日本薬理学雑誌
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104 巻, 4 号
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  • 金 勝慶, 山本 研二郎
    1994 年 104 巻 4 号 p. 275-284
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    Recent developments in the techniques of molecular biology and the availability of inhibitors of the renin-angiotensin system have provided new insight into renin-angiotensin research. The control mechanism of renin release and the metabolism of circulating renin have been well characterized on the molecular level. Angiotensin II has been shown to play an important role not only in the regulation of blood pressure but also in cell growth and hypertrophy. ACE inhibitors are effective for the treatments of hypertension and heart failure. Furthermore, recent studies suggest that ACE inhibitors may prevent atherosclerosis and glomerulosclerosis. Angiotensin II receptor antagonists have similar beneficial effects. These effects of ACE inhibitors and angiotensin 11-receptor antagonists may be mediated by growth factors and the extracellular matrix.
  • 東田 千尋, 野村 靖幸
    1994 年 104 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    Synaptic plasticity, a physiological basis of learning and memory, is mainly classified into two categories: 1) relatively short-term changes in electrical activities and 2) more long-lasting morphological changes in synapses. Studies on neuronal differentiation have provided detailed clarification of many of the morphological changes in synapses. Although it has been demonstrated that neuronal differentiation is induced by a variety of stimuli, the mechanism of neuronal differentiation has never been sequentially understood. Since there must be unknown factors relevant to these complicated processes, it is important to find and identify the novel intracellular factors that are able to induce the differentiation of neurons. Differential screening is useful cloning method to identify molecules without any information about their structures. Genes expressed in a distinct pattern among two or more groups, eg. different drug-treated cells, tissues and so on, can be isolated. To identify novel neuronal differentiation factors, we differentially screened approximately 500, 000 primary clones from the cDNA library of NG108-15 cells treated with TPA and diBu-cAMP for 72 hr. Using two single strand cDNA probes, which were reverse-transcribed from poly(A)+RNA, TA-20 was isolated from cells treated with TPA and diBu-cAMP (probe TA) or from cells treated with diBu-cAMP alone (probe A) for 72 hr. Clones that hybridized preferentially to the probe TA were further investigated by Southern and Northern blots. Thus the identified clone TA20 is a novel gene and plays functional roles as a neuronal differentiation factor.
  • 小坂 信夫, 田中 洪, 石井 昭男, 周藤 勝一
    1994 年 104 巻 4 号 p. 293-302
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    実験潰瘍モデルの胃粘液量の変動に対するKW-5805の作用を検討した.ストレス負荷ラットでは,ストレス負荷1時間から3時間に延ばすと,胃粘膜被覆粘液量は減少し,潰瘍は悪化した.KW-5805は,ストレス負荷3時間での胃粘膜被覆粘液量の減少を3mg/kg,p.o.から用量依存的に抑制し,潰瘍形成を10および30mg/kg,p.o.で有意に抑制した.アスピリン投与ラットでは,アスピリン投与後3時間まで胃粘膜被覆粘液量は減少し,投与後4時間以降では回復を示したが,潰癌は投与後1時間から形成し,6時間まで持続した.また,胃粘膜糖タンパク質量(ヘキソース量およびヘキソサミン量)もアスピリン投与後3時間で減少した.KW-5805は,アスピリン投与後3時間での胃粘膜被覆粘液量の減少および潰瘍形成を3mg/kg,p.o.から用量依存的に抑制した.胃粘膜糖タンパク質量の減少に対しても30mg/kg,p.o.で有意に抑制し,ヘキソース量では53%,ヘキソサミン量では68%の抑制率を示した.正常動物において,KW-5805は,経口投与後30分で,3mg/kgから用量依存的に胃粘膜被覆粘液量を増加し,30mg/kg投与群では対照群の1.5倍の増加を示した.KW-5805の胃粘膜被覆粘液量に対する作用は,ピレンゼピンおよびセトラキサートに比べ強活性であった.また,KW-5805の30mg/kg経口投与群は,投与後1時間で胃粘膜粘液糖タンパク質量を有意に増加した.以上の結果から,胃粘液量の減少が潰瘍の成因の一つであり,KW-5805は胃粘液量を増加することによって,潰瘍形成を抑制することが示唆された.
