日本薬理学雑誌
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85 巻, 4 号
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  • 永井 康雄, 成実 重彦, 宮本 政臣, 島 高, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1985 年 85 巻 4 号 p. 209-220
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    thyrotropin-releasing hormone(TRH)およびその類縁体[γ-butyrolactone-γ-carbonyl-L-histidyl-L-prolinamide citrate(DN-1417)]のラット脳内モノアミン代謝に及ぼす影響を検討した.TRH 20 mg/kg,腹腔内投与(i.p.)は脳内諸部位のモノアミン含量を変化させなかった.一方,DN-1417 20mg/kg. i.p. 投与は,15分後をピークに約1時間にわたり,側坐核,線条体,および視床下部を中心に脳内諸部位で,dopamine(DA),serotonin(5-HT)のほか,norepinephrine(NE)を著明に減少させた.またDN-1417 20 mg/kg, i.p. 2週間反復投与により,DN-1417単独投与後15分に見られたモノアミンの減少率は低下すると共に,最終投与4時間後,側坐核でNEおよびDAが,また線条体でDAが有意に増加した.脳内モノアミン代謝物は,モノアミンの著明な減少にもかかわらず,僅かにDAの代謝物の3,4-dihydroxyphenylacetic acid(DOPAC)およびhomovanillic acid(HVA)が側坐核,線条体および視床下部で増加したのみであり,NEや5-HTの代謝物である3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)や5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)は全く変化しなかった,一方,DAの神経終末からの遊離を反映するとされる3-methoxytyramineは側坐核および線条体で著明に増加し,両部位におけるDAの減少パターンと極めてよく一致した,以上,DN-1417は,TRHより強力に脳内モノアミン代謝に影響を及ぼし,特に中脳・辺縁DA系および黒質・線条体DA系の主要神経終末であるそれぞれ側坐核および線条体において,著明なDA遊離促進作用を示すと共に,これらの部位で,反復投与によりtyrosine hydroxylaseの活性化が示唆された.
  • 永井 康雄, 成実 重彦, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1985 年 85 巻 4 号 p. 221-230
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    DN-1417(γ-butyrolactone-γ-carbollyl-L-histidyl-L-prolinamide citrate)の電撃痙攣における抗reserpine作用およびそのモノアミン系の関与について,マウスを用いて検討した.その結果,reserpine 2 mg/kg,腹腔内24時間前処置により,脳内モノアミンの著明な低下と共に,電撃痙攣閾値(EC50)は対照の55~77%まで著明に低下した.これに対し,DN-1417はTRHより強力かつ持続的な拮抗作用を示すと同時に,serotonin(5-HT),3-methoxy-4-hydroxyphenyl-glycol(MHPG),homovanillic acid(HVA)および5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)含量を増加させた.EC50におけるDN-1417の抗reserpine作用は,phenoxybenzamine(α-受容体遮断剤,10 mg/kg, i.p.),pimozide(dopamine受容体遮断剤,1 mg/kg, i.p.)およびmethysergide(5-HT受容体遮断剤,25 mg/kg, i.p.)の様なモノアミン受容体遮断剤によって部分的に抑制されたが,atropine(5 mg/kg, i.p.)やscopolamine(2 mg/kg, i.p.)のような抗コリン作動薬により逆に増強された.一方,α-methyl-p-tyrosine(250 mg/kg, i.p.)やFLA-63(25 mg/kg, i.p.)の様なカテコールアミン生合成阻害剤では影響を受けず,5-HTの生合成阻害剤のP-chlorophenylalanine(200 mg/kg, i.p. 48および24時間前処置)によりほぼ完全に抑制され,またDN-1417の5-HT代謝亢進作用も阻害された.更にreserpineによるEC50の低下は,3,4-dihydroxyphenylalanine(L-DOPA)では回復せず,5-hydroxytryptophan(5-HTP)により著明に回復した.以上の事実から,reserpineによるEC50の低下に対するDN-1417の拮抗作用には,脳内モノアミン特に5-HTの代謝亢進作用が関与していると考えられる.
