日本薬理学雑誌
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71 巻, 4 号
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  • 府川 和永, 伊藤 義彦, 三崎 則幸, 野村 聡子
    1975 年 71 巻 4 号 p. 307-315
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    静脈注射剤投与による血栓性静脈炎の発生予測を行うための試験法を考案し,その病態モデルについて2,3の検討を加えた.実験はウサギ耳介後静脈を用い,血栓性静脈炎発生方法として,検体を単に静脈注射する方法(静注法),血管局所に検体を一定時間貯溜させる方法(貯溜法)の2法について検討した.その結果,静注法では,血栓性静脈炎の発生は認められたが,その発生率は低く,検出率を高めるためには実験例数の増大や大量投与の必要があり,被験薬によっては中毒量に至るような不都合が生ずるため試験法として適さないと考えられた.貯溜法では,少量(0.05ml)の検体を毎日3分間血血局所に貯溜させることY:.より,高率に血栓牲静脈炎の発生がみられ,その病像は組織学的にも静脈注射後のヒト血栓性静脈炎像に酷似することを確認した.また,この方法を用いた数種の薬剤の血栓発生率や炎症強度は臨床統計資料と相関関係を示すことが認められた.さらに,貯溜法において短時間内に反復処置することにより血栓発生率が増大し,その効果は静注法における検体容量効果と相関関係を示すことを見い出した.このことにより,一定容量の検体を処置する貯溜法によっても,臨床上注射容量の異なる検体の発生頻度予想を可能とした.なお,これらの血栓性静脈炎の発生において,血栓は注射針挿入により損傷をうけた血管内壁と刺激性検体の接触が,炎症症状の発現には血管壁およびその周囲組織への刺激性検体の拡散がそれぞれ主要因となることを考察した.したがって,この貯溜法は静脈用注射剤の血栓性静脈炎試験法として適しており,この方法によって臨床上わずか0.04%程度の発生をも予測しうることを見い出した.
  • 藤田 直, 安田 正秀, 松本 研一
    1975 年 71 巻 4 号 p. 317-322
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    in vivoでラット肝ミトコンドリアの脂質過酸化物の形成に対するリノール酸ハイドロパーオキサイド(LAHPO)の影響について検討し,以下の成績を得た.1)正常ラットにLAHPO(10mg/kg/day)3日および7日間毎日投与し,最終投与後24時間後の肝ミトコンドリアの脂質過酸化物および総SH含量は正常値と変らなかった.2)肝および血漿中の総脂肪酸組成はLAHPO1週間毎日投与後,正常との間に差はみられなかった.ボスファチジルイノシトール,ホスファチジルセリンを構成する脂肪酸組成においても,LAHPOの投与による影響はみられなかった.3)血漿のトリグリセライドはLAHPO3日間投与することによって約56%増加したが,しかしLAHPOを1週間投与するとその値は正常に復した.肝トリグリセライドはLAHPO3日間の投与では対照とほぼ同じ値であったが,1週間の投与ではその含量は約23%増加した.4)血漿の遊離脂肪酸の含量はLAHPOを3日および7日間投与すると約50%減少した.しかし肝の遊離脂肪酸においては1週間毎日LAHPOを投与してもその効果はみられなかった。
  • 小久江 栄一, 吐山 豊秋
    1975 年 71 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    粘度の異なる3種のポリアクリル酸ソーダ(PAS)を用いて,その抗潰瘍作用の要因を検討した.絶食下のラットに5%の割合で試験物を混和したグラニュー糖を給餌した後,レセルピン5mg/kgを腹腔内に投与した.12時間後に,胃粘膜の潰蕩発生状況と,採食物の胃内残留量を測定した.抗潰瘍作用はいずれのPASにも認められたが,PAS間の比較では,粘度の高いものほど効果が高かった.また粘度の高い物質を給餌されたラットほど,その胃内には多量の採食物が残留していた.浸水抱束法(12時間)により産生された潰瘍に対して,3種のPASは抑制効果を示した.また,レセルピン潰瘍の場合と同様に,粘度の高い物質ほど抗潰瘍作用が強く,同時に胃内の採食物を残留させる作用が強かった.幽門結紮潰瘍では,50mgの胃内投与によりいずれのPASも抗潰瘍作用を示したが,粘度の差による作用の差は認められなかった.幽門結紮(6時間)ラットを用いて,PAS(50mg,胃内投与)の胃液分泌に対する作用を検討した.いずれのPASも,胃液中の遊離塩酸量をわずかながら減少させたが,PAS間の制酸作用の程度の差は認められなかった.試験管内でカゼイン消化法によりPASの抗ペプシン作用を比較した.抗ペプシン活性は3種の試験物に認められたが,粘度の相違による活性の差は認められなかった.前報において,PASの抗潰瘍作用の要因として,1)抗ペプシン作用を有する,2)制酸作用を有する,3)採食物の胃内残留性を高める,の3つの可能性を指摘した.今回の粘度の異なるPASを比較した実験では,採食物の胃内残留性を高める作用と,抗潰瘍作用に相関があることが判明した.
