日本薬理学雑誌
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76 巻, 8 号
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  • 辻 正義, 斉田 勝, 副島 義臣, 高森 緑, 野田 寛治, 植木 昭和, 藤原 道弘
    1980 年 76 巻 8 号 p. 675-684
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1-(m-trifluoromethylphenyl)-3-(2-hydroxyethyl)-quinazoline-2,4(1H,3H)-dione[H-88]および1-(m-trifluoromethylphenyl)-3-ethylpyrido-pyrimidine-2,4(1H,3H)-dione[HN-37]の抗carrageenin浮腫作用が副腎摘出で消失あるいは減弱することから,両化合物の下垂体―副腎系に対する作用をWistar系雄性ラットを用いて検討した.H-88 100mg/kg,HN-3710mg/kgは同程度の作用,すなわち血中corticosterone値の360%増加(1時間後),副腎ascorbic acid量の52~59%減少(3時間後),血糖値の25~39%増加(6~12時間後)および肝glycogen量の97~153%増加(12~24時間後)を,さらに下垂体,副腎重量の増加(2~12時間後)と胸腺,脾臓の重量減少(3~24時間後)をおこした.またH-88およびHN-37の抗carrageenin浮腫作用と血中corticosterone増加作用の用量反応はよい相関性を示し,両化合物の血中corticosterone増加および副腎ascorbic acid減少作用は下垂体摘出により消失した.以上の結果から両化合物の抗浮腫作用の発現に,下垂体―副腎系刺激作用が重要な役割を演じているものと考えられる.
  • 東 幸雄
    1980 年 76 巻 8 号 p. 685-696
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット後肢を用いたPCAに対する薬物の作用を通して,アナフィラキシー反応におけるmediator遊離を3種類の抗体を用いて検討し,あわせてアナフィラキシー反応でのmediator遊離とcyclic AMP量の変動との関係についても検討を試みた.3種類の抗体を用いたPCAにおいて,浮腫の形成とhistamine量およびcyclic AMP量の減少との間に相関関係がみられ,抗体の違いによる差は認められなかった.一方,mepyramine,aminopyrine,benzydamine,DCC,trasylolおよびDSCGにおいて,抗体の種類によりPCAに対する作用の違いがみられたが,一定の傾向は認められなかった.tiaramide,epinephrine,isoproterenolおよびtheophyllineにおいて,組織内cyclic AMPレベルの上昇作用とhistamne遊離抑制効果との間に相関関係が認められた.しかし,mepyramineおよびmethysergideでは,histamine遊離は抑制されたが,cyclic AMP量増加作用はみられず,aminopyrineおよびtrasylolでは,cyclic AMP量増加作用がみられたが,histamine遊離抑制は認められなかった.このことから,組織内cyclic AMPレベル上昇とmediator遊離抑制を一元的に説明することには問題のあることが示唆された.
  • 中谷 晴昭, 菅野 盛夫, 神田 孝一, 尾山 洋太郎
    1980 年 76 巻 8 号 p. 697-707
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    43頭の正常麻酔犬を用い,洞房結節機能に対するCa2+チャンネル遮断薬(diltiazem,verapamilおよびnifedipine)の影響を,洞房結節自動能,洞房伝導の二点より検討を加え,propranololと比較した.洞房結節自動能を自発洞周期(SCL),およびoverdrive suppressionによる洞結節回復時間(SRT)でもって評価し,洞房伝導時間(SACT)はStraussらの方法に従い心房早期刺激法により,それぞれ閉胸下に求めた.diltiazem(0.2mg/kg i.v.)およびverapamil(0.1mg/kg i.v.)はSCLを平均11.6%,12.7%,またSRTを平均7.3%,14.3%,とそれぞれ有意に延長きせたが,nifedipine(0.03mg/kg i.v.)のこれらに対する延長効果は有意でなかった.また,propranolol(0.1mg/kgまたは0.2mg/kg i.v.)はSCL,SRTをそれぞれ平均27.5%,28.6%と有意に延長させた.SACTについてはdiltiazem,nifedipine投与群でやや延長,verapamil投与群でやや短縮傾向を示したがいづれも有意の変化ではなかった.しかし,propranolol投与群では平均40.1%の有意の延長が観察された.以上より,Ca2+チャンネル遮断薬は,洞房結節自動能に対しては抑制的に働くが,洞房伝導に対してはpropranololの場合と異なり影響が少ないものと推察される.