  • 永井 康雄, 成実 重彦, 佐治 美昭, 名川 雄児
    1985 年 85 巻 4 号 p. 231-242
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    thyrotropin-releasing hormone(TRH)の類縁体であるDN-1417(γ-butyrolactone-γ-carbonyl-L-histidy1-L-prolinamide citrate)をラットに静脈内投与し,血中濃度および脳内分布について,ラジオイムノアッセイ法を用いて検討しTRHと比較した.in vitro系における安定性について,DN-1417の脳組織ホモジネートおよび血液中での半減期(t1/2)は27.5分であったが,TRHのt1/2は5~7.5分であり,DN-1417はTRHに較べ比較的安定であった.ラット脳へのマイクロウェーブ照射条件について,TRHは5kW,1.2~1.5秒間の照射で酵素による分解は完全に抑制されたが,DN-1417の分解は完全に抑制されず,非酵素的分解が認められた.DN-1417(0.625,2.5および10 mg/kg)投与後の血中濃度はTRHと同様,見かけ上,two compartment open modelに従うパターンを示した.血中から組織への移行性を示すと考えられているα相の半減期(t1/2α)は3~7分であり,血中からの消失を示すと考えられているβ相の半減期(t1/2β)は15~22分で,いずれもTRHより2~3倍長い値を示した.DN-1417の血中濃度のAUC(area under the curve)はTRHの2.5~6倍大きい値を示した.DN-1417投与後の主代謝物[2-hydroxy-4-carboxybutyryl-L-histidyl-L-prolinamide(DN-COOH)]の血中濃度は低く,DN-1417の1.0%以下の値を示した.DN-1417投与後の脳内への移行性は速やかで,投与後1~2分で最高値に達した.最高濃度を示す時点での脳内への移行率は投与量の0.062~0.163%であった.全脳からのDN-1417の消失の半減期は13~23分であった.DN-1417 2.5 mg/kg投与後の脳内諸部位への分布は,下垂体が最も高い値を示し,次いで側坐核および視床下部で,視床および線条体は低い値を示した.
  • ―ラットAdjuvant関節炎に対するSA96とIndomethacinおよびPrednisoloneの併用効果―
    山内 秀泰, 林 成光, 笠松 貞夫, 中田 勝彦, 壬生 寛之, 磯 正
    1985 年 85 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ラットadjuvant関節炎に対するSA96とindomethacinあるいはprednisoloneとの併用効果を検討した.SA96は2 mg/kg(p.o.)の投与量ではadjuvant関節炎に対してほとんど抑制作用を示さなかったが,10 mg/kg(p.o.)ではadjuvant処置足の二次炎症,非処置足の炎症,炎症スコア,血清Cu濃度において抑制作用を示した,一方,indomethacin 0.1 mg/kg(p.o.)およびprednisolone0.4 mg/kg(p.o.)は,共にadjuvant処置足の一次炎症と二次炎症,非処置足の炎症,炎症スコアに対して抑制作用を示し,prednisoloneはさらに関節炎の発症に伴うA/G比の低下を抑制した.SA9610 mg/kg(p.o.)とindomethacinの併用投与は,adjuvant処置足の一次炎症,非処置足の炎症,炎症スコア,赤沈値,A/G比,血清Cu濃度で各単独投与による作用よりも強い効果を示した.一方,SA96とprednisoloneとの併用投与においても,adjuvant処置足の二次炎症,非処置足の炎症,血清Cu濃度,副腎および脾臓の重景において併用効果がみられた.
  • 湯浅 聡, 須藤 敦子, 土志田 和夫, 武知 雅人, 梅津 浩平
    1985 年 85 巻 4 号 p. 249-257
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素(CCl4)をラットに12週間連続投与して(0.5 ml/kg,s.c.,2回/週)慢性肝障害を誘発させた.CCl4投与開始後21日目よりtritoqualine(TRQ)投与を開始しTRQの治療効果を調べた.CCl4処置コントロール群の体重は無処置群と比べると著しく増加が抑制されたが,TRQ投与群は投与開始後4週目より投与量依存的に体重増加を回復した.12週目のCCl4コントロール群の肝臓にはhydroxyprolineとヒスタミンの増加が著明に観察され,この両指漂に相互に関連性のあることが推察されたが,TRQ投与群は用量依存的に有意に両指標の増加を抑制した.また病理学的観察により,膠原線維の増生抑制や偽小葉形成の抑制がTRq投与群に確認され,TRQに強い線維形成の抑制作用のあることが示唆された.肝機能の1つとしてのタンパク合成能を調べたところ,TRQ投与群には肝臓および血液の指標の改善が認められ,肝機能の回復が確認された.肝細胞膜障害の指標として測定した血清glutamic oxaloacetic transaminase値はTRQ投与により有意に漏出が抑制された.以上の結果よりTRQは薬理作用として膠原線維の形成抑制,タンパク合成能の亢進,および肝細胞の損傷の抑制作用等を有していて,CCl4慢性肝障害に対して強い治療効果を示したと推察された.
