日本薬理学雑誌
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121 巻, 4 号
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ミニ総説号「カルシウムチャネル研究の新たなる展開」
  • 竹島 浩
    原稿種別: ミニ総説号
    2003 年 121 巻 4 号 p. 203-210
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル フリー
    筋収縮や伝達物質放出などの興奮性細胞での生理反応に先立ち,膜興奮による電気的信号は細胞質Ca2+上昇へシグナル変換される.細胞内ストア膜上のCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体は一般的機能として細胞表層膜のCa2+チャネルと共役し,そのシグナル変換反応に寄与する.興奮性細胞系に広く分布する3種のリアノジン受容体サブタイプに関して,構造-機能相関や生理機能上の重要性が明らかにされている.一方,リアノジン受容体が生理機能を発揮するためには細胞表層膜とストア膜の近接構造が必要であると考えられる.最近,結合膜構造の形成に関与する膜タンパク質としてジャンクトフィリンが分子同定され,そのサブタイプ群の生理的重要性が変異マウスを用いて証明されている.さらに,リアノジン受容体とジャンクトフィリンサブタイプの遺伝子の変異は,ヒト遺伝性疾患の原因となることも明らかにされた.
  • 栗原 崇, 田邊 勉
    原稿種別: ミニ総説号
    2003 年 121 巻 4 号 p. 211-222
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル フリー
    電位依存性Ca2+チャネルは細胞膜の脱分極を感知し,細胞外に高濃度に存在するCa2+を細胞内へ選択的に透過させ,多彩なCa2+依存性の生理現象,例えば神経伝達物質放出や膜興奮性調節,様々な細胞内酵素類の活性化·不活性化,遺伝子発現調節などを引き起こし,多種多様な生理機能調節において中心的な役割を果たしている.これらCa2+チャネルは一般に電気生理学的·薬理学的性質により一過性/低閾値活性化型(T型)および持続性/高閾値活性化型(L,N,P/Q,R型)に分類されている.近年Ca2+チャネルを構成するサブユニット構造が分子レベルで理解され始め,またCa2+チャネルの機能調節メカニズムに関する知見が著しく増加した.さらに最近このチャネルを構成する様々なサブユニットタンパク質の遺伝子欠損マウスが作製され,個体レベルにおける機能解析が急速に進みつつある.本稿では主に神経系に認められ,シナプス伝達の主体をなす神経伝達物質放出に必要なCa2+供給を担う主要なCa2+チャネルであるN型チャネルの機能解析を中心に最近の研究動向について概説する.
  • 西田 基宏, 原 雄二, 井上 隆司, 森 泰生
    原稿種別: ミニ総説号
    2003 年 121 巻 4 号 p. 223-232
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル フリー
    Ca2+はセカンドメッセンジャーとして,細胞の刺激応答にきわめて重要な役割を果たしている.通常,細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)は低く(≤ 100 nM)維持されているが,いったん刺激が加わると細胞外からのCa2+流入等を介して[Ca2+]iが上昇し,様々な酵素活性,転写活性が制御される.イノシトール代謝回転と連関した受容体の活性化を介して機能する受容体活性化カチオンチャネル(receptor-activated cation channel: RACC)は,ホルモンや増殖因子によって惹起されるCa2+流入を担う最も重要な経路の一つである.TRP(transient receptor potential)は,RACCの分子的実体として注目されていたが,最近では浸透圧,温度,酸化還元状態の変化など様々な外的要因にも応答し活性化されることもわかってきた.また,遺伝子欠損細胞などを用いた解析から,TRPチャネルは他の生体分子と機能的なシグナル複合体を形成し,自身のチャネル活性やCa2+流入によって惹起されるシグナル伝達を効率よく制御しており,増殖·分化や生存·死といった細胞応答を制御することが明らかになってきた.TRPは様々な病気の原因遺伝子としても考えられており,遺伝子改変動物や特異的な阻害薬開発を含めた今後の解析が期待される.
  • 金子 周司
    原稿種別: ミニ総説号
    2003 年 121 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル フリー
    選択的スプライシングは哺乳類ゲノムが機能の多様性を生み出す上で,生理学的にも薬理学的にも重要なメカニズムである.本稿では神経細胞に発現する電位依存性Ca2+チャネルCav2サブクラスの選択的スプライシングで生じるイオンチャネルの多様性について概説する.選択的スプライシングの全体像はいまだに明らかではないが,これまでに見出されたスプライシングバリアントは,特定の脳部位においてCa2+シグナリングを特異的なリガンドを用いて制御できる可能性を示唆している.
  • 御子柴 克彦
    原稿種別: ミニ総説号
    2003 年 121 巻 4 号 p. 241-253
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル フリー
    IP3レセプターは細胞内Ca2+貯蔵庫からCa2+を放出するチャネルであり,低頻度で細胞内におきるCa2+振動をひきおこす重要な分子である.細胞膜のチャネルと比べて,1)トリプシンで数個の断片に分かれてもIP3結合能とCa2+放出能は維持されており,2)IP3結合部位に天然のIP3レセプターよりも500倍以上も高い親和性を有する結合ドメインがある,3)量子的Ca2+放出能を有する,4)カルモジュリンにより高濃度Ca2+存在下で不活化される,5)IP3レセプターは細胞膜Ca2+チャネルと直接結合している,等のユニークな性質を有していることが明らかになった.小脳に豊富にあるリン酸化をうける糖タンパク質であるP400がIP3レセプターであるという発見の経緯からも明らかなように,IP3レセプターは受精現象,背腹軸の決定や高次脳機能に深くかかわっていた.IP3レセプター欠損マウスはてんかんと小脳失調の複合症状を呈していた.
実験技術
訂正
  • 2003 年 121 巻 4 号 p. 274
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/04/11
    ジャーナル フリー
    349頁右46行目:ステロイド薬のサロメテロール → β2刺激薬のキシナホ酸サルメテロール(サルメテロール)
    350頁左3行目:サロメテロール → サルメテロール
    350頁左7行目:サロメテロール → サルメテロール
    350頁左9行目:ステロイド薬→ β2刺激薬(サルメテロール)
    (誤)本試験では吸入ステロイド薬のサロメテロール(吸入薬2パフ,50 µgを1日2回)を対照とした.その結果,いずれの治療群も,投与3日から運動負荷後のFEV1の低下を著明に改善した.サロメテロール群では4週,8週でのEIBに対する改善効果に減弱がみられたが,モンテルカスト群は8週まで効果が持続し,8週時における運動負荷後のFEV1の最大低下率に対しての改善率はモンテルカスト群(57.2%)がサロメテロール群(33.0%)を有意に上回った(P<0.002).以上の結果から,モンテルカストはEIBに対する改善効果の発現が速やかでかつステロイド薬と比較し長期治療における耐性を生じ難いという優れた特徴を有することが明らかとなった(29).
    (正)本試験では吸入β2刺激薬のキシナホ酸サルメテロール(サルメテロール)(吸入薬2パフ,50 µgを1日2回)を対照とした.その結果,いずれの治療群も,投与3日から運動負荷後のFEV1の低下を著明に改善した.サルメテロール群では4週,8週でのEIBに対する改善効果に減弱がみられたが,モンテルカスト群は8週まで効果が持続し,8週時における運動負荷後のFEV1の最大低下率に対しての改善率はモンテルカスト群(57.2%)がサルメテロール群(33.0%)を有意に上回った(P<0.002).以上の結果から,モンテルカストはEIBに対する改善効果の発現が速やかでかつβ2刺激薬(サルメテロール)と比較し長期治療における耐性を生じ難いという優れた特徴を有することが明らかとなった(29).
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