日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
87 巻 , 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 高橋 二郎, 西野 仁雄, 小野 武年
    1986 年 87 巻 5 号 p. 507-519
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    サル大脳皮質運動野手腕領域破壊後の手腕運動機能障害に対して,破壊直後から21日間S-adenosyl-L-methionine(SAMe) 10 mg/kgを連日筋肉内投与しても無効であった,しかし投与量を20 mg/kgおよび30 mg/kgにすると,障害は著しく軽減し,回復を促進した.また,主溝の一部を含む前頭前野弓状窩野の破壊後14日頃までの急性期遅延反応障害も,同様のSAMe 30 mg/kg投与により著しく軽減し,回復を促進した.前頭前野破壊後76~140日を経た慢性遅延反応障害もSAMeの30 mg/kgにより,ある程度回復した,さらに弓状窩野に加えて前頭前野背側部全域破壊後の重度の遅延反応障害もSAMeの30 mg/kg投与により顕著に軽減した.一方,サルと同様な方法によるラット大脳皮質前頭部破壊7日および14日後の破壊局所組織には,SAMe 50 mg/kg連日皮下投与により,活発な食作用を示すマクロファージの遊走促進像が認められた.これらの結果から,SAMeは脳損傷後の運動および遅延反応障害を軽減し,回復を促進することが明らかとなった,その作用機構の一因には,障害局所におけるマクロファージの食作用の亢進が考えられる.
  • 織田 実, 荻原 まどか, 佐藤 拓夫, 来海 正輝, 岩城 正廣
    1986 年 87 巻 5 号 p. 521-526
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    抗炎症作用を有するセリン蛋白分解酵素阻害剤nafamostat mesilate(FUT-175)のラット多形核白血球のO2-産生に対する作用を,他のセリン蛋白分解酵素阻害剤ならびに代表的な抗炎症薬と比較検討した.1) ラットの多形核白血球はconcanavalin A(Con A),cytochalasin B(Cyt B)の各刺激または同時刺激に対して,ほとんどO2-産生応答を示さなかったが,NADH存在下,Con AとCyt Bの同時刺激により強いO2-産生を示した.2) FUT-175は10-6および10-5MでNADH存在下のCon A+Cyt Bによるラット多形核白血球のO2-産生を濃度依存的に抑制した.3) セリン蛋白分解酵素阻害剤であるL-l-tosylamido-2-phenylethyl-chloromethyl ketone(TPGK)およびsoybean trypsin inhibitor(SBTI)は10-5または10-4MでO2-産生を抑制したが,aprotinin,leupeptin,chymostatinは抑制作用を示さなかった.4) 代表的な抗炎症薬であるindomethacinおよびdexamethasoneはいずれもO2-産生を抑制しなかったが,phospholipase A2阻害剤であるmepacrineはO2-産生を強く抑制した.5) ラットにFUT-175を200 mg/kg経口投与した群の多形核白血球のO2-産生は対照群のそれより有意に減少していた.6) FUT-175はhypoxanthine-xanthine oxidaseにより産生されたO2-に対しては何ら影響を与えなかった.以上の結果から,FUT-175はラット多形核白血球のO2-産生に対して,他の代表的な抗炎症薬には見られない強い抑制作用を有することが明らかになった.
  • 藤吉 俊夫, 飯田 博之, 斉藤 真寿美, 池田 賢朗, 山浦 哲明, 植松 利男
    1986 年 87 巻 5 号 p. 527-536
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    新規非ステロイド性抗炎症剤EB-382の鎮痛および解熱作用について検討した.EB-382はacetic acid,phenylquinoneおよびacetylcholineの各種起炎剤によるマウスwrithingに対してibuprofenとほぼ同程度の抑制作用を示したが,phenylbutazoneの作用は弱かった.EB-382はラットにおけるRandall-Selitto法および硝酸銀誘発関節炎の炎症性疼痛に対して著しい鎮痛作用を示し,その効力はibuprofenおよびphenylbutazoneよりも遥かに優れていた.EB-382はラットの正常足における疼痛およびマウス熱板法において何ら作用を示さなかった.EB-382は,マウス酵母誘発慢性炎症性疼痛およびadjuvant関節炎疼痛に対して著しい鎮痛作用を示し,その効力はibuprofenおよびphenylbutazoneよりも遥かに優れていた.EB-382はラット酵母発熱に対してibuprofenとほぼ同程度の解熱作用を示したが,正常体温に対してはaminopyrineと異なり,何ら作用を及ぼさなかった.以上,EB-382は鎮痛・解熱剤として臨床上有用な薬剤となり得ることが示唆された.
