日本薬理学雑誌
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74 巻, 6 号
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  • 森 裕志, 永井 博弍, 江田 昭英
    1978 年 74 巻 6 号 p. 653-661
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    α-Mercaptopropionylglycine(α-MPG)およびsodium dipropylacetate(DPA)は免疫促進作用を示すことを確認したので,制癌剤およびglucocorticoidによるマウス脾臓のヒツジ赤血球(SRBC)に対するhemolytic plaque forming cell(HPFC)産生抑制作用および白血球減少作用におよぼす両薬物の影響を検討した.制癌剤としてはcyclophosphamide(CP),azatioprine(AP),methotrexate(MTX),actinomycin D(AcD)およびmitomycin C(MMC)を,glucocorticoidとしてはprednisolone(Pred)をそれぞれ用いた.SRBCによる免疫日から5日間の制癌剤またはPredの皮下注射により,HPFC産生は明らかに抑制された.これに対してα-MPGの同時の腹腔内投与は,CP,AP,AcD,MMCおよびPredによるHPFC産生抑制作用に拮抗した.DPAはCP,AP,MTX,AcD,MMCおよびPredの作用に拮抗した.また,α-MPGはAP,MMCおよびPredによる白血球減少作用にも拮抗,またはその傾向を示した.
  • 池沢 一郎, 成田 寛, 池尾 富弘, 佐藤 匡徳, 海野 徳英, 岩隈 建男
    1978 年 74 巻 6 号 p. 663-670
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1-(3,4,5-trimethoxybenzyl)-5,7-dihydroxy-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline HCl(DTI)の光学異性体について,イヌで気管支拡張作用を検討した結果,静脈内投与で(-)体(l-DTI)は(±)体(DTI)の約2.5倍の活性を示したが,(+)体(d-DTI)はDTIの1/10以下の活性しか示さなかった.そこで,l-DTIを用い,イヌの気管支拡張作用ならびに心臓血管系に対する作用をisoproterenol(Iso)と比較検討した.静脈内投与によるlDTIの気管支拡張作用はIsoの約1/2.6であったが,作用持続はIsoより長かった.一方,l-DTI(0.1μg/kg,i.v.)による麻酔犬の心収縮力,心拍数,Lvdp/dtおよび心仕事量の増加作用はIsoの1/5~1/7で,気管支に対する作用より弱かった.しかし,降圧作用はIsoの約1/3,動脈内投与による大腿動脈血流量増加作用はIsoの1/2.3で,気管支に対する作用とほぼ同程度の活性を示した.これらの気管支ならびに心臓血管系に対するl-DTIの作用はpropranololによって抑制された.以上の結果は,(±)体であるDTIの気管支拡張作用の大部分は(-)体であるl-DTIによること,およびl-DTIはadrenergic β-stimulantに属するけれども心臓作用より気管支拡張および血管拡張作用が強いことを示唆している.
  • 中村 敬太
    1978 年 74 巻 6 号 p. 671-686
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1)マウス車廻し運動をデジタル的に自動計測記録できる装置を開発し,自発運動の生態学的観察を行なった.2)精確な行動観測を行なうために,パンチャーによる回転時間の連続自動記録を行なった.3)従来法とは異なる角度から車廻し運動を観測する目的で,平尾が回廊法で使用した行動解析法を回転篭法にも適用し,新しい行動概念である単一走行の導入に成功した.4)回転時間を記録したパンチテープをコンピューター処理することにより妥当性が確認きれた行動指標のなかで,可能なものはプリンタ記録による省力化を行なった.5)代表的な中枢興奮薬であるmethamphetamineの車廻し運動に及ぼす効果を検索した結果,本回転篭装置を使用した行動観測法が行動構造の解明に,また向精神薬の行動薬理学的研究に有用な手段となりうることを確認した.
