日本薬理学雑誌
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75 巻, 1 号
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  • 高橋 正樹, 相澤 義雄
    1979 年 75 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット卵巣のステロイド生合成に及ぼすprostaglandin(PG)E2およびFの作用を検討した.1)PMS-HCG処理した未成熟ラットの卵巣でpregnenoloneからprogesteroneへの生合成に対するPGE2(1.4×10-7M)およびPGF(1.4×10-7M)の作用を検討した結果,対照群に比べPG添加群は抑制的な傾向がみられた.2)成熟ラットの発情期卵巣を用いてpregnenoloneからprogesteroneおよびestradiol-17βへの生合成に対するPGF(1.4×10-7M)の作用を検討した結果,対照群に比べ組織中のprogesterone生合成は抑制的な傾向が見られたのに対しメディウム中への遊離量は3時間インキュベーションで約1.25倍増加の傾向がみられたが5時間インキュベーションで急激に含量が減少した.また,組織中のestradiol-17β生合成およびメディウム中への遊離量ともに対照群と添加群との間に差異は認められなかった.3)成熟ラットの発情期卵巣を用いてtestosteroneからestroneおよびestradiol-17βへの生合成に対するPGF(1.4×10-7M)の作用を検討したときメディウム中へのestrone遊離量はPGF添加により増加の傾向がみられた.特に30分間インキュベーションで有意な差が認められた(p<0.01).以上のことより微量のPGE2,PGFはラット卵巣内ステロイドの生合成に種々の影響を及ぼした.
  • 岩田 宜芳, 松村 昌子, 酒井 豊
    1979 年 75 巻 1 号 p. 9-21
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    本実験から以下のことが結論される.1)Alloxanの静注によって400mg/dl以上の血糖値が6~8週間持続したWistar系ラットの末梢神経には,おそらく太い線維にあらわれる変性線維によると思われる電位が記録される.この場合,皮膚神経の電位には変化が認められなかった.2)この変性線維によると思われる電位の発生は,ビタミンB群の大量(B1として100mg/kg)の連続投与によって抑制された.3)Sprauge-Dawley系ラットでは,alloxan投与後6~8ケ月間血糖値が400mg/dl以上持続しているラットでも,求心性・遠心性線維とも神経活動電位にほとんど変化は認められなかった.しかし,興奮性の回復時間が延長した例は認められた.4)順向性ならびに逆行性電位の持続時間,前者の閾値に対する後者の閾値および遠心性単一神経線維の不応期を指標に,無処置群,alloxan処置後ビタミンB1(100mg/kg),B5(100mg/kg),B12(1mg/kg)ならびにそれらの配合剤であるV100およびその1/2用量であるV50,さらにインシュリンとV100あるいは生理食塩水の併用投与の各群について検討した結果,ビタミンB1,B6およびB12の各単剤では効果なく,三者配合剤であるV100では神経線維の機能的変化を抑制し,またインシュリンとの併用においてはインシュリン単独投与に比して抑制効果が強かった.
  • 酒井 豊
    1979 年 75 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Bessou and Laporteの方法を参考にして,Pentobarbital麻酔ネコを使用して,ヒラメ筋神経放電を記録した.1)阻血下及び無阻血下でのヒラメ筋の強縮後,ヒラメ筋神経の放電頻度は増加した.2)ヒラメ筋強縮後神経放電の増加が認められた2例は10%NaClの動脈内投与によって興奮し,増加の認められなかった2例は,10%NaClによって興奮しなかった.3)単一神経線維の記録では,group I-1本(11本中),group II-2本(20本中)group II-1本(11本中)の計4本の線維が阻血下のヒラメ筋強縮後,その放電頻度を増加させた.このうちgroup IおよびIIの増加は一過性であり,group IIIのそれは持続性で8分以上続いた.4)20%ブドウ糖液に溶解したビタミンB群(Thiamine monophosphate disulfide 107.13mg(B1塩酸塩として100mg),Pyridoxine hydrochloride(B6 100mg),cyano-cobalamine(B12 1000μg)の合剤)は,ヒラメ筋神経の自家放電を増加させる傾向を示したが,強縮後興奮を有意に抑制した.Ringer液に溶解したビタミンB群もブドウ糖溶解のものと同様の傾向を示したが,その程度は弱かった.
