日本薬理学雑誌
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79 巻, 4 号
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  • 篠崎 温彦
    1982 年 79 巻 4 号 p. 237-249
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    The actions of kainic acid, quisqualic acid, and ibotenic acid on the crayfish neuromuscular junction were described, and it was particularly interesting that the discrepancy between glutamate responses and EJPs was revealed by the use of kainic acid. On the other hand, there is increasing evidence showing that glutamate is an excitatory transmitter at the crayfish neuromuscular junction. At this stage, we are unable as yet to definitively support or reject glutamate's candidacy as the excitatory transmitter at the crayfish neuromuscular junction. The discrepancy revealed by the use of kainic acid may bring up some questions. Certainly, the differential action of kainic acid on the glutamate current and the excitatory synaptic current opens to doubt the transmitter role of glutamate. In the case of the study on a transmitter role for a substance of doubt status, the value of pharmacological studies seems to be greater in disproving than in asserting such the role. However, we have to consider the matter of the extra-junctional receptor postulated on the crayfish postsynaptic membrane as one of the major problems for pharmacological identification.
  • 前川 寛
    1982 年 79 巻 4 号 p. 251-261
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    Wistar系ラットにβ遮断薬を静注した場合,持続的な血圧上昇作用が起る現象について多くの研究者が確認したが,その原因については充分解明されたとはいいがたい.そこで著者は,この機序をさらに明らかにするためにpindolol,carteolol,propranolol,alprenolol,practolol,acebutololについて,次の実験を試みた.1)麻酔ラットに各種β遮断薬(0.015~0.3μmole/kg)を静注し,その昇圧作用を比較した.2)麻酔ラットのisoprenaline(0.1μg/kg)による降圧,およびpositive chronotropic actionに対する各種β遮断薬(0.003~30.0μmole/kg)の抑制作用を比較した.3)モルモット摘出気管におけるisoprenaline(10-9~10-5M)の弛緩作用の抑制を,各種β遮断薬(3×10-7M)について比較した.4)モルモットおよびラットの摘出心房におけるisoprenaline(10-11~10-5M)のpositive inotropicおよびchronotropic actionの抑制を,各種β遮断薬(3×10-7M)について比較した.以上の実験の結果,麻酔ラットにおけるβ遮断薬の昇圧作用は,心臓に対する遮断作用よりも,モルモット摘出気管におけるisoprenalineの弛緩遮断や,ラットにおけるisoprenalineの降圧遮断に,より強い相関をしめした.このことから,β遮断薬によるラットの血圧上昇作用は,β2-receptor遮断に強い関連性があるものと考えられる.
  • 大久保 和弘, 鈴木 健一, 小熊 正樹, 大鳥 居健
    1982 年 79 巻 4 号 p. 263-274
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    ウサギ側脳室内投与によるguanfacine(BS-100-141,N-amidino-2-(2,6-dichlorophenyl)acetamide)の血圧および心拍数に対する中枢作用を,clonidineのそれと比較検討した.guanfacineおよびclonidineの脳室内投与により血圧下降と心拍数減少がそれぞれの場合に認められた.guanfacineのこれら作用はともにclonidineより弱かったが,同等の降圧効果を示す用量において,guanfacineの徐脈効果はclonidineよりさらに弱かった.また前者の降圧作用の発現は後者に比べて遅く,作用の持続は長かった.両薬物の脳室内投与による降圧および徐脈効果は,phentolamineまたは6-hydroxydopamine(以下6-OHDAとする)の脳室内前処置によって抑制され,またdesmethyl-imipramine(以下desipramineとする)の脳室内前処置によっても抑制された.以上の結果から,guanfacineはclonidineと同様に,中枢のα-adrenoceptorに作用し,さらにpresynaptic noradrenergic neuronにおけるuptake機構に影響を与えて,末梢交感神経の緊張を減弱させ,あるいは迷走神経活性の増強を導いて,血圧下降や心拍数減少を起すと考えられる.
