日本薬理学雑誌
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115 巻 , 4 号
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  • 森際 克子, 福田 淳, 山下 勝幸
    2000 年 115 巻 4 号 p. 185-192
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    中枢神経系における傷害,虚血に際して,免疫細胞であるミクログリアやグリア細胞が活性化され,サイトカインを分泌して侵入物の撲滅と組織修復を図る.この免疫細胞が,プリン受容体のイオンチャネル型P2XおよびGタンパク共役型P2Yを発現し,傷害された細胞から放出されるATPに応答して,その機能を変化させることが明らかとなって来た.単離培養されたラット網膜ミクログリアでは,非刺激下で,Gタンパク共役型P2U(P2Y2,P2Y4)とイオンチャネル型P22Z(P2X7)が同等に発現しているのに対して,LPS刺激下では,P2Z優位となり,そのCa2+応答が増大する.一方,虚血(低酸素1%濃度)下で活性化されたミクログリアはP2UとP2Zの両受容体の感受性が共に高く,また,P2Uの応答が優位である.この低酸素濃度下では代謝型P2Uの活性化を介してミクログリアの増殖が誘導され,P2Uによる細胞内Ca2+動態と容量性流入がこの増殖機構に関与していると考えられる.さらに,LPS刺激と低酸素の両活性化においてTNF-αとIL-1βの分泌が見られ,その分泌がP2ZのアゴニストBzATPにより亢進し,アンタゴニストoATPにより抑制されることから,P2Z(P2X7)受容体がサイトカイン分泌機構に関与していると考えられる.P2Z(P2X7)はまた同時に増殖を阻止し,アポトーシスを誘導する.このP2Z(P2X7)受容体は,マクロファージ,単球,線維芽細胞のいずれにもあり,サイトカインのみならずプラスミノゲンの分泌にも関与する.TNF-αの転写,遊離にはMAPキナーゼのp44/42およびp38が関与することが示唆されており,P2Z(P2X7)の活性化はCa2+依存性に,NFAT,NF-κをも活性化させて,増殖のシグナル経路を阻止し,アポトーシス誘導経路とp44/42とp38を介する分泌経路を駆動する可能性がある.
  • 南 雅文, 佐藤 公道
    2000 年 115 巻 4 号 p. 193-200
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    ケモカインは白血球走化活性化作用を有し,炎症反応あるいは免疫反応のメディエーターとしてその機能や発現調節の研究が精力的に進められてきている一群の生理活性ペプチドであるが,近年,脳内においてもケモカインが種々の神経変性疾患の病態形成において重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.また,数種のケモカイン受容体がエイズウイルスHIVの感染に必須であることが報告されたことにより,エイズ脳症における脳内ケモカイン系の役割にも注目が集まっている.本総説では,多発性硬化症,アルツハイマー病,虚血性脳細胞障害およびエイズ脳症での脳内ケモカインの発現と役割に関して,筆者らの研究成果も含めてこれまでに報告されている知見をまとめ,加えて,現在まで40種類以上が同定されているケモカイン類のうちで唯一の膜結合型タンパク質であり脳内では神経細胞で構成的に発現しているフラクタルカインに関する筆者らの研究成果を紹介し,脳内ケモカインが担う細胞間情報伝達物質としての役割を考察し,今後の研究を展望する.
  • 高木 博
    2000 年 115 巻 4 号 p. 201-207
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    記憶の素過程であるシナプス可塑性の実験的モデルに海馬で顕著な長期増強現 (long term potentiation, LTP) がある.この長期増強現象には最近の知見から少なくとも3種類の実体の異なるものが存在することが判ってきている.すなわち early phase LTP (E-LTP) (数時間から数日の短期記憶のモデル), late phase LTP (L-LTP) (一生保ちつづける長期記憶のモデル)および anoxic LTP (A-LTP)(虚血性神経細胞死のトリガー) である.中枢神経系に存在するサイトカイン (脳内サイトカイン) は脳血液関門により末梢組織や免疫組織の本来のサイトカインとは独立にその機能を発揮している.近年,脳内サイトカインが3種類の LTP の誘導に関与していることが示唆されている.例えば interleukin 1β(IL-1β) は E-LTP の誘導を阻害し, A-LTP を誘導する.またbrain-derived neurotrophic factor (BDNF) は L-LTP をそれ自身で誘導し,更には虚血により低下した E-LTP の誘導機能を回復する.すなわち,虚血などにより神経細胞がダメージを受けた場合,IL-1βなどのサイトカインの働きにより,神経細胞は積極的に「選択的細胞死」に追いこまれる.これと同時に BDNF などのサイトカインの働きによる L-LTP 誘導により, E-LTP の発現能力に富んだ新規のシナプス形成を積極的に行ない,消失した神経細胞の代償をしているのかもしれない.脳内サイトカインとシナプス可塑性の関係を解明することは単なる3種類の LTP 誘導メカニズムの解明にとどまらず,中枢神経系で観察される様々なシナプス可塑性の生理学的意義の時間・空間的意味付けを明らかにすることが期待される.