  • 喜多 富太郎, 秦 多恵子, 飯田 順子, 石田 定廣
    1979 年 75 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    SART stress(repeated cold stress)負荷マウスの摘出小腸における薬物特にacetylcholine(ACh)反応性とこれにおよぼす各種薬物の効果を調べた.またSART stressによる体重減少におよぼす各種薬物の影響についても調査した.1)SART stress中のマウスにおける1日の摂食量は,体重が減少するに拘らず,むしろ明らかに増加した.またSART stressマウスの小腸の長さは変わらなかったが,小腸の湿重量は増加した.2)SART stressマウスの摘出小腸におけるACh反応性はstress負荷3日目から低下し始め,5日間負荷後著しい低下が見られた.6日以上では5日後の成績と同様であった.その他の薬物では,pilocarpineに対する反応性がAChに次いで著明に低下していた.KClに対する反応性もかなり低下していた.BaCl2に対する反応性はわずかに低下していたが,最高収縮高は同じであった.このことから筋収縮系には本質的な変化がないものと思われる.3)次いでSART stress負荷期間(5日間)を通じて自律神経作用薬,その拮抗薬,向精神薬およびその他の薬物を投与したマウスについてその摘出小腸のACh反応性を調べたところ,(1)アドレナリン作働薬であるadrenaline,noradrenaline,isoproterenol前投与によりSART stress小腸のACh反応性に著しい回復が認められた.アドレナリン作働神経末梢抑制薬であるguanethidine,α-methyldopa前投与では無効であった.(2)抗コリン作働薬のatropine,scopolamineを前投与したマウスの摘出小腸においてもACh反応性がdose dependentにnormalレベル近くまで回復された.(3)向精神薬の中ではreserpine,chlorpromazine,carpipramineおよびimipramine前投与によって小腸ACh反応性の低下がかなり阻止された.Diazcpam,meprobamateでは無効であった.(4)その他抗ヒスタミン剤のdiphenhydramineでは無効で,抗てんかん薬のL-GABOBではわずかに回復がみられた.神経鎮静剤neurotropin前投与ではdose dependentにnormalレベルまで回復することが認められた.以上のような成績よりSART stressマウスの小腸においては自律神経系のアンバランス,特に副交感神経緊張型を呈しているのではないかと推察きれる.4)SART stress負荷期間中,各種薬物を連続投与した場合,SART stressによる体重減少に対しては大部分の薬物は無効であったが,L-GABOB前投与によりわずかに,neurotropin前投与によって明瞭な阻止が認められた.今回使用薬物の中で小腸のACh反応性低下と体重減少の両者に対し共に明瞭な阻止効果の認められたのはneurotropinのみであった.
  • 柳 義和, 古閑 良彦, 犬飼 利也
    1979 年 75 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    SL-573(1-cyclopropylmethyl-4-phenyl-6-methoxy-2(1H)-quinazolinone)のラット多核白血球の遊走,貧食,貧食に伴う酸素吸収の増加,lysosome酵素の遊離およびラット肥満細胞からのhistamine遊離に対する作用をindomethacin(IM),ibuprofen(IP),mepirizole(MP),aspirin(AS)と比較した.多核白血球の貧食に対しては,SL-573は200μMでも25%以下の阻害作用しか示さず,また,IM(800μM:50~80%)およびMP(1000μM:約25%)の作用も弱く,ASおよびIPは1000μMでもほとんど影響を与えなかった.一方,SL-573は多核白血球の遊走,貧食に伴う酸素吸収の増加,lysosome酵素の遊離およびラット肥満細胞からのhistamine遊離に対しては100μM以下の濃度で明らかな抑制作用を示した.特に,SL-573の貧食に伴う酸素吸収の増加に対する阻害作用は特異的で(IC50:23μM),IC50値で比較して,IMの17倍,IP,MP,ASの40倍以上の作用を示した.SI-573は,ラット多核白血球の遊走に対しては58μMで50%阻害作用を示し,IM(IC50: 31μM)よりは劣ったが,IP(IC50: 68μM)とほぼ同等,AS(IC50: 460μM)およびMP(IC50: 370μM)よりも強い作用を示した.Lysosome酵素の遊離に対しては,SL-573は100μMで49.5%の抑制率を示し,IM(100μM: 11.8%)およびIP(100μM: 20.2%)よりも強い作用を示した.ASおよびMPは100μMではほとんどlysosome酵素の遊離抑制作用を示さなかった.肥満細胞からのhistamine遊離に対しては,SL-573は100μMで35~58%の抑制作用を示し,IM(300μM: 43~58%),IP(1000μM: 49~51%),AS(1000μM: 1~5%)およびMP(1000μM:1~41%)よりも強い作用を示した.
