N-(4-Chlorophenyl)-β-(4-hydroxylmethylphenoxy)ethylurethane(HPU)のウサギ長期連続投与に際し,methemoglobin(MHb)のクまとんど認められない典型的なsulfhemoglobin(SHb)血症をみいだした.同様のSHb血症は,マウスおよびネコにおいても発現した.そこで,上記薬物および同様基本骨核を有する近縁化合物を用い,マウスにおいて,1回腹腔内投与ないし1日1回3日連続腹腔内投与によるSHb血症発現の有無を,MHb形成作用とともに検索した.Phenylhydroxylamine(PHA),nitrobenzene(NB),aniline(A),2-chloro-A(2-Cl-A),3-Cl-A,4-Cl-A,acetanilide(AA),phenacetin(PA),
N-(4-chloropheny)ethylurethane(CPU),hydroxylamine(HA)およびsodium nitrite(SN)は,1回投与により,MHb形成を示すが,phenylurethane,HPU,methylhydroxylamine(MHA),methylamineおよびnitromethane(NM)は明自なMHb形成作用を発現しなかった.これら化合物のうち,PHA,3-Cl-A,4-Cl-A,PA,CPU,MHAおよびSNは,投与24時間以降遅発性のSHb形成を招来した.このSHb形成作用は,3回投与によってなお顕著となり,さらに1回投与によるSHb形成の明確でなかったNB,2-Cl-A,AA,HPUおよびNMも,3回投与によりSHb形成作用を発現した.上記成績から化学構造とSHb形成作用との相関性,SHb形成機構ならびにSHb形成の遅発性について考察し,MHb形成の疑われる薬物の連用にあたっては,MHbのみならずSHb形成についても顧慮する必要があろうことを示唆した.
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