日本薬理学雑誌
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117 巻, 6 号
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新薬紹介総説
  • 田中 正人, 番場 勝, 上甲 章弘, 森山 泰寿
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 6 号 p. 377-386
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬のような強力な酸分泌抑制薬の開発により消化性潰瘍の治療は劇的に進歩し, 大部分の患者で治癒に導くことが可能となった.しかしながら, 潰瘍の再発に対しては抑制できないことが明らかにされ, またNSAIDsの副作用である消化管粘膜傷害に対しても充分な有効性が得られず問題とされている.そこで, 胃酸分泌抑制作用と防御因子増強作用を示すことにより, これまでの抗潰瘍薬より有用性の高い抗潰瘍薬を創出できるとの考えにより創薬研究を行い, ラフチジンを見出した.ラフチジンはin vitroにおいて強力で持続的なH2受容体拮抗作用を有し, in vivoでは持続的な胃酸分泌抑制作用を示した.一方, ラフチジンはラットにおいて各種壊死物質による胃粘膜損傷の発生を, カプサイシン感受性知覚神経を介した作用により用量依存的に抑制した.ラフチジンは各種急性潰瘍モデルにおいて抗潰瘍作用を示し, ラットの酢酸胃潰瘍の再発を抑制した.さらに, インドメタシンによる幽門前庭部潰瘍に対しても抗潰瘍作用を示した.これらの作用は, ラフチジンが胃酸分泌抑制作用に加え粘膜防御因子増強作用を有することの有用性を示唆するものである.ラフチジンは臨床においても持続的かつ強力な胃酸分泌抑制作用を示し, 胃·十二指腸潰瘍, 胃炎に対してこれまでのH2受容体拮抗薬と同等の効果を示した.そこで, 胃潰瘍に対する治療効果を超音波内視鏡を用いて判定したところ, E0期への移行率は45.5%であり, これまでに既存薬で報告された値と比較して高い値であることから, ラフチジンは治癒の質を向上させることが示唆される.さらに, H2受容体拮抗薬では効果の乏しいNSAID潰瘍に対しても通常の胃潰瘍と同程度の有効性が得られた.これらの結果から, ラフチジンは臨床においても既存のH2受容体拮抗薬と同等以上の抗潰瘍作用を有することが明らかであり, さらに潰瘍の再発やNSAID潰瘍に対する有用性が期待される.
  • 岩澤 義郎, 檀上 卓馬
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 6 号 p. 387-393
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    スマトリプタン(SMT)は, 片頭痛が頭部血管の過度の拡張に由来し, その拡張に5-HTが関与しているという仮説に基づいてスクリーニングされた, 5-HT1受容体作動薬である.5-HT受容体に対する特異性が高く, ムスカリン, ドパミンD1, D2, アドレナリンα1, α2, β等他の神経伝達物質の受容体にはほとんど結合しない.更に, 5-HT1受容体の内では5-HT1A受容体にもやや親和性を示すが, 5-HT1B/1D受容体に対する選択性が高く, 5-HT2, 5-HT3受容体にはほとんど親和性を示さない.SMTは, 5-HT1B/1D受容体が分布するとされている脳底動脈, 側頭動脈, 硬膜内動脈など頭部の各種動脈の摘出標本を収縮させるが, 冠動脈, 大腿動脈, 腸間膜動脈などをほとんど収縮させなかった.この事実を反映して, 麻酔動物を用いた実験では, 頸動脈血管抵抗を選択的に増加させ, 他の部位の血管には殆ど作用しないことが示された.これらの成績は, 従来片動痛治療に用いられていた麦角アルカロイド類が, 頭部動脈だけでなく冠動脈を初め多くの他の血管をも収縮させることと著しく異なっている.さらにSMTは, 三叉神経終末に作用してCGRP等の放出を抑制し, 三叉神経支配領域で神経原性のタンパク漏出, 血管拡張を抑制する.SMTは, いわゆる鎮痛作用を示さなかったので, 5-HT1B/1D受容体を介して過度に拡張した頭部血管を収縮させると共に, 神経原性の炎症を抑制することによって片頭痛治療効果を発揮しているものと考えられる.SMTは既に欧米約100カ国で承認されており, その片頭痛と群発頭痛に対する臨床効果は確認されている.わが国においても, オープン試験とプラセボ対照二重盲検試験で有効性と有用性が確認された.