  • 藤原 道弘, 桜井 康子, 清田 義弘, 島添 隆雄, 太田 尚, 柴田 重信, 植木 昭和
    1985 年 85 巻 4 号 p. 259-274
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    最近,amantadineは臨床上ムード改善作用の他に脳血管障害患者の意欲や自発性減退を改善するような効果が報告されるようになってきたので,本薬物の薬理作用を見直すために行動薬理学的検討を行い,imipramine,L-DOPA,methamphetamineの作用と比較した.1) amantadineは10 mg/kgの腹腔内投与で運動量,立ち上り動作の減少,50 mg/kgでは立毛と被刺激性の増大さらに80 mg/kgから協調運動障害,100 mg/kgで間代性けいれん,200 mg/kgでは死亡例が認められた.2) amantadineはmethamphetamineによる運動興奮を抑制したが,apomorphineの常同行動に対しては作用がなかった.この点がimipramineの作用と異なっていた.3) 本薬物はhaloperido1カタレプシーに対してimipramineと同程度の抑制作用を示したが,L-DOPAはほとんど作用を示さなかった.一方,Δ9-tetrahydrocannabinol(THC)のカタレプシーに対してはimipramineの40倍,L-DOPAの400倍も強力な抑制作用を示した.4) 嗅球摘出ラットのmuricideに対してamantadineはimipramineと同程度の抑制作用を示したが,THCによって誘発されるreversible muricideに対してはmethamphetamineの3.5倍,imipramineの8.8倍,L-DOPAの225.5倍も強力な抑制作用を示した,5) 6-hydroxydopamine(6-OHDA)処置によって片側の黒質を破壊したラットに本薬物50 mg/kgを投与しても旋回運動は発現しなかった.6) 6-OHDAを側脳室内に投与したラットにamantadine 50 mg/kgを投与すると鳴声を特徴としたirritable aggressionが発現した.これはL-DOPAおよびapomorphineによるaggressionとは異なっていた.以上,amantadineの薬理作用は抗うつ薬に類似した点が多いが,imipramineやL-DOPAとは明らかに異なる性質もある.とくにTHCによって誘発されるカタレプシーおよびmuricideをきわめて著明に抑制する点は本薬物の重要な特性と考えられる.
  • ―SA96とその主代謝物N-[2-Methyl-2(methylthio)propanoyl]-L-cysteine(SA679)のヒトγ-Globulin熱変性およびラットAdjuvant関節炎に対する作用―
    山内 秀泰, 林 成光, 笠松 貞夫, 須田 浩, 中田 勝彦, 笹野 稔, 磯 正
    1985 年 85 巻 4 号 p. 275-282
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ヒトγ-globulinのin vitroにおける熱変性に対して,N-(2-mercapto-2-methylpropanoyl)-L-cysteine(SA96)およびその主代謝物であるN-[2-methyl-2-(methylthio)propanoyl]-L-cysteine(SA679)は10-3Mの高濃度で促進作用を示したが,D-pellicillamne(D-Pc)はほとんど影響を与えなかった.しかし,Cu2+(20 μM)によって促進されたヒトγ-globulnの熱変性に対しては,SA96およびSA679はD-Pcと同様抑制作用を示し,その作用はSA96が最も強力であった.また,牛血清albuminのCu2+による熱変性促進作用に対しても,SA96およびSA679はD-Pcよりも強い抑制作用を示した.一方,ラットadjuvant関節炎に対するSA96の効果には投与時期による差が認められた.すなわち,SA96をadjuvant処置日から投与した場合は10 mg/kg (p.o.)の低用量でadjuvant処置足および非処置足の炎症抑制作用や,肝臓,腎臓,副腎等の器官重量,血清Cu濃度において改善効果が認められたが,100 mg/kg(p.o.)の高用量ではadjuvant関節炎抑制効果はほとんど認められなかった,しかし,SA96をadjuvant処置の3日前から投与した場合は,10 mg/kg(p.o.)のみならず100 mg/kg(p.o.)でも.ほぼ同様なadjuvant関節炎抑制効果を示した.また,SA96の主代謝物であるSA679もadjuvant処置3日前から100 mg/kg(p.o.)を投与することによって,adjuvant処置足の一次および二次炎症抑制作用や肝臓重量,血清Cu濃度で改善作用を示したが,adjuvant非処置足の炎症に対しては有意な抑制効果を示さなかった.
