日本薬理学雑誌
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114 巻, 2 号
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  • 細野 誠
    1999 年 114 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    塩酸コルホルシン ダロパートは,フォルスコリンの水溶性誘導体研究から見出された生薬由来の急性心不全治療薬である.本剤はフォルスコリンと同様に,β受容体を介さずにcAMPの合成酵素であるアデニル酸シクラーゼを直接活性化し,細胞内のcAMP濃度を高めることにより薬理作用を発現する.本剤は水溶性,作用の持続時間,血液脳関門透過性,経口活性およびアデニル酸シクラーゼのサブタイプ選択性などの点でフォルスコリンとは異なる.本剤は,陽性変力作用と血管拡張作用を示すイノダイレーター(inodilator)である.本剤の陽性変力作用は,β刺激薬やPDE阻害薬の作用が減弱するβ受容体脱感作モデルでも保持された.また,本剤は各種実験的心不全モデルに対し改善作用を示した.臨床試験においても,本剤は心不全患者の血行動態を改善し,同時に自覚症状や身体所見の改善も認められた.さらに,カテコラミン抵抗性の心不全患者でも有効であった.本剤は,世界初のアデニル酸シクラーゼ賦活薬製剤である.今後市販後調査(PMS)の中で,さらにその有効性,安全性および品質などに関して情報収集し,より適正な使用法を確立していく必要がある.本剤の臨床的位置付けがさらに明確になり,急性心不全の治療薬として一翼を担うことができれば幸いである.
  • 小野寺 憲治, 宮崎 修一
    1999 年 114 巻 2 号 p. 89-106
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    ヒスタミン受容体のなかでH3受容体はシナプス前膜に存在し,オートレセプターとしてヒスタミンの遊離を調節している.脳内では,大脳皮質,扁桃体,線条体,海馬,視床,視床下部において高密度に分布している.この総説ではH3受容体に関する細胞情報伝達機構と,この受容体のアゴニストおよびアンタゴニストに関する構造活性相関,選択的で親和性の高い新規H3受容体リガンドの紹介ならびに,最近得られた精神疾患あるいは病態モデル(アルツハイマー病,attention deficit hyperactive disease,てんかん,ストレス,不安,パーキンソン病など)での薬理作用について概説する.これらの実験結果から,H3受容体アゴニストの中でBP2.94は消炎鎮痛作用があり,また片頭痛への有効性が示唆され,臨床段階に入っている.他方,H3受容体アンタゴニストのGT2016やFUB181は学習記憶障害,attention deficit hyperactive disease,てんかんへの応用が示唆され,臨床での成果が期待されている.
  • 佐野 浩亮, 内海 英雄
    1999 年 114 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 1999年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    生体内フリーラジカルが炎症,発癌,虚血性疾患,消化器疾患,神経変性を伴う脳神経疾患,薬物による臓器障害や老化など数多くの疾患や生体内の諸現象に重要な役割を演じていることがわかり,フリーラジカルの測定が非常に重要な地位を占めることになってきた.しかし,生体内フリーラジカルは反応性に富み寿命が短いため,その検出は困難である.Ex vivo,in situを含む広義の意味でのin vivo測定が報告されているものにはESRを用いたスピントラップ法,HPLCを用いたサリチル酸法および化学発光法などが報告されている.さらに非侵襲的な動物個体での測定となるとin vivo ESR法が最も有力な方法である.In vivo ESR法は現在のところ感度が悪いため,外因的なニトロキシルラジカルを動物に投与し,そのシグナル変化から間接的にラジカル反応を計測する方法が行われている.ニトロキシルラジカルは生体の様々な要因により常磁性を失いESRシグナルが減衰するが,スーパーオキシドやヒドロキシルラジカルによってもシグナル減衰を起こす.このシグナル減衰速度は酸化的ストレスにより亢進し,ラジカルスカベンジャー等を同時投与することによりこの減衰速度の亢進が抑えられる.この減衰の亢進を詳細に解析することで,生成したフリーラジカルの種類あるいは産生部位を特定することが可能で,更に抗酸化医薬品評価にも用いることができる.一方,ジチオカルバメート系鉄錯体を用いるとNOの測定も可能である.このようにin vivo ESRはフリーラジカルの関与を非侵襲的に解析することが可能であり疾病メカニズムの解明に多大な情報をもたらすと思われる.
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