  • 柳浦 才三, 細川 友和, 北川 晴美, 亀井 淳三, 三澤 美和
    1980 年 76 巻 8 号 p. 709-716
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    薬物を末梢気道にのみ局所的に作用させ,誘発された咳嗽反射に対する末梢気道緊張状態の影響を全身反応の影響を受けることなく検索する目的で,気管支動脈にカニューレを慢性的に留置した標本犬を作製して検討した.雄性雑犬をpentobarbital麻酔下,無菌的に第5肋間で開胸し,右気管支動脈へカニューレを挿入後,他端を背頸部に露出させ,閉胸した.咳嗽実験は術後10日間以上経過した後,pentobarbital麻酔下に行った.咳嗽の誘発は電極を装着したカフ付気管カニューレを用いて,電気刺激により行った.薬物は気管支動脈内に5分間持続注入した.慢性的カニューレーション標本の気管支筋の反応性を確認した結果,histamineの10μg/min持続注入により気道抵抗の増大が認められ,isoproterenolの3μg/minで減少が認められた.咳嗽実験において,生理食塩液適用では咳嗽反射の頻度および振幅ともに影響は認められなかった。isoproterenolの1および3μg/min適用により,咳嗽反射の振幅では抑制が認められたが,頻度には影響がみられなかった.histamineの3および10μg/min適用では,頻度,振幅ともに増加が認められた.atropineの100μg/min適用では振幅に軽度な抑制がみられた.benzonatateの0.85mg/min適用では,頻度の抑制が認められた.以上のことから,isoproterenolによる咳嗽強度緩和の機序は,咳噺反射時の気管支筋緊張の緩解によるものであり,Salemらの主張するcough receptor刺激のtriggerである収縮の抑制によるものでないことが確認された.また,kistamineにより咳噺強度増大とともに咳嗽頻度の増加が認められたことから,気道収縮は,receptorの反応闘値を低下させることにより,誘発された咳嗽反射に対して二次的に影響を与えることが示唆される.
  • 大滝 由美子, 上田 重郎
    1980 年 76 巻 8 号 p. 717-727
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    犬摘出血管条片標本を用い,種々なagonists(KCl,norepinephrine(NE),angiotensin II(Angio),BaCl2,ATP)および経壁電気刺激による収縮反応におよぼすadenine(Adn),adenosine(Ads)化合物の影響を検討した.Adsはこれらのagonistsによる血管収縮反応を用量依存的に抑制したが,その程度は,NE,Angio,経壁刺激に対するものの方が,KCl・BaCl2に対するものより大であった.AMPはAdsとほぼ同等の効果を示し,ATPはこれよりやや弱く,cyclic AMP,dibutyryl cyclic AMPでは抑制効果はさらに小であった.一方Ba収縮に対し,ATPは他のAds化合物と異なり,逆にこれを増強した.他方,K脱分極筋におけるCa収縮に対しては,いずれのAds化合物も抑制的に働き,申でもAdn,Adsによる抑制が大であった.ATPによる収縮に対しては,AMP,dibutyryl cyclic AMPはある一定濃度においてこれを増強し,Ads,cyclic AMPは殆んど効果を示さなかったが,Adn,ATPはこれを抑制した.特にATP反復適用ではtachyphylaxisがみられ,適用時間間隔が5分,10分の場合より,20分の場合の方が強い収縮抑制を示した.Adnがこれらのagonistsおよび経壁電気刺激による収縮に対し,Adsと同等あるいはさらに強い抑制効果を示すことから,Ads化合物の抗agonist作用の基本はAdn骨格にあり,またこれら化合物の抑制機序はCaの膜透過抑制ばかりでなく結合Caの遊離抑制も関与しているものと推測された.
  • 中野 正行, 竹内 正治, 菅野 浩一
    1980 年 76 巻 8 号 p. 729-735
    発行日: 1980年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    betamethasone 17,21-dipropionate(BMDP)およびbetamethasone(BM)の静脈内投与,皮下投与ならびにBMDPの主代謝物betamethasone 17-propionate(BMP)およびBMの視床下部,中隔,下垂体への植え込みによる視床下部―下垂体―副腎皮質系におよぼす効果について検討した.BMDPは300μg/kgの静脈内投与でetherストレスによる血漿corticosteroneの上昇を抑制することは出来なかったが,BMは10μg/kgより高い投与量で抑制した.また,両steroidの大量皮下投与(BMDP,20mg/kg; BM,16mg/kg)によって,etherストレスによる血漿corticosteroneの上昇はほぼ完全に抑制された.BMDPの主代謝物BMPを視床下部(前,中部)および中隔に植え込むことによりether吸入による血漿corticisterone上昇反応は抑制されたが,視床下部後部および下垂体に植え込んだ場合には抑制効果がみられなかった.一方,BMは視床下部(前,中,後部),中隔および下垂体のいずれに植え込んだ場合もetherストレスによる血漿corticosteroneの上昇を抑制した.
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