日本薬理学雑誌
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88 巻, 4 号
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  • 坂本 浩二, 大塚 邦子, 笠原 多嘉子, 阿部 浩一郎
    1986 年 88 巻 4 号 p. 255-262
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    CCl4肝障害の作用機序,形態学的変化及び生化学的変化に関する報告は多いが,血液凝固線溶能に関するものは少ない,今回,我々はCCl4の血液凝固線溶能に及ぼす影響について検索した.SD系,雄性ラットにCCl4 0.5,1.0,2.0,3.0ml/kgを単回経口投与した.投与24時間後に血液凝固能ではTEG,HPT,TT,PRCT,PT,PTT,フィプリノーゲン,凝固XIII因子,ATIII,線溶能ではPLG,α2PI,肝障害の指標としてGOT,GPT,他にHt,L/B比,血漿総蛋白量を測定した.その結果,血液凝固線溶能は,CCl4投与量の増加に従い漸次,用量依存的に低下した.CCl4 0.5ml/kgではGOT,GPTは高値を示すにもかかわらず,血液凝固線溶能はすべてには著しい変化はみられなかった.CCl4 1.Oml/kgではすべてにわたり,著明な活性の低下を認めた.また,GOT及びGPTはCCl4投与量が1.0ml/kg以上では逸脱が限界に達するのに対し,CCl4投与量とHPT,PTT,PT,凝固XIII因子,PLGの障害比との間には片対数グラフ上で直線関係が成立した.また,CCl4の高投与量でも全身の出血症状及びTEGでの著明な線溶亢進はみられなかった.以上よりCCl4投与による血液凝固障害モデルはCCl4 1.0ml/kg単回経口投与が適していると思われる.
  • (6)-Shogaolのアラキドン酸代謝に対する作用
    末川 守, 湯浅 和典, 磯野 正直, 曽根 秀子, 池谷 幸信, 榊原 巖, 油田 正樹, 細谷 英吉
    1986 年 88 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    生のショウガには含まれず,乾燥したショウガに多く含まれる(6)-shogaolはcarrageeninで誘発した足浮腫およびアラキドン酸(AA)で誘発した血小板凝集に対して抑制作用を示した.またADPで誘発した血小板凝集を指標にして行なった,ラット動脈壁からのprostaglandin I2(PGI2)の遊離に対しても(6)-shogaolは抑制作用を示した.(6)-shogaolが示したこれらの効果は,(6)-shogaolはアラキドン酸代謝のシクロオキシゲナーゼ活性に対し影響を及ぼしている可能性を示唆している.そこで,ウサギ血小板およびラットの動脈を用いて,両組織におけるシクロオキシゲナーゼ活性への(6)-shogaolの影響を調べた.(6)-shogaolは両組織のシクロオキシゲナーゼ活性に対し,濃度依存的に抑制作用を示した.さらにRBL-1 cellを用い5-リポキシゲナーゼ活性への影響を調べたところ,(6)-shogaolは5-リポキシゲナーゼ活性に対しても抑制作用を示した.したがって,(6)-shogaolが示したcarrageenin誘発足浮腫,AA誘発血小板凝集および動脈壁からのPGI2遊離に対する抑制作用はアラキドン酸代謝のシクロオキシゲナーゼ活性に対する(6)-shogaolの抑制作用が大きく関与しているものと思われた.さらに,5-リポキシゲナーゼ活性への結果から,(6)-shogaolはアレルギー性の疾患にも効果をおよぼす可能性が示唆された.
  • 山崎 信彦, 門間 芳夫
    1986 年 88 巻 4 号 p. 271-277
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    本実験はラットでの腎β1-,β2-受容体と尿量および尿中ナトリウム(Na)排泄との関係について調べる目的で施行された.β-antagonist(以下の薬物の受容体選択性をカッコ内に記す)としてatenolol(β1),butoxamine(β2)およびpropranolol(β1,β2)を使用し,β-agonistとしてisoproterenol(β1,β2),salbutamol(β2)を使用した.atenolol(β1),butoxamine(β2),propranolol(β1,β2)は尿量と尿中Na排泄量の増加を示し,isoproterenol(β1,β2),salbutamol(β2)は尿量と尿中Na排泄量の減少を示した.尿量と尿中Na排泄の増加(減少)率を比較した場合,atenolol(β1)では尿中Na排泄量よりも尿量の増加がより顕著に認められ,salbutamol(β2)では尿量よりも尿中Na排泄量の減少が顕著に認められた.β-agonistとβ-antagonistの併用実験では,β-antagonistによる尿量と尿中Na排泄量の増加効果はβ-agonistによって有意に抑制され,特にisoproterenol(β1,β2)とβ-antagonistとの併用では尿中Na排泄量に比べ尿量の抑制がより強く認められ,また,salbutamol(β2)とβ-antagonistとの併用では尿量に比べ尿中Na排泄量の抑制がより強く認められた.以上の結果から,ラットの腎臓においては,β1-およびβ2-受容体について,β1-受容体は水の再吸収に関係し,β2-受容体はNaの再吸収に関係しているのではないかということが間接的に示唆された.
