与したurethane麻酔のモルモットでも同様に気管支拡張作用は認められなかった.これらの場合,histamineによる気管支収縮は,propranololによって増強された.しかしながら,reserpine処理,脳脊髄穿刺あるいはhexamethoniumを投与したurethane麻酔のモルモットでは,気管支拡張作用が認められた.これらの標本では,histamineによる気管支収縮は,propranololによって増強されなかった.なお,Isoは,いずれの条件下でも気管支拡張作用を示した.ところで,PB麻酔のモルモットにおいて,l-MTIは,それ自身で気管支拡張作用を示すが,Isoの気管支拡張作用を抑制する傾向を示した.また,種々な条件のモルモットにおいて,対照時の心拍数が高い時に心拍数を減少させ,低い時に増加させる性質を有していた.以上のことから,l-MTIは,気管支拡張作用に種差が認められ,また,モルモットにおいて,l-MTIの気管支に対する効果は,McCullochらが提唱しているsympathetic bronchodilator refrexまたはsympathetic toneあるいは両者の緊張度に応じて変化することが示唆された.
  • 片野 由美, 武田 敬介, 仲川 義人, 橋本 豊三, 仲沢 幹雄, 今井 昭一, 塚田 徳昌, 大鳥居 健
    1978 年 74 巻 7 号 p. 819-832
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    αとβの両受容体を遮断する新しいタイプの薬物であるlabetalolのα遮断作用およびβ遮断作用について検討すると同時に,冠循環,心機能および心筋エネルギー代謝に対する作用についてモルモットおよびイヌを用いて検討した.その結果labetalolのα遮断作用はphentolamineのそれの1/3.6~1/5.9であり,β1遮断作用はpropranololのそれの1/1.4~1/3.6,β2遮断作用はpropranololのそれの1/6であった。α遮断作用とβ遮断作用との比較ではα遮断作用に比しβ遮断作用の方が強力で,β1遮断作用はα遮断作用の12~28倍,β2遮断作用はα遮断作用の約7倍であった.またβ1遮断作用のうちでは心拍数に対する遮断効果の方が心収縮力に対するそれよりも強力であった.Labctalolそれ自身の作用として摘出心房標本において陽性変時作用,陽性変力作用が認められた.また,気管平滑筋で弛緩作用が認められた.これらの作用はpropranololの前処置によって,消失あるいは抑制された.モルモット摘出結腸紐標本においては高濃度(10-5g/ml以上)でCa++拮抗作用が認められた.陽性変時作用,陽性変力作用は心肺標本においても認められ,6-OH-Dopamineによりカテコールアミン枯渇標本を作製しても同様に認められたが,propranololの前処置によって抑制された.心拍数の増加に対応して心筋酸素消費量の増加が認められた.また,心筋酸素消費量の増加に見合った冠血流量の増加が認められた.心仕事量は僅かに増加し,心仕事効率は多少低下した.心筋の酸化還元電位(ΔEh)は陽性化する傾向を示した.また,心筋のエネルギー源として重要な基質である乳酸,ピルビン酸および血糖の心筋への取込み量およびextraction ratioは減少の傾向を示した.(FFAについては有意に減少した).
  • 岩田 平太郎, 益川 徹, 角野 勝彦, 山本 格
    1978 年 74 巻 7 号 p. 833-840
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    冠血管拡張薬として用いられているtrimethoxybenzoic acid誘導体であるhexobendine(N, N´-dimethyl-N, N´-bis[3-(3´, 4´, 5´-trimethoxybcnzoxy)-propyl]ethylenediamine-dihydrochloride)の作用機作を知る目的で,二三の酵素活性,adenosineの赤血球への取込み,ならびに低酸素負荷による心筋エネルギー代謝の変動に対する作用を検討した.Hexobendineはin vitroでadenosineの分解酵素であるadenosine deaminase活性ならびにプリン代謝系のサルベージ酵素であるadenine-phosphoribosyitransferase(A-PRTase)およびhypoxanthine-guanine-phosphoribosyltransferase(HG-PRTase)活性のいずれに対しても全く無影響であった.ラット赤血球へのadenosineの取込みに対し,本化合物は10-6Mで約45%,10-5Mでadenosineの取込みをほぼ完全に抑制した.Hexobendine 10mg/kgの前処置により低酸素負荷のラット心筋の各代謝産物の変化は有意に抑制され,100mg/kgでは完全に抑制された.
  • 第1報鎮痛作用
    佐藤 誠, 谷沢 久之, 福田 保, 由井薗 倫一
    1978 年 74 巻 7 号 p. 841-855
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新規化合物M73101[4-ethoxy-2-methyl-5-morpholino-3(2H)-pyridazinone]の鎮痛作用をマウスおよびラットを用い,既知非ステロイド性抗炎症薬と比較検討した.M73101は機械的刺激法(Haffner法,Randall-Selitto法),熱刺激法(熱板法),電気刺激法および化学的刺激法(酢酸stretching法,bradykinin動注法)のいずれにおいても用量に依存した鎮痛作用を示した.効力順位は検定法により若午異なるが,M73101は非経口投与のみならず経口投与でも作用が認められ,塩基性抗炎症薬であるaminopyrine(AP),mepirizole(MP),tiaramide HCl(TA)およびbenzydamine HCl(BZ)と同等か,それ以上,酸牲抗炎症薬に比べるとはるかに強い鎮痛作用を示した.またその特長として,機械的刺激および熱刺激で起した疼痛および特に炎症性疼痛に対して強い効力を有することがあげられた.Randall-Selitto法においてM73101は炎症足のみならず正常足の疼痛閾値も上昇させ,塩基性抗炎症薬の作用態度を示し,末梢性鎮痛作用に加えて中枢性鎮痛作用も併有していることが示唆された.またM73101の鎮痛作用はlevallorphanで拮抗きれず,さらにmorphinc(Mor)との間に交叉耐性も認められず,明らかにMorとは異なったものであった.しかし反復投与により鎮痛作用は徐々に減弱し,MPより弱いがTAと同程度の耐性形成作用が認められ,その原因は薬物代謝酵素誘導作用に基づくものであることが推察された.さらにinclined screen testの結果から,鎮痛作用量と筋弛緩作用量が接近していたMP,TA,BZとは異なり,M73101の鎮痛作用には筋弛緩作用が関与していないものと思われた.以上の成績からM73101は塩基性非ステロイド性抗炎症薬の範ちゅうに属し,既知薬物と同等以上の鎮痛作用を有することから,抗炎症薬として臨床的に有用であろうことが示唆された.
