日本薬理学雑誌
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75 巻, 8 号
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  • 荒井 裕一朗, 竹内 久米司, 山田 健二, 向後 博司, 相澤 義雄
    1979 年 75 巻 8 号 p. 765-769
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    1)滑膜のcarrageenin炎症により,PGEおよびPGFの遊離は増大した.2)Aspirinは炎症および非炎症組織からのPGEおよびPGFの遊離を強く抑制した.3)炎症滑膜からのPG遊離に対し,hydrocortisoneはPGEおよびPGFの遊離をin vivoでは強く抑制したが,in vitroではPG遊離に対してほとんど影響を与えなかった.非炎症組織からのPG遊離にはhydrocortisoneはin vivo,in vitroともほとんど作用を示さなかった.4)炎症を起した滑膜組織中のPG含量は,PGEが特に著明に増加したが,aspirinの投与によりPGE,PGFの含量はともに強く減少した.hydrocortisone投与はPGE,PGFの含量をともにやや減少させる傾向を示したが,著明ではなかった.
  • 鶴見 介登, 安田 公夫, 牧 栄二, 藤村 一
    1979 年 75 巻 8 号 p. 771-776
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    pilocarpine,5-hydroxytryptamine creatinine sulfate(5-HT)およびprostaglandin E2の瀉下作用に対する腸管弛緩物質を主体とした自律神経作用薬,抗ヒスタミン剤,抗5-HT剤,papaverineおよびmorphineの影響を皮下投与によってマウスで試験した.pilocarpine下痢はatropineやdiphenhydramineのようなanti-cholinergicな薬物によって著明に抑制されたが,節遮断剤や抗5-HT剤では抑制されず,その作用機構はacetylcholine reccptorへの直接作用であることがうかがわれた.5-HT下痢はanti-cholinergicな薬物で抑制されたが大量を必要とし,節遮断剤やanti-5-HT剤で顕著に抑制されたことから,神経節を介するcholinergicな作用と平滑筋への直接作用とが作用機序に関与しており,PGE2による下痢も5-HTよりはcholinergicな面が強いが,やはり二面的作用を有するものであることが示唆された.なおpapaverineはいずれの下痢に対してもごく軽度な抑制作用を示したにすぎなかったが,morphineはいずれのspasmogensによる下痢に対しても顕著な抑制作用を示し,止瀉剤として非特異的な瀉下抑制効果を有することが認められた.
  • 酒井 豊
    1979 年 75 巻 8 号 p. 777-787
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    benzodiazepine系minor tranquilizerの呼吸抑制作用の有無,程度をpentobarbital麻酔ラットの換気量および両側の迷走神経を頸部で切断したネコの横隔神経活動(吸息中枢の活動を反映している)を指標として検討した.後者の実験においては,血圧,心拍数および赤外線CO2ガスアナライザー(LB-1 Beckmann)で呼気中のPCO2を同時に測定記録した.1.diazepam 10,20mg/kg p.o.,chlordiazepoxide 20,40mg/kg p.o.でラットの換気量は投与前より減少した.oxazolamおよびcloxazolamは20,40mg/kg p.o.でラットの換気量を投与前より減少させることはなかったが,CMC投与群よりは幾分換気量を減少させる傾向があった.2.ネコの横隔神経活動に対して,diazcpam(溶媒にとかしたもの)および注射剤(Gercine®)0.5mg/kg/i.v.は群発放電の頻度および積分された電位の大きさを抑制した.chlordiazepoxide 1mg/kg i.v.は神経放電の積分値の大きさを軽度に抑制した.oxazolam 1mg/kg i.v.はネコの横隔神経活動へほとんど影響しなかった.cloxazolam 1mg/kg i.v.は逆に投与直後のみ増大させる傾向があった.3・以上の結果からminor tranquilizerによる呼吸機能への影響は一様でなく,oxazolam,cloxazolamはdiazepam,chlordiazepoxideに比べて呼吸抑制作用は確かに弱いと推察された.
  • 山田 勝士, 服部 修造, 箱田 達哉, 宮崎 三千代, 藤 玉枝, 古川 達雄
    1979 年 75 巻 8 号 p. 789-798
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Tonelliらのクロトン油耳介試験法に検討を加え,さらに新抗炎症剤diflucortolone valerate(DFV)の抗浮腫効果を盲検法によってbetamethasone valerate(BTV)と比較した.臨床的に局所応用される抗炎症剤の薬効評価は,動物実験でも局所応用による作用観察が必要である.この目的でのTonelliらのラットにおけるクロトン油耳介試験法には,報告者によって方法にもまた同一薬物の効果にも差がみられる.われわれは起炎剤の塗布方法,塗布時間,クロトン油濃度,耳介のパンチ法などの基礎的条件に検討を加え,フェルト付ピンセットにより一定塗布量(400μl/フェルト)を,15秒間加圧(550g重)しながら塗布し,その後耳介の一部をパンチ(直径10mm)で打ち抜くことにより,充分かつ再現性に富む浮腫を発生きせることができた.起炎剤応用後の浮腫の時間経過では,6~8時間後がピークであった.起炎剤中のクロトン油濃度と反応(浮腫の強度)の曲線は1~2%では直線的で5%では斜めとなり,10%ではプラトーに近くなった.5%では浮腫強度は63%となり,実験に適した濃度と考えられた.この方法でDFVおよびBTVの抗浮腫作用を盲検法によって比較検討すると,ED50値はwistar系ラットで,DFV 0.0097mg/ml,BTV 0.26mg/ml,Sprague Dawley系ラットではそれぞれ,0.016mg/ml,0.86mg/mlと,DFVが抗浮腫作用は強く,また本作用にはラットの系による差は極めて少なかった.これらの方法は局所抗炎症ステロイド剤の局所塗布による抗炎症効果の評価に有用と考えられる.