  • 新冨 敬一, 小川 洋里, 吉本 謙一, 成田 寛
    1986 年 87 巻 5 号 p. 537-549
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    実験動物を用い,脳および末梢循環に対するnicergolineの作用をdihydroergotoxine(DHE)およびpapaverineと比較検討し,以下の成績を得た.1) 動脈内投与:nicergoline(0.032~32 μg/kg)はpapaverineと同様にネコの内顎動脈(ヒトの内頸動脈に相当)および大腿動脈血流量を用量依存的に増加させたが,DHEは作用を示さなかった.2) 静脈内投与:nicergoline(32~128 μg/kg)はネコにおいて血圧下降および一過性の脳血管抵抗の低下を生じさせたが,内顎動脈血流量,頭蓋内圧および心拍数にはほとんど影響を与えなかった.papaverine(1~4 mg/kg)は内顎動脈および局所脳血流量増加,頭蓋内圧上昇,血圧上昇ならびに心拍数増加を生じさせた.一方,DHEは血圧下降と心拍数減少とを生じさせたが,他のパラメーターをほとんど変動させなかった,3) 経口投与:ネコにおいてnicergoline(0.06~4 mg/kg)は用量依存的な血圧下降を惹起するとともに低用量でadrenaline昇圧反応を選択的に抑制(ID50: 0.25mg/kg)した.DHEはadrenalineおよびnoradrenaline昇圧反応を抑制したが,血圧に対しては軽度の下降作用を示すのみであった.さらに,nicergoline(3~100 mg/kg)は高血圧自然発症ラットの血圧を用量依存的に下降させると共に高用量では心拍数を減少させた.4) これらの成績から,nicergolineの脳および末梢循環に対する作用は直接的な血管拡張作用とα-受容体遮断作用とに基づくものと考えられた.
  • 西村 敬治, 左近上 博司, 中西 順一, 池田 博信, 野村 正和, 西森 司雄
    1986 年 87 巻 5 号 p. 551-556
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    somatostatin(SS)およびその誘導体des(Ala1, Gly2)[D-Trp8, D-Asu3,14]-somatostatin(SS-1)の胃粘膜血流量(mucosal blood flow: MBF)および酸排泄量(acid output: AOP)におよぼす影響を麻酔ラットを用いて検討した.胃液分泌刺激剤としてbethanecholおよびpentagastrinを使用した.SS-1(1, 10, 30および100 μg/kg, i.v.)をbethanechol持続投与の直前に静脈内単回投与することにより,MBFおよびAOPの増加を共に用量依存的に抑制した.SS-1の投与30分後でのMBFおよびAOPの抑制の程度はSSと同等であったが,SS-1の抑制作用は投与90分後においても持続して認められ,また,MBFに比較してAOPに対する抑制作用がより顕著であった.bethanechol刺激におけるMBFに対する抑制作用はSS-1とSSでは同程度であったが,AOPに対する作用はSS-1の方でより強く認められた,SS-1とSSはpentagastrin刺激におけるMBFおよびAOPの増加を同程度に抑制し,SS-1の作用はSSに比較して持続性が認められた.
  • 黛 清, 渡辺 潔, 田丸 健次, 笠間 俊男
    1986 年 87 巻 5 号 p. 557-571
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    膀胱および尿道に対するoxybutyninの作用を,ネコおよびウサギを用いてatropineおよびflavoxateと比較検討した.oxybutynin 10 mg/kg, i.v. は,骨盤神経の末槍端および中枢端刺激による膀胱収縮を有意に抑制し,その効力はatropineの約1/2であった.一方flavoxateは,10 mg/kg, i.v.で増強或いは抑制作用を示した.acetylcholineおよびAHR-602による膀胱収縮は,oxybutyninおよびatropineにより強く抑制された.oxybutyninのこの作用は,atropineの約1/15であった.一方DMPP収縮は,oxybutyninおよびatropineの高用量で抑制され,その効果はatropineの約2/5であった.さらに,oxybutyninは下腹神経刺激による膀胱収縮に対して3 mg/kg, i.v. で抑制し,10 mg/kg, i. v. では初期の増強の後に抑制作用を示した.oxybutyninは,自発性律動収縮,膀胱トーヌスおよび骨盤神経放電をatropineと同様に抑制した.一方flavoxateは,収縮を増強し,膀胱トーヌスおよび骨盤,下腹神経放電を増加させた.norepinephrine,acetylcholineおよび下腹神経刺激による尿道反応を,oxybutyninは抑制したが,著明な作用ではなかった.ウサギcystometrogramにおいて,oxybutyninおよびatropineは,用量依存的に注入量,膀胱容積および排尿閾値圧を増加した.flavoxateも同様であった.これらの結果から,oxybutyninは頻尿の治療に有用な薬剤であると思われる.
