日本薬理学雑誌
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82 巻, 4 号
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  • 内田 幸介
    1983 年 82 巻 4 号 p. 223-235
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    モルモット食道粘膜筋板に存在するアドレナリン性受容体の特徴を明らかにするため,そのstrip標本の機械的反応を記録しつつ,カテコールアミン類や非カテコールアミン性交感神経興奮薬の作用とこれに及ぼすαおよびβ遮断薬の影響を検討した.propranolol(3μM)を前処置した標本に対してnoradrenaline(0.1~300μM),adrenaline(0.1~300μM),phenylephrine(1~1000μM),methoxamine(1~1000μM)はいずれも弱い収縮反応を示したが,isoproterenol(1~300μM),dopamine(1~300μM),clonidine(1~300μM)はほとんど何の作用も示さなかった.noradrenaline(10μM)やadrenaline(10μM)による収縮はphentolamine(3μM)やprazosin(3μM)の前処置によって強く抑制されたが,yohimbine(3μM)による抑制は弱いものであった.さらに,これらの収縮はindomethacin(1μM),asphin(100μM),polyphloretin phosphate(30μg/ml)によっても強く抑制された。一方,phentolamine(10μM)存在下にcarbachol(3μM)で最大収縮を起した標本ではnoradren-aline,adrenaline,isoproterend,dopamine,terbutalineはいずれも用量依存的な弛緩を引き起し,そのpD2値の大きさはisoproterenol>noradrenaline>adrenaline >> terbutaline>dopamineの順であった.これらの薬物による弛緩はpropranolol,atenolol,butoxamineによって競合的に拮抗されたが,それらのpA2値の大きさはpropranolol>atenolol >> butoxamineの順であった.また,この弛緩はindomethacin(1μM)前処置によって何の影響も受けなかった.以上の成績から,モルモット食道粘膜筋板には,わずかな興奮性α1受容体と豊富な抑制性β1受容体が存在し,前者はさらに内因性prostaglandin類の生合成,遊離と連関している可能性が考えられる.
  • 渡辺 和夫, 渡辺 裕司, 萩原 昌樹, 金岡 留美
    1983 年 82 巻 4 号 p. 237-245
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    中枢性筋弛緩薬tizanidineの胃液分泌および胃潰瘍に対する作用をラットを用いて調べた.tizanidine 5mg/kg,s.c.は麻酔下基礎分泌,末梢性刺激分泌に対して全く影響を及ぼさず中枢性刺激分泌に対し抑制作用を示した.なお10mg/kg,i.d.でも中枢性刺激分泌を抑制した.10mg/kg,s.c.では,bethanechol刺激分泌のみ促進した.clonidineはtizanidineより低用量においてほぼ同様の作用を示した.無麻酔下基礎分泌に対してはtizanidine,clonidine共に低用量から抑制作用を示した.tizanidine 5mg/kg,s.c.はindomethacin潰瘍,ストレス潰瘍に対し全く影響を及ぼさず,幽門結紮潰瘍を抑制した.10mg/kg,s.c.ではindomethacin潰瘍を有意に抑制し10および20mg/kg,p.o.でもindomethacin潰瘍を抑制した.一方clonidineは1mg/kg,s.c.によりいずれの潰瘍に対しても強い抑制作用を示した.従ってtizanidineは高用量により胃酸分泌および胃病変に対し影響を及ぼし,また強さにおいてはclonidineより弱いながら類似した作用動態を示すことがわかった.