  • 水島 敬夫, 石川 路夫
    1979 年 75 巻 8 号 p. 799-804
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    betamethasone 17,21-dipropionate(BDP)は組織培養ラット胎仔肝においてglycogen蓄積作用を示さず,cortisolと拮抗してそのglycogen蓄積作用を抑制するので,ラット胎仔肝の他のglucocorticoid作用系に対してもBDPは抗glucocorticoid作用を示すかどうかを確かめるため,glycogen synthase(GS)ならびにtyrosine aminotransferase(TAT)活性に対する影響を培養肝切片を用いて検討した.cortisolは3×10-8M以上の濃度でGSの総活性,活性型活性をともに増加させた.BDPはcortisolとは異なり10-6Mの濃度でも総活性を増加させず,10-6M cortisolの作用を完全に抑制したが,活性型活性に対しては3×10-8M以上の濃度で増加させた.TAT活性に対しては10-8M以上の濃度でBDP,cortisolともに増加作用を示した,したがって,BDPはラット胎仔肝のいずれのglucocorticoid作用系に対しても抗glucocorticoid作用を示すものではなく,作用系によってはglucocorticoid作用も示すものと考えられる.
  • ラットの身体依存性形成における系統,性別,薬物の投与時間の違いの影響ならびに各種薬物の禁断症状の特徴
    吉村 弘二, 山本 研一
    1979 年 75 巻 8 号 p. 805-828
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの系統差,雌雄差または薬物の投与時間の違いが身体依存性の形成にどのように影響を与えるかを調べるためmorphine(MP)およびphenobarbital(PNB)を対象に実験を行い,あわせてcodeine(CD),d-propoxyphene(d-P),chlordiazepoxide(CDP),diazepam(DZP),cocaine(CC),d-methamphetamine(MAPT),chlorpromazine(CPZ)連続投与ラットの行動薬理学的異同を調べるため成長曲線,突然休薬ないし拮抗薬投与による禁断症状を粗大行動,体重,体温および摂餌量を指標に解析した.また条件反応が薬物依存性検索の指標となり得るか否かを検討した.1)MPおよびPNB突然休薬による体重および摂餌量の減少を含む禁断症状の量的時間的なまた一部質的な違いがJCL-Wistar(JW),SLC-Wistar(SW),JCL-Sprague Dawley(SD)およびHOS-Donryu(DON)系ラットの間で認められた.2)MPおよびPNB突然休薬による禁断症状は一般に雄性動物でより強く現われた.3)薬物の投与時間の違いによる身体依存性形成の差には雌雄差および薬物の違いが関与するようである.4)突然休薬による体性行動,自律行動,情動行動ならびに意識水準の変化はMP型薬物とbarbiturate-tranquilizer(BT)型薬物の間で明らかに異なり,とくにラットの禁断症状の特徴といわれる体重減少はMP型薬物では薬物投与24時間後に,BT型薬物では40時間後に最も著明であった,各行動変化は拮抗薬の投与により増強された.5)精神依存能の強いCC,MAPTでは休薬しても著しい行動変化は認められず体重減少もなかった.6)いずれの薬物でも突然休薬では体温変化が認められなかった.一方,拮抗薬の投与によりMP型薬物では体温下降,BT型薬物では体温上昇が現われた.7)条件回避反応は突然休薬によりMPおよびCD依存ラットでは軽度に,拮抗薬投与により著しく抑制された.また,条件回避反応は突然休薬によりPNB,CDPでは中等度に,CCでは軽度に,拮抗薬の投与はCDP群の本反応を中等度にそれぞれ抑制した.
  • 田端 敬一, 大槻 浩, 岡部 進
    1979 年 75 巻 8 号 p. 829-836
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    非steroid系の新しい抗炎症薬CH-800および数種の市販の薬物のラット胃腸管に対する刺激作用の有無を比較検討した.いづれの薬物も1回経口投与により用量依存的に腺胃部に粘膜潰瘍を発生させた.UD50値(50%潰瘍発生量)で刺激作用の強さを比較すると次の順序であった;indomethacin>diclofenac Na>ibuprofen>aspirin>CH-800>phenylbutazone.5日間連続投与では,CH-800は用量依存性を示さず,胃粘膜に小さな潰瘍を誘発した.他の薬物も胃に潰瘍を発生させたが,潰瘍係数,および発生率ともに用量に依存して増加した.UD50値では,indomethacin>diclofenac Na>ibuprofen>aspirin>phenylbutazoneの順であった.小腸粘膜に関しては,indomethacin,diclofenac NaおよびCH-800が1回投与で潰瘍を誘発した.5回連続投与ではaspirinを除く全ての薬物が小腸潰瘍を発生させ,UD50値では次の順序で弱くなった;indomethacin>CH-800=diclofenac Na>ibuprofen>phenylbutazone.酢酸潰瘍の自然治癒過程に対するCH-800および各種薬物を投与した結果,潰瘍発生4日目から5日間投与することにより,indomethacinを除く各薬物は潰瘍の治癒を有意に遅延させた.発生20日目から投与した場合,phenylbutazoneのみが有意の治癒遅延を引起した.50日目からの投与では,CH-800,phenylbutazone,diclofenac Naおよびibuprofenが有意の潰瘍の再燃,再発効果を示したが,CH-800の作用は後の3薬物に比較して弱かった.以上の結果から,CH-800は他の市販の抗炎症薬との比較においては安全性は高いと考えられる.しかし,潰瘍患者あるいは潰瘍歴のある患者にはCH-800のみならず,他の非steroid系抗炎症薬の使用は制限または控えるべきことが示唆された.
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