抗炎症作用を有するセリン蛋白分解酵素阻害剤nafamostat mesilate(FUT-175)のラット多形核白血球のO
2-産生に対する作用を,他のセリン蛋白分解酵素阻害剤ならびに代表的な抗炎症薬と比較検討した.1) ラットの多形核白血球はconcanavalin A(Con A),cytochalasin B(Cyt B)の各刺激または同時刺激に対して,ほとんどO
2-産生応答を示さなかったが,NADH存在下,Con AとCyt Bの同時刺激により強いO
2-産生を示した.2) FUT-175は10
-6および10
-5MでNADH存在下のCon A+Cyt Bによるラット多形核白血球のO
2-産生を濃度依存的に抑制した.3) セリン蛋白分解酵素阻害剤であるL-l-tosylamido-2-phenylethyl-chloromethyl ketone(TPGK)およびsoybean trypsin inhibitor(SBTI)は10
-5または10
-4MでO
2-産生を抑制したが,aprotinin,leupeptin,chymostatinは抑制作用を示さなかった.4) 代表的な抗炎症薬であるindomethacinおよびdexamethasoneはいずれもO
2-産生を抑制しなかったが,phospholipase A
2阻害剤であるmepacrineはO
2-産生を強く抑制した.5) ラットにFUT-175を200 mg/kg経口投与した群の多形核白血球のO
2-産生は対照群のそれより有意に減少していた.6) FUT-175はhypoxanthine-xanthine oxidaseにより産生されたO
2-に対しては何ら影響を与えなかった.以上の結果から,FUT-175はラット多形核白血球のO
2-産生に対して,他の代表的な抗炎症薬には見られない強い抑制作用を有することが明らかになった.
抄録全体を表示