  • 古賀 研一
    1978 年 74 巻 6 号 p. 687-698
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    14C-標識toluene(290μg/kg)を雄マウスの腹腔内に投与し,tolueneの体内分布・代謝および排泄を検討し,以下の知見を得た.1)血液中の放射能は指数関数的に低下し,その生物学的半減期は25分と算出された.2)組織中で最も高い放射能がみとめられたのは脂肪組織,ついで腎・肝・肺の順であり,脳は最も低かった.脳と血液との濃度比は約0.4にすぎなかった.3)投与後8分の時点で,すでに肝・腎に存在する放射能のおのおの64%・78%が不揮発性代謝物に由来するもので,この割合は時間の経過とともにきらに増加していった.これに反して脳では揮発性物質(おそらく未変化のtoluene)が放射能の70%を占め,また脂肪組織では99%以上であり,この割合は両組織とも時間が経過してもほとんど変りなかった.4)尿中へ排泄された放射能は30分で投与量の26.4%に相当し,3時間30分で50%にも達した.呼気中へは投与直後30分間で4.3%が排泄きれるにすぎず,以後はほとんど排泄されなかった.一方糞便中への排泄は18時間後においても1.3%にすぎなかった.6)尿中へ排泄された放射性物質はその59%がhippuric acidで41%はbenzoylglucuronic acidであることがchromatographyで確かめられた,肝と腎よりmethanolで抽出される放射性物質は,未同定物質を含めhipuric acidとbenzoylglucuronic acidの三つよりなるが,benzoic acidは検出されなかった.以上の結果から,1)tolueneの代謝は極めて速やかでその代謝物の排泄は主に尿を介する,2)従来報告されているヒトやウサギの結果とは異なり,マウスにおいてはtolueneの代謝機構としてグルクロン酸抱合の占める割合が大きい,3)一旦脳内に侵入したtolueneは代謝を受けることはほとんどなく,血中濃度の低下にやや遅れて消失する,などのことが結論される.
  • 江田 昭英, 永井 博弌, 片山 敏, 井上 吉郎, 中村 邦裕
    1978 年 74 巻 6 号 p. 699-709
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    モルモットは強い気道アナフィラキシーを示すので,実験的喘息のモデルとして繁用されてきた.しかし,免疫学的には通常の抗原に対して産生される抗体はγ1およびγ2であり,ヒトの喘息の惹起抗体であるIgEとは性質が異なるので,IgEによるmediator遊離を抑制する薬物の研究には適当ではない.一方,ラットは感作条件によってヒトのIgEに類似した性質の抗体(homocytotropic antibody,HTA)を産生することが知られているので,本研究ではDNP-Asとkilled Bordetella pertussisによる能動的感作ラットおよびそのHTA血清による受動的感作ラットを用い,誘発抗原の静注による呼吸型の変化を観察し,抗egg albumin ウサギ血清による受動的感作モルモットの場合と比較した.誘発による能動的および受動的感作ラットの呼吸数および呼吸流量はモルモットの場合とは異なり,一過性の増加を示さず,直後から減少し,ヒトの喘息時にみられる呼気性呼吸困難症の型を示した.受動的感作ラットは能動的感作ラットに比して,誘発による呼吸型の変化は弱いが,512倍のHTA血清で受動的に感作したラットでは,比較的強い呼気性呼吸困難症の型を示し,定量性がみられたので,これを実験的喘息とし,ついで,HTAによるmediator遊離を特異的に抑制するN(3',4'-dimethoxydnnamoyl)anthranilic acid(N-5')のこれにおよぼす影響を検べた.N-5'の5~10mg/kgの経口投与は誘発後の呼吸型の変化を明らかに抑制し,喘息治療薬としての効果が示唆された.
