日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
91 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 竹内 久米司, 伊藤 幸次, 並川 さつき
    1988 年 91 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    大豆粕乾留タール(Glyteer:GL)は脱脂大豆を400~500°Cで加熱乾留して得られる暗褐色粘稠な液体である.今回,CMC-pouch法を用いタンパク滲出および白血球遊走に対するGLのpouch内投与による作用を検討した.さらに,その作用態度をステロイド系抗炎症薬(SAID),非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および他のタール剤とも比較検討した.1)GL(10mg)pouch内投与により,タンパクの滲出はCMC処理後1.5~7.5時間まで有意に抑制された.2)このGL(10mg)のタンパク滲出抑制作用(CMC処理後3時間)は,flufenamic acid (FA,10mg)およびphenylbutazone(PB,10mg)とほぼ同程度の強さを示し,betamethasone l7-valerate(BV,1mg),bufexamac(BM,10mg),bendazac(BZ,10mg),ichthammol(IT,10mg)およびpine tar(PT,10mg)より強かった.3)GL(10mg)pouch内投与により白血球の遊走はCMC処理後1.5~6時間まで有意に抑制された.4)このGL(10mg)の白血球遊走抑制作用(CMC処理後3時間)は,FA(10mg)およびBZ(20mg)とほぼ同程度の強さを示し,PB(10mg),BV(1mg),BM(10,20mg),BZ(10mg),IT(10mg)およびPT(10mg)より強かった.5)好中球遊走抑制作用はGL(10mg),PB(10mg),BZ(20mg)およびFA(10mg)でほぼ同程度の作用を示し,これはBV(1mg),BM(10,20mg),BZ(10mg),IT(10mg)およびPT(10mg)より強い作用であった.6)マクロファージ遊走抑制作用はGL(10mg),BZ(20mg),FA(10mg)およびIT(10mg)でほぼ同程度の強さを示し,PB(10mg),BV(1mg),BM(10,20mg),BZ(10mg)およびPT(10mg)では作用が弱かった.GLがタンパク滲出および白血球遊走に対し強い抑制作用を有することは,GLの抗炎症作用の重要な機序のひとつであることが示唆された.
  • 衛藤 宏, 坂田 利家, 藤本 一真, 寺田 憲司, 吉松 博信, 大隈 和喜, 林 輝明, 有地 滋
    1988 年 91 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ginsenoside-Rb1の中枢性摂食調節に対する作用を調べるため,摂食量,飲水量及び探索行動量,それに食事(meal)パターン等に及ぼす影響,更に摂食に連動する体内化学物質の変動等を検討した.実験は明暗12時間周期(明期0800~2000時)の条件下で行った.Rb1の0.05,0.10,0.20μmolをそれぞれラット第III脳室内へ暗期直前に注入した.投与後1日目の暗期に用量反応性の摂食抑制作用が発現した.Rb1 0.10μmol投与による摂食抑制効果は1回食事量(meal size)の減少に起因しており,食事後食事間間隔(postprandial intermeal interval)や食事摂取速度(eating speed)の変動によってはいなかった.さらにRb1を視床下部腹内側核へ局所注入すると摂食が特異的に抑制された.しかし,外側視床下野への投与ではいずれの変化も認められなかった.また,Rb1 0.10μmol投与ではインスリンの上昇を伴わない高血糖を誘発した.以上,Rb1は中枢神経系を介して体液性変動を伴う特異的摂食抑制作用を有すること,その作用部位には少なくとも視床下部腹内側核が含まれることなどが判明した.
  • 藤沼 さち江
    1988 年 91 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    平滑筋臓器におけるアナフィラキシー反応のメカニズムを明らかにするために,ovalbumin(OA)感作モルモットから摘出した食道粘膜筋板標本を用いて抗原添加による収縮反応の薬理学的特徴を検討し,肥満細胞刺激薬compound48/80やpolymyxin Bによる収縮反応と比較した.OAは0.01μg/ml以上の濃度で感作食道粘膜筋板を用量依存的に収縮させたが,この反応はゆっくりと立ち上がり,ピークに達した後次第に減弱していくという単相性の収縮反応であった.OA(100μg/ml)を同一標本において反復適用するとこの収縮反応は時間とともに減弱し,4~5時間後には完全に消失するという脱感作現象が認められた.一方,非感作食道粘膜筋板に対してcompound 48/80やpolymyxin Bは10μg/ml以上の濃度で用量依存的な収縮を起こしたが,その強さはOAによる収縮より弱いものであった.OA,compound 48/80,polymyxin Bによる粘膜筋板の収縮反応はいずれも外液Ca濃度に依存し,Ca-free液中では反応は完全に消失した.しかし,Ca拮抗薬であるverapamil(1~10,μM)は,いずれの収縮に対しても部分的にしか抑制しなかった.atropine(0.3μM),tetrodotoxin(0.3μM),diphenhydramine(30μM),disodium cromoglycate(300,μM)の前処置は,OAおよびcompound 48/80やpolymyxin Bの収縮反応をいずれも変化させなかったが,BW755C(100μM)とquercetin(10μM)は有意にこれらの収縮反応を抑制した.一方,indomethacin(10μM)はpolymyxin Bによる収縮のみを強く抑制したが,FPL55712(10μM)はOAとcompound 48/80による収縮を有意に抑制した.これらの結果から,感作モルモットの食道粘膜筋板におけるアナフィラキシー性収縮反応はおもに肥満細胞由来の平滑筋収縮物質の遊離を介する間接作用であると考えられるが,この収縮物質としてはアラキドン酸のlipoxygenase代謝産物が一部関与するのみで,cyclooxygenase代謝産物やhistamine,acetylcholineなどは関与しないことが示唆された.