  • 雨宮 功治, 鈴木 潤, 木村 正康
    1986 年 88 巻 4 号 p. 279-288
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    正常およびアロキサン糖尿病マウスのアジュバント空気嚢肉芽形成に及ぼすpronase(Pro)の抗炎症作用機序について,肉芽新生血管構築を中心に検討した.方法は,マウス背部皮下の空気嚢中に0.1%クロトン油含有アジュバント(FCA)を投与して肉芽腫嚢を作製した.測定は肉芽腫嚢の湿重量,コラーゲン量,カルミン色素法による新生血管量および光顕的組織像を指標として,経時的且つ定量的に観察した.その際,hydrocortisone(HC)およびindomethacin(IM)を比較対照薬として,各被検薬物を嚢内に1日1回,3,5および7日間直接連続投与した.その結果,正常マウスにおいては,Pro(2mg/kg/day),Hc(1mg/kg/day)およびIM(2mg/kg/day)の各々毒性を発現しない最大有効量では,経時的に増大する肉芽重量がいずれも有意に抑制された.肉芽組織中のコラーゲン量は,HCで実験期間中持続的に減少し,IMでも炎症初期に有意に減少したが,Proでは明らかな作用が認められなかった.新生血管量については,両対照薬とも持続的な抑制作用を示し,Proの効果は明らかではなかった.組織学的にみると両対照薬投与群の肉芽血管の増生は減少しており,Pro投与群では,肉芽新生血管の増生促進と引き続き起こる成熟結合織構築による修復増強効果が見られた.一方,アロキサン糖尿病マウスの肉芽形成は,正常マウスに比べて減少しており,HCはさらにその抑制作用を増強する傾向が現われるのに対し,Proではその効果が,正常マウスで観察されるほど顕著ではなかった.また,肉芽新生血管増生の指標として用いたカルミン色素量の肉芽重量に対するratioを比較すると,Pro投与群は対照群よりも肉芽単位重量当りの新生血管量を増大させることが明らかとなった.
  • 宇佐 輝人, 森本 保人, 福田 武美, 阿南 惟毅, 瀬戸口 通英, 丸山 裕
    1986 年 88 巻 4 号 p. 289-297
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    不動化ラットを用い,内包を熱破壊後生じる大脳皮質異常脳波に対するY-8894の作用を定量的脳波解析法を用いて検討し,imipramine,amantadineおよびcalcium hopantenate(Ca-hopantenate)と比較した.内包の破壊により,破壊条件の強さに依存して皮質脳波はdelta(δ)波およびtheta(θ)波のパワーが増加し,60°C,3分の破壊条件では一定した持続性の異常脳波が誘発された.Y-8894(0.1~1mg/kg,i.v.)は,熱破壊によるδおよびθ波のパワーの増加を用量に依存して減少させた.amantadine(10mg/kg,i.v.)はY-8894に比べ弱いが類似の作用を示した.imipramine(1mg/kg,i.v.)およびCa-hopantenate(30mg/kg,i.v.)はδおよびθ波に何ら影響を及ぼさなかった.一方,Y-8894はalpha(α)波およびbeta(β)波のパワーも減少させた.本作用はimipramineおよびamantadineにも認められたが,Ca-hopantenateはβ波のパワーの減少傾向を示したのみであった.以上の成績から,Y-8894は実験的脳障害による異常脳波に対して改善作用を有することが明らかにされた.
  • 栗原 久
    1986 年 88 巻 4 号 p. 299-307
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    amiridin,[9-amino-2,3,5,6,7,8-hexahydro-1H-cyclopenta(b)-quinoline monohydrate hydrochloride]の行動薬理作用を,マウスの移所運動活性およびシャトル型非連続回避反応を指標にして検討した.さらに,amiridinの化学構造の原型である4-aminopyridine,およびamiridinと同様コリンエステラーゼ阻害効果を持つphysostigmineの効果とも比較した,amiridin(0.3,1,3および10mg/kg,s.c.)および4-aminopyridine(0.3,1および3mg/kg,s.c.)は,単独投与で移所運動活性に著変を起こさず,またscopolamine(0.5mg/kg,s.c.)の移所運動活性促進効果にも著変を引き起こさなかった.一方,physostiigmine(0.03および0.1mg/kg,s.c.)は単独投与で移所運動活性を抑制するとともに,scopolamineの効果を減弱した.amiridin(1および3mg/kg,s.c.,および0.3および1mg/kg,p.o.)および4-aminopyridine(1および3mg/kg,s.c.)をシャトル型非連続回避反応の訓練直前に投与すると,回避反応学習が促進された.とくに,amiridinを投与されたマウスは24時間後においても,良好な回避反応成績を保持していた.しかしamiridin(0.3,1,3および10mg/kg,s.c.)および4-aminopyridine(0.3,1および3mg/kg,s.c.)は訓練後確立された回避反応に著変を引き起こさなかった.一方,physostigmine(0.1mg/kg,s.c.)は一般活動性を抑制して回避反応学習を遅延し,また確立した回避反応も抑制した.これらの結果は,amiridinが一般活動性にほとんど影響することなく,マウスのシャトル型非連続回避反応の学習・記憶を促進する可能性を示唆している.