  • 柳浦 才三, 田頭 栄治郎, 泉 知子
    1975 年 71 巻 4 号 p. 329-337
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットを用いたpethidineの薬物依存性試験は従来からmorphineあるいはcodeineにみられた1日2~3回の適用スケジュールでは十分な依存獲得は不可能であった,Pethidineのごとく生体内からの消失が早く,しかも作用の弱い薬物の依存牲試験は生体に常時薬物が存在する条件下ではじめて可能であることを示唆し,非経口的持続注入法ではじめて成功している.本実験は著者らが従来より簡易な依存性のスクリーニング法として用いている被検薬物を飼料中に混入してラットに連続摂取させる方法でpethidineの依存性試験を行なった結果,次の成績を得た.1)Pethidine混入飼料(0.5mg/g vs.1mg/g of food)を7週間連続自由摂取させると,3週間目頃から自発的に高濃度側(1mg/g)の飼料摂取率が漸増した.またこの時期に48時間休薬しても体重の減少はみられなかった.2)初期3日間2mg/g of food,その後7日間4mg/gの混入飼料を摂取させたのち48時間休薬すると,24時間後には体重の減少がみられたが,48時間後にはすでに休薬前のレベルに回復した.3)休薬24時間内の体重および飼料摂取量の経時変化をみると体重は12~13時間後に,また飼料摂取量は6時間後に最大減少を示したのち漸次回復した.4)Pethidine休薬13時間後にmorphine(10mg/kg,s.c.)を単一適用すると一過性の禁断症状抑制がみられた.5)Pethidine依存ラット(平均300mg/kg/day)にM混入飼料を24時間連続摂取させる(62.9mg/kg/24hr)と禁断症状は完全に抑制された.6)Levallorphan(5mg/kg,s.c.)を適用するとmorphine同様に著明な体重減少と禁断症状が観察された.これらの成績からPethidineの依存形成能はmorphineの約1/5程度と考えられる.結論としてPethidineにみられたような生体内消失の早く,作用も弱い薬物の依存性試験には薬物混入飼料法は有用であり,検定にあたっては休薬後24時間以内の体重および飼料摂取量の経時変化を測定することが一層重視される結果を得た.
  • 秦 多恵子, 尾陰 多津子, 喜多 富太郎
    1975 年 71 巻 4 号 p. 339-349
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    われわれは第35回日本薬理学会近畿部会においてE1-マウス痙攣の発現と同調性の発現に影響を与える因子として視覚が関与している可能性を示した.ここで述べる視覚という機能の内容は,映燦発現の他に光量による影響も考えられる.そこでこのたび光を中心として映像発現を起こす視覚とEl痙攣発現との関係について調べたわけである.(a)E1-マウスの目に種々の被覆を施し,被覆の相違とRNC(痙攣不発作率)との関係を調べたところ,可視度と同様,光量の多少もRNCに大きな影響が認められた.(b)E1-マウスの両側眼球を摘出すると,TSC(振とう痙攣閾値)およびRNCが増加し痙攣が起こりにくくなったが,約2週間後にはcontrol値に近くまで回復した.(c)両側眼球摘出後,眼房内に黒色ガラス球をはめ込んだマウスを午前10時振とう群と午後2時振とう群に分けてTSCとRNCを求めたところ,対照に比して午前10時ではわずかな増加が,午後2時では明らかな増加が認められ,光照射時間が大きな影響を与えているように思われた.(d)光照射リズムを狂わせて未処置E1-マウスを飼育し,そのマウスを2群に分け午前10時と午後2時に1群ずつ振とうしたところ,午前10時振とう群では,照射後1時間におけるTSCは照射5時間後のそれより大となったが,午後2時振とう群では照射5時間後のTSCと照射9時間後のそれはほぼ等しくなった.このことは光によって痙攣は起こり易くなるが照射時間がある程度以上長くなると光の影響はプラトーに達することを意味している.(e)常時明あるいは常時暗状態で飼育すると,明暗のある正常照明に比して,後者の常時暗状態ではRNCが増加した.しかし前者の常時明状態では1匹ずつ振とうした場合と2匹を一緒に振とうした場合とで一定した影響が認められなかった.これには光の強さの関与が考えられる.(f)1,2匹のE1痙攣におよぼす照度の影響を調べた.5lux以下から遂次照度を増し20,000~30,000luxの光にEl-マウスを暴露したものを2群に分け,その内1群を照射直後に,他の1群は1時間後に振とうしたところ,照射直後の成績では照度の増加に従ってRNCが低下し,2匹間の同調率も上昇した,しかし照射1時間後では光量の多少による影響の差は見られなかった.以上の実験事実よりE1-マウスの痙攣誘発に対する光の影響については,光そのものの強さ,照射量などよりかむしろ光を受け取る生体側の認識に由来するものと考えた方が妥当であろう.この考え方は認知論に由来するものである.