  • 柳浦 才三, 山竹 美和, 細川 友和, 北川 晴美
    1978 年 74 巻 6 号 p. 711-719
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ブタ膵kallikreinの各種臓器循環に対する作用並びに心臓に対する作用を,麻酔犬において,kallidinのそれと比較しつつ検討した.Kallikrein 0.01-0.1unit/kg静脈内全身投与は各血管床の血流を用量依存的に増加させた.その効果は椎骨動脈で最も強く,次いで,大腿動脈,冠動脈および内頸動脈の順で,上腸間膜動脈,腎動脈および門脈での作用は極めて弱かった.Kallidin O.3-3.Ong/kg静注では殆んど作用は認められなかった.局所動注あるいは門脈内注射の場合,kallikrein 0.01-0.1unitは血流に全く変化のなかった門脈以外は,各血管の血流量を用量依存的に増加させた.その作用は静注時と異なり,椎骨動脈より大腿動脈に強く認められた.他の血管は静注の場合と同様の順位であった.Kallidin 0.3-3.0 ngは静注時と異なりkallikreinとほぼ同様の反応パターンをもつ血管拡張を示し,各血管における作用強度もkallikreinの示した順位と同様であった.開胸犬および心肺標本を用いて静注あるいは右心房内投与,および左心房内投与を試みたところ,kallidinは前者経路では全く作用が現れず,左心房内投与で強い作用が出現したことから,kalldinは肺で殆んど失活することが解った.Kallikreinでは両適用経路の間で反応に差は認められなかった.開胸犬および心肺標本からkallikreinは心収縮力および心拍数といった心機能に対し直接作用を有しないことが明らかにされた.今回kallikreinの示した末梢血管拡張作用は,脳循環および四肢循環障害改善といったkallikreinの臨床応用を裏付けていると思われる.
  • 長谷川 和雄, 三国 直二, 酒井 豊
    1978 年 74 巻 6 号 p. 721-734
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの坐骨神経を圧挫し,それによって生じる神経機能障害の程度と,障害からの回復の経過を測る方法を確立した.次に,その方法によりビタミンB群の作用を調べた.(1)後肢の第一指と第五指の間隔(1~5指間隔)や第二指と第四指の間隔(2~4指間隔)の測定,ならびに歩行などの障害程度を10段階で採点する方法を検討した.その結果,指間距離もBehaviorも,圧挫の強弱により有意差がみられ,弱い圧挫の方が回復が早かった.圧挫の部位による障害の比較では,中枢側(臀部)よりも抹消側(大腿部)の圧挫による場合の方が回復が著明であった.坐骨神経を18~20mm摘出した場合には,91日後まで回復は全くみられなかった.これらの方法は,再現性もよく,無麻酔,無拘束のまま,長期間にわたる経日変化が調べられ,末梢神経麻痺を示す良い指標になり得る.(2)この神経障害に対して,ビタミンB1,B6,B12の合剤(3B)は,1~5指間隔,2~4指間隔,Behaviorのいずれを指標としても,有意に回復を促進した.B1およびB12も,指間距離とBchaviorのいずれに対しても有意な効果を示したが,B6は明らかな効果を示さなかった. 3Bと各単剤との比較では,1~5指間隔ではB6とB12に対して,2~4指間隔ではB1,B6, B12のいずれに対しても,BehaviorではB6との間に有意差がみられ,3Bの効果は単剤に比して,より優る.(3)神経麻痺に伴う筋萎縮の指標に,下腿の9つの筋を摘出し,筋重量を測定した.圧挫後1~2週の間で,3Bは,ヒラメ筋や足底筋,前脛骨筋,後脛骨筋などにおいて有意な効果を示した.その作用は,特にヒラメ筋において顕著である.B1,B6,B12の各単独の効果はほとんど認められなかった.圧挫後2週における3Bと各単剤との比較では,ヒラメ筋においてはB1,B6,B12のいずれに対しても,腓腹筋においてはB6に対し,足底筋と後脛骨筋においてはB1に対し,3B投与群の方が筋重量が有意に大であった.