  • 中丸 幸一, 菅井 利寿, 本行 孝幸, 佐藤 雅子, 谷口 偉, 田中 友希夫, 川瀬 重雄
    1994 年 104 巻 4 号 p. 303-311
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    メサラジン(mesalazine)顆粒はメサラジンを腸管全体に徐々に放出するようにエチルセルロースでコーティングした製剤であり,特発性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎とクローン病)に有効性を示すことが期待されている.メサラジン顆粒をラットに経口投与して,メサラジンの腸管組織への分布動態を調べるとともに実験的大腸炎モデルに対する効果を検討した.メサラジン顆粒をラットに経口投与した時に検出される腸管組織内のメサラジンの量およびその代謝物であるアセチル体(N-acetyl-mesalazine)の量はメサラジンを原薬で投与した場合に比べて増大した.投与後24時間までに直腸に分布した総メサラジン量(AUC)はメサラジン顆粒投与群ではメサラジン投与群に比べて2~3倍の値を示した.ラット酢酸誘発大腸炎では肉眼的評価による障害を50mg/kgで有意(P<0.05)に抑制し,病理組織学的評価では100mg/kgで有意(P<0.05)な抑制効果を示した.モルモットカラゲニン誘発大腸炎での潰瘍数は50,100,200mg/kgで抑制された.2,4,6-trinitrobenzenesulfonic acid(TNB)誘発大腸炎でのラットの腸管湿重量は50mg/kgで有意(P<0.05)に抑制された.メサラジン顆粒の投与によってメサラジンは効率良く腸管組織に分布することが認められ,さらに,ヒトの潰瘍性大腸炎類似モデルとされる酢酸誘発大腸炎やカラゲニン誘発大腸炎,クローン病類似モデルとされるTNB誘発大腸炎に有効性を示した.以上の結果から,メサラジン顆粒は特発性炎症性腸疾患に有用であることが示唆された.
  • 百々 研次郎, 保科 公平, 石橋 祐二, 斎藤 孝夫
    1994 年 104 巻 4 号 p. 313-323
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    ラットに各々単独では急性胃粘膜病変(AGML)を引き起こさない強さもしくは濃度の虚血・再灌流および0.2%アンモニア水を同時負荷することにより新規AGMLモデルを作製した.また,当該モデルや脱血-0.2%アンモニアもしくは1%アンモニア負荷AGMLモデルに対するトロキシピドや他の胃粘膜防御系薬物の抑制効果について調べた.(1)トロキシピドの50~200mg/kg(p.o.)はラットの虚血・再灌流-0.2%アンモニア水同時負荷によるAGMLの発生を投与量に依存して抑制した.また,虚血・再灌流負荷による胃粘膜中のチオバルビツール酸(TBA)反応物質の増加も用量依存的に抑制し,抑制率はAGMLの場合とほぼ同じであった.アロプリノールもAGMLの発生やTBA反応物質の増加を抑制した.(2)トロキシピドの10-6~10-4Mはin vitroにおけるラット胃粘膜ホモジネートのキサンチンオキシダーゼ活性をアロプリノールと同様に濃度依存的に抑制した.(3)トロキシピドの50~200mg/kg(p.o.)はラットの脱血-0.2%アンモニア水同時負荷もしくは1%アンモニア水単独負荷によるAGMLの発生に対しても投与量に依存した抑制を示した.(4)トロキシピドの各種モデルにおけるAGMLの発生や虚血・再灌流に伴う胃粘膜中TBA反応物質の増加に対する抑制スペクトラムは,ソファルコンと類似しており,テプレノンや塩酸セトラキセート,アズレン+L-グルタミンもしくはスクラルファートとは幾分異なるものであった.以上の結果から,トロキシピドの虚血・再灌流-0.2%アンモニア負荷モデルにおけるAGMLの発生に対する抑制作用は,その機序の一つに虚血・再灌流に伴う活性酸素の産生や乏血によるエネルギー代謝の低下に基づく粘膜組織の脆弱化およびアンモニアのバリアー破綻作用に対する抑制もしくは保護効果が関与しているものと考えられた.また,各種AGMLモデルに対する抑制スペクトラムも他の粘膜防御系薬物と異なり幅広い効果を示すことが判明した.