  • 寺澤 道夫, 今吉 朋憲, 岩久 義範, 丸山 裕
    1985 年 85 巻 4 号 p. 283-296
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    局所適用によるpranoprofen-gelの抗炎症作用とその作用機作について,実験動物を用い,indomethacin-ge1と比較した.0.3~3%のpranoprofen-gelは,ラットのcarrageenin足浮腫,骨折足浮腫,carrageenin背部皮膚血管透過性亢進およびadjuvant関節炎,およびモルモットの紫外線紅斑に対して,局所適用により濃度に依存した予防あるいは治療効果を示し,1%pranoprofen-gelは同濃度のindomethacin-gelと同等以上の活性を示した.さらに,pranoprofen-gelはラットcotton pellet肉芽腫形成を濃度に依存して抑制したが,胸腺および副腎重量に影響を与えず,消化管障害も惹起しなかった.また,pranoprofen-gelはラットcarrageenin空気嚢炎症滲出液中のprostaglandin E2(PGE2)様物質量を濃度および塗布量に依存して減少させ,さらに,carrageenin炎症滑膜でのPGE2様物質産生も濃度に依存して強く抑制した.pranoprofen-gelのこれらの活性はindomethacin-ge1より優れていた.ウサギ皮膚において,pranoprofen-gelはindomethacin-gelと同様,arachidonic acidにより増強されたbradykininの血管透過性亢進を抑制したが,PGE2にによる増強反応を抑制しなかった.一方,in vitroで,主薬のpranoprofenのラット腹腔内白血球からの菌貧食によるPGE2様物質産生に対する抑制活性はindomethacinの1/3であった.これらの結果から,局所適用されたpranoprofen-ge1は,皮膚吸収が良好で,炎症深部まで速やかに浸透し,炎症局所でのPG産生を阻害することにより持続性で強い抗炎症作用を示すことがわかった.pranoprofen-gelのこれらの活性はindomethacin-gelより優れており,臨床での有用性が期待される.
  • 宇佐美 勝, 清野 裕, 西 重生, 中原 博, 池田 正毅, 松倉 茂, 井村 裕夫
    1985 年 85 巻 4 号 p. 297-303
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    視床下部性肥満(VMH)ラットに,食欲抑制剤として知られているmazindolを飼料に混合して3週間投与し,インスリン,グルカゴン分泌に及ぼす影響についてin vivoと膵灌流の系を用いて検討した.両側の視床下部腹内側核破壊後,3週間mazindolを含まない普通食を投与すると,VMHラットは,対照のshamラットに比し,著明な肥満を呈した.その後,VMHラット,shamラットを2群に分け,それぞれの一方をmazindol(50 mg/kg)を混合した飼料で飼育し,他方は,そのままの普通食で飼育した.mazindol投与VMH群の摂取カロリーは,mazindol非投与のVMH群に比し著明に減少し,体重増加も有意に抑制された.mazlndol投与3週後の末梢血インスリンは,mazindol投与VMH群で,mazindol非投与VMH群に比し有意に低下し,VMHラットにみられる高インスリン血症が有意に改善された.さらに,膵灌流実験でアルギニンによるインスリン反応を比較すると,mazindol投与VMH群でmazindol非投与VMH群に比し,明らかな低反応を示した.しかし,末梢血ならびに灌流膵よりのグルカゴン分泌は,mazindol投与によって変化しなかった.さらに,shamラットでは,インスリン,グルカゴン反応はin vivo,in vitroともにmazindolによる影響は認められなかった.したがって,mazindo1は,視床下部性肥満の高インスリン血症を改善する可能性を有する.
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