  • 冨岡 晴代, 福島 紘司, 豊島 滋
    1979 年 75 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    豊島,瀬戸,藤田と福島は,約350のアミノ酸関連化合物の抗腫瘍性について,評価を行い,N-ethyloxycarbonylaminomethyl-L-isoleucineが数種の実験腫瘍に対し抑制効果を有し,かつ極めて毒性の低いことを見出し,A-145と仮に呼称した.A-145はエールリッヒ腹水癌細胞に対する方がザルコーマー180細胞に対するよりも抑制効果の強いことが見出された.A-145のエールリッヒ細胞に対する化学療法係数は14.9であり,これに対しザルコーマ180細胞に対するそれは4.2であった.In vivo実験において,14C-A-145のエールリッヒ細胞に対するとり込みは,ザルコーマ180細胞におけるより高いものであった.すなわち,30分測定値でのエールリッヒ細胞/ザルコーマ180細胞のとりこみ比は1.52であり,24時聞後では2.7である.14C-A-145は両腫瘍細胞とも核とCytosol分画に多くとり込まれていた.このとり込みは,温度感受性,glucose依存性であり,Potassium Cyanate,2.4-dinitrophenolまたはiodoacetic-acidの添加でとり込みは低下した.In vitro実験では,14C-A-145の両細胞でのとり込みは,L-isoleucineによりせり合い的に拮抗された.しかし,A-145のin vitroの細胞増殖抑制の点で,L-isoleucineの拮抗をみると,ザルコーマ180細胞では拮抗は見出されなかった.
  • 植村 展子
    1979 年 75 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    齧歯類の常同行動,ことにラットにapomorphine,amphetamine,L-DOPA等を投与したときにみられる特異な咀嚼運動(gnawing compulsion)の出現には線状体におけるdopamineが密接に関与することが報告されている.しかし,同じ齧歯類でもモルモットにおいてはL-DOPAによりgnawingが誘発されず,脳内catecholamineのレベルに関係がないとの報告もある.一般的に齧歯類のgnawingに脳内dopamine作働性機構が等しく関与するか否かを確かめることはこの種の研究の基本的問題として重要である.本研究ではモルモットを用いて,L-DOPAによるgnawingの発現とその機構について検討した.この際,gnawingをペン書きオシロスコープで連続記録する方法をとった.これにより記録したものを採点することによって定量的に判定し,客観性をもたせることができた.L-DOPA単独投与では連続する確かなgnawingをみることができなかったが,末梢性のdecarboxylase inhibitorであるbenserazide前処置により,あきらかなgnawingを誘発することができた.この誘発されたgnawingはdopamine receptorを遮断するpimozideおよびhaloperidolによって抑制された.また,α-methyl-p-tyrosine前処置によりcatecholamine生合成を阻害すると,amphetamine-gnawingのみが著しく抑制されたが,apomorphineあるいはL-DOPA(benserazide前処置)によるgnawingは抑制されなかった.従ってamphetamineはdopamine遊離を介して間接的に,apomorphineはdopamine receptorを直接刺激し,L-DOPAは脳内でdopamineに変化したのちにdopamine receptorに作用することによりgnawingを誘発すると考えられる.これらの事実からモルモットにおいてもgnawingの出現にはdopamine作働性機構が密接に関与していることがあきらかになった.