  • 安藤 隆一郎, 桜田 忍, 木皿 憲佐, 高橋 三雄, 大沢 啓助
    1982 年 79 巻 4 号 p. 275-283
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    モルモットの啼声反応およびネコの視床内側核侵害受容ニューロン活動を指標として,8種類のcapsaicinoidsの発痛作用について検討したところ次の結果が得られた.1)投与量を1μg/animalに統一し,動脈内投与したときの啼声反応を比較するとcapsaicinおよびdihydrocapsaicinがほぼ同程度で最も強い啼声反応を誘発したが,N-(4-hydroxy-3-methoxy-benzyl)-6-methylhept-trans-4-enamide(6ME)を除く5種類のcapsaicinoidsはこれらより弱く,6MEは10μg/animalの用量でもまったく啼声反応を示さなかった.またネコにおいてはcapsaicinoidsおのおののニューロン発火数の増加率について比較するとcapsaicinが最も高く,dihydrocapsaicinとN-(4-hydroxy-3-methoxybenzyl)-6-methylheptamideが次に高く,他はこれらより低かった.6MEはネコにおいても反応を示さなかった.2)morphine(10mg/kg s.c.)はcapsaicinおよびbradykininによる啼声反応を抑制したが,aspirin(100mg/kg i.P.)はbradykinin誘発の反応のみ抑制した.capsi-amideはモルモットおよびネコの両検体においてcapsaicin,bradykinin両発痛物質による反応を抑制しなかった.3)bradykinin-capsaicin,bradykinin-acetylcholine,capsaicin-acetylcholineおよびcapsaicin-dihydrocapsaicinのいずれのpair投与群でも啼声反応におけるcross-tachyphylaxisは認められなかった.
  • 今泉 洋子, 加藤 稔, 杉本 達芳
    1982 年 79 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    malotilateをラットに投与して肝RNA合成およびその核から上清への移行に及ぼす影響を検討し,興味ある知見を得た.1.3H-cytidineの肝総RNAへの取り込み量はmalotilateによって増加し,経口投与3時間後に最高となり,15時間後でもなお高い値を示した.投与3時間後の肝総RNAおよびヌクレオタイドプールへの3H-cytidineの取り込み量はmalotilateの投与量に依存して増加した.2.malotilate(250mg/kg)投与3時間後,3H-cytidineの核RNAへの取り込み量は対照群に比し約1.8倍であり,核漿および核小体RNAにおいてはそれぞれ1.8および2.0倍に増加していた.ポリリボソームRNAおよびt-RNAへの取り込み量も増加していた.3.malotilateはRNAの核から上清への移行に対し影響しなかった.4.malotilateあるいはその代謝物のクロマチンに存在する比率は低かった.以上の結果からmalotilateはまず核において転写以後の過程に作用して,DNA合成に影響することなく核におけるRNA合成を促進すると思われる.その結果としてポリリボソームRNAあるいはt-RNA合成が促進され,そして蛋白質合成が促進されるのであろう.
  • 加藤 仁
    1982 年 79 巻 4 号 p. 293-305
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    thiamine deficient diet(TDD),および,oxythiamine(OT)投与が,ラット坐骨神経(sciatic nerve:SN),足底神経(plantar nerve:PN)に及ぼす影響を,主に微細構造の面から検索し,同時にthiamine(T)含量を生物学的に定量した.1)一般症状では,TDD飼育時OT投与群(OTD群)での体重増加率の減少が著しく,食欲不振,運動失調を来たし,一部死に至った.OTD群の体重に合わせて,regular dietで飼育したequal weight control群(EWC群)では,飢餓状態を示し,実験後期で急速に食欲不振,運動失調を来たし,一部死に至った.他の実験群においては,目立った神経症状は認められなかった.2)SNおよびPNのT含量は,OT群,OTD群,TDD飼育群(TDD群)において低下を示し,EWC群は,C群と同様な値を示した.3)光顕的観察では,TDD群では明らかな変化を認めず,EWC群でmyelin foldを認め,OTD群ではaxon shrinkage,myelin foldが著明であり,OT群では,これらの傾向が軽度であった.また,それらの変化はSNよりPNで著明に観察された。4)電顕的観察では,TDD群にmyelinated axon(MAx)のmitochondria(Mit)増加を認め,EWC群では,axonの変化に先行して,myelinのfold,oboid,Schwann cell(Sc)の変化が認められた.OT群,OTD群では,程度の差はあったが,axonの変性,すなわち,MAxのMit増加,およびその変牲,vacuole増加,axon shrinkage,neurofirament,neurotubleの崩解,消失が認められた.特に障害の著明なOTD群のMAxには,Mit,vacuole,dense bodyの集積が認められるものもあり,さらに,myelinの解離,myelin foldとoboid形成,Scのrough-surfaced endoplasmic reticulum(rER)の拡大,顆粒増加も著明に認められた.以上の観察から,OTとTDDによる末梢神経障害は,飢餓によるものとは異なり,axonの退行変性が先行し,かつ,その程度がSNよりPNで著明なことから,形態変化が,末梢より求心性に進行する,いわゆるdying-back polyneuropathyであると思われる.