  • 柳 義和, 黒川 寛, 古閑 良彦, 粟田 弘, 犬飼 利也
    1978 年 74 巻 6 号 p. 735-747
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1-Cycolopropylmethy1-4-pheny1-6-methoxy-2(1H)-quinazolione(SL-573)の鎮痛・解熱作用の性格とその効力を既知薬剤と比較検討した.化学刺激法で本剤はindomethacinとaminopyrine(AM)との中間に位置する鎮痛効力を示しED50値の比較からSL-573と同等の効力を得るためにはAMはphenylquinone writhing法で本剤の3.2倍,acetic acid writhing法で4.1倍,Randall and Selitto法で6.3倍の投与量を要した.SL-573のこのような鎮痛効力はcodeineのそれに匹敵する強力なものと考えられた.本剤は機械的あるいは熱刺激法で無効であり,その鎮痛作用はnaloxone(NX)により拮抗されず,またmorphineに対してNX様の拮抗作用を示きない等その化学構造から容易に推定されるごとく麻薬あるいは麻薬拮抗性化合物とは性質を異にし解熱性鎮痛剤あるいは消炎剤としての性質を示した.本剤はマウスおよびラットにおける連続投与時に鎮痛効力について耐性を生じなかった.本剤はウサギ坐骨神経刺激時の高位痛覚求心路における誘発電位に影響を与えずその鎮痛作用の作用点は知覚神経末梢であり,本剤のprostaglandin生合成阻害作用は鎮痛作用発現の作用機序の一つの説明となると考えられた.SL-573はウサギおよびラット正常体温に事実上影響を与えず,腸チフス・パラチフス混合ワクチン発熱ウサギおよびyeast発熱ラットにおいて強い解熱作用を示した.その解熱効力を臨床的に強力な解熱剤として知られるAMと比較すると,ウサギでは両者同等の効力であり,ラットではSL-573と同等の解熱効力を得るためにはAMはその4倍の投与量を要した.
  • 柳 義和, 粟田 弘, 古閑 良彦, 黒川 寛, 犬飼 利也
    1978 年 74 巻 6 号 p. 749-762
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1-Cyclopropylmethyl-4-phenyl-6-methoxy-2(1H)-quinazolinone(SL-573)の消炎作用の性格とその効力を既知薬剤と比較検討した.ラットのcarrageenin足浮腫法でのSL-573の50%浮腫抑制量は60mg/kg(p.o.)で,50%浮腫抑制量で比較して,SL-573と同等の効力を得るためにはphenylbutazone(PB)およびibuprofen(IP)はその1.6倍量,mefenamic acid(MF)は3.3倍量,mepirizole(MP)は6.7倍量の投与量を要した.同じくラット足浮腫法でyeastを起炎剤とした時のSL-573の効力はIPとほぼ同等でMPの100mg/kg投与時の効力はその1/4量のSL-573投与時の効力と同程度であった.またdextranを起炎剤とした時のSL-573の効力はIPおよびMPのそれより有意に強く,一方formalin浮腫法ではIP,MPと同様浮腫抑制効果が認められなかった.マウス酢酸腹腔内投与時の血管透過性充進をSL-573は強く抑制しED50値で比較してSL-573と同等の効力を得るためにはPBはその12倍,MFは17倍の投与量を要した.ラット綿球法および濾紙浸漬法でSL-573は全身作用としても局所作用としても肉芽腫形成に大きな影響を示さなかった.SL-573のラットadjuvant関節炎予防効果および治療効果はPBのそれに劣らないものであった.ラットの実験創傷の治癒の経過には体重増加抑制のみられる毒性量(400mg/kg/day)投与時にのみ若干,遅延の傾向がみられた.SL-573のcarrageenin浮腫抑制効果は副腎摘出ラットでも減弱せず,その効果は副腎ホルモンを介さないものと考えられた.SL-573のラットでの胃出血作用は他の非ステロイド系消炎剤に比べて弱く小腸潰瘍作用は800mg/kgの大量投与時にもみられなかった.一方,SL-573はindomethacinとの併用時にその小腸潰瘍の発現を抑制する性質を示した.こうした性質は既知非ステロイド系消炎剤の中ではきわめて特長的なものであると考えられた.
