日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
91 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 大塚 正徳
    1988 年 91 巻 6 号 p. 335-340
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    Dale's principle was first proposed by Eccles in 1954 based on 3 lectures given by Dale in 1934 and 1952. Many authors in the literature define Dale's principle as the “one neuron-one transmitter concept”. The origin of such an idea, however, is rather vague. Neither Dale nor Eccles stated literally the one neuron-one transmitter concept. It seems now appropriate to define Dale's principle according to Eccles (1976) as follows: “at all the axonal branches of a neuron there is liberation of the same transmitter substance or substances”. Recent studies showed examples that are not in accord with the “one neuron-one transmitter concept”. Many cases were shown in which a neuron contains more than one transmitter. Whether this is a common rule or exceptional remains to be clarified by future studies.
  • 東 治喜, 宮澤 友明, 溝川 達男, 孫田 アイリ, 原 公生
    1988 年 91 巻 6 号 p. 341-349
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ラットにおげる脳局所微小循環に対する lisuride の影響についてiodo-〔14C〕-antipyrine-autoradiography法を用いて検討した.lisuride投与により,大脳皮質,尾状核-被殻,視床,膝状体,小脳などの脳部位での相対血流量は,有意に20~40%増加した.一方,海馬,視床下部,白質ではほとんど変動しなかった.このような部位特異性は,lisurideの脳グルコース利用促進効果の見られた部位であり,脳グルコース代謝と微小循環との間には高い相関性が認められた.さらに,lisurideはanoxia致死モデルに対して致死時間を短縮した.以上の結果より,lisurideにより脳グルコース代謝が亢進する脳部位では,微小部位血流が増加することが明らかとなった.
  • 高血圧自然発症ラット(SHR)における解析
    好田 裕史, 橋木 恒一, 城守 美佐, 廣内 雅明, 栗山 欣弥
    1988 年 91 巻 6 号 p. 351-358
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    脳循環および代謝改善薬として新しく開発された4-(1-pyrrolidinyl)-1-(2,4,6-trimethoxy phenyl)-l-butanone hydrochloride(Buflomedil)の脳内アセチルコリン(ACh),神経活性アミノ酸含量および脳内エネルギー代謝におよぼす影響について,Wistar Kyoto rat(WKY)および高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて検討した.Buflomedil(30mg/kg)を7日間経口投与した場合,WKY,SHRの両者において脳内ACh含量に有意な変化は認められなかった.一方,Buflomedilを連続経口投与すると,SHRにおいて線条体のglutamic acid含量および視床下部のtaurine含量の上昇,中脳のglycine含量および海馬のtaurine含量に低下が認められた.さらにSHRにおいては,Buflomedilの連続経口投与に伴い,線条体におけるglucose含量およびATP含量の有意な増加が認められた.以上の結果より,BuflomedilはSHRに見られるような脳の循環や代謝障害の想定される病態時において,脳内神経活性アミノ酸含量の変化及び脳内エネルギー代謝の促進を招来しうる薬物であると考えられる.
  • 植木 昭和, 山本 経之, 島添 隆雄, 柴田 重信, 谷 吉弘, 町田 幸一, 北条 雅一, 吉田 洋一, 辰巳 煕
    1988 年 91 巻 6 号 p. 359-369
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    新しい三環系抗うつ薬である quinupramine〔QNP:5-(3-quinuclidiny1)-10,11-dihydro-5H-dibenz〔b,f〕azepine〕の行動薬理学的特性をマウス,ラットを用いてimipramine(IMP),amitriptyline(AMT)およびmaprotilineのそれと比較検討した.QNPはhaloperidol catalepsyおよびtetrabenazine ptosisに拮抗し,methamphetamineやapomorphineで誘発される常同行動を増強した.これらの作用はいずれもIMP,AMTに比べて同等かあるいはより強力であった.また,QNPはマウスの自発運動量を減少させたが,methamphetamineの自発運動亢進作用に対してはIMPおよびAMTよりも強い増強効果を示した.一方,QNPは側坐核破壊ラットのmuricideを抑制したが,嗅球摘出ラットおよび中脳縫線核破壊ラットのmuricideに対しては著明な抑制作用を示さなかった.しかし,強制水泳によるラットの無動状態の持続時間を自発運動に影響を与えない用量から著明に短縮し,その作用はIMP,AMTと同等で,maprotilineより強かった.また,QNPはphysostigmine致死に拮抗し,oxotremorine振戦を抑制する事から,中枢性抗コリン作用を有することが示唆された.条件回避反応に対しては,QNPはIMPやAMTと同様認むべき作用がなかった.以上,QNPは全般的には従来の三環系抗うつ薬と同様な抗うつ薬としての行動薬理学的作用を示すが,中枢性抗コリン作用が強く抗muricide作用が弱い点でIMPやAMTとは若干異なった薬理作用プロフィールを有することがわかった.