  • 亀山 勉, 鍋島 俊隆, 山口 和政
    1979 年 75 巻 1 号 p. 73-89
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Morphineによって生じるStraub挙尾反応(STR)と鎮痛作用の発現機構を脊髄レベルで検討し,以下の成績を得た.
    1)STRは背側仙尾骨筋の切断によって消失した.2)spinal miceの脊髄を電気刺激すると挙尾反応が生じる.3)morphine 0.25~5μgを腰椎髄腔内に投与するとSTRが用量依存的に生じた.しかし,spinal miceの腰椎髄腔内にmorphineを投与してもSTRは生じなかった.4)STRは末梢性筋弛緩薬のtubocurarineおよびmorphine拮抗薬のnaloxoneの腰椎髄腔内投与によって抑制および拮抗された.5)STRはC5~6の右後半部,左後半部または左右後半部およびT11~12の右後半部または左右後半部を切除しても抑制されず,T11~12のTransectionで始めて消失した.6)脊髄のcatecholamine(CA)ニューロンを破壊したり,5-hydroxytryptamine(5-HT)ニューロンを破壊してもTail Reactionは生じなかったが,morphineで生じるSTRは増強された.7)morphine 0.5μgを腰椎髄腔内に投与すると鎮痛作用が得られた.8)C5~6の左後半部または左右後半部を切除すると疼痛閾値が上昇したが,C5~6の右後半部を切除しても疼痛閾値は変化しなかった.Morphineの鎮痛作用はC5~6の右後半部,左後半部または左右後半部を切除すると抑制された.T11~12の右後半部を切除しても疼痛閾値は変化しなかったが,morphineの鎮痛作用は減弱した.9)脊髄のCAニューロンを破壊したり,5-HTニューロンを破壊すると疼痛閾値が低下したが,morphineの鎮痛作用はnorepinephrine(NE)ニューロンを破壊した場合にのみ抑制された.以上の知見から,morphineは脊髄に作用しSTRと鎮痛作用を生じ,STR発現は脊髄の前半部が重要であり,NEニューロン,5-HTニューロンの神経活動が抑制され生じるが,morphineの鎮痛作用発現には脊髄の後半部が重要であり,NEニューロンの神経活動が増強されることによって生じることを見い出した.
  • 香田 千恵子, 西村 加津代, 玄番 宗一
    1979 年 75 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    正常ラットおよび低CaビタミンD欠乏食で飼育したラットに1α-hydroxycholecalciferolを投与し,腎臓を摘出後その皮質からミトコンドリア,ミクロゾーム分画ならびに切片を調製した.ミトコンドリアのCaとり込み能,Ca2+-ATPaseおよびMg2+-ATPase,ミクロゾーム分画の両ATPase活性ならびに切片におけるCa輸送のそれぞれに対する1α-hydroxycholecalciferolの影響を検討し,以下の実験成績を得た.1)1α-hydroxycholecalciferolの投与により,反応液からミトコンドリアへのCaとり込み量は増大し,長時間(90分)の反応においてもCaの保持に優れる傾向を得た.2)ミトコンドリアのCa2+-ATPaseおよびMg2+-ATPase活性は,低CaビタミンD欠乏食飼育により低下したが,1α-hydroxycholecalciferolの投与により正常ラットの比活性値に回復した.3)1α-hydroxycholecalciferolはミクロゾーム分画のCa2+-ATPaseおよびMg2+-ATPase活性に影響をおよぼさなかった.4)切片におけるCaのinfluxおよびeffluxは1α-hydroxycholecalciferolにより有意な影響を受けなかった.以上の結果から,1α-hydroxycholecalciferolは,腎臓に作用することが示唆され,作用部位は,ミトコンドリアにおけるCa蓄積過程およびATP水解酵素系であると考えられる.
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