日本薬理学雑誌
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83 巻, 6 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 篠崎 温彦, 平手 謙二, 石田 美知子
    1984 年 83 巻 6 号 p. 479-483
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    小さな円形磁石(0.4g,1600ガウス)をマウスの尾のつけ根背側部に固着し,直径0.1mmのエナメル被覆線を直径20cm厚さ1cmで円板状に巻いたコイル上に放つ.コイルに生じたランダム電流を電圧変換し,パワースペクトル解析を行うことにより,薬物によって誘発されるマウスの振戦を定量的に解析する方法を確立した.この方法の理論的根拠とこれによって得られたデータを解説的に紹介した.
  • 福田 武美, 津曲 立身
    1984 年 83 巻 6 号 p. 485-496
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット外側視床下部電気刺激による自己刺激行動に及ぼす向精神薬の影響を検討した.被検薬を経口投与して1,3,6および24時間後にそれぞれ10分間のレパー押し回数を測定した.抗精神病薬のchlorpromazine,thioridazine,perphenazine,haloperidol,floropipamide,pimozide,clocapramineおよびoxypertineは用量依存的に自己刺激行動を抑制した.carpipramineおよびsulpirideは80mg/kgで有意な影響を及ぼさなかった,ベンゾジアゼピン系(chlordiazepoxide,diazepam)およびチエノジアゼピン系(clotiazepam,etizolam)抗不安薬は5および25mg/kgで自己刺激行動を促進した.抗うつ薬のimipramineおよびamitriptylineは40mg/kgで自己刺激行動にほとんど影響を及ぼさなかった.交感神経α1 遮断薬のphenoxybenzamineは自己刺激行動を抑制したが,その用量―反応曲線の勾配は抗精神病薬に比べ,かなり緩やかであった.抗精神病薬による自己刺激行動の抑制作用は主にドーパミン受容体を介した機序により発現すると考えられた.そこで一側線条体を6-hydroxydopamineにより破壊したラットを用い,methamphetamineにより惹起される旋回行動を指標として,抗精神病薬の線条体ドーパミン受容体遮断作用を調べ,抗精神病薬による自己刺激行動抑制作用との関連性について検討した.自己刺激行動を抑制した抗精神病薬はすべて旋回行動を有意に抑制した.しかしながら各被検薬の両行動に対する抑制作用の程度は異なっていた.haloperidoIおよびpimozideは旋回行動をより強く抑制したのに対し,thioridazineは自己刺激行動をより強く抑制した.以上の成績より,自己刺激行動に対して,抗精神病薬と抗不安薬とは相反する作用を有し,抗精神病薬による自己刺激行動抑制作用と旋回行動抑制作用とは相関しなかったことから,自己刺激行動に関与するドーパミン受容体は線条体以外の部位にあることが示唆された.
  • 久留 正生, 後藤 一洋, 寺澤 道夫, 角部 行信, 安倍 千之, 塩川 優一
    1984 年 83 巻 6 号 p. 497-505
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    5×108個のヒツジ赤血球(SRBC)で免疫後4日目のBALB/cマウスの脾および胸腺ロゼット形成細胞(RFC)の産生は,traxanox 10~30mg/kgの経口投与で抑制された.本化合物は100mg/kgで19S抗体を減少させ,7S抗体を増加させた.SRBCで免疫後4日目の脾または胸腺RFCを同系マウスに移入すると,マウス脾溶血斑形成細胞(HPFG)の産生は充進した,traxanox(30mg/kg)を投与したマウスの脾または胸腺RFCを移入すると,HPFC産生は亢進せず,抗Lyt 2.2抗体および補体で処理した脾RFCの移入では亢進した.この場合,抗Lvt2.2抗体および補体で処理した脾RFCのviabilityは著明に低下した.traxanox(3~30mg/kg)はconcanavalin A(50μg/マウス)によるHPFC,脾および胸腺RFC産生の抑制を有意に増強した.また,本化合物(3~30mg/kg)は5×108個のSRBCで二次免疫したマウスのHPFC,脾および胸腺RFC産生を抑制した.したがって,traxanoxは抗体産生抑制作用を有し,この作用はLyt2.2 positive cell(サプレッサーT細胞)の誘導を介して発現されるものと推定される.
  • 森本 保人, 福田 武美, 津曲 立身
    1984 年 83 巻 6 号 p. 507-511
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    Willis動脈輪の形成不全のため,総頸動脈結紮により大脳半球に虚血性病変が生じることが知られているMongolian gerbilを用い,nizofenoneの脳保護作用をpentobarbital(PBT)と比較検討した.両側総頸動脈結紮により,動物は全例死亡した.対照群の平均生存時間は2.3時間であり,nizofenone(10mg/kg)およびPBT(60mg/kg)を虚血前30分に腹腔内投与することにより,生存時間は有意に延長した.両側総頸動脈を30分間閉塞して再開通後,対照群では1ヵ月以内に全例死亡した.nizofenone(30mg/kg)およびPBT(60mg/kg)を虚血前30分,に腹腔内投与することにより,死亡率は有意に低下した.しかしながら両被検薬を再開通直後に投与した場合,効果は消失した.これらの成績から,nizo琵noneは虚血による脳障害に対して保護作用を有することが示された.
  • 奥山 茂, 橋本 早苗, 天沼 二三雄, 相原 弘和
    1984 年 83 巻 6 号 p. 513-521
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    圧刺激法により,マウス尾根部皮内に各種起炎剤(yeast,carrageenin,mustardおよびadjuvant)を注入した場合の疼痛閾値の経時的変化と,各種鎮痛薬の鎮痛効果を検討した,各種起炎剤をマウス尾根部皮内に注入して疼痛閾値を経時的に測定した結果,各起炎剤とも疼痛閾値の低下を示したが,10%yeastの場合に最も持続的で安定した疼痛閾値の低下が認められ,その作用ピークは注入6日後であった.鎮痛薬には,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),麻薬性鎮痛薬および麻薬拮抗性鎮痛薬を用い,正常マウスと各種起炎剤処置マウスに対する鎮痛効果を比較検討した.その結果,acetaminophen以外の薬物は,10%yeast処置マウスでの効果が最も低用量で有効で,この傾向は,酸性NSAIDsで顕著であった.また,10%yeast処置マウスを用い,中枢作用薬(抗精神病薬,抗不安薬,抗うつ薬,抗コリン薬,抗ヒスタミン薬および中枢性筋弛緩薬)の鎮痛効果を検討したが,いずれの薬物でも効果は認められなかった.以上の結果より,10%yeast処置マウスは,慢性炎症疼痛モデルとして有用性があり,特に酸性NSAIDsの鎮痛効果検定に使用可能な事が示唆された.
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