  • 野村 彰
    1975 年 71 巻 4 号 p. 351-365
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    N-(4-Chlorophenyl)-β-(4-hydroxylmethylphenoxy)ethylurethane(HPU)のウサギ長期連続投与に際し,methemoglobin(MHb)のクまとんど認められない典型的なsulfhemoglobin(SHb)血症をみいだした.同様のSHb血症は,マウスおよびネコにおいても発現した.そこで,上記薬物および同様基本骨核を有する近縁化合物を用い,マウスにおいて,1回腹腔内投与ないし1日1回3日連続腹腔内投与によるSHb血症発現の有無を,MHb形成作用とともに検索した.Phenylhydroxylamine(PHA),nitrobenzene(NB),aniline(A),2-chloro-A(2-Cl-A),3-Cl-A,4-Cl-A,acetanilide(AA),phenacetin(PA),N-(4-chloropheny)ethylurethane(CPU),hydroxylamine(HA)およびsodium nitrite(SN)は,1回投与により,MHb形成を示すが,phenylurethane,HPU,methylhydroxylamine(MHA),methylamineおよびnitromethane(NM)は明自なMHb形成作用を発現しなかった.これら化合物のうち,PHA,3-Cl-A,4-Cl-A,PA,CPU,MHAおよびSNは,投与24時間以降遅発性のSHb形成を招来した.このSHb形成作用は,3回投与によってなお顕著となり,さらに1回投与によるSHb形成の明確でなかったNB,2-Cl-A,AA,HPUおよびNMも,3回投与によりSHb形成作用を発現した.上記成績から化学構造とSHb形成作用との相関性,SHb形成機構ならびにSHb形成の遅発性について考察し,MHb形成の疑われる薬物の連用にあたっては,MHbのみならずSHb形成についても顧慮する必要があろうことを示唆した.
  • 宮本 政樹, 大津 優, 杉崎 孝之, 坂口 孝
    1975 年 71 巻 4 号 p. 367-378
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    抗炎症剤であるA41 304とdexamethasoneとの催奇形作用を,ラット,マウスを用い比較した.母獣ラットの体重増加に抑制がみられたA41 304 400μg/kg投与においても,外表奇形をともなった胎仔数の増加はなかった.Dexamethasone400μg/kgでは,母獣の体重増加抑制は著明であり,胎仔では口蓋裂の発生,胎盤重量,胎仔体重および体長の抑制が認められた.胎仔骨格への影響としては,両薬物投与により,歯状突起,中足骨の化骨遅延,腰肋の増加がみられ,dexamethasone400ug/kg投与では,これに加えて,尾椎骨の化骨遅延が著明であった.妊娠マウスに両薬物を投与した時,A41 304 1,600μg/kg,dexamethasone400μg/kgで口蓋裂の多発がみられた.しかし薬物投与の影響と考えられる内臓,骨格奇形は,まったくみられなかった.出生後の発育は,ラット,マウスともA41 304投与群では,いずれも順調であったが,dexamethasone400μg/kg投与の場合には,ラットで,哺育率の低下および育成仔の発育遅延が認められた.A41 304をマウスに投与し,みられた口蓋裂の成立臨界期は,妊娠11~15日の間にあり,主として妊娠11~13日であった.A41 304,dexamethasoneのいずれでも,口蓋裂成立と投与量の間には正の相関がみられたが,同一投与量における発生頻度は,A41 304投与群に比し,dexamethasone投与群で高率であった.
  • 向出 惇, 亀山 勉
    1975 年 71 巻 4 号 p. 379-385
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    家兎腎由来RK13-cell lineと人羊膜由来FL-cell lineの両培養細胞に対する薬物の毒性について次の結果を得た.RK13-cell lineを用いたときのID50はibuprofen,naproxen,Y-5554,diclofenac and aminopyrineは,それぞれ130,290,200,140and>500各μg/ml.一方FL-cell lineでは,105,>500,180,170and>500各μg/mlであった.細胞脱落を示す最少濃度は,RK13-cell lineの場合は,ibuprofen,naproxen,Y-5554,diclofenac and aminopyrineで,それぞれ125~250,250~500,125~250,62.5~125and1,000~2,000各μg/ml一方FL-cell lineでは,62.5~125,125~250,62.5~125,62.5~125and1,000~2,000各μg/mlであった.Morphologic changesは低濃度で両細胞ともcontrol mediumに比較して差異は認められなかったが,生細胞の若干の減少と増殖抑制が認められる。高濃度では両細胞ともmonolayerは完全に破壊された.中間濃度では,cytoplasmの収縮・穎粒の出現,細胞突起などの形態変化を示す細胞が認められた.
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