日本薬理学雑誌
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78 巻, 1 号
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  • 中村 敬太, 小沢 義人
    1981 年 78 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    マウス探索行動の確率論的解析を試み,あわせ methamphetamine と diazepam 投与による行動変容を解析し,その薬理作用を追求した.行動観測装置としては3次元構造をもつ,いわゆる open-field 装置を用いた.記録上の便宜から,場をほぼ同じ大きさの空間に区分し,探索行動を positional behavior の観点からマルコフ過程を適用し解析した.着目した指標は,移動量,移動様式,移動径路等である.移動量は全区分空間への総来訪回数を用いた.移動様式のパラメータには,各区分空間への来訪頻度の偏りを表わす尺度として,その定常分布によるエントロピーを,また移動偏筒を表わす尺度として,その推移確率から算出されるエントロピーを用いた.さらに,統計的に有意であると推定される特定の通り道を区分空間の連鎖として求め,その最長のものを通路の長さと称し,移動径路のパラメータとした.methamphetamine を投与すると,移動量は低用量で増加が認められ,各区分空間への来訪頻度の偏りと移動偏筒はともに用量依存的に大きくなり,しかも通路の長さは用量依存的に延長した。diazepam 投与では,低用量で移動量の増加が認められたが,各区分空間への来訪頻度の偏りは小さくなり,逆に移動偏筒は用量依存的に大きくなった.また通路の長さは用量に依存して長くなった.
  • 柳浦 才三, 細川 友和, 北川 晴美, 三澤 美和
    1981 年 78 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    咳嗽反射に伴う気管気管支血管床の反応をイヌ気管血管および気管支動脈血液灌流標本を用いて,気管気管支平滑筋の反応とともに検討した.咳嗽反射は上部気管粘膜あるいは右上喉頭神経切断中枢端の電気刺激により誘発した.気管血管血液灌流標本において,上部気管粘膜の電気刺激による咳嗽反射に伴い,気管平滑筋の収縮気管血管の拡張がみられた.これらの反応に対して,atrophine 10~300μg i.a. 適用により気管平滑筋の収縮は抑制されたが,気管血管の拡張は影響されなかった.右上喉頭神経切断中枢端の電気刺激による咳嗽反射時にも同様の反応がみられた.気管平滑筋の収縮は両側迷走神経の切断により消失したが,気管血管の拡張反応は影響されず,さらに左上喉頭神経の切断によっても影響されなかった。一方,気管支動脈血液灌流標本において,人工呼吸下に気管粘膜の電気刺激により,気管平滑筋の収縮反応がみられたが,気管支動脈の拡張反応は,ほとんど認められなかった.慢性的に気管支動脈へカニューレを留置した標本犬では,咳嗽反射に伴って気管支動脈の拡張反応が認められた.また,人工呼吸下に50~200ml の空気負荷により気管支内圧を上昇させると気管支動脈の拡張反応が認められた.この拡張反応は atropine 100μg/min,benzonatateo.85mg/min のそれぞれ5分間 i.a. 適用および両側迷走神経切断でもほとんど影響されなかった.以上のことから,咳嗽反射に伴う気管気管支平滑筋の収縮は,一次的反射効果であり,気管気管支血管の拡張は平滑筋の収縮時に血流量を多くするための生理的な防御機構と思われるが,咳嗽反射時の気道内圧上昇による二次的反射効果であることが示唆される.
  • 柳浦 才三, 武田 弘志, 西村 友男, 三澤 美和
    1981 年 78 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    去痰薬 bromhexine の有効性を追求する目的で,pilocarpine 処置によって作製した酸性糖蛋白(AGP)産生促進機能を有する気管杯細胞,気管腺に及ぼす影響について組織学的,組織化学的面から検討を行なった.雄性雑犬の摘出気管を Hanks' 液中でpilocarpine 10-6M 30分間処置し,AGP産生促進機能を有する杯細胞,気管腺を作製した.その後,これら分泌細胞を含有する気管片を Hanks' 液中でbromhexine(10-6~10-4M)30分間処置した.薬物処置後,光顕用組織標本を作製し,alcian blue(pH2.5)-periodic acid Schiff[AB(pH2.5)/PAS]染色,AB(pH 1.0)/PAS 染色の2重染色を施した.これを150倍の顕微鏡写真にし,組織学的・組織化学的指標に従って解析を行なった.AGP産生促進機能を有する杯細胞に及ぼす影響:染色陽性総杯細胞数の変化は認められなかった.しかし,AGP 含有杯細胞数の著明な減少,これに伴う中性糖蛋白(NGP)含有杯細胞数の増加が認められた.また,AGP中の硫酸化糖蛋白(SGP)含有杯細胞数の著明な減少も認められた.AGP 産生促進機能を有する気管腺に及ぼす影響:気管腺腺房の内径およびacinar inner diameter to wall ratio(AIWR)の bromhexine 濃度に依存した軽度な増加が認められた.また,Reid index の軽度な減少も認められた.さらに,AGP および SGP 含有気管腺腺房細胞数の著明な減少に伴う NGP 含有気管腺腺房細胞数の増加が認められた.インキュベーション液中の総糖質,N-acetylhexosamine および蛋白質濃度の変化:bromhexine 処置により,総糖質および蛋白質濃度の増加,N-acctylhexosamine 濃度の有意な減少が認められた.以上より,bromhexine は AGP 産生促進機能を有する気管杯細胞の分泌機能には影響を示さないが,気管腺の分泌機能は軽度に促進する.また,これら分泌細胞中に含有される AGP に対して溶解作用を示す.