  • 渡辺 裕司, 畑 温, 渡辺 和夫
    1983 年 82 巻 4 号 p. 247-257
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラットにおいて中脳黒質を一側性に電気刺激した時に誘発される旋回行動の薬理学的特性を明らかにする目的で,6-hydroxydopamine処置,数種のドパミン(DA)受容体遮断薬ならびに刺激薬の影響について検討した.また,刺激による線条体DAの動態も併せて検討した.1)ラット中脳黒質の一側性電気刺激により,非刺激側への(反対側性)旋回行動を生じた.6-hydroxydopamine 8μgを黒質内に前処置すると,その旋回行動は著しく抑制された.2)抗精神病薬haloperidol 1mg/kg,i.p.およびpimozide 1mg/kg,i.p.投与はおのおの3および4時間後,電気刺激誘発の旋回行動を約50%抑制した.sulpirideおよびmetoclopramideでは有意な抑制はみられなかった.また,scopolamineやphentolamine投与によっても影響は認められなかった.3)apomorphine 0.5あるいは1mg/kg,s.c.投与はsniffingやlocomotionを生じたが旋回行動は著明に抑制した.0.5mg/kg,s.c.でみられた抑制作用はhaloperidol 0.1mg/kg,i.p.の前処置で拮抗された.bromocriptine 10mglkg,i.p.投与も旋回行動を有意に抑制し,その作用はhaloperidolにより拮抗された.methamphetamine 0.1および0.5mg/kg,s.c.投与は旋回行動に有意な影響を与えなかった.4)黒質を一定時間刺激後,線条体DA,3,4-dihydroxyphenylacetic acid(DOPAC)およびhomovallillic acid(HVA)含量を測定した.無処置ラットは5~30公間の刺激後DAおよび代謝産物の含量に有意な変化は認められなかった.しかし,probenecid処置ラットでは,30分刺激後DOPACおよびHVA量が有意に増加した.これらの結果から,中脳黒質の一側性電気刺激により誘発されるラットの旋回行動には黒質一線条体DA系が重要な役割を果しており,DA agonistはpresynaptic DA受容体の刺激を介して旋回行動を抑制すると考えられる.この旋回行動モデルは,presynapti cDA受容体刺激作用をもつ薬物の評価に有用であろう.
  • 松永 和樹, 上田 元彦
    1983 年 82 巻 4 号 p. 259-266
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    微量で顕著な急性降圧作用を示すpindololの比較的高用量をSHRに連日反復投与した際,初回投与時に認められた降圧作用が数日内に漸次減弱することが観察されたのでこの急性耐性について検討を加えた.3mg/kgを1日1回腹腔内投与した場合,4日間の反復投与で降圧作用は初回投与時の約20%にまで減弱した.pindolol反復投与時,captoprilまたはtrichlor-methiazideを併用してもこの急性耐性は全く緩和されなかった.isoprotercnolを反復投与されたSHRにおいてもpindololの急性降圧作用は顕著に認められた.したがって,renih-angiotensin系の活性充進や体液貯留そしてβ受容体機構のsubsensitivityは,この急性耐性の成因からは除外される.急性耐性を生じたSHRにおいてprazosin,clonidine,hydralazine,captoprilおよびnifedipineなどの作用機序の異なる抗高血圧薬は対照SHRと変らぬ降圧作用を示した.急性耐性を生じたSHRにおいてisoproterenolとacetylcholineの静注による降圧反応を検討するに,isoproterenol静注による降圧反応のみが対照SHRのそれに比べて有意に抑制された.pindololの降圧作用減弱とisoproterenolの降圧反応抑制との間には正の相関が認められた(Y=1.00X+0.56,γ=0.837,P<0.001).これらの結果から,比較的高用量のpindololの反復投与によって生ずる降圧作用に対する急性耐性の主たる成因は,既に投与され生体内に残存していると思われるpindololのβ遮断作用,いわゆる“autoblockade現象”による可能性が強い.