  • 市川 潔, 小嶋 正三
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 6 号 p. 395-400
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病の治療にはドパミンの前駆物質であるL-ドパ(L-dopa)ならびにドパミン受容体刺激薬が用いられているが, 薬効の減弱および副作用の発現等の問題が残されている.新規の麦角アルカロイド誘導体カベルゴリンのパーキンソン様症状に対する改善作用の特徴をペルゴリドおよびブロモクリプチンと比較検討した.カベルゴリンはドパミンD2受容体に対してペルゴリドと同等の高い親和性を示した.またドパミンD1受容体に対する結合性はペルゴリドより弱いものの刺激作用を示すことが推察された.カニクイザルの1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)誘発パーキンソン病モデルにおいて, カベルゴリンはパーキンソン様症状改善効果を示し, その効果はペルゴリドおよびブロモクリプチンより長時間持続した.また, この時ペルゴリドとブロモクリプチンは興奮行動およびジスキネジアを発現させたのに対し, カベルゴリンはパーキンソン様症状改善効果を示す用量においても, それらの異常行動は発現しなかった.カベルゴリンとL-ドパの併用試験において, 相加的なパーキンソン様症状改善効果が認められた.そして, 併用することによってL-ドパ単独投与で得られた改善効果と同等の効果を示したにもかかわらず, L-ドパ単独投与時の異常行動発現は見られなかった.耐薬性について, カベルゴリンは長期連続投与してもパーキンソン様症状改善効果の減弱は認められなかった.以上のことから, カベルゴリンは持続的なパーキンソン様症状改善作用を持ち, 副作用発現ならびに耐薬性も低いことが示唆された.またL-ドパとの併用において, カベルゴリンはL-ドパの投与量を減量できる可能性が示された.事実, 臨床試験においても, カベルゴリンは1日1回の投与において, ブロモクリプチン(1日3回)と同等のパーキンソン病の主要症状の改善効果が認められた.L-ドパとの併用においてもL-ドパの投与量を低くおさえられwearing-off現象及びon-off現象の発現も低率にすることが認められた.これらのことから, カベルゴリンは有用なパーキンソン病治療薬となりうるものと考えられる.
原著
  • 岩本 健一郎, 池田 淳一, 二藤 眞明, 小坂 信夫, 市川 俊司, 小林 弘幸, 大森 健守
    専門分野: その他
    2001 年 117 巻 6 号 p. 401-409
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    塩酸オロパタジン(以下オロパタジン)は, アレルギー性鼻炎, 慢性じんま疹, 湿疹·皮膚炎等に有効な抗アレルギー薬である.抗アレルギー薬のテルフェナジンやアステミゾールが, 循環器系の副作用として心電図QT間隔延長やそれにともなう重篤な心室性不整脈(torsades de pointes)を発現することが報告されている.今回, オロパタジンの心電図QT間隔延長作用の有無について, 意識下の正常犬および抗真菌薬でCYP3A4阻害作用を有するイトラコナゾールとの併用投与, さらに麻酔下低カリウム血症犬に対する作用を検討した.テルフェナジンは, 意識下正常犬において単独投与時には30mg/kg(p.o.)で, イトラコナゾール100mg/kg(p.o.)1時間前投与時には10mg/kg(p.o.)でQT間隔延長作用を示した.一方, オロパタジンは, 意識下正常犬において, 30mg/kg(p.o.)単独投与時およびイトラコナゾール併用投与時ともに, QT間隔延長を示さなかった.さらに, 麻酔下低カリウム血症犬においても, 1および5mg/kg(i.v.)でQT間隔延長を示さなかった.以上の結果から, オロパタジンがQT間隔延長作用を発現する可能性は低いと考えられた.
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