  • 須藤 純一
    1981 年 78 巻 1 号 p. 27-44
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    微小穿刺法等によって知られているネフロンにおけるペプチドホルモンの作用を,生化学的側面から解明する為に,ラット腎ネフロンを単離し,糸球体から集合尿細管までを7部分に分け,angiotensin II(AII)を中心に bradykinin,vasopressin,oxytocin 等の分解酵素,すなわち leucine amninopeptidase,aminopeptidase A,cystine aminopeptidase,“trypsin-like enzyme(s)”,“chymotrypsin-like enzyme(s)”,post-proline cleaving enzyme,converting enzyme 等のネフロン各部位での活性を測定し,さらにネフロン各部位での[3H]-AII の分解能を検討し,各分解酵素のネフロン内での生理学的意義を検討した.上記諸酵素は,近位尿細管では “trypsin-like enzyme(s)” のみが曲部で,他はすべて直部で最も高い活性を示し,糸球体では “trypsin-like enzyme(s)”,post-proline clcaving enzyme および aminopeptidase Aが高い活性を示し,遠位尿細管では,上記諸酵素はすべて極めて低い活性を示した。ネフロン各部位での[3H]-AIIの分解能を調べた実験から,糸球体では AII の分解能は高く,多くはペプチドの形で分解され,とくに活性物質としての angiotensin III(AIII)への変換が糸球体でのみ高値で認められた.近位尿細管,とくに直部上部での AII の分解能は著明に高く,個々のアミノ酸レベルにまで分解されるのが認められたが,遠位尿細管では AII の分解は認められなかった.ネフロン各部位での上記諸酵素の分布,とくに AIII への変換酵素であり,糸球体で高値を示す aminopeptidase Aの分布と,中間分解産物としてのペプチドをさらにアミノ酸レベルにまで分解する leucine aminopeptidase の分布は,[3H]-AII を用いた実験から得られた所見とよく符合し,糸球体で枦過された AII(およびペプチドホルモン)は近位尿細管(とくに直部上部)で分解され,加えて糸球体で AIII への変換が為されることが,明らかとなった.
  • 小友 進, 竹下 紀美代, 国府田 寿子, 大関 正弘
    1981 年 78 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    D-penicillamine(D-PA)の免疫調節作用を検討する目的で,D-PA のマウス IgE 産生系に対する作用を調べた.実験は D-PA の投与時期と抗原感作量を変えて,また,免疫機能を低下させるためにマウスにストレス負荷した条件で,D-PA の作用を検討し,他の抗リウマチ剤,免疫抑制剤との比較を行った.その結果,至適量の抗原を2回投与する実験では D-PA の免疫学的作用は他の免疫抑制剤と比べて非常に緩和なものであり,また,aurothiomalate(ATM),chloroquine diphosphate(CQ)とは作用が異なることが判った.また,1次抗原量を変化させ,2次抗原量を一定とする実験では1次抗原量が少量の場合には抑制作用があらわれるが,1次抗原量が増加すると D-PA の抑制作用があらわれにくくなることが認められた.しかし,あらかじめ免疫機能を低下させる目的で handling ストレス,拘束ストレスを負荷したマウスでは,D-PA 投与により低下した免疫機能の回復がみられた.この際,ストレスにより低下した脾臓重量にも D-PA 投与による回復がみられた.以上のことから,卵白アルブミンに対して high responder である BALB/C 系マウスでは,免疫機能が正常な場合には D-PA による抑制作用がみられるが,ストレスで免疫機能を低下させると逆に回復作用があることが認められた.脾臓重量の回復も認められたことから,D-PA はストレスにより抑制された脾臓細胞に何らかの作用を及ぼし,抗体価の回復を生じるものと思われる.このように,D-PA には免疫抑制と免疫賦活の両作用があり,免疫機能の状態によって作用が異なることから,免疫調節作用を有するものと考えられた.
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