  • 堀 哲郎
    2000 年 115 巻 4 号 p. 209-218
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    従来,脳と免疫系は各々それ自体,独立した自律系として捉えられ,別個に研究されてきた.しかし,近年,生体に社会心理的なストレスを与えたり,脳の特定部位を破壊,刺激すると,免疫機能が影響を受けることや,免疫反応の条件付けが可能であることなどから,脳の活動変化が免疫系に影響を及ぼすことが示された.また,感染,炎症に伴い誘起される神経系と内分泌系の反応が免疫系からの情報に依存することも明らかになってきた.そのような知見を背景に,脳と免疫系とはお互いに影響し合うという「脳・免疫系連関」は一つの研究領域として1970年代に確立し,爾来急速に発展し,現在に至っている.この現象が成立する背景には,脳と免疫系が情報伝達物質(サイトカイン,ホルモン,神経・内分泌ペプチド,古典的神経伝達物質)と受容体を共通に持っているという事実がある.脳は,免疫臓器を支配する自律神経系や内分泌系とを操作して免疫系の働きを修飾している.一方,免疫系も上記の情報伝達物質を産生し,体液性および神経性に神経および内分泌系へ信号を送り,多彩な急性期反応を発現させ,それらの反応が逆に免疫系の働きに影響を与えるという複雑な干渉が両者の間に存在する.かくして脳と免疫系とは共同して個体全体として生体防衛に当たることが明白になってきた.本稿では,脳・免疫系連関において主要な働きをする情報伝達物質であるサイトカインの中枢神経作用とそれを媒介する神経伝達物質について,インターロイキン-1の働きを中心に抄述する.
  • 森岡 徳光, 井上 敦子, 仲田 義啓
    2000 年 115 巻 4 号 p. 219-227
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    炎症性サイトカインと定義される物質の一つであるインターロイキンー1(IL-1)βはマクロファージ等から放出され,炎症の惹起,持続に密接に関与していることが知られている.また,これらサイトカインは炎症以外にも様々な生理現象に関与していることが相次いで報告され,これらの作用の多くはサイトカインの単独作用ではなく,他の多くの生理活性物質との相互作用に起因することが見出された.その代表的な例としてIL-1と神経ペプチドの相互作用により引き起こされる現象が挙げられる.これらには,痛覚過敏,神経性血管調節,炎症時における慢性痛,さらに交感神経節における可塑性などに対する作用が報告されている.さらに著者らは一次知覚神経細胞においてIL-1βが神経伝達物質であるサブスタンスP(SP)の遊離を誘発することを見出した.このIL-1βによる作用はIL-1固有の受容体を介するものであり,なおかつシクロオキシゲナーゼの誘導によるプロスタノイド系が関与していた.著者らが見出した一次知覚神経系でのIL-1βとSPとの相互作用が,炎症時における新たな痛覚感受機構の一端を担っている可能性が考えられる.