  • 五味田 裕, 森井 道雄, 市丸 保幸, 森山 峰博, 植木 昭和
    1983 年 82 巻 4 号 p. 267-292
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    clobazam(CBZ)の脳波学的ならびに行動薬理学的作用について,主にdiazepam(DZP)およびchlordiazepoxide(CDP)の作用と比較検討した.1)ウサギの自発脳波に対してCBZ,DZPおよびCDPは,それぞれ2~10mg/kg(i.v.)で用量依存的に抑制し,CBZの作用はDZPのそれと同程度であった.中脳網様体または視床下部刺激による脳波覚醒反応に対する抑制作用はDZP,CBZ,CDPの順で強かった.大脳辺縁系後発射に対しては,CBZ,DZPとも5~10mg.kg(i.v.)の用量で抑制した.2)ラットの視床下部自己刺激行動において,低電流通電時によるlow.rate.responseはCBZ,DZPおよびCDP,それぞれ2,1および10mg/kgで亢進作用を示した.VIスケジュール時に対する作用はDZP2mg/kg(p.o.)で,CDP5mg/kgより,およびCBZ10mg/kgで亢進作用を示した.DRLスケジュール時では,DZP2mg/kgより,CBZ,CDPは5mg/kgより亢進作用を示した.3)マウスのpentylenetetrazolけいれんに対するCBZ,DZPおよびCDPのED50値は,それぞれ1.1,0.6,および2.8mg/kg(p.o.)で,CBZの作用はDZPの約0.5倍,CDPの約2.5倍の強さであった.最大電撃けいれんに対するCBZ,DZPおよびCDPの抑制作用のED50値は,それぞれ14.0,18.5,36.0mg/kg(p.o.)で,CBZの作用は,DZPの約1.3倍,CDPの約2.5倍の強さであった.4)嗅球摘出ラットの情動過多に対してCBZは抑制作用を示し,muricide抑制の程度はDZPの約0.7倍の強さであった.5)またマウスのinclined screenおよびrota-rod testによる筋弛緩作用の検定ではCBZ40mg/kgを投与しても著明な作用は認められなかった.6)マウスのthiopental睡眠に対するCBZの増強作用のED50は5.8mg/kg(p.o.)でCDPの約2.2倍,DZPの約0.27倍の強さであった.以上のように1,5 benzodiazepineのCBZは質的に1,4benzodiazepinesのCDP,DZPと同様な行動薬理学的作用を示すが,全般的にその作用強度はDZPとほぽ同程度か,わずかに弱くCDPよりはるかに強い薬物である.
  • 飯塚 正博, 平林 牧三
    1983 年 82 巻 4 号 p. 293-301
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    dd系成熟雄マウスにmorphine(MOR)5,10および20mg/kgを1日,3~4日あるいは7日間隔で10回反復皮下投与し,そのつど180分間にわたり自発運動活性を測定し,効果の変遷について検討した.MOR初回投与時にはマウスの自発運動活性は用量依存的に促進し,その効果は投与60~90分後をピークとし,約180分間持続した.MORの反復投与によってこの自発運動促進効果は,5mg/kg投与群では明瞭でなかったが,10および20mg/kg投与群では投与回数に比例して増強され,いわゆる逆耐性が認められた.すなわち,いずれの投与間隔であっても,3~4回目までは進行性の効果増強がみられ,投与間隔が長い方が作用持続時間の延長が著明な傾向が認められた.また,5~6回目以降の投与時にみられる自発運動促進効果の増強は頭打ちとなり,逆耐性が維持されるにとどまった.10回に及ぶMOR反復投与の後2か月間休薬し,同量のMORを投与した場合,10回目に比較すると明らかに自発運動促進効果は減弱したが,なお初回時の効果に比し増強が認められた.さらに,MOR投与後180分間移動空間の狭い広口ビンの申にマウスを閉じ込める操作を,1日,3~4日および7日それぞれの間隔で5回反復投与し,6回目に初めて測定容器に入れ自発運動活性を測定すると,運動促進効果はMOR初回投与時あるいは生理的食塩水を反復投与し,そのつど同様に運動阻害操作を施したマウスでみられた効果とほとんど同程度であり,逆耐性は全く観察されなかった.
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