  • 山本 健二, 竹田 光江, 加藤 有三
    1988 年 91 巻 6 号 p. 371-376
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    主要な細胞内 aspartic proteinases である cathepsin D および cathepsin E に対する酸性の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の影響について比較検討した.酵素はラット脾臓から分離精製して用いた.cathepsin D に対しては,用いた薬物のすべてが程度の差にあるものの,明らかな活性阻害を示した.cathepsin D に対して最も強い阻害活性を示したのはindomethacin(50%阻害濃度;0.2mM),次いでflufenamic acid(50%阻害濃度;0.5mM)であった.sodium salicylate(SA)およびaspirinも,前二者に比べると弱いけれども cathepsin D活性を明らかに阻害した(50%阻害濃度;8~10mM).これら薬物群の cathepsin Dに対する阻害効果はpH依存性であり,全て非競合的阻害であった.一方,cathepsin Eに対してはこれらの薬物は殆ど阻害効果を示さず,SAのみが高濃度(0.1M程度)において非競合的に本酵素活性を阻害した.SA構成異性体であるメタあるいはパラヒドロキシ安息香酸Naは,SAに比べて明らかに弱い cathepsin E 活性阻害を示した.SAの cathepsin E 活性の阻害はpHに殆ど影響されず,反応時間にも依存しなかった.これらの結果は,同じ分子進化系統に属し,基本的性質において類似している両酵素が高次構造において明らかに異なっていることを示している.
  • 村主 教行, 吉田 眞里子, 木下 春樹, 広瀬 文明, 福田 孝代, 堤内 正美, 山田 秀雄
    1988 年 91 巻 6 号 p. 377-383
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    benexate・CDは,benexateをβ-cyclodextrin(β-CD)により包接化合物とした消化性潰瘍治療剤で経口投与により胃粘膜に直接作用するといわれている.本研究では薬理作用発現における包接体形成の意義について検討した.benexate・CD,benexate,物理的混合物(benexatcとβ-CDとの等モル混合物,以下混合物と略す)を粉末のままラットに経口投与し,塩酸エタノール潰瘍発生に対する抑制効果を比較したところ,benexate単独および混合物は対照と比較して有意な抗潰瘍作用は示さなかったのに対し,benexate・CDの投与では強い潰瘍発生抑制効果が認められた.胃液のモデルである局方第一液におけるbenexatc・CD.benexateおよび混合物の溶解挙動を比較したところ,benexateのままではほとんど溶解せず,また,混合物では溶解濃度が若干上昇する程度であるのに対し,bencxate・CDは溶解直後に高濃度に溶け,その後低下して最終的には混合物の溶解度と等しい値となり,単なる混合物とは異なる溶解特性を示すことが明らかとなった。粉末投与後の胃内での溶解挙動の比較ではbenexate・CD投与後の胃液中および胃組織中のbenexate濃度は,benexate単独または混合物を投与した場合に比して高かった.以上の結果,bencxate・CDを投与すると胃液中でbcnexate・CDから遊離したbenexateの濃度は飽和溶解度以上の過飽和になり,この高濃度のbenexateによって胃組織中へのbcnexateの取り込みが増大しbenexate単独や混合物よりも強い抗潰瘍作用が発現したものと考えられた.従って,benexate・CDが単なる物理的混合物ではなく,包接体を形成していることが,その強い抗潰瘍作用発現に重要な意義をもっていると思われる.
