レミノプラゾール((±)-2-[[2-(isobutylmethylamino)benzyl]sulfinyl]-1
H-benzimidazole,NC-1300-O-3,LEM)の胃粘膜H
+,K
+-ATPase阻害機構を明らかにするため,ウサギ胃粘膜より得たH
+,K
+-ATPaseを含む胃小胞を用いていくつかの検討を行った.LEMはH
+,K
+-ATPaseを濃度および時間依存的に阻害し,pH6.1もしくは7.4で30分間反応させた場合のIC
50値は,それぞれ5.3μMおよび19μMであった.このH
+,K
+-ATPase阻害作用はK
+との拮抗によるものではなく,希釈操作により影響を受けず非可逆的なものであった.また,0.1mM β-メルカプトエタノールの存在によりH
+,K
+-ATPase阻害作用は抑制され,さらにLEMにより阻害されたH
+,K
+-ATPase活性は50mM β-メルカプトエタノールもしくはジチオスレイトールにより一部回復した.これらのことから,LEMは酵素のSH基とジスルフィド結合を形成することによりH
+,K
+-ATPase阻害作用を示すと考えられた.LEMのH
+,K
+-ATPase阻害作用はpH7.4よりpH6.1で強く,LEMと還元型グルタチオンの反応もpH依存的に酸性環境下で速かった.さらにインタクトな胃小胞のH
+輸送の阻害は小胞内にH
+が蓄積してからおこったこと,またバリノマイシンにより刺激されたH
+,K
+-ATPase活性を強く阻害したことから,LEMは酸性環境下でなんらかの活性化反応を経由し,H
+,K
+-ATPase阻害作用を示すと考えられた.一方,H
+輸送が反応開始時からすでに阻害されている場合があることや,ナイジェリシンにより刺激されたH
+,K
+-ATPase活性に対しても比較的強い阻害作用を示すことから,LEMの阻害作用の発現は必ずしも酸性環境を必要としない可能性も示唆された.
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