日本薬理学雑誌
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91 巻, 2 号
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  • 山口 優, 二川 良子, 国友 勝, 阪東 芳雄
    1988 年 91 巻 2 号 p. 61-69
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    5%cholesterol飼料を14週間負荷したマウスの血清脂質,過酸化脂質および大動脈cholesterol値に及ぼす食餌性油脂,特にリノール酸の影響を検討した.飼料にはリノール酸含量の異なるヤシ油(I群),ラード(II群),トウモロコシ油(III群)またはリノール酸(IV群)を各々10%添加した.4週目から12週目までの血清総cholesterol値はIV>III>II>I群の順で増加し,飼料中のリノール酸含量と同じ順位を示した.14週目における血清遊離型cholesterol,エステル型cholesterol,HDL-cholesterol,triglycerideおよびリン脂質値はIV群が最高値を示し,I群が最低値を示した.血清過酸化脂質値はIV>III>II>I群の順で高値を示した.血清cholesterolのエステル比,atherogenic indexおよびLCAT活性については4群間で有意な差はなかった.胆石形成はリノール酸の摂取量が多い群ほど明らかに認められた.大動脈cholesterol値はIV>III>II>I群の順で高値を示し,食餌中のリノール酸含量と同じ順位であった.大動脈cholesterol値と全ての血清脂質および過酸化脂質値との間に有意な正の相関性が認められた.以上の結果は,高脂血症マウスにおいて,過剰なリノール酸の摂取は血清脂質および過酸化脂質を増加させ,それによって大動脈への脂質蓄積を生じさせることを示している,このような代謝変化は動脈硬化形成に悪影響を及ぼすものと思われる.
  • 佐藤 壽, 寺井 孝雄, 中西 一, 小野 隆治, 柴山 文男
    1988 年 91 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    臨床においてtiaprideとの併用が予想される抗精神病薬haloperidol及びchlorpromazine,抗不安薬diazepam,催眠薬bromvaleryurea,抗パーキンソン病薬trihexyphenidyl,利尿降圧剤trichloromethiazide並びに糖尿病用剤glibenclamideとの相互作用をラット並びにマウスを用いて検討した.その結果,tiaprideは,前投与によってhaloperidol又はchlorpromazineのカタレプシー惹起作用を明らかに増強した.しかし,diazepamの筋弛緩作用に対しては極く軽度の増強作用を示したのみであり,また,その他の系統の薬剤の作用に対しては全く影響を及ぼさなかった.本結果は,tiaprideは抗精神病薬との併用においては注意を払わなければならないことを示しているが,tiaprideと他の系統の薬剤との併用に関しては問題のないことを示唆しているものと考えられる.
  • 溝田 雅洋, 甲木 由紀夫, 水口 清, 遠藤 彰二, 宮田 治男, 小島 正裕, 兼広 秀生, 岡田 美智子, 高瀬 あつ子, 芹澤 公子 ...
    1988 年 91 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    エラジン酸誘発血栓家兎およびラウリン酸誘発末梢壊疽ラットに対するEPA-Eの有効性を検討し,その作用機序を検索した.1)エラジン酸誘発血栓家兎において,EPA-E300mg/kgの経口投与は血栓形成を有意に抑制した.100mg/kg経口投与では抑制傾向を示した.2)エラジン酸誘発血栓家兎において,エラジン酸投与後の血液凝固・線溶能,血小板凝集能,血液粘度および洗浄赤血球フィルター通過時間の経時変化を検討した.EPA-E 300mg/kg経口投与はエラジン酸投与後の凝固亢進状態を抑制し,5分後あるいは3時間後では有意な作用であった.エラジン酸投与5分および3時間後のアラキドン酸誘発血小板凝集閾値は増大したが,EPA-Eの作用は認められなかった.エラジン酸投与後の線溶活性,血液粘度および洗浄赤血球フィルター通過時間に対して,EPA-Eの作用はほとんど認められなかった.3)ラウリン酸誘発末梢壊疽ラットにおいて,EPA-E 30mg/kgの4週間連続経ロ投与は閉塞下肢の乾性壊疽を有意に抑制した.以上のように,EPA-Eは家兎エラジン酸誘発血栓およびラットラウリン酸誘発末梢壊疽に対し奏効した.