  • 佐藤 正巳, 喜多川 久人, 藤原 元始
    1982 年 79 巻 4 号 p. 307-315
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    urethane麻酔下ラットおよび水浸拘束ストレス負荷ラットにおいて胃酸分泌と胃粘膜血流を指標として,自律神経反応に及ぼすtofisopamの影響について検討した.urethane麻酔下ラットの基礎胃酸分泌に対し,tofisopam静注は影響を与えなかったが,側脳室内投与では基礎胃酸分泌および胃粘膜血流を増加した.diazepamも側脳室内投与により,基礎胃酸分泌を増加したが,chlorpromazineはこれを抑制した.noradrenaline側脳室内投与による基礎胃酸分泌減少作用に対し,tofisopamは基礎胃酸分泌に影響を与えない用量で抑制した.外側視床下野電気刺激時の胃酸分泌増加反応に対し,tofisopamの静注および側脳室内投与は影響を与えなかった.一方,水浸拘束ストレス負荷実験では,水浸拘束ストレスにより胃酸分泌が亢進するが,胃粘膜血流は増大せず,両者間の分離が見られる.tofisopamは,胃粘膜血流を増加し,潰瘍発生を抑制した.これらの成績から,tofisopamの側脳室内投与は,noradrenalineの胃酸分泌抑制部位である延髄背側核,あるいはさらに高位中枢である外側視床下野に作用を有するものと考えられた.さらにストレス負荷時には,少なくとも胃機能において交感および副交感神経間の緊張状態分離が見られるのに対し,tofisopamはこれを改善するものと思われる.
  • 鈴木 良雄, 伊藤 幹雄, 高村 俊史
    1982 年 79 巻 4 号 p. 317-325
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    azosemideの正常ラットにおける利尿作用,血漿renin活性(PRA)および尿中へのprostaglandin(PG)E排泄に対する作用およびindomethacinを前処置した時のこれらに対する効果をfurosemideの場合と比較検討した.azosemideは経口投与において10から40mg/kgまでの間で尿量および尿中へのNa+,K+,Cl-排泄を用量依存的に増加させた.この場合40mg/kgにより尿量,尿中Na+,K+,Cl-排泄は対照に比しそれぞれ3.4,4.1,2.9および5.8倍増加した.azosemide 30mg/kg p.o.はPRAおよび尿中へのPGE排泄に対してそれぞれ3.8および2.9倍の増加作用を示した.PG合成阻害剤indomethacin前処置によりazosemide(30mg/kg p.o.)の尿量,尿中へのNa+およびCl-排泄の増加作用は80~90%抑制され,またPRAおよび尿中へのPGE排泄の増加作用も利尿活性と同程度に強力に抑制された.azosemideの以上の効果はfurosemideとほぼ同等であったが,小用量でfurosemideよりやや強力な利尿作用を示した.azosemideの利尿作用の一部はfurosemideと同様,腎内PG系の活性化を介して惹起されるものと思われる.
  • 伊藤 幹雄, 横地 英治, 小林 史子, 鈴木 良雄
    1982 年 79 巻 4 号 p. 327-334
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    ラット胃体部漿膜下の2ケ所に20%酢酸をおのおの0.05mlずつ注入することにより,重症の潰瘍を惹起させ,潰瘍領域のmucosaおよびstroma中のhexosamine,sialic acid,uronic acidおよびhydroxyproline含量に対するaceglutamide aluminumの効果をL-glutamineの効果と比較検討した.aceglutamide aluminum(1000mg/kg×2/day)を手術の日から4日目までp.o.投与し5日目に薬効を評価した時,この薬物は潰瘍指数を18%,潰瘍部穿孔を66%抑制した.また潰瘍領域のmucosa中のhexosamine,sialic acidおよびuronic acidの総含量(μg/潰瘍領域/ラット)を著明に増加させ,特にsialic acidにおいてはその濃度(μg/100mg乾燥組織)も有意に増加させた.一方stromaではhydroxyprolineを含めてこれら組織構成成分含量はこの薬物によってほとんど影響を受けなかった.aceglutamidealuminum(1000mg/kg×2/day)を手術の日から14日目までp.o.投与し15日目に評価した場合,4日間投与の場合に比べてより著明な効果を示し,潰瘍指数を37%,そして潰瘍部穿孔を完全に抑制した.またmucosa中のhexosamine,sialic acidおよびuronic acid濃度および総含量を著明に増加させ,特にsialic acid含量を最も強く増加させた.さらにこの薬物はmucosaの場合よりは軽度であるが,stromaにおいてhexosamine,sialic acidおよびuronic acidの濃度および総含量,hydroxyprolineの総含量を有意に増加させた.aceglutamide aluminumの以上の効果はL-glutamineよりもはるかに強力であった.以上の結果から,この薬物は潰瘍領域において粘液および肉芽組織構成成分を増加させ,防御因子を増強することにより潰瘍治癒を促進するものと思われる.
