ビタミンB
1欠乏ラットの薬物反応性を検討する目的で催眠薬をはじめとする若干の中枢作用薬の影響を検討し,次のような実験成績が得られた.1)ビタミンB
1欠乏ラットは食欲不振,体重増加の停止が起こり飼育30日で著明な体重減少ならびに心拍数の低下を示した.2)この時点で心拍数が正常ラットの70%以下に低下したビタミンB
1欠乏ラットに薬物を投与した; a)chloral hydrate 200mg/kg,ketamine 100mg/kgおよびsodium pentobarbital50mg/kgを腹腔内に投与すると,対照群と比較して有意で著明な睡眠時間の延長が認められた.b)薬物代謝酵素阻害剤であるSKF-525Aをhexobarbital投与30分前に処理するとビタミンB
1欠乏群,pair-fed群および正常群の各群において睡眠時間が延長された.また,この時ビタミンB
1欠乏群の睡眠時間は特に延長され対照群の3.5倍の増加であった.c)薬物代謝酵素の誘起剤であるsodium phenobarbitalをhexobarbital投与の48時間前に処理すると,ビタミンB
1欠乏群ならびに対照群とも酵素誘導を受け睡眠時間は短縮した.また,この時各群間の有意な差は認められなかった.d)tetrabenazineにより誘発される眼瞼下垂作用には投与1時間後に対照群ではすでに3/4程度の閉眼状態を示したのに対し,ビタミンB
1欠乏群では投与前の状態と同様完全な開眼状態であった.その後2,3および5時間後のいずれの測定時間においてもビタミンB
1欠乏群での抵抗性が観察された.e)tetrabenazine誘発カタレプシーでは投与1時間後においてのみ抵抗性を示した.f)lateral hypothalamusニューロンの自発発火に対する影響を検討すると薬物投与前の発火パターンはビタミンB
1欠乏群と対照群の間に著明な差はなかった.Ro4-4602 50mg/kg処置30分後に100mg/kgの5-hydroxytryptophan(5-HTP)を腹腔内に投与すると,ビタミンB
1欠乏群では発火頻度の減少を受ける例が多く,逆に対照群では認められなかった発火頻度の増加の例もあり5-HTPに対する高い感受性が示された.
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