マウス,ラットを用い,薬物の抗うつ作用の検索と評価,考査する為の実験方法の確立を目論み,上行性をらびに下行性のmonoamine作動性作用の中から次の様な実験モデルを選び,既知の三環性抗うつ薬の作用との対応性の中で,mianserin(1,2,3,4,10,14b-hexahydro-2-methyldibenzo[c,f]pyrazino[1,2-a]azepine monohydrochloride)の抗うつ作用を比較し,次の結果を得た.1)ラットの後部視床下部性ならびに黒質性のself-stimulationにおいて,mianserin,imipramineとも有意な作用なくchlorpromazineは少量で抑制した.methamphetamineによるself-stimulationの促通は,mianserin,chlorpromazineで抑制し,imipramineは増強させた.2)一側黒質内に6-hydroxydopamineを注入し,nigrostriatal dopaminergic system破壊ラットのmethamphetamine誘発の回転運動はmianserinで軽度に増強された.imipramine,amitriptylineも同様であった.3)isocarboxazid前処置,
l-dopaによるマウスの興奮作用は,mianserinはimipramine,amitriptylineと同様に自発運動量を数倍に増大させた.4)carbidopa(MK-486)前処置,L-5HTPによるマウスの興奮作用ならびに頭部攣縮は,mianserinの少量で完全に抑制した.amitriptylineの抑制はmianserinの1/5以下であった.5)reserpinizeした脊髄ラットの後肢屈曲反射は,isocarboxazidの前処置,
l-dopa 4mg/kg(i.p.)により増強され,mianserin,amitriptylineはこの増強を著明に抑制,imipramine,chlorimipramineは無影響,抗ヒスタミン薬は逆に増強させた.6)reserpinizeした脊髄ラットの後肢伸展反射は,isocarboxazid前処置,5-HTPで増強され,mianserinは0.5mg/kgで著しい抑制を示した.amitriptylineの抑制は弱かった.chlorimipramineは増強させた.7)以上の結果,mianserinの作用は,三環性抗うつ薬と必ずしも同一ではなく,2級アミンと3級アミンのそれぞれに類似性もあり,相違性もあった.結局,mianserinの抗うつ作用の機序は,monoamine作動性機構の中で,三環性抗うつ薬のそれぞれと同じではないと判断され新たなuniqueな抗うつ薬として評価した.
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