  • 栗原 久, 田所 作太郎, 原口 裕文
    1986 年 87 巻 5 号 p. 573-581
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    キサンチン誘導体のpropentofylline(HWA285)の行動薬理作用を,マウスの移所運動活性,レバー押し型非連続条件回避反応およびstep-through型受動的回避反応を指標にして検討した.HWA-285を単独投与した場合,1.25~20 mg/kg, s.c. は移所運動活性に,2.5~40 mg/kg, s.c. は非連続条件回避反応に,および10~30 mg/kg, s.c. は受動的回避反応に著変を引き起こさなかった.しかし5~20 mg/kgのHWA285はmethamphetamine(2 mg/kg, s.c.)およびscopolamine(0.5 mg/kg, s.c.)の移所運動活性促進効果を有意に減弱した,また2.5 mg/kgのHWA285はchlorpromazine(2 mg/kg, s.c.)およびphysostigmine(0.1 mg/kg, s.c.)の非連続条件回避反応抑制効果を減弱する傾向があり,逆に10~40 mg/kgではchlorpromazineの効果を著明に増強した.獲得試行の30分前にscopolamine(2 mg/kg, s.c.)をマウスに投与すると,24時間後における再生試行時に反応潜時の短縮が観察され,受動的回避反応の抑制が誘発された.受動的回避反応に及ぼすscopolamineの効果は,30 mg/kgのHWA285を獲得試行終了直後,あるいはscopolamineと併用投与すると軽減された.本結果は,比較的高用量(5 mg/kg 以上)のHWA285がカテコールアミン性神経系を抑制し,逆にアセチルコリン性神経系を賦活する可能性を示唆している.しかしHWA285の行動薬理作用は,用量および観察指標によって相違すると推察される.
  • 吉村 裕之, 菅 昇, 小川 暢也
    1986 年 87 巻 5 号 p. 583-597
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    コミュニケーションボックス法は,条件情動刺激を負荷された動物の示す情動反応が,それを感覚的に認知し得る他の動物の情動性に影響を与え,胃粘膜障害(GML)などの身体的変化が観察される現象を適用したものであり,物理的情動ストレス負荷群(E群)と心理的情動ストレス負荷群(NE群)を同時に設定できる利点を有する.本実験は,この方法で誘発されるGMLを指標に,まず,抗不安薬を前処置したマウスおよびラットにストレスを負荷した場合の発生頻度と損傷度から予防効果を検討し,次に,ストレスを負荷したラットの胃粘膜病変を内視鏡的に同定後,その治癒過程に及ぼす抗不安薬の影響を同一個体で経時的に検討するために企てられた.薬物は,diazepam,clotiazepam,ethyl loflazePateおよび対照として0.5% CMC溶液を用い,各薬物ともマウスの場合は2, 5, 7.5 mg/kgの用量を,また,ラットの場合は5および10mg/kgの用量を経口投与した.マウスのGMLに対する予防効果は,E群では弱く,ethyl loflazepateのみがその傾向を示したが,NE群では,各薬物ともGML発生率を抑制した.ラットのGMLに対する予防効果は,E群の場合,clotiazepamおよびethyl loflazepateがGML発生率を有意に抑制した.NE群の場合も,clotiazepamおよびethyl loflazepateに有意な予防効果が認められ,diazepamは無効であった.ラットに対する予防効果をさらに摘出胃標本における潰瘍指数で検討したところ,ほぼ同様の結果が得られた.内視鏡所見の評価にヒト消化性潰瘍の病期分類を援用し,採点法による計量的な解析を試みたところ,clotiazepam投与群では,対照群との間に有意な治癒促進効果が認められた.これらの実験成績は,コミュニケーションボックス法を内視鏡観察と組み合わせることにより,予防効果と治療効果の比較など臨床上興味ある問題の基礎を解明できる可能性を示唆している.
  • 田中 俊三, 赤池 昭紀, 高折 修二, 山原 條二, 藤村 一
    1986 年 87 巻 5 号 p. 599-608
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    tetrahydroberberine(THBと略)を光学分割する行程中d-camphor sulfonateを反応させて得られるl-tetrahydroberberine-d-camphor sulfonate(THB-CSと略)を局所麻酔使用下の拘束ウサギに静脈内投与,および埋込み電極を用いたラットに経口投与することにより,それぞれ脳波に及ぼす影響をchlorpromazineを対照薬に選び比較検討した.THB-CSはウサギ,ラットの自発脳波を共に安静波型にし,その効果は前者では静注後約3~5分,後者では経口投与後約30分に顕著となった.また,それぞれの場合の最小有効量は0.01および1 mg/kgで,共に8 mg/kg,12.5 mg/kgまで増量しても作用強度は投与量に比例せず,異常波も認められなかった.一方,対照薬のchlorpromazineもウサギ,ラットの自発脳波を共に徐波化するが,その最小有効量はそれぞれ2 mg/kg,1 mg/kgであり,効果の出現はTHB-CSと同様であった.脳幹網様体高頻度刺激による脳波覚醒反応の閾値は,THB-CS0.001~8 mg/kgをウサギに静注した時,0.1 mg/kg以上で若干上昇する例が見られたが,その変化は用量依存的でなかった.またchlorpromazine0.5~5 mg/kg静注時も同様に閾値は軽度に上昇するのみであった.視床正中核低頻度刺激による脳波漸増反応の閾値はTHB-CS,chlorpromazine静注の場合,共にほとんど変化は認められなかった.以上,THB-CSは従来から報告され,一部すでに臨床応用されている他のberberine型アルカロイドに比べ,微量で自発脳波を安静波型にする.またその作用点はbarbiturate系睡眠薬の作用点とされている脳幹網様体とは明らかに異る点で,新しい型の経口投与可能な中枢抑制薬としての有用性が期待される.
feedback
Top