微小穿刺法等によって知られているネフロンにおけるペプチドホルモンの作用を,生化学的側面から解明する為に,ラット腎ネフロンを単離し,糸球体から集合尿細管までを7部分に分け,angiotensin II(AII)を中心に bradykinin,vasopressin,oxytocin 等の分解酵素,すなわち leucine amninopeptidase,aminopeptidase A,cystine aminopeptidase,“trypsin-like enzyme(s)”,“chymotrypsin-like enzyme(s)”,post-proline cleaving enzyme,converting enzyme 等のネフロン各部位での活性を測定し,さらにネフロン各部位での[
3H]-AII の分解能を検討し,各分解酵素のネフロン内での生理学的意義を検討した.上記諸酵素は,近位尿細管では “trypsin-like enzyme(s)” のみが曲部で,他はすべて直部で最も高い活性を示し,糸球体では “trypsin-like enzyme(s)”,post-proline clcaving enzyme および aminopeptidase Aが高い活性を示し,遠位尿細管では,上記諸酵素はすべて極めて低い活性を示した。ネフロン各部位での[
3H]-AIIの分解能を調べた実験から,糸球体では AII の分解能は高く,多くはペプチドの形で分解され,とくに活性物質としての angiotensin III(AIII)への変換が糸球体でのみ高値で認められた.近位尿細管,とくに直部上部での AII の分解能は著明に高く,個々のアミノ酸レベルにまで分解されるのが認められたが,遠位尿細管では AII の分解は認められなかった.ネフロン各部位での上記諸酵素の分布,とくに AIII への変換酵素であり,糸球体で高値を示す aminopeptidase Aの分布と,中間分解産物としてのペプチドをさらにアミノ酸レベルにまで分解する leucine aminopeptidase の分布は,[
3H]-AII を用いた実験から得られた所見とよく符合し,糸球体で枦過された AII(およびペプチドホルモン)は近位尿細管(とくに直部上部)で分解され,加えて糸球体で AIII への変換が為されることが,明らかとなった.
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