  • 内田 昌子, 中原 創
    2000 年 115 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    塩酸セチリジンはきわめて強力で選択的なヒスタミンH1受容体拮抗作用を示すと同時に,臨床で得られる血漿中濃度の範囲内で好酸球遊走抑制作用を示すアレルギー疾患治療薬である.本剤は数々の臨床薬理試験においてヒスタミン誘発膨疹の形成を速効的かつ強力に抑制し,その効果は24時間持続した.また,脳への移行性は低く,眠気の少ないH1受容体拮抗薬であることが明らかにされた.臨床的にはヒスタミンによる諸症状の軽減が速効的で,本邦ではアレルギー性鼻炎,蕁麻疹,湿疹・皮膚炎,痒疹ならびに皮膚掻痒症への効能効果を有している.アレルギー性鼻炎では,花粉飛散室を利用した臨床薬理試験において,症状改善効果と継続希望率が高いことが報告されている.国内の慢性蕁麻疹を対象としたセチリジンの開発試験においても背景因子が他剤無効の症例で約54%程度の有効性が認められる事など強力なH1受容体拮抗作用を裏付ける成績は数多い.一方,好酸球遊走抑制作用を有する利点として,一般的にH1受容体拮抗薬では効果が弱いとされている通年性アレルギー性鼻炎の鼻閉症状に対しても,セチリジンの4週間連用によりエバスチンに比し高い効果が認められた.セチリジンの好酸球遊走抑制作用については数多くの報告があるものの,その遊走抑制機序については未だに不明の部分が多い.セチリジンは臨床薬理的にアレルゲン処置部位への好酸球遊走を抑制したが,その他のH1受容体拮抗薬には同様の作用が認められなかったため,この作用はH1受容体拮抗作用では説明が難しい.セチリジンの好酸球遊走抑制機序とその臨床効果への反映については,今後より詳細な検討が求められる.
  • 加藤 正夫, 速水 康紀
    2000 年 115 巻 4 号 p. 237-243
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    血中での持続性が長く,高いフィブリン親和性を有する改変型t-PAであるパミテプラーゼを創製・開発し,「急性心筋梗塞における冠動脈血栓溶解」を適応とする血栓溶解薬として上市するに至った.パミテプラーゼ創製に当たってはまず,t-PAをコードしている遺伝子に種々の改変を加え,動物細胞に発現させて精製タンパクを得た.そして,比活性,フィブリン親和性,血中持続性を指標にスクリーニングを実施し,Kringle-1ドメインに相当する92番目から173番目のアミノ酸を欠失させ,さらに275番目のアルギニンをグルタミン酸に変換したt-PA改変体パミテプラーゼ(YM866)を選択した.パミテプラーゼは天然型t-PAと同等の比活性(650,000IU/mg)とフィブリン親和性を示し,フィブリン依存性は天然型t-PAを上回る.また,血中持続性は天然型t-PAより数倍延長している.各種動物血栓症モデルで本剤の薬理効果を検討したところ,ボーラス静脈内投与で十分な血栓溶解効果を示すことが確認された.次いで,急性心筋梗塞患者を対象とした臨床試験へ進み,冠動脈内血栓の溶解に対しボーラス静脈内投与で点滴投与の天然型t-PAと同等以上の効果が得られることが確認された.また,出血性副作用の出現も天然型t-PAと同程度であった.今後は本剤のようなボーラス投与可能な血栓溶解薬が急性心筋梗塞患者のより速やかな治療開始に役立つものと期待したい.
  • 水柿 道直
    2000 年 115 巻 4 号 p. 244-250
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジン(PG),トロンボキサン(TX),ロイコトリエン(LT)などのエイコサノイドは,アラキドン酸やエイコサペンタエン酸などを前駆物質として産生される一連の化合物である.エイコサノイドは,強力かつ多様な生理活性を示すとともに生体内の病的変化と密接に関係している.したがって,これらの化合物の定量的解析は疾患の発症,進行および治療効果の判定などに応用しうる.しかし,エイコサノイドは産生量がごく微量であること,活性体の生体内半減期が短く活性体自体を測定するのは困難であること,構造類似体が多数存在することなどから,定量的解析には感度の他に高度な化合物選択性および高いS/Nで目的物を検出することが要求される.このような観点から,エイコサノイドの定量的解析にはガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC MS)が有用な手段の一つとされている.我々もGC MSを用いて数多くのエイコサノイドの定量法を開発し,強力な血小板凝集能を示すTXA2と抗血小板凝集能を示すプロスタサイクリン(PGI2)の産生比と病態との関連性などを検討し,その臨床応用を行ってきた.しかしながら,GC/MSは,感度および化合物選択性に優れる反面,試料の煩雑な前処理が必要であるという点に問題を残す.これに対し,液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC MS)は,煩雑な前処理を必要としないため生体試料中の微量成分を簡便に測定することが可能である.先に我々は,液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS-MS)によるLTE4の定量法を確立したが,ここでは,最新の知見としてTXA2の尿中安定代謝体11-dehydro TXB2の測定法について記述する.
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