  • 菊池 隆一, 杵鞭 宏育
    1978 年 74 巻 6 号 p. 763-772
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    胎児―胎盤系機能の生理的意義の解明の一助として,ヒト胎盤mitochondria MAOの複数性につきtype Aおよびtype B MAOの特異的基質であるserotonin,β-phenylethylamine,tyramineおよび特異的阻害剤であるclorgyline,pargyline,deprenylを用い,ラット肝mitochondria MAOとその酵素化学的性格を比較検討し以下の成績を得た.1)胎盤MAOの場合何れの基質、および何れの阻害剤を使用しても阻害は認められたがclorgylineにより,より強く阻害された.すなわち,胎盤MAOはtype A阻害剤に対して高い感受性を示した.一方,ラット肝MAO活性はserotoninを基質とした場合はclorgylineにより,β-phenylethylamineを基質とした場合にはpargyline,deprenylにより強い阻害を受けた.Tyramineを基質とした場合にはclorgylineによりダブルシグモイド型のpI曲線が得られた.すなわち,ラット肝にはtype A MAOとtype B MAOが2:3の割合で存在する.2)胎盤MAOはtrypsin添加後30分で完全に失活したのに対してラット肝MAOでは,8時間を経過してもなお50%以上の活性が認められた.3)連続庶糖密度勾配法により胎盤およびラット肝mitochondria MAOを2つのfractionに分離した.これら2つのMAO fractionに対する阻害剤の影響は胎盤の場合,clorgylineを用いた際に若干異ったが,pargyline,deprenylを用いた際はほぼ同様であった.ラット肝の場合はいずれの阻害剤も若平異なった阻害態度を示した.4)ヒト胎盤より庶糖密度勾配法により得られた両fractionの基質特異性を検討した結果,その基質特異性には著明な相違は認められなかった.以上の結果より,ヒト胎盤mitochondria中にはtype A MAOのみの存在が示唆された.
  • 岡部 進, 田端 敬一, 石原 安信, 国見 春代, 泉 かほる, 内田 紀子
    1978 年 74 巻 6 号 p. 773-781
    発行日: 1978年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    主として外用剤として使用の表記のsteroid系抗炎症薬のラットおよびイヌの胃腸管に対する刺激作用の有無を検討した.いずれの化合物(0.4~10mg/kg)も1回または5回連続的に皮下に投与した結果,胃粘膜に急性潰瘍を誘起した.多くの場合,その刺激反応は用量に依存していた.小腸に対しての作用は殆んどなかった.ラットにaspirinまたはindomethacinとsteroid化合物とを併用投与した結果,betamethasone valerateはasprinによる胃障害作用を増強したが,betamethasonc dipropionateはindomethacinにて発生する小腸潰揚を有意に抑制した.ラットおよびイヌに発生させた慢性胃潰瘍(酢酸の胃壁内注入にて作製)に対し,3種のsteroid化合物の連続投与は殆んど刺激作用を示さなかった.ただし,betamethasone valerateのみはラットの慢性潰瘍の治癒を有意に遅延させた.一般には全身投与される非steroid系抗炎症薬indomethacinの胃腸障害作用も同一条件下で比較検討した.Indomethacinも1回または連続皮下投与により,ラット,イヌの胃,小腸粘膜に用量(1~20mg/kg)に依存して重症な穿通性潰瘍を発生させる事を確認した.形態的にも部位的にも,steroid化合物で発生する胃粘膜潰瘍とは明らかに異なっていた.Indomethacinの連続投与により,ラットの慢性潰瘍の治癒は遅延されたが,イヌの慢性潰瘍は影響を受けなかった.その際,慢性潰瘍の周辺には穿通性のindomethacinによる潰瘍が発生していた.本実験から,今回使用した抗炎症薬は,steroid系,非steroid系ともに実験動物の消化管に刺激作用を及ぼすが,前者の作用は後者に比べて総体的に弱く,また臨床での局所適用量の約5~20倍量が体内に完全に吸収きれたと仮定しても胃腸障害は無いかまたは発生率は低い.従って,これらのsteroid系薬物を外用剤として使用する限りは胃腸管への安全性は高いと考えられる.但し,全身投与の場合はsteroid,非steroid系薬物は十分な注意を要すると思われる.
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