  • 仁保 健, 伊藤 千尋, 渋谷 靖義, 橋詰 博幸, 山口 和夫
    1986 年 88 巻 4 号 p. 309-320
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    MO-8282(1,2,3,4-tetrahydro-2-methyl-9H-dibenzo[3,4:6,7]cyclohepta[1,2-c]pyridine maleate)の抗うつ薬としての薬理学的性質を行動薬理学および神経生化学的に検討した.MO-8282は,amitriptylineの1/10以下の少用量で強制水泳ラットの不動時間を短縮し,L-DOPA誘発常同行動を増強した.また,MO-8282の中等用量は,強制水泳マウスの無動時間を短縮し,嗅球摘出ラットのmuricideを抑制し,clonidine誘発行動抑制に拮抗した.さらに,MO-8282は軽度ながら,reserpine誘発眼瞼下垂を抑制したが,reserpine誘発低体温に影響しなかった.一方,MO-8282のtremorine誘発振戦,流涙,下痢に対する抑制作用は軽度であり,amitriptylineより弱かった.MO-8282は,ラット視床下部シナプトゾームへのnoradrenalineの取り込みをamitriptylineの1/20程度の効力で抑制したが,mianserinと同様にserotoninおよびdopamineの取り込みには,ほとんど影響しなかった.また,MO-8282の30mg/kg 1回投与により,noradrenaline代謝回転の亢進がみられたが,dopamineおよびserotoninの代謝回転は不変であった,一方,MO-8282は,noradrenaline,histamineおよびadenosine感受性adenylate cyclase活性を強力に抑制したが,その作用態度はimipramineと異なり,mianserinにむしろ類似していた.MO-8282はラット肝monoamine oxidase活性にほとんど作用しなかった.以上の結果から,MO-8282の薬理学的特性は,三環系抗うつ薬とは異なり,むしろmianserinに類似し,その作用がmianserinよりも強力な抗うつ薬としての可能性が示唆された.
  • 竹田 茂文, 加瀬 義夫, 新井 一郎, 長谷川 雅之, 関口 裕子, 布野 秀二, 油田 正樹, 細谷 英吉, 溝口 靖紘, 森沢 成司
    1986 年 88 巻 4 号 p. 321-330
    発行日: 1986年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    正常ラットにおける肝部分切除による再生肝,肝組織血流量ならびに肝微細構造におよぼすTJN-101((+)-(6s,7s,R-biar)-5,6,7,8-tetrahydro-1,2,3,12-tetramethoxy-6,7-dimethyl-10,11-methylene-dioxy-6-dibenzo[a,c]cyclooctenol)の作用について検討した.1)TJN-101は肝部分切除後4日間の経口投与(10,30および100mg/kg/day)により肝再生率を上昇させるとともに,低下したBSP排泄能を改善した.これらの変化は用量依存的であり,100mg/kg/day投与群では擬手術群のレベルにまで回復していた.この際,TJN-101投与による血中生化学的指標の著明な変化として,肝切除により低下する総蛋白量の改善,LCAT活性の上昇,インスリンレベルの低下およびグルカゴンレベルの増加などが用量に依存して認められた.一方,肝細胞核分裂に対する変化は術後5日目ではほとんど認められなかった.2)TJN-101は30および100mg/kgの十二指腸内投与により肝組織血流量を増加させた.3)TJN-101(30,100および300mg/kg/day)4日間経口投与後の肝微細構造を電子顕微鏡にて検討したところ,特徴的な変化として100および300mg/kg/day投与群で粗面小胞体ならびに滑面小胞体の増加が認められた.以上の結果から,TJN-101は再生肝の肝細胞増殖ならびに肝機能の回復を促進させるとともに,肝内血流循環動態を亢進させる作用を有するものと推測された.また,TJN-101を反復投与した際にみられる肝重量増加は微細構造的には小胞体の発達を伴うものと考えられた.
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