thiamine (T) 拮抗物質であるoxythiamine (OT), pyrithiamine (PT), あるいはT欠乏食 (TDD) を用いることによって,ラットに比較的短期間内にT欠乏状態が発現し,肝においては種々な機能的,形態的な変化が認められた.肝の障害度はTDD飼育下でOTを投与した群(OTD群)が最も強く現われ, TDD飼育下でPTを投与した群(PTD群), OT投与群(OT群), PT投与群(PT群), TDD飼育群(TDD群)でも,おのおの特徴のある変化が認められた
1).今回は,これらの各群の血液,肝,尿中のT含量を定量し,前報において報告した肝障害度と,生体内T量の関連を検索した.その結果,肝中T量は,無処置対照群(NC群) 15.07μg/gに対して, OT群が約89%, PT群が約76%, OTD群が約25%, PTD群が約33%, TDD群が約24%であり,血液中のT量は, NC群が417ng/mlに対して, OT群が約91%, PT群が約88%, OTD群が約14%, PTD群が約16%, TDD群が約15%であった. T欠乏によると思われる種々な肝障害度と,肝,血液中のT含量はある程度相関するものの,肝障害度が特に著しかったOTD群では, TDD群に比べて有意なT量の低下を示さず, PTP群ではTDD群よりも高値を示す等, T拮抗物質によるT量の低下が明確に現われない場合が認められた.拮抗物質の作用時間は,尿中T排泄量からOTは約3~15時間, PTは約0~18時間と推測される.よって拮抗物質により,ラットに確実にT欠乏状態を発現させるには,1日2回投与が望ましい.このように,生体内T量は,拮抗物質の作用時間に,著しく左右されるので,拮抗物質の作用時間を考慮に入れると,本実験条件下によるT欠乏状態時の肝の障害度と,生体内T量の変動の間には,ある程度の相関関係が得られた.
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