  • 秦 多恵子, 喜多 富太郎, 浪松 昭夫, 伊藤 栄次, 小田 泰雄
    1982 年 79 巻 4 号 p. 335-342
    発行日: 1982年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    SART stressラット胃体部漿膜下の2ケ所に20%酢酸をおのおの0.05mlずつ注入することにより,重症の潰瘍を惹起させ,潰瘍領域のmucosaおよびstroma中のhexosamine,sialic acid,uronic acidおよびhydroxyproline含量に対するaceglutamide aluminumの効果をL-glutamineの効果と比較検討した.aceglutamide aluminum(1000mg/kg×2/day)を手術の日から4日目までp.o.投与し5日目に薬効を評価した時,この薬物は潰瘍指数を18%,潰瘍部穿孔を66%抑制した.また潰瘍領域のmucosa中のhexosamine,sialic acidおよびuronic acidの総含量(μg/潰瘍領域/ラット)を著明に増加させ,特にsialic acidにおいてはその濃度(μg/100mg乾燥組織)も有意に増加させた.一方stromaではhydroxyprolineを含めてこれら組織構成成分含量はこの薬物によってほとんど影響を受けなかった.aceglutamidealuminum(1000mg/kg×2/day)を手術の日から14日目までp.o.投与し15日目に評価した場合,4日間投与の場合に比べてより著明な効果を示し,潰瘍指数を37%,そして潰瘍部穿孔を完全に抑制した.またmucosa中のhexosamine,sialic acidおよびuronic acid濃度および総含量を著明に増加させ,特にsialic acid含量を最も強く増加させた.さらにこの薬物はmucosaの場合よりは軽度であるが,stromaにおいてhexosamine,sialic acidおよびuronic acidの濃度および総含量,hydroxyprolineの総含量を有意に増加させた.aceglutamide aluminumの以上の効果はL-glutamineよりもはるかに強力であった.以上の結果から,この薬物は潰瘍領域において粘液および肉芽組織構成成分を増加させ,防御因子を増強することにより潰瘍治癒を促進するものと思われる.SART stressラットの循環系における機能状態を調べる目的で,循環系の生理的指標である血圧と局所動脈の血流量を調べた.またこれらの変化に及ぼす神経鎮静薬neurotropin(以下NSP)および降圧剤等の効果を調べた.SART stressラットの収縮期血圧(以下血圧)を経日的に測定すると,stress負荷開始当日では一過性の血圧上昇が認められた.その後4日目より有意な血圧下降が観察され,6日目以降はnon-stress群に比べ約10mmHg低い値となり,この血圧下降は数日間持続した.次いでSART stressを5日間負荷したラットの血流量を測定すると,総頸動脈における平均血流量の減少,上腸間膜動脈における平均および瞬時の最大血流量の増加および腹大動脈における瞬時最大血流量の増加傾向が認められた.腎動脈および大腿動脈の血流量にはnon-stress群との間に有意差は見られなかった.またこの時の血流波形から,総頸動脈や腹大動脈では血管壁の硬化が,上腸間膜動脈では血管拡張および血管壁の軟化が示唆された.次にSART stress動物の低血圧に対する薬物の効果を調べたところ,1回投与による急性効果ではNSPは無影響で,降圧剤であるguanethidine,clonidineおよびhydralazineではいずれもSART stressで低下した血圧をさらに下降させた.次にこれらの薬物をSART stress負荷開始当日より連日投与しておくと,NSP投与群では血圧低下度が対照群に比べて小となり血圧下降阻止効果が認められた.またNSPの連日投与により総頸動脈ならびに上腸間膜動脈における血流量の変化は阻止されいずれも正常値に近い値となった.
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