  • 蘇木 宏之, 内田 康美, 東丸 貴信, 杉本 恒明
    1988 年 91 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    膜のK conductanceを低下させる3,4-diaminopyridine(DAP)のモルモット気管におけるhistamine,prostaglandin D2(PGD2)収縮に対する影響を検討した.DAP 5×10-4M及び10-3M DAP処置のhistamine収縮の閾値は有意に低下し,低用量のhistamineにより気管は著明に収縮した.このDAPによる気管histamine収縮の増感は,神経遮断薬のtetrodotoxin 3×10-7Mにより変化せず,Ca拮抗薬であるnifedipine 10-8Mにより有意に抑制された.一方,PGD2収縮はDAP処置により影響を受けなかった.以上のことより,DAPは気道histamine収縮を増感させ,それは神経系を介したものではなく,電位依存性のCaの細胞内流入を介して生ずることが明らかになった.さらに,histamineとPGD2は,DAP処置によりK conductanceが低下した条件下では,異なる作用態度を示すことが判明した.
  • 三澤 美和, 柳浦 才三, 細川 友和, 水野 博之, 入野田 一彦, 高橋 美紀, 吉村 敬治, 丸山 洋子, 杉本 清美, 大野 洋光, ...
    1988 年 91 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    抗喘息効果の知られている四級アンモニウム塩構造を有するatropine誘導体flutropium bromideのケミカル・メディエーターの遊離及び拮抗に対する効果を検討した.モルモット48時間PCAならびにラット腹腔肥満細胞からのhistamine遊離に対する作用,さらに1eukotriene D4(LTD4)によるモルモット摘出気管平滑筋収縮及びイヌにおけるserotonin誘発気道収縮に及ぼす影響を調べた.モルモット48時間PCAに対して,flutropium bromideは3および10mg/kgの静脈内投与で有意な抑制作用を示した.一方,atropineには抑制作用は認められなかった.ラット単離腹腔肥満細胞からのhistamine遊離に対して,flutropium bromideは1~100μg/mlで抑制作用を示したが,その作用はdisodium cromoglycateに比しいく分弱かった.一方,atropineにはこの場合にも抑制作用は認められなかった.LTD4によるモルモット摘出気管平滑筋収縮に対して,flutropium bromideおよびatropineは10-3Mの高濃度においても拮抗作用を示さなかった.またイヌにおけるserotonin誘発気道収縮に対して,flutropium bromideの0.3%溶液の吸入適用は,拮抗作用を示さなかった.以上から,flutropium bromideの抗喘息効果の一部には,肥満細胞からのケミカル・メディエーターの遊離阻害作用が関与していることが示唆された.
  • 斉藤 清, 真辺 達男, 入野 理
    1988 年 91 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ifenprodil tartrateのマウスin vivoおよびヒトex vivo血小板凝集抑制作用の発現様式についての研究を行なった.マウスの血漿中ifenprodilレベルはifenprodil tartrate 30mg/kg経口投与20分後に最高値に達し,投与3時間後にかけて減衰した.一方,最大抑制作用は投与1時間後にみられた.このようにifenprodil tartrateは血漿中ifenprodilレベルが最高値に達した後に抑制作用を発現した.同様の現象はヒトex vivo血小板凝集に対するifenprodil tartrateの抑制作用においてもみられた.ifenprodilの血小板凝集抑制作用発現の遅れの理由を解明するため,マウスにおいて,本薬経口投与後の血小板内ifenprodil含量を測定した.血小板ifenprodil含量の推移パターンは抑制作用の推移パターンと酷似していることが判明した.このことはifenprodil tartrate経口投与による血小板凝集抑制作用の発現が血漿中ifenprodilレベルよりむしろ血小板内ifenprodil含量に直接的に関連していることを示唆している.
  • 栗原 久, 田所 作太郎
    1988 年 91 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 1988年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    buflomedil;4-(1-pyrrolidinyl)-1-(2,4,6-trimethoxyphenyl)-1-butanone hydrochlorideの行動薬理作用を,マウスの移所運動活性,およびレバー押し型およびシャトル型非連続回避反応を指標にして検討した.buflomedil(1,3,10,30および100mg/kg,p.o.)の単独投与は,移所運動活性およびレバー押し型非連続回避反応に著変を引き起こさなかった.しかし,buflomedil(30mg/kg,p.o.)はmethamphetamine(2mg/kg,s.c.)の移所運動活性促進効果を有意に減弱した.また,buflomedil(3,10,30および100mgJkg,p.o.)は,レバー押し型非連続回避反応に及ぼすchlorpromazine(1mg/kg,s.c.)の抑制効果を有意に増強したが,physostigmine(0.2mg/kg,s.c.)による抑制効果には著しい変化を引き起こさなかった.一方,シャトル型非連続回避反応の訓練直前にbuflomedil(3,10および30mg/kg,p.o.)を投与しても,回避反応習得に著しい遅速は認められなかった.本結果は,buflomedilの行動薬理作用はカテコールアミン作動神経系を介して抑制的に作用するが,その作用は極めて微妙で,methamphetamineやchlorpromazineのような典型的な向精神薬との併用によって,ようやく把握できることを示唆している.
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