  • 増田 誠, 内田 あおい, 松倉 均, 神代 敏郎
    1994 年 104 巻 4 号 p. 325-335
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    レミノプラゾール((±)-2-[[2-(isobutylmethylamino)benzyl]sulfinyl]-1H-benzimidazole,NC-1300-O-3,LEM)の胃粘膜H+,K+-ATPase阻害機構を明らかにするため,ウサギ胃粘膜より得たH+,K+-ATPaseを含む胃小胞を用いていくつかの検討を行った.LEMはH+,K+-ATPaseを濃度および時間依存的に阻害し,pH6.1もしくは7.4で30分間反応させた場合のIC50値は,それぞれ5.3μMおよび19μMであった.このH+,K+-ATPase阻害作用はK+との拮抗によるものではなく,希釈操作により影響を受けず非可逆的なものであった.また,0.1mM β-メルカプトエタノールの存在によりH+,K+-ATPase阻害作用は抑制され,さらにLEMにより阻害されたH+,K+-ATPase活性は50mM β-メルカプトエタノールもしくはジチオスレイトールにより一部回復した.これらのことから,LEMは酵素のSH基とジスルフィド結合を形成することによりH+,K+-ATPase阻害作用を示すと考えられた.LEMのH+,K+-ATPase阻害作用はpH7.4よりpH6.1で強く,LEMと還元型グルタチオンの反応もpH依存的に酸性環境下で速かった.さらにインタクトな胃小胞のH+輸送の阻害は小胞内にH+が蓄積してからおこったこと,またバリノマイシンにより刺激されたH+,K+-ATPase活性を強く阻害したことから,LEMは酸性環境下でなんらかの活性化反応を経由し,H+,K+-ATPase阻害作用を示すと考えられた.一方,H+輸送が反応開始時からすでに阻害されている場合があることや,ナイジェリシンにより刺激されたH+,K+-ATPase活性に対しても比較的強い阻害作用を示すことから,LEMの阻害作用の発現は必ずしも酸性環境を必要としない可能性も示唆された.
  • 宮本 要, 永川 純一, 永岡 尚子, 菱沼 宇春, 永岡 淳作, 山中 鼎司, 若林 庸夫
    1994 年 104 巻 4 号 p. 337-345
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    我々は摘出膵灌流標本を用い,外分泌系に焦点を当てた膵傷害モデルの作製を試みるとともに,この系を用いてトリプシン阻害作用を持つ新規グアニジン誘導体である4-(2-succinimidoethylthio)phenyl 4-guanidinobenzoate methanesulfonate(E3123)の作用を検討した.ラットの摘出膵灌流標本において,トリプシン-タウロコール酸あるいはphospholipase A2(PLA2)を膵管内に注入すると,灌流液中への膵酵素逸脱が観察された.本系におけるトリプシン-タウロコール酸膵傷害で,E3123は0.1および1μMと濃度依存的に膵酵素逸脱を抑制した.またPLA2膵傷害でも,E3123は10μMで有意な抑制作用を示した.一方E3123と同等のトリプシン阻害作用を持つメシル酸ナファモスタット(nafamostat mesilate)は,E3123に比較して膵傷害抑制作用が弱かった.この事実は以前報告したin vivoの膵炎モデルにおける結果とよく一致しており,本系はin vivoの膵炎モデルでの効果を反映する良いモデルであると考えられた.次に膵スライスのPLA2膵傷害系において,E3123は1-100μMと濃度依存的な傷害抑制作用を示したが,メシル酸ナファモスタットは10μMでも抑制作用を示さなかった.これらの結果は同じプロテアーゼ阻害剤に分類される両化合物の作用態度に質的な違いがあることを示唆するものであった.そこで,E3123の作用が細胞膜表面上で発揮されているのではないかと推測し,赤血球低張溶血に対するE3123の効果を検討した.E3123は濃度依存的(1-300μM)な溶血抑制作用を示した.以上より,E3123はトリプシン阻害作用だけでなく,膵外分泌細胞に対する保護的な作用も有している可能性が示唆された.
  • 今井 巧, 甲斐 広文, 礒濱 洋一郎, 高濱 和夫, 宮田 健, 広井 純, 下村 恭一, 向坂 正信
    1994 年 104 巻 4 号 p. 347-355
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    新規経口抗アレルギー薬であるquinotolast(FK021)[sodium 5-(4-oxo-1-phenoxy-4H-quinolizine-3-carboxamido)tetrazolate monohydrate]の気道クリアランス系に対する作用を検討した. ウサギの正常気道液分泌に対してFK021の1,10mg/kg, p.o. は影響を及ぼさなかった.トラニラストの100mg/kg, p.o. は気道液量に対して軽度の抑制作用を示した. ラット肺胞II型上皮細胞からの肺表面活性物質の分泌に対してFK021(10-10~10-5g/ml)およびトラニラスト(10-6,10-4g/ml)は何ら影響を与えなかった. ウズラの気管粘液繊毛輸送速度に対しては,FK021の10mg/kg, p.o. の投与用量で亢進作用が認められた. トラニラストの100,320mg/kg, p.o. は著明な影響を与えなかった. モルモットのクエン酸誘発咳嗽反応に対して,FK021は10mg/kg, p.o. で正常動物に惹起させた咳嗽を,更に32mg/kg, p.o. で気管支炎病態動物に惹起させた咳嗽を抑制した. トラニラストは320mg/kg, p.o. の投与用量で正常動物に惹起させた咳嗽を抑制したが,気管支炎病態動物に惹起させた咳嗽に対しては何ら作用を示さなかった. 本研究の結果より,FK021は気道クリアランス系に対して,好ましい作用を示すと考えられる.
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