(-)-1-(3,4,5-trimethoxybenzyl)-7-hydroxy-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline HCl(
l-MTI)の気管支および心拍数に対する作用をネコ,イヌ,モルモットおよびサルを用い,静脈内投与で,isoproterenol(Iso)と比較検討した.Pcntobarbital(PB)麻酔のネコおよびイヌで
l-MTIはIsoの約1/20の,また,モルモットおよびサルでは1/100以下の気管支拡張作用を示した.なお,いずれの動物においても,Isoと較べて
l-MTIの心拍数増加作用は,気管支拡張作用よりも遙かに弱かった.一方,
l-MTIはPB麻酔時と異なり,urethane麻酔のモルモットにおいて,気管支拡張作用を示さなかった.また,迷走神経切断,両側副腎摘出あるいはreserpine処理後大量のnorepinephrineを投与したurethane麻酔のモルモットでも同様に気管支拡張作用は認められなかった.これらの場合,histamineによる気管支収縮は,propranololによって増強された.しかしながら,reserpine処理,脳脊髄穿刺あるいはhexamethoniumを投与したurethane麻酔のモルモットでは,気管支拡張作用が認められた.これらの標本では,histamineによる気管支収縮は,propranololによって増強されなかった.なお,Isoは,いずれの条件下でも気管支拡張作用を示した.ところで,PB麻酔のモルモットにおいて,
l-MTIは,それ自身で気管支拡張作用を示すが,Isoの気管支拡張作用を抑制する傾向を示した.また,種々な条件のモルモットにおいて,対照時の心拍数が高い時に心拍数を減少させ,低い時に増加させる性質を有していた.以上のことから,
l-MTIは,気管支拡張作用に種差が認められ,また,モルモットにおいて,
l-MTIの気管支に対する効果は,McCullochらが提唱しているsympathetic bronchodilator refrexまたはsympathetic toneあるいは両者の緊張度に応じて変化することが示唆された.
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