  • 中瀬 清一, 武永 邦三, 浜中 敏議, 木村 正康
    1988 年 91 巻 6 号 p. 385-392
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    花粉製剤の cernitin pollen extract(CN-009)のラット尿道平滑筋標本および横隔膜神経筋標本に対する弛緩作用を検討した.その配合要素の cernitin T-60(T-60)とcernitin GBX(GBX)は20:1の配合比で協力作用を示すことを証明した.ラット尿道平滑筋において,CN-009(3.0×10-4~3.0×10-3g/ml)およびそれに相当するGBXならびにT-60は,noradrenaline(NA)(10-5g/ml)収縮を用量依存的に抑制した.Bürgiの方法により,CN-009の1.0×10-3~3.0×10-3g/mlに相当する濃度のT-60とGBXの間に弱い相乗作用が認められた.また,GBXはNAに対して非競合的であり,K+(139.6mM)収縮をも抑制したが,T-60は競合的な傾向を示し,K+収縮を抑制しなかった.ラット横隔膜神経筋において,CN-009(5.25×10-3~2.1×10-2g/ml)は,神経刺激(0.5msec,10v,0.2Hz)による単収縮を用量依存的に抑制した.この濃度範囲に相当するT-60は顕著な作用を示さず,GBXでは作用が弱かった.Bürgiの方法により,CN-009の各濃度に相当するT-60とGBXの間に明らかな相乗作用が示された.なお,CN-009(2.1×10-2g/ml)およびGBX(1.0×10-2g/ml)の抑制作用は神経刺激に対して特異的であり,neostigmine(1.0×10-5g/ml)により回復しなかった.このことは,CN-009の作用点が筋直接的ではなく,AChと競合的でないことを示唆した.結論として,CN-009は尿道平滑筋および神経筋に対し,用量依存的な弛緩作用を示し,T-60とGBXが異なった作用機序で相乗的に作用することを証明した.
  • 中村 秀雄, 世戸 康弘, 元吉 悟, 横山 雄一, 門河 敏明
    1988 年 91 巻 6 号 p. 393-399
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    非ステロイド性抗炎症薬AD-1590の抗炎症作用におけるindomethacinとの相対的効力比は,酢酸誘発血管透過性亢進試験(雄マウス),carrageenan後肢足蹠浮腫試験(雄ラット)および紫外線紅斑試験(雌モルモット)でそれぞれ4,2.3および31であり,動物病態モデル間で変動することを既に報告している.そこで,AD-1590の動物病態モデル間での抗炎症効力差と血中薬物濃度の動物種族差との関係を明らかにする目的で,AD-1590の雄ラットにおける抗炎症作用をindomethacinと比較するとともに6種類の動物における血漿中AD-1590レベルを測定した.ラットにおけるAD-1590の紫外線紅斑の抑制作用および酢酸誘発血管透過性亢進の抑制作用のED50値は,それぞれ1.56×2mg/kg,p.o.および1.21mg/kg,p.o.であり,AD-1590の効力はindomethacinのそれぞれ約2.1倍および2.3倍であった.これらのindomethacinに対する相対的効力は,ラットcarrageenan後肢足蹠浮腫法における効力比とほぼ一致し,モルモット紫外線紅斑法およびマウス酢酸誘発血管透過性亢進法における効力比よりも小さかった.一方,薬効評価に使用した6種類の動物にAD-1590の5mg/kgを1回経口投与したときのAD-1590の血漿中レベルは,雌モルモット(AUC0-8hr=68.1μg・hr/ml)が最も高く,次いでマウス(雄32.1,雌36.1)>雄イヌ(11.5)≥ラット(雄9.02,雌12.5),雄ウサギ(9.17)>雄サル(6mg/kgで9.34)の順であり,ラットに比べてマウスでは2.9~3.6倍,モルモットでは5.4~7.5倍高かった.indomcthacinの血漿中レベルは,ラットがモルモット,ウサギ,サルなどよりも数倍以上高いことが報告されている.以上の結果から,AD-1590の抗炎症作用における動物病態モデル間の効力差は,AD-1590およびindomethacinの血漿中濃度の動物種族差に起因するところが大きいことが示唆された。
feedback
Top