  • 加藤 克明, 大澤 伸雄, 中山 和男, 長尾 祐二, 宮田 治男, 稲場 均, 小雀 浩司, 江田 兼弘, 福武 勝彦
    1988 年 91 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ヒト尿由来の酵素阻害薬ulinastatinの抗関節炎作用を検討した.ラットアジュバント関節炎において,ulinastatin 30,000単位/kg/日静脈内投与により,足腫脹,炎症スコアーおよび骨破壊の著明な抑制が見られた.ウサギカラゲニン関節炎において,ulinastatin 3,000単位の関節腔内投与により,膝関節腫脹および関節液中の炎症関連パラメーターの上昇が有意に抑制された.また,ulinastatin 50,000単位/kg/日の静脈内投与により,MRL/1マウスの血中リウマチ因子の上昇および関節病変は著明に抑制された.一方,ulinastatinはヒト白血球エラスターゼ,カテプシンG等に強力な阻害作用を示した.これらの結果から,ulinastatinの関節炎治療薬としての可能性が示唆された.
  • 沖山 雅彦, 上野 光一, 大森 栄, 五十嵐 隆, 北川 晴雄
    1988 年 91 巻 1 号 p. 41-53
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    三環系抗うつ薬とベンゾジアゼピン(BDZ)系抗不安薬の併用による連続経口投与時の薬物相互作用について,imipramine(IM)hydrochloride,diazepam(DZ)およびoxazepam(OZ)を各々単独またはIM hydrochlorideとDZあるいはOZの併用により14日間連続経口投与したSD系雄性ラットを用いて,血漿中濃度および肝薬物代謝酵素系を中心に検討した.DZ濃度の定常状態はIM hydrochlorideの併用経口投与によりDZ単独経口投与時に比較し,高い血漿中濃度を示した.IM hydrochloride,DZおよびOZを単独あるいはIM hydrochlorideとDZまたはOZの併用による14日間の経口投与で前処置した後にIM hydrochloride,DZおよびOZを各々静脈内投与した時のIM,DZならびにそれらの脱メチル代謝物およびOZの血漿中濃度推移を検討した結果,1)IMおよびその代謝物の血漿中濃度は,OZの併用経口前処置により若干の変化が生じる.2)DZ血漿中濃度は,DZ単独経口投与前処置により消失の遅延が認められ,その傾向はIM hydrochlorideの併用経口投与前処置によりさらに増強される.3)OZ血漿中濃度は,連続経口投与前処置の影響を殆ど受けないことが示唆された.肝重量において併用による影響は認められなかったが,肝薬物代謝酵素系はIM hydrochlorideの投与により,cytochrome P-450およびcytochrome b5の比含量,aminopyrine.benzphetamineおよびethylmorphineのN-demethylase活性の上昇が認められた.しかしこのIM hydrochlorideによる肝薬物代謝酵素系の変化は,OZ併用によって影響を受けなかった.さらに肝臓以外の組織重量において併用による薬物相互作用は認められなかった.以上の結果より,OZはDZに比較しIM hydrochlorideとの相互作用を生じる可能性の少ないことが示唆された.
  • 安藤 隆一郎, 米沢 章彦, 川村 俊介, 藤井 佶, 桜田 忍, 木皿 憲佐
    1988 年 91 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    モルモット啼声反応を仮性疼痛反応の指標として,各種発痛物質誘発啼声反応に対するcysteamineの影響について検討したところ次の結果が得られた.1)bradykinin(3μg)およびacetylcholine(300μg)を後肢大腿動脈内へ逆行性に投与すると,強い啼声反応が惹起されたが,cysteamine(300mg/kg,s.c.)を前投与すると,両者の啼声反応は著明に抑制された.2)capsaicin(3μg)およびその同族化合物であるvanillyl n-nonoylamide(VNA,3μg)によっても強い啼声反応が惹起されたが,その反応はcysteamineでほとんど抑制されなかった.3)VNA(50mg/kg,100mg/kg,200mg/kg,400mg/kg,s.c.)の連続処理によりcapsaicinおよびVNAのみの反応が抑制されるdesensitization作用が発現した.さらにcysteamineをVNA desensitizationモルモットに投与すると,bradykinin,acetylcholine,capsaicinおよびVNAの啼声反応は完全に抑制された.以上,モルモットへのcysteamine単回投与によりbradykininおよびacetylcholine誘発啼声反応のみを強く抑制する選択的仮性疼痛反応抑制効果が観察された.
feedback
Top