  • 岩田 宜芳, 小林 和雄, 原 隆夫, 松村 昌子, 三国 直二, 出口 健彦
    1978 年 74 巻 7 号 p. 857-870
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新向精神作用薬,CS-430(10-bromo-2, 3, 7, 11b-tetrahydro-11b-(2-fluorophenyl)-oxazolo(3 2d)[1, 4]benzodiazcpinc-6(5H)-one)は,3mg/kg(p.o.)では正常ラットの総覚醒,徐波睡眠および逆説睡眠時間にいずれも顕著な影響をおよぼさないが,入眠時間を有意に短縮し,p-chlorophenylalanincによって不眠にしたラットの総覚醒および徐波睡眠時間をそれぞれ有意に減少ならびに増加させた.また入眠時間も有意に短縮した.正常ウサギでは,CS-430は総睡眠時間を著明に延長し,入眠時間を短縮した.また同量のCS-430は,ウサギの後部視床下部刺激による覚醒反応を抑制したが,中脳網様体刺激による同反応には無影響であった.さらに,海馬後発射を上記の催眠用量で抑制した.これらのCS-430の作用は,いずれもnitrazepam(NZP)の作用とはほぼ同程度の強度であった.CS-430は,ネコのSherrington型除脳固縮(1~3mg/kg,p.o.)を著明に,また脊髄多シナプス反射(10mg/kg,p.o.)を軽度に抑制し,後根反射電位(30mg/kg,p.o.)を増大させたが,貧血性固縮(40mg/kg,p.o.)および脊髄単シナプス反射(40mg/kg,p.o.)には無影響であった.また,1~5mg/kg(p.o.)のCS-430は,腰仙髄γ運動ニューロンの自発性活動ならびに対側大脳皮質運動野および後部視床下部刺激によるγ運動ニューロンの興奮をいずれも抑制した.さらに,ウサギのAugmenting response,Recruiting response,ネコの視床-大脳皮質,後部視床下部-大脳皮質,嗅球-梨状葉および後部視床下部-海馬間の各誘発電位をいずれも,CS-430(10mg/kg,p.o.)は抑制しなかったが扁桃核基底核および腹側海馬-船首回の短潜時およびそれにつづく長潜時の陰性電位をいずれも顕著に抑制した.即ち,CS-430はNZPと同程度の催眠作用を有し,既知benzodiazepine系薬物と定性的に同じ作用を中枢神経系に生ずるが,下行性には脳幹部に,また大脳辺縁系では特に海馬,扁桃および船首回のいずれかにその作用部位をもつ可能性が示唆された.
  • 陳 博忠
    1978 年 74 巻 7 号 p. 871-883
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Phenothiazine系誘導体に属するfluphenazineのdecanic acid esterであるfluphenazine decanoate(FD)の一回皮下投与による薬理作用を中心に検索し,殊に作用発現,持続時間および作用強度等についてfluphenazine enanthate(FE)ならびにfluphenazine・2HCl(FH)と比較検討した.1)マウスの自発運動量に対して,経口投与においてはいずれの薬物も同様の抑制作用を示した.しかし,皮下投与ではFDの作用は比較的弱く,発現も遅いが持続時間はFH,FEと比較し,長いことが認められた.2)ラット体温の下降作用についてはFHが最も強く,FEおよびFDでは軽度であった.3)FEおよびFDは共に強い持続的なcatalepsy惹起作用を現わしたが,FDはFEのそれより弱く,また,回復の遅延傾向が認められた.4)Methamphetamine群毒性抑制作用および抗apomorphine作用においても,FDはFEより持続する傾向がみられたが,拮抗効果は弱かった.5)諸種摘出臓器における各収縮薬に対する拮抗作用に関して,抗NA作用,抗Ad作用および抗Histamine作用はFHが最も強く,FDはFEとほぼ同程度であった.抗5-HT作用はFH,FEにおいてわずかにみられたが,FDでは認められなかった.抗ACh作用はFH,FDで軽度にみられたが,FEでは認められなかった.6)無麻酔ラットの収縮期血圧の下降作用および心電図におよぼす影響はFEよりFDの方が弱かった.7)ラット脳内catccholamine turnoverの検索においては,FH,FE,FDは共にdopamine turnoverを促進したが,FEおよびFDでは持続的な促進傾向が認められた.しかし,明らかなnoradrenaline turnoverの促進効果は認められなかった.以上の結果から,FDはneurolepticsとしての薬理作用を有することが考えられ,その作用はFH,FEと比較して総体的に弱いが,作用の発現が遅く,かつ長く持続する傾向が認められた.このことは,これら薬物の吸収排泄の時間的差異に基づくものと推察され,いわゆるlong-acting neurolepticsであるFDの薬理学的特徴を示唆するものであると思われる.
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