中枢神経系における傷害,虚血に際して,免疫細胞であるミクログリアやグリア細胞が活性化され,サイトカインを分泌して侵入物の撲滅と組織修復を図る.この免疫細胞が,プリン受容体のイオンチャネル型P
2XおよびGタンパク共役型P
2Yを発現し,傷害された細胞から放出されるATPに応答して,その機能を変化させることが明らかとなって来た.単離培養されたラット網膜ミクログリアでは,非刺激下で,Gタンパク共役型P
2U(P2Y
2,P2Y
4)とイオンチャネル型P2
2Z(P2X
7)が同等に発現しているのに対して,LPS刺激下では,P
2Z優位となり,そのCa
2+応答が増大する.一方,虚血(低酸素1%濃度)下で活性化されたミクログリアはP
2UとP
2Zの両受容体の感受性が共に高く,また,P
2Uの応答が優位である.この低酸素濃度下では代謝型P
2Uの活性化を介してミクログリアの増殖が誘導され,P
2Uによる細胞内Ca
2+動態と容量性流入がこの増殖機構に関与していると考えられる.さらに,LPS刺激と低酸素の両活性化においてTNF-αとIL-1βの分泌が見られ,その分泌がP
2ZのアゴニストBzATPにより亢進し,アンタゴニストoATPにより抑制されることから,P
2Z(P2X
7)受容体がサイトカイン分泌機構に関与していると考えられる.P
2Z(P2X
7)はまた同時に増殖を阻止し,アポトーシスを誘導する.このP
2Z(P2X
7)受容体は,マクロファージ,単球,線維芽細胞のいずれにもあり,サイトカインのみならずプラスミノゲンの分泌にも関与する.TNF-αの転写,遊離にはMAPキナーゼのp44/42およびp38が関与することが示唆されており,P
2Z(P2X
7)の活性化はCa
2+依存性に,NFAT,NF-κをも活性化させて,増殖のシグナル経路を阻止し,アポトーシス誘導経路とp44/42とp38を介する分泌経路を駆動する可能性がある.
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